銀時は、出て行った
ナマエを目の当たりにして、ただ立ち尽くしている
そんな様子を見かねた月詠が口を開いた
「いいのか、銀時?」
「…え?」
「
ナマエを…このまま放っておいてもよいのか?」
「……」
「わっちなら別に構わんぞ?」
「……悪ィ、話は後で聞くわ」
そう言い残し、銀時はすぐさま
ナマエを追いかけた
その頃、万事屋を走って出てきた
ナマエはこんな思いに陥っていた
(私…どうして逃げてきちゃったんだろう…?銀さん、きっと変だと思ったよね…)
ナマエが深くため息をついた時、隣にスクーターが止まり、呼び止められる
「
ナマエ、ちょっと待てってば!」
「ぎ、銀さん⁉︎どうしてここに⁉︎」
「どうしてって…オメーよォ、レディーを送るのは紳士の務めでしよーよ?いいから後ろ乗れって」
「えっ、でも…」
「いいから!」
躊躇いつつもスクーターの後ろに乗る
掴まってろ…と、言われた
ナマエは、ドキドキしながら、銀魂の腰に手を回し背中に寄りかかってみた
そしてアパート前でスクーターが止まる
我に返った
ナマエが、慌ててスクーターから降りる
「わざわざ、すみません…あの…月詠さんの事待たせてるんですよね?早く戻ってください」
「……」
しかし銀時は一向に動こうとしない
そんな銀時を
ナマエが不思議そう見据える
「銀さん…?」
「
ナマエちゃんさァ…俺の事避けてる?」
「えっ…」
「いや、なんつーかよォ…」
「……」
しばしの沈黙の後、
ナマエがゆっくり口を開く
「銀さん――…」
「ん?」
「昨日のアレは、一体何だったんですか…?」
「……え?」
“アレ”と言われて、銀時に思い当たる節は1つしかなかった
もちろん
ナマエが言っているのは、昨日自分が抱きしめた事だろう…
「あ、アレねェ~アレはそのアレだよアレ!大人の事情つーアレで、なんつーかな…」
天邪鬼な故、いざとなるとなかなか素直になれない銀時が目を泳がせる
そんな銀時に対して、
ナマエは何かを悟ったかのように答えた
「要するに…冗談ですよね?」
「え…」
「銀さんって遊び人だから、誰にでも簡単にあんな事しちゃうんですよね?もーダメですよ!相手が私だったから冗談だって分かるけど…他の子だったら勘違いしちゃいますよ?」
「へ…?いや、そんなつもりじゃ――」
「銀さん、あーゆーことは本当に好きな子にしかしちゃダメですよ?あっ、それじゃーありがとうございました」
「ちょっ、
ナマエちゃん⁉︎」
銀時の呼びかけには振り向きもせず、
ナマエは逃げるように家の中へと入ってしまう
その様子を見ながら、銀時はそれ以上何も出来なかった
一方で、家の中に入った
ナマエは、ただ茫然と立ち尽くしていた
(私…何であんな事言っちゃったんだろ…
でも、銀さんもはっきりとした事言わなかったし…それにーー…
分かってた事だ…私なんて相手にされていないって事は……)
ふと目から涙がこぼれた
(銀さんと月詠さんが一緒にいるのを見るのは正直結構キツイな……自分でお似合いだとか思っておきながら、心が痛いだなんて…
きっとこの気持ちは消せない……やっぱり私……銀さんの事――…)
そう思いながら、別の事も考えていた
(でも…もしかしたら、これは自分が弱いからかもしれない…
思えば、銀さんと初めて出会った時も助けられてたし…それに銀さんの周りにいる女性は、神楽ちゃんにしてもお妙さんにしても、それに月詠さんにしても…みんな強い人ばかりだ
銀さんに頼ってばかりじゃダメだ…私は…強くなりたい!)
ナマエがこんな想いにようやく気づき始めた頃、この先自分の身に何が起こるかなんて知る由もなかった
つづく