終わりさえあればそれでいい
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『これが、非現実的な真実です』
静かな声で語られた昔話が終えた頃には、用意していた紅茶は冷え切っていた
その残りを飲み干すと、瑛良は当たり前の様に新しいものを用意しに姿を消す
その様子を横目で見遣ると、こちらを凝視して居る彼等に向き直る
『何か、質問は?』
「勝手に消える、と言ったな?」
『えぇ、確かに』
「消えるのならば、復讐する必要は無かったんではないかい?そうなってしまうと彼女は輪廻転生の輪に戻ることは無いのだろう?」
『その通り、よく理解していますね
けれど、そうならない可能性も残されて居たのでそれならば、と
私達の手で終わらせたかった、と言う事もありますが』
「打開策があった、と」
『えぇ』
興味深そうに尋ねた赤司に、珠那は小さく頷き肯定する
そうして彼が求める答えを紡ぐために口を開く
『誰かを愛し、誰かに愛されること
そうすることで魂を共有することになり、この世界の人間だと、世界に認識されることになる
そうなるとこの世界に繋ぎ止められる』
『器、つまり肉体を与えられたと言う認識になってしまう
この世界の人間となってしまえば容易に手出しは出来なくなるし、この世界の輪廻転生に組み込まれる
精神体が砕け散り消えてしまえば、罰も与えられない
だからあたし等は、精神体を固定、罰を与えるために神に引き渡したって訳』
戻ってきた瑛良が珠那の言葉を引き継ぐようにして説明する
紅茶を目の前に置くと、珠那の隣に腰掛ける
「精神体を固定、ッスか?」
「それが、名前という呪い、ですか?」
『ご名答』
にんまり、と瑛良が笑みを浮かべて肯定する
その横で珠那も笑って首肯する
肯定はしたが、詳しい仕組みは聞いていないから分からないと肩を竦め、珠那も同意するように苦笑を浮かべた
「この世界の人間になったら何がメンドーなのー?」
気怠げに質問を投げかけてきたのは、紫原
質問をしておきながらも、あまり興味は無さそうな態度である
『イレギュラーが発生し、世界が歪んでしまう事になるようです
無から有を生み出してしまったことになってしまう
誰にでも、認めたくなくても決められた運命というものは存在するんです
でもそのイレギュラーに触れる事によって、その運命が変わってしまったら、どこかで帳尻合わせをしなければならない
本来は予定されていなかった不運に見舞われる人間が出てきてしまう』
『アイツはそのイレギュラーになる因子だった
あたし等は一応前世の記憶、ってのがあるけど転生という形でこの世界に生を与えられた訳だから、アイツほどのイレギュラーにはなり得ない、って事らしいよ』
「ふーん、俺からしたら十分イレギュラーだけどねー」
『そうでしょうね』
聞いておきながら何処か興味なさげに頷く紫原に、苦笑を零す
そうして、他に質問は?と問い掛ける
そう言われてもそう次から次へと質問が出てくる訳でも無く
そもそも、非現実的な事象を目にしたと言っても、それを現実として自身の中に落とし込むことさえ、難しくて
『まぁ、そう簡単には信じられんよなー
あたし等も自分の身に降りかかったから、そう言うもんだ、って納得したことにしてるけど』
『ふふ、まぁ仕方ない事ですよね』
『…てか、珠那
アンタいつまでその話し方な訳、気持ち悪い』
『あら、酷い
随分と様になってきたと思ったのですが』
『前を知ってるあたしからすれば、違和感しか無いわ、気持ち悪い』
『そう何回も気持ち悪いと言わなくても
まぁ言わんとすることも分かりますので…、今この場でだけ戻しましょうか』
そう言うと、その顔から笑みが消えた
この世界で作り上げた橙夜珠那が、消え失せた
足を組み、頬杖をついて赤司達を見遣る
つまらなさそうな、退屈そうな、そんな表情で他に質問は?と再度問い掛ける
『無いなら、さっさとここから立ち去ってくれないかな
ウチ、漸く復讐を終わらすことが出来て清々しいの
いつまでも君等の、辛気くさい顔なんて見ていたくないんだよね
あぁ、別に猫を被っていた事を他の人に話してもいいけどそんなボロ出すこと何て無いから、信じてもらえるか微妙だね
口止めはしないよ、人の口に戸は立てられないって言うし
復讐さえ終わってしまえば、ウチがこの性格貫く必要も無いしさ』
そう言って小さく笑う
今まで見てきた柔らかい綺麗な笑みでは無い、何処か人を馬鹿にしたような笑い方
長い髪を背中に流してどうでも良さそうに語る
「…復讐が終わった君達は、これから一体どうするつもりなんだい?
復讐のために、生まれてきたのだろう?」
『君には関係ないと思うけどな
けどそうだね、後の余生は地味に目立たず穏やかに生きたいもんだね
前は親より先に死ぬ、親不孝者だったわけだし寿命を全うするつもりだよ』
『だから、君達はもうあたし達に関わらないでね
あたし等のこれからを心配してくれるって言うなら、今まで通り他人として過ごしてくれりゃそれだけで良いから』
淡々と、淡々と、他人事のようにこれからの自分について語っていく
この世界での唯一の生きる意味
それを失ってしまったにも関わらず、全てがどうでもいいことのように、淡々と
「あの、緋雨さんについては…」
『明日になれば皆忘れてる
関わってしまったアンタ等を除いてね』
『だから君達に関わって欲しくなかったんだよねー
そうすりゃ、君等の中からもアイツの記憶が消えるわけで、此処の繋がりも無かったことになる
君達が味方であろうが、敵であろうが関係なかった
終わった後の処理が面倒かそうでないか、それだけの違いであったわけで
いっそ敵であったなら一緒に消すことが出来たのに』
『本人目の前にして消すとか言うなよ、お前』
『おっと、ごめんごめん
ウチ自分に正直に生きてるからさー』
冷たい空気が流れる
笑っているのに笑っていない珠那の笑顔
今まで見てきた笑顔からは考えられないその表情に、話しかけることすら憚られる
そんな雰囲気
「分かった、もう君達には関わらないと約束しよう」
『君が賢い子で良かったよ』
問題だった緋雨はもう居ない
彼等にとって、珠那達と関わることにもうメリットはないのだ
それをよく分かっている赤司は、関わってしまえばデメリットが生まれてしまう可能性も考慮し、珠那達の条件を飲むことに決めたのだ
交渉成立、とでも言うかの様に頷く2人
『私達に関われば、貴方達も狂気塗れになってしまうかもしれませんしね?』
「そう言う事だ
では、俺達はこの辺りで失礼することとしよう」
『えぇ、こんな狂気に満ちた舞台ならば、さっさと降りることをお勧めします
さようなら赤司くん、もう二度と交わることが無いことを願っています』
これにて舞台の幕は下りた
立ち去る彼等の背中を見送って、珠那は貼り付けていた笑みを取り払った
めでたし、とは言い難い終幕
それでもこれが彼女等の望んだ舞台
『これからちゃんと生きようね、瑛良
ウチ等が生きている限り、この名前が呼ばれ続ける限り、あの女が輪廻転生に舞い戻ってくることは無い
生きて、家族を持って、ウチ等の存在を覚えている人間が居なくなるまで、あの女に掛かった呪いは解ける事は無いのだから』
『それだけの長い時間を何も無い、たった一人の空間で、存在し続けなければいけないなんて、ホント拷問』
『いっそ殺して、と願うほどの地獄を
死神に騙されたまま、勝手に消えてしまえれば良かったのにね、優姫
ホント、貴女は愚か者』
『二度と巡り会わないことを願うよ、優姫
永遠にさようなら』
これにて物語は終結する
もう一回だけ祈るとすれば
(今度こそ、静かに、この生を終わらせたいだけ)
静かな声で語られた昔話が終えた頃には、用意していた紅茶は冷え切っていた
その残りを飲み干すと、瑛良は当たり前の様に新しいものを用意しに姿を消す
その様子を横目で見遣ると、こちらを凝視して居る彼等に向き直る
『何か、質問は?』
「勝手に消える、と言ったな?」
『えぇ、確かに』
「消えるのならば、復讐する必要は無かったんではないかい?そうなってしまうと彼女は輪廻転生の輪に戻ることは無いのだろう?」
『その通り、よく理解していますね
けれど、そうならない可能性も残されて居たのでそれならば、と
私達の手で終わらせたかった、と言う事もありますが』
「打開策があった、と」
『えぇ』
興味深そうに尋ねた赤司に、珠那は小さく頷き肯定する
そうして彼が求める答えを紡ぐために口を開く
『誰かを愛し、誰かに愛されること
そうすることで魂を共有することになり、この世界の人間だと、世界に認識されることになる
そうなるとこの世界に繋ぎ止められる』
『器、つまり肉体を与えられたと言う認識になってしまう
この世界の人間となってしまえば容易に手出しは出来なくなるし、この世界の輪廻転生に組み込まれる
精神体が砕け散り消えてしまえば、罰も与えられない
だからあたし等は、精神体を固定、罰を与えるために神に引き渡したって訳』
戻ってきた瑛良が珠那の言葉を引き継ぐようにして説明する
紅茶を目の前に置くと、珠那の隣に腰掛ける
「精神体を固定、ッスか?」
「それが、名前という呪い、ですか?」
『ご名答』
にんまり、と瑛良が笑みを浮かべて肯定する
その横で珠那も笑って首肯する
肯定はしたが、詳しい仕組みは聞いていないから分からないと肩を竦め、珠那も同意するように苦笑を浮かべた
「この世界の人間になったら何がメンドーなのー?」
気怠げに質問を投げかけてきたのは、紫原
質問をしておきながらも、あまり興味は無さそうな態度である
『イレギュラーが発生し、世界が歪んでしまう事になるようです
無から有を生み出してしまったことになってしまう
誰にでも、認めたくなくても決められた運命というものは存在するんです
でもそのイレギュラーに触れる事によって、その運命が変わってしまったら、どこかで帳尻合わせをしなければならない
本来は予定されていなかった不運に見舞われる人間が出てきてしまう』
『アイツはそのイレギュラーになる因子だった
あたし等は一応前世の記憶、ってのがあるけど転生という形でこの世界に生を与えられた訳だから、アイツほどのイレギュラーにはなり得ない、って事らしいよ』
「ふーん、俺からしたら十分イレギュラーだけどねー」
『そうでしょうね』
聞いておきながら何処か興味なさげに頷く紫原に、苦笑を零す
そうして、他に質問は?と問い掛ける
そう言われてもそう次から次へと質問が出てくる訳でも無く
そもそも、非現実的な事象を目にしたと言っても、それを現実として自身の中に落とし込むことさえ、難しくて
『まぁ、そう簡単には信じられんよなー
あたし等も自分の身に降りかかったから、そう言うもんだ、って納得したことにしてるけど』
『ふふ、まぁ仕方ない事ですよね』
『…てか、珠那
アンタいつまでその話し方な訳、気持ち悪い』
『あら、酷い
随分と様になってきたと思ったのですが』
『前を知ってるあたしからすれば、違和感しか無いわ、気持ち悪い』
『そう何回も気持ち悪いと言わなくても
まぁ言わんとすることも分かりますので…、今この場でだけ戻しましょうか』
そう言うと、その顔から笑みが消えた
この世界で作り上げた橙夜珠那が、消え失せた
足を組み、頬杖をついて赤司達を見遣る
つまらなさそうな、退屈そうな、そんな表情で他に質問は?と再度問い掛ける
『無いなら、さっさとここから立ち去ってくれないかな
ウチ、漸く復讐を終わらすことが出来て清々しいの
いつまでも君等の、辛気くさい顔なんて見ていたくないんだよね
あぁ、別に猫を被っていた事を他の人に話してもいいけどそんなボロ出すこと何て無いから、信じてもらえるか微妙だね
口止めはしないよ、人の口に戸は立てられないって言うし
復讐さえ終わってしまえば、ウチがこの性格貫く必要も無いしさ』
そう言って小さく笑う
今まで見てきた柔らかい綺麗な笑みでは無い、何処か人を馬鹿にしたような笑い方
長い髪を背中に流してどうでも良さそうに語る
「…復讐が終わった君達は、これから一体どうするつもりなんだい?
復讐のために、生まれてきたのだろう?」
『君には関係ないと思うけどな
けどそうだね、後の余生は地味に目立たず穏やかに生きたいもんだね
前は親より先に死ぬ、親不孝者だったわけだし寿命を全うするつもりだよ』
『だから、君達はもうあたし達に関わらないでね
あたし等のこれからを心配してくれるって言うなら、今まで通り他人として過ごしてくれりゃそれだけで良いから』
淡々と、淡々と、他人事のようにこれからの自分について語っていく
この世界での唯一の生きる意味
それを失ってしまったにも関わらず、全てがどうでもいいことのように、淡々と
「あの、緋雨さんについては…」
『明日になれば皆忘れてる
関わってしまったアンタ等を除いてね』
『だから君達に関わって欲しくなかったんだよねー
そうすりゃ、君等の中からもアイツの記憶が消えるわけで、此処の繋がりも無かったことになる
君達が味方であろうが、敵であろうが関係なかった
終わった後の処理が面倒かそうでないか、それだけの違いであったわけで
いっそ敵であったなら一緒に消すことが出来たのに』
『本人目の前にして消すとか言うなよ、お前』
『おっと、ごめんごめん
ウチ自分に正直に生きてるからさー』
冷たい空気が流れる
笑っているのに笑っていない珠那の笑顔
今まで見てきた笑顔からは考えられないその表情に、話しかけることすら憚られる
そんな雰囲気
「分かった、もう君達には関わらないと約束しよう」
『君が賢い子で良かったよ』
問題だった緋雨はもう居ない
彼等にとって、珠那達と関わることにもうメリットはないのだ
それをよく分かっている赤司は、関わってしまえばデメリットが生まれてしまう可能性も考慮し、珠那達の条件を飲むことに決めたのだ
交渉成立、とでも言うかの様に頷く2人
『私達に関われば、貴方達も狂気塗れになってしまうかもしれませんしね?』
「そう言う事だ
では、俺達はこの辺りで失礼することとしよう」
『えぇ、こんな狂気に満ちた舞台ならば、さっさと降りることをお勧めします
さようなら赤司くん、もう二度と交わることが無いことを願っています』
これにて舞台の幕は下りた
立ち去る彼等の背中を見送って、珠那は貼り付けていた笑みを取り払った
めでたし、とは言い難い終幕
それでもこれが彼女等の望んだ舞台
『これからちゃんと生きようね、瑛良
ウチ等が生きている限り、この名前が呼ばれ続ける限り、あの女が輪廻転生に舞い戻ってくることは無い
生きて、家族を持って、ウチ等の存在を覚えている人間が居なくなるまで、あの女に掛かった呪いは解ける事は無いのだから』
『それだけの長い時間を何も無い、たった一人の空間で、存在し続けなければいけないなんて、ホント拷問』
『いっそ殺して、と願うほどの地獄を
死神に騙されたまま、勝手に消えてしまえれば良かったのにね、優姫
ホント、貴女は愚か者』
『二度と巡り会わないことを願うよ、優姫
永遠にさようなら』
これにて物語は終結する
もう一回だけ祈るとすれば
(今度こそ、静かに、この生を終わらせたいだけ)
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