最高にくだらない物語
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「で?」
『ん?』
食事も終えて一段落
なんて事にはならず、分かりやすく促され、こちらも分かりやすくおどけてみた
そんな私の心境なんて分かりきってる、とでも言わんばかりに舌打ちされたので、こちらも苦笑を零す
まぁ、そうなるだろうなぁとは思って居たんだけどね
『んー、ほんとに始まりは曖昧にしか覚えてない
多分小学校低学年の頃』
諦めて話し始めると、チラリ、とだけ視線を寄越して逸らす
視線は合わない
なので私も気にせず、視線を落としたまま話を続ける
あまり思い出したい物では無い
考えないように考えないように、心に蓋をして
誰かと親しくなったらこの隠していたモノがばれてしまいそうで怖くて人とは距離を取っていた
だって、こんなこと知ってしまったら困るでしょう?
どうにかしたいと思ってくれたとしても、その思いだけでどうにかなるモノでもない
だったら、抱え込んでしまった方が楽だった
『父は、始めは普通の人だった
大手企業でバリバリ働く営業マン、入社仕立ての頃から期待の新人ホープでずっとやって来た人
顔立ちも整っていたし、たぶんあまり生きてきた中で苦労知らずの優等生だったような人
母…、と呼びたくも無いけど便宜上
取り柄はその容姿と口の上手さ、愛嬌があって愛され上手なタイプ
ただ性格はねじ曲がってて、自分の容姿を自覚してるからか何なのか、自由にずっと遊んでいたかった人』
これだけ聞くと、絶対に交わらないような二人
何の因果か関係を結んでしまい、そうして私という存在が産まれた
『多分、子が出来たのは初めてでは無かったと思う
相手にばれる前に堕ろして、またふらり、と遊びに行くような人だから
だからあの女にとっては運悪く、妊娠がばれてしまって、結婚という鳥籠に入ることになった』
誰にも縛られず自由気儘に、好みの男に愛される人生
それをあの女は望んでいた
けれど、ずっとそう上手くいくはずも無く、遂に幸運が切れた
『始めの頃は、諦めて家族としてやっていこうとしてたんだと思う
薄ぼんやりとだけれど、まぁ、それなりに優しくされていた記憶があるから
けれど、根本は変わること無く悪癖が出てしまった
それが、小学生の頃』
ある程度手の掛からない子供だったと思う
料理は流石に一人では出来ないが、簡単なことならできるし、地頭は良かったと思う
そう言う面は父の器用さを引き継いだのであろう
勉強も、運動も、そこそこ
幼いながらに母親の愛情が離れて行っていることに気付いて、気を引きたくて何でも頑張っていたあの頃
今考えると馬鹿らしくて仕方ないけれど
『1年もしなかったと思う
あの女の浮気は早々にバレて、けれど悪びれること無く開き直ったの』
きっと一度結婚をして、身を固めたはいいけれど性に合わないと身を以て知ったのだろう
結局は一人の愛情では満足できないのだ、あの女は
『父にとって、この浮気は初めての挫折だったんだと思う
それに世間体を気にする人間で、離婚なんて端から頭に無かったと思う』
それがまた、問題だったんだけれど
問い詰めて、開き直った女に絶句して、けれど関係を終わらすことは出来ずズルズルと
『アイツは父の金を自由に使って遊び回るし、家をホテル代わりに男を連れ込むこともある
一応人には見られないように一緒に入ったりはしない狡賢さもあって、近所では今まで噂にならずに済んでる
父は家に寄りつかなくなって、仕事にのめり込むようになった
収入は増え、アイツは自由に使える金を手に入れる悪循環』
アイツが家に男を連れ込むことはそう多くなかったけれど
私が先に家に居ればわざとらしく大きな声で存在を主張し部屋から出てくるな、と釘を刺す
逆にアイツが先に家に居たら、私は家に寄りつかずアイツが消えた頃に家に帰る
そんな生活だった
小学校の高学年の頃にはあの女はもう家を使うことも無く、私も家事を覚えてほぼほぼあの無駄にデカい家で一人で生活していた
『ネグレクトは低学年から
父親からの暴力は多分、六年生とかだったかなぁ
中身は結構父似なんだけど、見た目が如何せんあの女にそっくりで
父からしたら、関わりたくない、見たくも無い人生の汚点であって
まぁ、そこからはお察しの通り』
話しすぎて疲れてしまった
渇いた口を潤すように水分を口に含めば、喉の引きつりも楽になったような錯覚
こんなに誰かと話したのは随分と久し振りなような気がする
まぁ、花宮くんは話してないけれど
『とまぁこんな感じかな、何か質問ある?』
「…運動は」
『運動…、あぁ、元々喘息だったんだけどこのストレスフルな環境で悪化しちゃってドクターストップ
あと、階段から突き落とされたとき結構ど派手に足をざっくりやっちゃって
神経傷付いたとかで、走ったりするのは出来なくなっちゃった』
肩を竦めて軽く言えば、再び舌打ちを貰う
何で舌打ち
苦笑していれば一度だけ視線が合って、また逸らされる
「クズだな」
『ホントにね』
救いようが無いよね、全く
小さく嘆息を吐けば、花宮くんは立ち上がりお茶を汲みに行く
話はこれで終わり、って事かなと時計を見遣れば結構それなりに良い時間になっていた
おぉ、時間の経過が早い
『花宮くん、明日も部活?』
「あぁ」
『まだ寝なくて良いの?』
「んな餓鬼じゃねぇ」
『体力勝負なのに凄いねぇ』
そう言えば、家に帰ってからも走り込みしてたよね
意外と頑張り屋さん
多分、それは人に見られたくないモノだろうから触れはしないけれど
『流石に連日ベッド借りるの悪いから私ここのソファーで寝るね』
運動バリバリやっている男の子を、狭いソファーに追いやる訳にはいかない
私はあまり眠らず動けるし、花宮くんと比べたらだいぶ小柄な方なので支障は少ない
まぁ、多少体は痛くなるのだろうけど
『と言うか、ソファー使っても大丈夫?』
「好きにしろ」
『好きにするー』
了承と言えない了承を貰ったため、立ち上がり使った食器類を片付ける
実はそのままにしていたので早く片付けないと汚れが落ちにくくなってしまう
髪を一纏めにして、花宮くんも持ってきてー、と投げかけながら勝手に食器洗いを開始する
連日食事を作って貰ったため、流石にこれくらいしないと忍びない
素直に食器を持ってきてくれた花宮くんは、そのままリビングを出て行く
そういや、部活終わって帰ってきたのにまだシャワーも浴びていないようだった
申し訳ない
恐らくそのままお風呂の用意をするのだろう、何ならシャワーで済ませるのかな
何て考えを肯定するように暫く戻って来なかった
うん、明日も部活だしそろそろ寝る準備する時間だよね、分かる
花宮くんが戻ってきた頃には私も食器洗いを終えていて
手にある私用だと思われる布団に、意外と面倒見が良いんだなー、なんて少々失礼なことを考える
「風呂」
『…沁みそうだなぁ』
「足裏はしっかり洗っとけよ」
『鬼―』
「何とでも言え」
『まぁ、ガラス踏んづけちゃったし仕方ないけどさー』
流石に湯船に浸かる勇気はないので、私もシャワーで済ませてしまおう
痛い、絶対に痛い
だって痛くないところがないんだもの
ため息を吐いて、大人しく浴室へ向かう
着替え一式は持ってきたので、昨日のように借りることをせずに済みそうだ
今できうる限りのスピードで手早く入浴を終えて(足はしっかり洗いました)、浴室を出るとそこには花宮くんが待ち構えていて
当たり前の様に抱き上げられたため、血の跡を付けずにリビングに戻ることが出来ました
うん、分かってたけど洗ったら流血するよね
血行も良くなるし、当たり前だよね
ホント効率重視だよね、花宮くん、無駄な仕事は増やしたくないってか、流石です
足裏以外は小さな擦過傷や切り傷なので、血は止まっているし気になるところ以外は何も貼らずに様子見
殆どは痣となっているのでこれと言った処置も無く
用意されていた救急箱の中身を拝借して、足裏の手当てだけさっさと済ませる
うん、体柔らかくて良かった
このリビングのソファーはどうやらソファーベッドだったようで、お風呂に行っている間に準備してくれていた模様
うん、ホントに面倒見いいね?
『花宮くん』
「あ?」
『怖いよ』
「…何だ」
『いろいろありがとう、なんだか少し、気持ちが楽になった気がするよ』
「…何も解決してねぇけどな」
『まぁ、それでも
あの家に居ないって言うだけで、これだけ楽なんだから』
「人ん家で楽になるなよ」
『ほんとそれね』
くすくす、と笑うと呆れたようにため息を吐いてリビングを出て行く
それを見て私も大人しく横になると、花宮くんの手によって落とされる照明
気遣いが感じられるこの態度に、布団を被って苦笑する
本来彼はこんなに気遣うような人では無いはずなのに
初日だから特別サービスなのかな、後が怖い
なんて冗談でおどけてみながら瞼を落とす
睡魔はやってこない
この身に暗く付き纏う
(どうしたって変えられないもの)
『ん?』
食事も終えて一段落
なんて事にはならず、分かりやすく促され、こちらも分かりやすくおどけてみた
そんな私の心境なんて分かりきってる、とでも言わんばかりに舌打ちされたので、こちらも苦笑を零す
まぁ、そうなるだろうなぁとは思って居たんだけどね
『んー、ほんとに始まりは曖昧にしか覚えてない
多分小学校低学年の頃』
諦めて話し始めると、チラリ、とだけ視線を寄越して逸らす
視線は合わない
なので私も気にせず、視線を落としたまま話を続ける
あまり思い出したい物では無い
考えないように考えないように、心に蓋をして
誰かと親しくなったらこの隠していたモノがばれてしまいそうで怖くて人とは距離を取っていた
だって、こんなこと知ってしまったら困るでしょう?
どうにかしたいと思ってくれたとしても、その思いだけでどうにかなるモノでもない
だったら、抱え込んでしまった方が楽だった
『父は、始めは普通の人だった
大手企業でバリバリ働く営業マン、入社仕立ての頃から期待の新人ホープでずっとやって来た人
顔立ちも整っていたし、たぶんあまり生きてきた中で苦労知らずの優等生だったような人
母…、と呼びたくも無いけど便宜上
取り柄はその容姿と口の上手さ、愛嬌があって愛され上手なタイプ
ただ性格はねじ曲がってて、自分の容姿を自覚してるからか何なのか、自由にずっと遊んでいたかった人』
これだけ聞くと、絶対に交わらないような二人
何の因果か関係を結んでしまい、そうして私という存在が産まれた
『多分、子が出来たのは初めてでは無かったと思う
相手にばれる前に堕ろして、またふらり、と遊びに行くような人だから
だからあの女にとっては運悪く、妊娠がばれてしまって、結婚という鳥籠に入ることになった』
誰にも縛られず自由気儘に、好みの男に愛される人生
それをあの女は望んでいた
けれど、ずっとそう上手くいくはずも無く、遂に幸運が切れた
『始めの頃は、諦めて家族としてやっていこうとしてたんだと思う
薄ぼんやりとだけれど、まぁ、それなりに優しくされていた記憶があるから
けれど、根本は変わること無く悪癖が出てしまった
それが、小学生の頃』
ある程度手の掛からない子供だったと思う
料理は流石に一人では出来ないが、簡単なことならできるし、地頭は良かったと思う
そう言う面は父の器用さを引き継いだのであろう
勉強も、運動も、そこそこ
幼いながらに母親の愛情が離れて行っていることに気付いて、気を引きたくて何でも頑張っていたあの頃
今考えると馬鹿らしくて仕方ないけれど
『1年もしなかったと思う
あの女の浮気は早々にバレて、けれど悪びれること無く開き直ったの』
きっと一度結婚をして、身を固めたはいいけれど性に合わないと身を以て知ったのだろう
結局は一人の愛情では満足できないのだ、あの女は
『父にとって、この浮気は初めての挫折だったんだと思う
それに世間体を気にする人間で、離婚なんて端から頭に無かったと思う』
それがまた、問題だったんだけれど
問い詰めて、開き直った女に絶句して、けれど関係を終わらすことは出来ずズルズルと
『アイツは父の金を自由に使って遊び回るし、家をホテル代わりに男を連れ込むこともある
一応人には見られないように一緒に入ったりはしない狡賢さもあって、近所では今まで噂にならずに済んでる
父は家に寄りつかなくなって、仕事にのめり込むようになった
収入は増え、アイツは自由に使える金を手に入れる悪循環』
アイツが家に男を連れ込むことはそう多くなかったけれど
私が先に家に居ればわざとらしく大きな声で存在を主張し部屋から出てくるな、と釘を刺す
逆にアイツが先に家に居たら、私は家に寄りつかずアイツが消えた頃に家に帰る
そんな生活だった
小学校の高学年の頃にはあの女はもう家を使うことも無く、私も家事を覚えてほぼほぼあの無駄にデカい家で一人で生活していた
『ネグレクトは低学年から
父親からの暴力は多分、六年生とかだったかなぁ
中身は結構父似なんだけど、見た目が如何せんあの女にそっくりで
父からしたら、関わりたくない、見たくも無い人生の汚点であって
まぁ、そこからはお察しの通り』
話しすぎて疲れてしまった
渇いた口を潤すように水分を口に含めば、喉の引きつりも楽になったような錯覚
こんなに誰かと話したのは随分と久し振りなような気がする
まぁ、花宮くんは話してないけれど
『とまぁこんな感じかな、何か質問ある?』
「…運動は」
『運動…、あぁ、元々喘息だったんだけどこのストレスフルな環境で悪化しちゃってドクターストップ
あと、階段から突き落とされたとき結構ど派手に足をざっくりやっちゃって
神経傷付いたとかで、走ったりするのは出来なくなっちゃった』
肩を竦めて軽く言えば、再び舌打ちを貰う
何で舌打ち
苦笑していれば一度だけ視線が合って、また逸らされる
「クズだな」
『ホントにね』
救いようが無いよね、全く
小さく嘆息を吐けば、花宮くんは立ち上がりお茶を汲みに行く
話はこれで終わり、って事かなと時計を見遣れば結構それなりに良い時間になっていた
おぉ、時間の経過が早い
『花宮くん、明日も部活?』
「あぁ」
『まだ寝なくて良いの?』
「んな餓鬼じゃねぇ」
『体力勝負なのに凄いねぇ』
そう言えば、家に帰ってからも走り込みしてたよね
意外と頑張り屋さん
多分、それは人に見られたくないモノだろうから触れはしないけれど
『流石に連日ベッド借りるの悪いから私ここのソファーで寝るね』
運動バリバリやっている男の子を、狭いソファーに追いやる訳にはいかない
私はあまり眠らず動けるし、花宮くんと比べたらだいぶ小柄な方なので支障は少ない
まぁ、多少体は痛くなるのだろうけど
『と言うか、ソファー使っても大丈夫?』
「好きにしろ」
『好きにするー』
了承と言えない了承を貰ったため、立ち上がり使った食器類を片付ける
実はそのままにしていたので早く片付けないと汚れが落ちにくくなってしまう
髪を一纏めにして、花宮くんも持ってきてー、と投げかけながら勝手に食器洗いを開始する
連日食事を作って貰ったため、流石にこれくらいしないと忍びない
素直に食器を持ってきてくれた花宮くんは、そのままリビングを出て行く
そういや、部活終わって帰ってきたのにまだシャワーも浴びていないようだった
申し訳ない
恐らくそのままお風呂の用意をするのだろう、何ならシャワーで済ませるのかな
何て考えを肯定するように暫く戻って来なかった
うん、明日も部活だしそろそろ寝る準備する時間だよね、分かる
花宮くんが戻ってきた頃には私も食器洗いを終えていて
手にある私用だと思われる布団に、意外と面倒見が良いんだなー、なんて少々失礼なことを考える
「風呂」
『…沁みそうだなぁ』
「足裏はしっかり洗っとけよ」
『鬼―』
「何とでも言え」
『まぁ、ガラス踏んづけちゃったし仕方ないけどさー』
流石に湯船に浸かる勇気はないので、私もシャワーで済ませてしまおう
痛い、絶対に痛い
だって痛くないところがないんだもの
ため息を吐いて、大人しく浴室へ向かう
着替え一式は持ってきたので、昨日のように借りることをせずに済みそうだ
今できうる限りのスピードで手早く入浴を終えて(足はしっかり洗いました)、浴室を出るとそこには花宮くんが待ち構えていて
当たり前の様に抱き上げられたため、血の跡を付けずにリビングに戻ることが出来ました
うん、分かってたけど洗ったら流血するよね
血行も良くなるし、当たり前だよね
ホント効率重視だよね、花宮くん、無駄な仕事は増やしたくないってか、流石です
足裏以外は小さな擦過傷や切り傷なので、血は止まっているし気になるところ以外は何も貼らずに様子見
殆どは痣となっているのでこれと言った処置も無く
用意されていた救急箱の中身を拝借して、足裏の手当てだけさっさと済ませる
うん、体柔らかくて良かった
このリビングのソファーはどうやらソファーベッドだったようで、お風呂に行っている間に準備してくれていた模様
うん、ホントに面倒見いいね?
『花宮くん』
「あ?」
『怖いよ』
「…何だ」
『いろいろありがとう、なんだか少し、気持ちが楽になった気がするよ』
「…何も解決してねぇけどな」
『まぁ、それでも
あの家に居ないって言うだけで、これだけ楽なんだから』
「人ん家で楽になるなよ」
『ほんとそれね』
くすくす、と笑うと呆れたようにため息を吐いてリビングを出て行く
それを見て私も大人しく横になると、花宮くんの手によって落とされる照明
気遣いが感じられるこの態度に、布団を被って苦笑する
本来彼はこんなに気遣うような人では無いはずなのに
初日だから特別サービスなのかな、後が怖い
なんて冗談でおどけてみながら瞼を落とす
睡魔はやってこない
この身に暗く付き纏う
(どうしたって変えられないもの)