第17章 金魚すくい
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そんな事とはつゆ知らず──とりあえず4人は祭りの会場へとやって来た。早速神楽がはしゃぎ始める。
「あっ、綿飴欲しいアル! あと、たこ焼きも食べたいアル! それと──」
「ち、ちょっと神楽ちゃん、待ってってば!」
「おいおい、おこずかいは300円までだからな。それ以上はあげねーかんな…って、聞いてんのか、コノヤロー!」
銀時の忠告など、聞こえているわけもなく……神楽は、どんどん先へと歩いて行ってしまう。
それに何とかついて行く新八。そしてその後を、銀時とナマエが2人並んで歩く。
「ったく、あいつら……」
「たまにはいいじゃないですか!……あっ!」
ナマエが向かいから歩いてくる人にぶつかりそうになる。その瞬間、銀時がグイッと腕を取り、自分の方に引き寄せる。
「す、すみません……! 結構人多いですね……神楽ちゃんたちも随分先に行っちゃいましたし──」
「じゃあ、こうすれば良くない? 逸れねーよによォ……?」
そう言った銀時が、ナマエの前に左手を差し出す。
「え……」
「え? じゃなくて、ほら──こう……だろ?」
「あ……」
銀時がナマエの手を掴む。その手の温もりを感じながら、ナマエは鼓動が少し早くなるのを感じた。
銀さんになんてもうトキメかないって決めたのに……
でも、身体は正直なのかもしれない。
銀さん……本当は私の事、どう思ってるのかな……?
そう思いながら、ナマエは横目で銀時を見据える。その視線に気付いたのか……銀時がナマエに目を向ける。
「……ん?」
「えっ、…………」
ナマエが思わず顔を背ける。その様子を目の当たりにした銀時がため息を漏らす。
そして、声色低く問いかける。
「俺とは……手を繋ぐのも嫌か?」
「えっ、べ、別にそんな事はないですけど……」
「そっか……」
銀時がどこかやるせない表情を浮かべながら呟く。
その時、向こうの方から神楽の呼びかけが聞こえる。
「銀ちゃ~ん、ナマエ~、今すぐ来るアル!」
「あっ、神楽ちゃんが呼んでますよ! 早く行きましょう!」
「あ、あぁ」
2人は足早に神楽たちの方へと向かう。
そして、4人は再びあちこち祭りの出店を見て回った。
***
ある程度見て回った後、神楽がとある店の前で立ち止まる。
「これしたいアル!」
「これって……金魚すくい?」
「うん! 銀ちゃん、お金ちょーだい!」
「お前またかよ⁉︎ もうとっくに300円以上使ってんだけど……」
「今日ぐらいケチケチすんなヨ! いつもタダ働きさせられてるネ。労働基準局に訴えるアルよ!」
「分かったよ、うっせーなァ〜、ここぞとばかりに言いやがってよォ………おやじ、2人分頼むわ」
「えっ、2人分って……後1人は誰の分ですか? 新八くん?」
「違うアル! やるのはナマエネ!
「……えっ、わ、私⁉︎」
「遠慮はいらないネ! 銀ちゃんのおごりアル!」
ナマエの手を掴み、金魚が泳ぐ水槽の前へと歩み寄る。そしてポイを受け取り、早速2人は金魚すくいに挑戦した。
いきなりバシャッと勢いよく水につけた神楽は、さっそく網を破かしている。
「難しいアル……」
「神楽ちゃん、そんな闇雲に振り回してもすくえないよ? 確か角度をつけて、そーっとするんだよ」
2人の様子を後方から見ていた新八が声をかける。
「チッ……新八のくせに生意気アル……」
「おィィ〜〜! 新八のくせにってなんだよ⁉︎」
神楽と新八の小競り合いを尻目に、ナマエはひっそりと1匹の赤い金魚をすくい上げていた。
「あっ、やった!」
「お~、さすがナマエアル!」
嬉しそうに金魚を見つめる神楽に、ナマエがハイッと袋に入った金魚を差し出す。
「えっ、これ──」
「神楽ちゃんにあげるよ」
「いいアルか⁉︎」
「うん!」
「ありがとー!」
しかし銀時には、喜ぶ神楽を見つめるナマエの表情が、何処となく悲しげに映る。何故そんなにも憂いを宿しているのか──だが、それは単なる勘違いかもしれない。
そんな思いを飲み込みながら、銀時はいつもの調子で話しかける。
「お〜い、神楽~、お前袖見てみろ!」
「えっ……あ……」
金魚すくいに夢中になっていたからか……神楽の浴衣の袖が水浸しになっていた。
「ババアに怒られても知らねーぞ」
「あっ、私ハンカチ持ってるからこれで拭いたらいいよ!」
「ナマエ、ありがとネ!」
「……あれ?」
ナマエが持っていた巾着の中を探す……が、ハンカチがどこにも見当たらない。
「ナマエさん、どうかしましたか?」
「金魚柄のハンカチが見当たらないの……ちゃんと入れたはずなんだけど──どこかに落としてきちゃったのかな……? あれお気に入りなんだよね……私、ちょっと探してきます!」
「おいおい、探すっつったってよォ──」
「とりあえず来た道を辿ってみます」
「僕らも一緒に探しましょうか?」
「1人で大丈夫! それじゃあちょっと行っています!」
そう言い残し、ナマエは1人来た道を戻っていった。