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【鉄道擬人化】Pride of the MAIN LINE

ほのかに春の香りが漂う駅で、彼はまっすぐと線路の向こうを見つめていた。
「貴方は明日がどこにあるかわかりますか」
表情一つ変えずに言った彼の横顔は眩しかった。俺は俯きつつ言う。
「お前にはわかるのか」
「…僕にはわかりません。だが貴方ならわかるはずです。貴方は僕にないものを持っています」
頬を撫でる風が、彼のその伸び始めた黒髪を揺らした。何故だか、心が透き通っていく気がした。胸の奥に居座った黒い塊がだんだんと消えていく。
「お前は何故そんなことを言う?」
「…貴方がいなくては苦しいからだ」
「…」
入線してきた列車の音に掻き消されそうになりながら、彼はそう言った。しばらくの沈黙の後、俺は顔を上げて彼の背中を押した。
「行くんだ、今すぐに」
まっすぐとこちらを見つめる彼の瞳から目を逸らして、喉の奥から声を絞り出す。すると彼は少ししてから到着した列車に乗り込み、優しく笑って言った。
「僕はいつでも貴方の傍にいます」
「…っ…」
「何故なら」
その瞬間、彼の瞳から輝くものが零れ落ちたのを見た。
「僕は京成本線ですから」
「…ああ、わかってるよ」
俺だって、お前がいなかったら今ここに存在してないんだからな、本線。
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