第16章 曇天
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真選組内でそのような動きがあった時、銀時も月詠からこんな話を聞いていた。
そう、それはあの日ナマエを送った後の話だーー
「それはそうと……最近、吉原に妙な連中が出入りしておってな――」
「妙な連中って……一体誰なんですか?」
「鬼兵隊と言う奴らじゃ」
「鬼兵隊ーーッ⁉︎」
「銀ちゃん、紅桜の時のあいつらアル!」
「……ッ」
いわく付きの名前に、銀時達の表情が一変する。
なぜ、吉原に奴らが……?と、不穏な空気が立ち込める。
「で、奴らの目的は?」
「なにやら人を探しておるらしいんだが――」
「人探し……ねぇ。まぁ、単なる人探しじゃなさそうだな……」
銀時が含みを持たせるかの様に呟く。
それに対し、月詠はさらに声色低く話を続ける。
「ただでさえ鳳仙無き後……春雨第七師団、神威の支配下になったのもあって、春雨の部下らしき連中が時折はびこってはおるがな……」
月詠が遠くを見据え、ため息を1つこぼす。
「目的が分からぬのでは、わっちも百華をどう動かせばいいか……そこでだ、銀時……ぬしらの力を貸してくれんか?」
「もちろんですよ!僕らに出来ることなら何でも力になりますよ!」
「そうネ、ツッキー、遠慮はいらないアル!」
「ですよね、銀さん?」
「あ?……ったく、めんどくせーなァ」
銀時は頭をカシカシ掻きながら答える始末……しかし、新八と神楽は意気揚々と答える。
「銀さんがやらないなら、僕らだけでも手伝いますからね!」
「そうアル!こんな役立たずの天パ、いなくてもいいネ」
「おぃぃ~!誰もやらないなんて言ってねーだろーがよォ!わかったよ、やりゃーいいんだろ、やりゃ〜よォ?」
「そうネ! つべこべ言わずに最初からそう言えばいいアル!どうせ暇ネ」
「うっせーな、コノヤロー!」
「まぁまぁ、2人とも落ち着いてくださいよ!明日また詳しく聞き込みしましょう」
新八と神楽を横目に、銀時はまた面倒くさそうに頭を掻いた。
そしてしばらくしだ後、銀時は月詠を吉原まで送ることにした。
その途中、銀時が不意に月詠に問いかける。
「お前……なんか最近雰囲気、変わった?」
「何じゃ急に……わっちは別に何も変わっておらんぞ?」
「いや~なんつーか、前はこんな事があっても1人で何とかしようとしてたじゃん?だけど、今は……ほら相談してきてんじゃん?」
「そ、それは……」
「その方が……まぁ、いいんじゃねーの?」
「……ッ!」
「あ、もしかしてお前――」
銀時は何かひらめいたかのように月詠に視線を向ける。突如、銀時と目の合った月詠は思わず視線を逸らす。
「好きな奴でもできた?」
「は、はァ⁉︎」
「だってよォ、急にしおらしくなるなんざ、何かきっかけがあるとしか考えられねーし……それによォォ、“恋する女はなんとか”ってーーってよく言うじゃん?」
急な質問だ。しかも恋愛絡みの……上手く切り替える事が出来ず、月詠は顔が赤くなるのを感じる。
「わ、わっちにそんなものはおらん!」
「またまた~銀さんとお前の仲じゃ~ん。誰なんだよ、教えろよ?」
銀時がニヒルな笑みを浮かべながら、月詠の肩に手を伸ばす……が、同時に即座に投げ飛ばされてしまう。
「いってーなァ…何すんだ、コノヤロー!」
「おらんと言っておるじゃろ!」
「何だよ……んな怒んなよなァ……」
銀時は打ち付けた頭をさすりながら呟く。
そんな銀時を横目に、月詠が問いかける。
「なぁ、銀時……もし、自分が想う相手に他に好きな人がいたら……ぬしならどうする?」
「……え?」
茶化そうにも、月詠の表情があまりにも真剣に映る。そして銀時は、少し間を置いて答えた。
「ん~俺ァ別にどーもしねーけど?」
「ん……?それはどーゆーことだ?」
「だってよォ、好きになっちまったもんは仕方なくね?まぁ、自分の気持ち次第だけど、それを知ったからって、そう簡単に諦められるもんでもないだろーし……」
「そうか……まぁ、確かに……な」
「でも、相手に何らかのアピールはするかもなァ? とりあえずは……声をかけるとかよォ」
『参考になんざならねーだろ?』……と、そう言う銀時は、どこか物憂げな表情を浮かべている。
そんな横顔を垣間見ながら、銀時は誰を想っているのだろうか……と、月詠は思案する。
そうこうしてる内に、に吉原に到着した。
「つーか、なんだこの会話? 何でお前にこんな事語ってんだ、俺ァ……それじゃーな」
ヒラヒラと手を振りながら立ち去る銀時を、不意に月詠が呼び止める。
「銀時――」
「あ? 何だよ?」
「ぬしは……ナマエが好きなのか?」
「はァ⁉︎ いきなり何だよ⁉︎」
不意打ちの問いかけに、銀時が若干の焦りを見せる。その様子を目の当たりにした、月詠は悟った。
「いや……聞いてみただけだ」
「く、下らねーこと聞くんじゃねーよ! じゃあな」
答えを濁しつつ、銀時は吉原を後にした。