帰り道――…
銀時の心中は穏やかとは言い難く…むしろ腹わたが煮え繰り返る勢いだった
何だよ、ありゃ⁉︎何であんな事を俺に話すんだよ⁉︎
でも、それだけ
総悟は
ナマエの事をなんとかしてやりたいって思ってるって事か?なんだかんだ言っても、やっぱりアイツも
ナマエの事――だったら何で、自分じゃなく他の奴に頼むんだよ⁉︎
あーーっ、イライラしやがる
大体俺の目の前であんな事しときながら、何でそんな事が言えんだよ⁉︎
もしかして、俺ァあのドSに踊らされてるんじゃねーのかァ?
アイツの事だ、たぶん同じようなことを
土方にも言ってるはずだ
奴なら間違いなく、自分の手で
ナマエを幸せにしてやろーと思うはずだ
それなら俺も…いやいや待て待て。そう思わせといて、実はすでに自分のものになっている
ナマエを、俺ら2人が争う間抜けな姿を高みの見物しようとしているのかもしれねェな…アイツならやりかねん…
いやいや、でも…
あ~めんどくせ~‼︎どっちにしろめんどくさい事になりそーだ…
銀時はそんなことを考えながら、万事屋に帰り着いた
玄関に入ると、見慣れない履物があった
「誰か来てんのか…?」
部屋に入ると、そこにいたのは
ナマエだった
「銀さん、お帰りなさい!
ナマエさん来てますよ」
「お邪魔してます!」
「銀ちゃん、見て見て!
ナマエがケーキ買ってきてくれたネ!」
既に神楽は美味しそうにケーキをむさぼっている
その時、
ナマエがおもむろに銀時にケーキの箱を手渡した
「銀さん、これ…」
「ん?」
「1日遅れちゃったけど、一応バレンタインデー…」
「まじでか⁉︎」
「昨日なんやかんや、渡しそびれちゃってたからーー」
「
ナマエちゃ~ん、これってひょっとしてひょっとすると、“本命チョコ”ってやつなんじゃーー?」
「いーえ、りっぱな義理チョコです!」
ナマエはそう言ってニコリと微笑む
「あ~やっぱりそうですよねェ、昨日もそう言ってましたもんねェ」
「え~銀ちゃんだけ特別にズルいアル!!私も食べたいネ!」
「お前はどんだけ食ったら気が済むんだ、コノヤロ~‼︎」
そんないつもの光景を微笑ましく見ている
ナマエを横目に、銀時はふと思う
(さっきの話がどーであれかまわしねェ…
もし、
ナマエの笑顔が消えそうになった時はまた取り戻しに行きゃーいい…
今がある……それだけで十分じゃねェか)
そう思っていたが、この時はまだ何も分かっちゃいなかった
つづく