第9章 それぞれの憂鬱
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
屯所への帰り道ーー総悟はさっきナマエに言いかけた事を思い出していた
“もしもあの時、今みたいに素直になれてたら、今も変わらず俺の隣にはナマエが笑っていたのかもしれないな…”
でも、“もしも”なんて言葉は、それが過ぎ去った後にしか生まれないものでさァ
そんな変えようもない事を考えるより、あの時があったから、今があると思った方が前向きだ
でも…、今の俺ならナマエを幸せに出来るなんて事も言えない様な臆病者で…
だから、ナマエの幸せを一番に願うことにしまさァ
ただ、昨日のアレは、それに対する唯一の反抗だったのか…
そんな自問自答を繰り返しながら、総悟は屯所に戻った
着くとすぐに土方がやって来た
「おい、総悟!お前はどこほっつき歩いてやがったんだ⁉︎今日は朝から会議があるって言ってただろーが‼︎早く来い!」
「ちょっと、野暮用でさァ…」
「…ナマエん所、行ってたんだろ?」
土方にそう言われて、しばらく黙ったままだった総悟が口を開いた
「昨日は、土方さんに世話になったみたいで…でも、俺ァあんたに借り作るなんざまっぴら御免こうむりまさァ」
「んじゃ、お前はナマエから手を引け!んで、二度とあんなマネすんな‼︎」
土方はそう言い放つと、ギロリと総悟を睨みつけた
「はいはい。俺ァ元々ナマエとよりを戻そうなんざ思っちゃいやせんよ。まぁ、昨日のは魔が刺したといいますか――」
そう言い終わるなかいなか、土方が総悟の胸倉を掴みかかった
「なめてんのか、テメー…」
「俺がなめてんのは、土方さんだけでさァ」
ニィと笑う総悟を見て、土方もバカバカしくなったのか手を放した
総悟のこーゆー所は、本当に憎めない
「ったく、お前は…」
「でも土方さん、俺ァ本当にナマエとよりを戻すつもりはありやせん。ただ、あいつが幸せならそれでいいって思ってまさァ。まぁ、それを他の奴にゆだねるってのも、自分でもどうかしてるとは思いますがねィ」
「………」
「土方さん、俺よりも万事屋の旦那の方を気にした方がいいんじゃないですかィ?」
総悟がスッと土方を見据える
「…は?何でヤローが出てくんだよ?」
「土方さんだって、薄々は気づいてるんじゃないですかィ?まぁ、旦那のことだからどこまで本気だかわかりやせんがねェ」
「…チッ」
「誰を選ぶかはナマエが決めることでさァ。でも、もしもナマエが俺を選んだ時は、あんたらにゃ指一本触れさせやしませんがねィ」
さっきの視線が鋭いものに変わる
「おい、さっきと言ってる事が違うじゃねーかよ!」
「まぁ、それはたぶんないと思いやすが、そうだとしても泣かせる様なマネをした時も同じでさァ」
その時近藤が2人を呼びに来た
「何やってんだ~お前ら!早く来いよ〜、とっつあんもう来てんだからよ~」
「まぁ、そーゆーことでさァ、土方さん」
そう言いつつ、近藤の後に続いて総悟は行ってしまった
土方は会議中もさっきの事が頭から離れず、イライラしていた
何だってんだよあいつは…いつも以上に言いたい事一方的に言いやがって…
結局はあいつもナマエの事を想ってるって事には変わりないって事か…?
昨日、あんな胸くそわりーもん見せつけられて、より戻す気はねーとか言いやがるし…
俺だってあいつが幸せになるならそれでいいって思ってる事には変わりないが…でも万事屋だけは気にいらねェ…
そんな事を考えているせいか、タバコの量も多くなる
「それでだなぁ…ちょっと、トシ~聞いてる?」
「…ん?あー悪ィ、近藤さん。もう一回言ってもらっていいか?」
「トシ、お前どうかしたのか?何かちょっと様子がいつもと違うけど…?」
「土方さん、恋の病でさァ」
「おい、総悟!テメーは本気で殺されたいのか⁉︎」
「恋の病⁉︎そんなのは自分次第だ!貫けば、最後に愛は勝ってもんよ!」
「…いや、近藤さんに言われても説得力ないっつーか…」
土方は呆れ気味にため息をついた