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「ひ、土方さん⁉︎」
あの瞬間、
ナマエをかばって自らが高杉の一太刀を受けたのだろうか……
目の前には背中から血を流し、倒れる土方の姿があった。
「え……どうして土方さんが⁉︎」
急にオロオロしだした
ナマエに、高杉はやや怪訝そうな表情を浮かべ、刀を鞘に収める。
「……元に戻っちまったみたいだな……やっぱりあの程度じゃ、記憶も一時的にしか戻せない……ってことか。やっぱりちゃんと殺らなきゃなァ」
ナマエにはさっきまでの冷酷さもなく、瞳も元の黒色に戻っていた。
「高杉ィー!」
銀時が叫んだその時、
ナマエの背後に万斉の姿があった。
万斉は
ナマエに刀を突きつけている。
「妙な真似はやめるでござるよ……ぬしの大切な者が血を流すことになるぞ?」
「テメェ……!」
銀時が歯を食いしばる。
また子も
ナマエに銃を構えている。
しかし
ナマエは、そんなことに構うことなく土方の名を呼び続けている。
その時、聞き覚えのある声が──
「銀ちゃ〜ん! 助けに来たアルよ!
ナマエは……
ナマエは大丈夫アルか⁉︎」
「銀さん、
ナマエさんは無事ですか⁉︎」
「おい、トシ⁉︎ 大丈夫か⁉︎ おい、トシ──!」
「この際土方さんは置いといて、テメェら……
ナマエに手を出すたァいい度胸だなァ……? 全員この俺がしょっぴいてやらァ!」
やって来たのは新八に神楽、そして真選組だ。
「余計な加勢が入ったでござるな……相手が奴らと真選組では、少々厄介でござるよ」
「晋助様、どうしますか⁉︎」
「晋助、ここは一度引くのが賢明ではござらんか? 後は春雨の雑魚どもに任せればいいでござるよ」
「クククっ、そうだな……」
高杉は高笑いを浮かべたかと思うと、不意に
ナマエを抱き寄せる。
「ちょっと、何する──」
そして、おもむろに口付ける。
「──ッ」
「
ナマエ……俺ァお前の記憶を取り戻し、いずれお前も俺の手に──」
そう耳元で告げると、春雨と入れ違いに姿を消した。
そしてすべての事の収集がついた後──
「土方さん、土方さん……!」
ナマエの呼び掛けに対し、土方がようやく目を覚ます。場所は病院の一室。
手当ては済んでいたのだが、なかなか意識が戻らない土方の事を、
ナマエはずっと看病していたのだ。
「
ナマエ……?」
「土方さん ……大丈夫ですか?」
「
ナマエ、お前は……? お前は大丈夫なのか……?」
「私なら、この通り大丈夫です! そんなことより──」
「良かった……お前が無事ならそれで……」
土方は安堵の表情を浮かべたかと思うと、再びゆっくりと瞳を綴じた。
一方の銀時達は、土方が意識を取り戻した事を聞いて安堵の表情を浮かべた。
「土方さん、とりあえず良かったですね……」
「当たり前ヨ! あのマヨはこんな事でくたばるたまじゃないネ!」
「そうだよね」
2人がそう話す中、銀時は1人その場を立ち去ろうとしていた。
「……銀さん?」
「銀ちゃん、どこ行くネ?」
「ちょっ、銀さん⁉︎ 血が出てますよ⁉︎ それも早く手当てしてもらわないと──」
「……お前ら悪いけど、ちょっと銀さん1人にしてくんない? ……いろんなことが一気に起こってて、柄にもなく頭ん中ぐちゃぐちゃなんだわ……」
「でも、銀さん──」
新八の声に振り返ろうともせず、銀時はその場を後にする。
あまりの変わりぶりに、新八もそれ以上声をかけることはしなかった。
「銀さん……1人にして、本当に良かったのかな?」
「新八、あんな天の邪鬼ほっとくヨロシ!」
「でも神楽ちゃん、今一番辛いのは銀さんなんじゃないの?」
「仮にそうだとしても、これは銀ちゃんの問題アル。だったら銀ちゃんがちゃんと話してくれるまで待つネ。それまでずっと待ってるアル」
「……そうだね」
去りゆく銀時の背中を見つめながら、新八と神楽は土方ところにいる、
ナマエの元へと向かった
つづく