第19章 過去
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刀を交えながら高杉は銀時に問いかける。
「銀時……お前、本当はもう気付いてるんだろ?」
「はァ⁉︎ いきなり何をぬかしやがる⁉︎」
「ナマエが、昨日今日知り合った奴じゃないってことを──」
「……ッ!」
銀時の動きが一瞬鈍る。その隙をつき、高杉は銀時の木刀を弾き飛ばした。
「そう……ナマエはあん時の……お前が惚れてたあの女だ!」
「な、何言ってやがんだ、アイツは──」
「死んだはず……だろ?」
そう言って高杉がクククっと高笑いを浮かべ、さらに続ける。
「生きてたんだよ、アイツは……すべての過去の記憶と引き換えにな」
「何、だと……⁉︎」
「俺ァナマエに何が起こったのか……その記憶をたどって何らかの情報を得たいと思ってなァ……」
「お前、アイツをどうするつもりだ……?」
「ナマエの記憶を呼び起こす……だが、それにはある条件が必要なんだよ」
そう言って高杉は、ジリジリ銀時に詰め寄る。
「それは、記憶を無くす直前の状況を再現すること……つまりあの時のような争いを引き起こし──」
高杉は、丸腰の銀時に刀を真っ直ぐ差し向ける。
「そして今回は銀時……お前が死ぬことだ!」
「へっ、やれるもんなら、やってみやがれ、コノヤロ──!」
「上等だ……」
高杉はニヤリと笑みを浮かべたかと思うと、一気に銀時へと切りかかった。
「い…嫌──ッ!」
ナマエの叫びがこだまする──そして、その直後にあることが起こった。
「先輩⁉︎ 武市先輩、どーしたんスか⁉︎……あれ? あの女はどこ行ったんスか⁉︎」
突然その場に血を流して武市が倒れている。
それを見目の当たりにしたまた子が慌てて顔を上げると、そこには冷酷な瞳見下ろすナマエの姿があった。
「動くな……」
「──ッ⁉︎」
また子が抵抗しようにも、喉元に刀を突きつけられているので、身動きが取れない。
仕方がなくなったまた子は、蚊の鳴く様な声で助けを求める。
「し、晋助様~!」
また子の声に、高杉がナマエの異変に気付く。
「アイツ……もしや記憶が蘇ったか……?」
「おいおい、よそ見してんじゃあねーよ!」
銀時は、間一髪に洞爺湖を拾い上げ、高杉の一打を受け止めており、無事ではあった。
「高杉ィ、ナマエの記憶を蘇らせて……それに何の意味があんだよ⁉︎」
「意味……?」
「そうだ! 今のナマエにとって、過去を蘇らせることが本当に必要かって聞いてんだよ⁉︎」
「高杉ィ──!」
その時、また子の元にいたナマエが高杉に向かって切りかかった。
しかし高杉は、それをいとも簡単に受け流す。
「ナマエ……やっと思い出したか?」
「銀時から離れろ! あいつを傷付ける事は、この私が許さない!」
怒りに満ちたナマエの瞳は、薄い紫暗を帯びている。
それを目の当たりにした銀時は、動揺を隠しきれないでいた。
「ナマエ……お前──⁉︎」
「お前は、あん時から何も変わっちゃいめぇなァ」
高杉はナマエと刀を交えながらも話を続ける。
「あん時からお前の瞳に映っていたのは俺じゃねェ……最初から銀時だったんだな」
「──ッ!」
「俺ァはそいつが──」
そう言いかけたところで、高杉はナマエを突き放す。
「高杉、テメー!」
高杉に切りかかろうとする銀時の前にナマエが立ちはだかる。そして、前を見据えたまま口を開く。
「やめて、銀時は手を出さないで! これは私の問題……あなたには関係のない事──」
「でも、お前……」
そんな銀時の言葉に構わず、ナマエが再び高杉に切りかかる。
しかし体勢的にどうしても押されてしまい、太刀が弾き返される。
「……ッ」
「ナマエ……お前ごときの柔な腕じゃ、俺は倒せねーよ……?」
一方、万斉と戦っていた土方は、ナマエの様子がおかしいことに気づき始めていた。
「ナマエ……?」
「よそ見とはずいぶん余裕でござるな」
隙を見せた土方に、万斉が容赦なく切りかかる。
しかし、ナマエの様子が気になる土方は、万斉の攻撃をかわしながらナマエの元へと駆け寄った。
そこで土方が目にしたのは、銀時をかばうかのように高杉の前に立ちはだかるナマエの姿。
「ナマエ! お前、何してやがんだ⁉︎」
土方の声はナマエには届いていない。
「一体どーなってんだ⁉︎ おい、万事屋! てめーはそこで何やってんだ⁉︎ おい、ナマエ──!」
土方が叫んだ次の瞬間、ナマエが持っていた刀が高く宙を舞い──
そして高杉が、一気攻め入る光景が目に飛び込んできた。