花火
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「花火したいアル!」
急に言い出したのは神楽だ。しかし、話しかけられているであろう銀時は、ジャンプを片手にソファーに寝そべったまま、神楽の方には見向きもしない。
それでも負けじと、さっきより少し大きめの声で再度話しかける。
「銀ちゃ〜〜ん! 聞いてるアルか⁉︎」
「ごちゃごちゃうっせーなァ~、聞こえてるっつーの! こちとら、ジャンプ読むのに忙しいんだよ、コノヤロー!」
「聞こえてるんなら、返事ぐらいしてくれたらいいネ!」
そこへ買い出しに出掛けていた新八が戻って来た。なにやら2人の言い争う声が、玄関にまで響いている。
新八は、若干げんなりしながらリビングへと向かう。
「ただいま戻りました~。2人とも何喧嘩してるの? 玄関まで丸聞こえなんだけど──」
新八がいる事に気付いていないのか……2人の言い争いは尚も続く。
「花火だァ⁉︎ んなもんしてたら、蚊に刺されんだろーが!」
「銀ちゃん、甘い物ばっかり食べてるから、蚊が寄ってきやすいネ! でも、銀ちゃんが犠牲になれば、他のみんなは助かるアルよ!」
「何言ってんだァ⁉︎ 貴重な糖分を誰が蚊なんざにくれてやるかってんだよ!」
「……2人とも何の話をしてるんですか?」
そう言われて、2人はようやく新八の存在に気付き、一斉に振り向く。
「新八ィ〜、いつの間にそこにいたネ? 全然気付かなかったアルよ」
「新八ィ~、いちご牛乳は?」
「あんたら、おかえりの一言も言えないのかよ⁉︎」
その時、神楽が新八の持っている荷物に目を向ける。そして、おもむろに問いかける。
「新八、それ何買ってきたネ?」
「あっ、これ? さっきナマエさんから預かってきたんだけど──」
ガサゴソと袋から取り出したのは花火だ。
「マジでか⁉︎」
「何か店から安く分けてもらったみたいで、今日みんなでしようって話になって──」
「さっすがナマエアル! ナイスタイミングネ!」
「それより、さっきから2人で何の話してたの?」
「花火したいって話してたアル! でも、銀ちゃんが──」
神楽が物言いたげな眼差しを、銀時に差し向ける。それに気付いた銀時は、バツが悪そうに頭をバリバリと掻いた。それを目の当たりにし、状況を察した新八が問いかける。
「ナマエさんがしようって言ってるんだし……銀さんも勿論しますよね?」
言い終わると同時に、新八はニヒルな笑みを浮かべながら、銀時に視線を送る。
「銀ちゃん、彼女が花火したいって言ってるのにしないアルか~?」
「神楽ちゃん、大丈夫だって! 銀さん、なんやかんや言っても、彼女の言うことなら聞いちゃいますから」
「あっ、そ~アルね! 彼女の誘いアルからね~」
さっきから新八と神楽が連呼している“彼女”とは、先に花火を新八に渡したナマエの事だ。そう、最近銀時に、彼女が出来たのだ。2人は若干それをからかっている趣旨はある。
「お前らわざと言ってんだろ、コノヤロー!」
「別に〜、僕らは普通に言ってるだけですよ~」
「そーアル! 別に間違ったこと言ってないネ!」
「分かったよ、やりゃーいいんだろ花火!」
「ひゃっほ~い! 初めからそうするヨロシ」
「ったく……」
やっぱり“彼女”なんざ呼び慣れねぇ……と、銀時はふと思う。
ナマエと銀時は、元から知り合いだった。新八と神楽とも仲が良く、みんなで集まったりしている内に、なんやかんやあって──先日やっと正式に付き合い出したのだ。
付き合ってからは、まだまともにデートしたこともなければ、ましてやその先なんて……銀時にしては珍しくプラトニックなお付き合いをしてるようだ。言い換えれば、それだけ大切にしているとも言える。