第20章 空虚
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あれからどこをどう歩いてここにたどり着いたか知れねェ……
なぜだか俺は、あの日──
ナマエと一緒に見に行った桜の木がある場所へと来ちまっていた──
(結局、俺ァ──)
銀時は葉桜を仰ぎ見る。ザワザワと風に大きく揺れた緑が、ただ虚しく映る。
(俺ァまたアイツに──)
それは攘夷戦争での忘れがたき記憶──
「た、高杉!?」
奴の左目から血が滴り落ちる──それは、最強最悪の天人“黒夜叉”からの一太刀を受けたことを物語る。左目だけで済んだのが、奇跡とも言える。
「お前はあん時の──!?」
「銀時、テメーは手を出すな! コイツァ俺が──」
「うっせー! テメーは、もうすっこんでろ!」
しかし黒夜叉は予想以上に強く、俺と高杉、2人がかりであっても歯が立たなかった。
「クソっ……!」
その時だ。目の前に刃が迫り来るのが見えた。
ほんの少し油断した俺は、その一瞬の隙をつかれたようだ。このままだと、黒夜叉の攻撃を交わしきれそうにない事は、目に見えて分かった。
俺も終いか……そう思い、半ば諦め身構えた次の瞬間──
「……え?」
俺の目の前に映る景色に、大量の血を流し、倒れるナマエの姿があった。
「ナマエ……ナマエ──!」
「テメェー!」
俺が倒れたナマエに呼び掛ける傍ら、高杉はすぐさま黒夜叉に切りかかる。
その時ナマエが、かすかに言葉を発した。
「ぎ、んとき……だい、じょうぶ……?」
「はァ!? こんな時に何言ってやがんだお前は……俺は大丈夫だから、もう喋んな……」
「……よかった」
そう呟くと、ナマエは安心した表情を浮かべ、その後ピクリとも動かなくなった。
「ナマエ……?おい、ナマエ!?……クソっ」
高杉に続き黒夜叉に切りかかったが、軽くあしらわれるだけだった。
ナマエがこんな目に遭わされても、どうすることもできない状況に、俺はただ無心で刀を振り回した。