ポッキーの日
その翌日の夜、別室にて。
「オズ!はい、あーん」
「はぁ?」
ダブルサイズのベッドに寝そべりながら魔術式の研究に精を出していた不知火班の魔術師オズヴァルドに、その弟子であり見習いのミロクが件の菓子を差し出した。チョコのついた先端を向けるその仕草は奇しくも前日の空乃と同じものだったが、2人がそれを知るはずもない。
ちなみにミロクが手にしているそのポッキーは、空乃から譲り受けたものだったりもするのだが。
「空乃さんが、俺はもう2度とポッキーゲームなんかやらないから、貰ってくれると助かるって」
「ぽっきー……あぁ、あれか」
オズヴァルドの脳裏には茜が思い出したのと同様の記憶――つまりはトアが漏らした言葉と、その詳しいルールについて彼女に教えを請うていて空乃の姿が浮かんでいた。話の内容で大体予想はついていたが、やはり空乃の思惑は外れたのかと結論付ける。はたから見てもそうとわかるほど茜の顔が大好きな空乃のことだ、きっと自滅だろう、と。その予想はほとんど当たっていたが、オズは自分の弟子の前でそれを言葉にする気にはならなかった。
「はい、あーん」
「……ん」
もう一度ポッキーを差し出したミロクに、オズは少し迷ってからおとなしく従った。他人であればふざけるな何の冗談だと魔力弾の一発でも威嚇射撃するところだが、ミロクに限っては冗談などではないことも、完全に素であることも彼は良く知っていた。
ビター味とはいえ普段甘いものなど口にしないオズヴァルドにとっては十分なほどに甘い味が、口内に広がる。疲れた脳が少し癒されたような錯覚を覚えながら、彼は自身の横あたりのスペースをぽんぽんと示す。意図を汲んだミロクが何処か嬉しそうにベッドに腰掛けて別のポッキーを加えるのを横目に、彼は再び魔術書へと視線を落とす。ミロクは彼に倣ってそれを覗き込みながら、ぽつりと呟いた。
「でも、ぽっきーげーむってなんだろうね」
無論、オズヴァルドはその答えを知っていた。知っていた、のが。原初の黒魔術師にして全知と謳われる彼は、平然とこう応えた。
「さぁな」
「オズ!はい、あーん」
「はぁ?」
ダブルサイズのベッドに寝そべりながら魔術式の研究に精を出していた不知火班の魔術師オズヴァルドに、その弟子であり見習いのミロクが件の菓子を差し出した。チョコのついた先端を向けるその仕草は奇しくも前日の空乃と同じものだったが、2人がそれを知るはずもない。
ちなみにミロクが手にしているそのポッキーは、空乃から譲り受けたものだったりもするのだが。
「空乃さんが、俺はもう2度とポッキーゲームなんかやらないから、貰ってくれると助かるって」
「ぽっきー……あぁ、あれか」
オズヴァルドの脳裏には茜が思い出したのと同様の記憶――つまりはトアが漏らした言葉と、その詳しいルールについて彼女に教えを請うていて空乃の姿が浮かんでいた。話の内容で大体予想はついていたが、やはり空乃の思惑は外れたのかと結論付ける。はたから見てもそうとわかるほど茜の顔が大好きな空乃のことだ、きっと自滅だろう、と。その予想はほとんど当たっていたが、オズは自分の弟子の前でそれを言葉にする気にはならなかった。
「はい、あーん」
「……ん」
もう一度ポッキーを差し出したミロクに、オズは少し迷ってからおとなしく従った。他人であればふざけるな何の冗談だと魔力弾の一発でも威嚇射撃するところだが、ミロクに限っては冗談などではないことも、完全に素であることも彼は良く知っていた。
ビター味とはいえ普段甘いものなど口にしないオズヴァルドにとっては十分なほどに甘い味が、口内に広がる。疲れた脳が少し癒されたような錯覚を覚えながら、彼は自身の横あたりのスペースをぽんぽんと示す。意図を汲んだミロクが何処か嬉しそうにベッドに腰掛けて別のポッキーを加えるのを横目に、彼は再び魔術書へと視線を落とす。ミロクは彼に倣ってそれを覗き込みながら、ぽつりと呟いた。
「でも、ぽっきーげーむってなんだろうね」
無論、オズヴァルドはその答えを知っていた。知っていた、のが。原初の黒魔術師にして全知と謳われる彼は、平然とこう応えた。
「さぁな」