このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

【鉄道擬人化】いつだって。

「なぁ本線?」
ある日の堀ノ内駅。久里浜はぶっきらぼうにそう言うと、私の方をちらりと見た。
「どうしたの?」
私がそう言うと、久里浜は珍しく俯きがちに呟く。
「…なんかさ、お前と二人でここにいるの久しぶりだよな」
「…うん、そうだね」
私は久里浜の言葉に小さく頷いた。すると久里浜は顔を上げ、走り行く列車に視線を向けた。それから言う。
「ここにいるとなんか安心する」
「…」
「俺が久里浜線でお前が本線だってしっかり実感出来るだろ?」
「…ふーん」
「それとさ」
不意に久里浜が言葉を止めたので、私はその横顔に目をやった。
「…久里浜…?」
「…おかしいよな、俺って…何なのかわかんない…」
久里浜が再び俯いたのを見て、私は呟く。
「…京急久里浜線」
「なぁ、そうなのかな、本当に俺そうなのかな、本線」
「…」
久里浜の声は震えていた。私は少ししてから彼のその髪を梳き、言った。
「髪さ、ちょっと伸びたんじゃない」
「…なんで」
「顔、見えないから」
「…そう」
久里浜は少し複雑そうにそう呟いた。私はそのまま久里浜の頬を撫でると、静かに笑う。
「いいよ、私。久里浜のことならどんなことだって受け入れるから」
「本当かよ」
「うん、ほんとだよ」
行き交う赤い列車を眺めていた。私は京急本線、君とずっと一緒にいるからね。
1/1ページ
スキ