欠けた月のように生きて
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そんなやり取りから約一週間
つまりデート当日というわけではありますが、一応所謂初デートに分類される筈なのだが、緊張感のきの字もありません
なんかごめん、松川
そんなことを思いながら待ち合わせの場所までやって来て、携帯を取り出しメッセージを送ろうとして、その前に目当ての人物を見つける
デカいから目立つなー、なんて色気の無い感想を持って近寄る私は彼女としてどうなんだろう
向こうはまだ気づいて居ないようだ、と思うとちょっと悪戯心が湧いてしまうのは仕方ない
後ろからこっそり回り込んで、その背中に軽く体当たりをする
『おまたせ、早いね』
「一応初デートだし、待たせる訳にはいかないですからね?
普通に現れてくれないの?」
『お気遣いどーも
普通だと面白味がないでしょう?』
「初デートに面白味を求める意味とは」
なんていつもと変わらない軽口で笑い合う
振り返った松川は勿論見慣れた制服姿なんかでは無く、シンプルだけど清潔感のある、私達の年齢から考えたら大人しい、落ち着きがあると言っても過言で無いような服装
白のタートルネックに、茶の無地のパンツ、同系色の薄手のコート、と随分大人びた服装だ
でも、うん、確かに
『雰囲気変わるね』
「お互い様でしょ、外で会うの初なんだし」
『サラリーマンじゃなくて良かった』
「相変わらず歯に衣着せないね、桐谷は」
『今更じゃん』
「そうなんだけど」
『似合うね、格好いい』
「…感情籠もってないなー」
『そんなことも無いんだけどなー』
思った事をそのまま伝えたのだが、昔から感情が籠ってないと言われがちな私です
なんでかな、素直じゃないからかな、ならばしょうがない
チラリ、と時計を見た松川は恐らく電車の時間を確認したのだろう
予定よりは早く合流したものの、田舎の電車の本数の少なさを舐めてもらっては困る
結局は予定していた電車に乗ることになるだろう
そんな事を思いながらぼんやりと松川を見上げていると、視線に気づいたらしい松川と目が合う
小さく笑った松川は、以前と違い優しく頭に手を置く
うん、今日はしっかり髪作ってきたからな、犬のようには出来まい
ふふん、と少しだけ得意気になっていれば、考えていた事が伝わったのか笑われた
「あぁ、そうだ、桐谷
言い忘れてたんだけど」
『なに?』
「お洒落してきてくれてありがとう、似合ってるね可愛い」
さらり、となんて事ないとでも言うように爆弾を投下して
当たり前のように手を取られて、電車に乗り込むこととなった
…少々照れたことを、ここに白状しておきます
流石にそこまで女辞めてなかった様です
*****
そうして辿り着いた動物園
入園料はきちんと割り勘させて頂きました、私達まだ学生
バイトしている訳では無い、親のお金なのだから、無駄遣い駄目
久し振りに訪れるこの場所は、初めてでは無いはずなのに見方が変わる物なのか普通に楽しくって
少々子供っぽいだろうか、何て思っていたがそんなこともなかったみたいで安心したのはここだけの秘密
ふれあいコーナーではもふもふに癒やされた
そしてふれあっている子供達に更に癒やされた、何あれ可愛い
そしてそして、あまりにもその場に似合わない松川に笑わせて貰った(しかもめっちゃ寄ってくるんだよ、松川のとこに)
何てしてるとお昼時
混雑を避けた時間を選んで遅めの昼食
『ライオンの赤ちゃん、ホントぬいぐるみだった』
「あぁいう姿見ると猫科なんだよな、って思うよね」
『すぐに凜々しくなっちゃうの勿体ない』
「確かに」
『あのままでいて欲しい』
「それだと自然界では生き残れないね」
『私が養う』
「養うんだ、飼うんじゃなくて」
下らないやり取りに笑い合って、こう言う時間は好きだな、なんて漠然と思う
でもこの好きは、きっと松川と同じ熱量を持っていないから
簡単に口にするのは失礼な気がして、いつもはぐらかしてしまう
「この後どうする?」
『まだ見てないところあるからその辺り回って、お土産見たい』
「都筑さんに?」
『ん、唯依にはお世話になってるし
まぁ、唯依だけに渡すと水希が五月蠅いだろうから凪桜にも』
「想像出来た」
『でしょ?』
あの子は何にでも全力なんだよな
そこがあの子の長所なんだと言えばそうなんだけど
たまに鬱陶しくなるような絡みをしてくるのは止めてほしいと思う
言った所で無駄だと思うからもう諦めたけど
『…相変わらず食べるの早いね』
「桐谷が遅いだけじゃ無いの?岩泉の方が早いよ」
『掻き込んでそう』
「正解」
『丼が似合う』
「それも正解」
『あと、比較対象に流石に岩泉は無いと思う』
「その突っ込みが最後なんだ」
なんてくだらない事で笑いあって、楽しい事は楽しい
けれど、これはいつもと同じと言えば同じ事であって
確かに最初非日常感を味わったといえば味わったけれど、それだけ
進歩とも言えない進歩で、折角忙しい松川に合わせてもらってるのに申し訳無いと言う気持ちもあって
ままならないなぁ、なんて心の中で苦笑してみる
「桐谷」
『ん?』
「焦んないでね」
『…お見通しかよ』
「そりゃ見てきたからね、ずっと」
『…そう言う恥ずかしいことサラッと言わないで欲しい』
「やだよ、彼氏だから」
『…変わりようが怖い』
「怖くない怖くない」
楽しそうに笑う松川に、肩の力が抜ける
本当にこの人には頭が下がるばかりで、自分がちょっと情けない
けどまぁ、今更な事だし意識した所でどうにかなる問題でも無いのだし、ゆっくりやっていくしか無いことは事実で
松川が言うように、私が焦ったところで事態が好転するとも思えないのは誰がなんと言おうが火を見るより明らかである
「大丈夫、俺も楽しいよ」
『…何も言ってない』
「そうだったね」
なんて事ない、と言う風に穏やかに笑うから、変にこだわってる私の方が馬鹿らしくなって
こうして手探りで始まったこの関係なんだから、正解が直ぐに転がってくる訳では無い事はお互い最初から理解していたはずで
「さて、そろそろ行こうか」
『トラ見よう、トラ』
「猫科好きなの?」
『どうなんだろ、あんま考えたこと無かったかも』
確かにさっきからライオンとかトラとか、猫科ばっか言ってる気がする
チーターとかヒョウとかもかっこいいなぁって思うし
『…そうだね、好きなのかも』
よくよく考えてみれば、自分は何が好きで何が嫌いなのか、と言う事はあんまり考えたこと無かったかもしれない
好きなものが何か分かればそれを自覚して欲しくなったりするのだろうか
そうすればそれは欲となって、私の中に現れてくるのだろうか
あぁ、そうだね、難しく考えすぎて居たのかもしれない
好きな物は欲しい、それって普通のことなんじゃ無いかな
それからゆっくりと動物園全体を見て回り動物たちに癒やされたところでお土産コーナーである
さて、奴には何をやろうかなぁ
水希は取り敢えず食い物やっておけば文句は言うまい
けど、皆でお揃い、とか好きな奴だしなんか4つ入りのキーホルダーとか、シャーペンとか、そういう物あったらそれにしてもいいかもなぁ
『松川は部活のメンバーに何か買っていくの?』
「クッキーとかの大箱を持ってくかな」
『…及川が何か五月蠅そう』
「すっごい嫌そうな顔してるね、絡まれるの桐谷じゃないのに」
『何かあのウザ絡みを思い出すと何か嫌になる』
「何、及川嫌いなの?」
『嫌いと言うほどの感情も持っていない』
「言い方」
先にお土産を買いに行った松川を待たせるわけにもいかないのでなるべく早めに見繕う
考えていたように4つ入りのキーホルダーがあったので、これをアイツ等に配ろうと思う
そう決めて会計を済まし、2人揃って動物園を後にする
夕方、と言うにまはだ早く、解散するには少々早いかな、と感じるくらいの時間帯
微妙な時間になったなー、何て思いながらも2人揃って電車を待つ
「桐谷」
『ん?』
「まだ時間大丈夫?」
『うん、平気』
「今日漫画の新刊発売日でさ」
『あ、本屋行く?私も買いたい小説あったんだ』
「桐谷本好きだよね」
『…そうだね、好き』
しかも私、今はっきり買いたいって言ったしな
こうやって少しずつ色んな事整理していったら、今まで気付かなかったことに気付くかもしれないな
そんなことを考えながら2人で本屋に向かって、お互い欲しいものを購入して
そこで時間を潰していたらそれなりにいい時間になるという物で
本屋って何でこんな時間の経過が早くなるんだろう
そうしてそのまま解散、の流れになったんだけど
「あ、そうだ桐谷」
『ん?』
「これ、貰ってくれる?」
そうして差し出されたのは、今回メインとなった赤ちゃんライオンのマスコット
チェーンも付いているので、キーホルダーとしても使えそうな、可愛らしい物
『…お揃い?』
「正解」
もう一つ松川の手には同じ物があって
…何か松川って、こういうこと恥ずかしげも無く出来るタイプの人だったんだ
なんて、今まで知らなかった一面が見えて少し新鮮
両手を出せばその上の置かれたマスコットは肌触りもよくて、可愛くて
これ松川も付けるのかな、なんて想像したら笑えてきてしまった
『松川には随分可愛いね』
「それは俺も思ったけど」
『けど?』
「それくらいした方があからさまでいいかなー、何て思いました」
『…それは見せつけると言う事?』
「そう言う事ですね」
そう言って少しだけ視線を逸らした松川に、恥ずかしくない訳では無いと言うことを知る
まぁ、そうだよね、普通に恥ずかしいよね
ごめんね、任せきりになってしまって
内心苦笑して、気付いたからには知らないフリも出来なくて
『松川』
「ん?」
『明日、付けてきてね』
「…裏切りは無しでお願いします」
『勿論』
約束と言うには言葉足らずな約束だけど
なんだかいつもと少しだけ違う雰囲気がくすぐったいけど、嫌いじゃ無い
こうやって少しずついつも通りを変えていけばきっと何か分かる気がする
少しだけ、ほんの少しだけ変わった気持ちが、教えてくれるから
どうしようもなく笑ってしまう
(不安も罪悪感も、貴方が笑ってくれるから)
つまりデート当日というわけではありますが、一応所謂初デートに分類される筈なのだが、緊張感のきの字もありません
なんかごめん、松川
そんなことを思いながら待ち合わせの場所までやって来て、携帯を取り出しメッセージを送ろうとして、その前に目当ての人物を見つける
デカいから目立つなー、なんて色気の無い感想を持って近寄る私は彼女としてどうなんだろう
向こうはまだ気づいて居ないようだ、と思うとちょっと悪戯心が湧いてしまうのは仕方ない
後ろからこっそり回り込んで、その背中に軽く体当たりをする
『おまたせ、早いね』
「一応初デートだし、待たせる訳にはいかないですからね?
普通に現れてくれないの?」
『お気遣いどーも
普通だと面白味がないでしょう?』
「初デートに面白味を求める意味とは」
なんていつもと変わらない軽口で笑い合う
振り返った松川は勿論見慣れた制服姿なんかでは無く、シンプルだけど清潔感のある、私達の年齢から考えたら大人しい、落ち着きがあると言っても過言で無いような服装
白のタートルネックに、茶の無地のパンツ、同系色の薄手のコート、と随分大人びた服装だ
でも、うん、確かに
『雰囲気変わるね』
「お互い様でしょ、外で会うの初なんだし」
『サラリーマンじゃなくて良かった』
「相変わらず歯に衣着せないね、桐谷は」
『今更じゃん』
「そうなんだけど」
『似合うね、格好いい』
「…感情籠もってないなー」
『そんなことも無いんだけどなー』
思った事をそのまま伝えたのだが、昔から感情が籠ってないと言われがちな私です
なんでかな、素直じゃないからかな、ならばしょうがない
チラリ、と時計を見た松川は恐らく電車の時間を確認したのだろう
予定よりは早く合流したものの、田舎の電車の本数の少なさを舐めてもらっては困る
結局は予定していた電車に乗ることになるだろう
そんな事を思いながらぼんやりと松川を見上げていると、視線に気づいたらしい松川と目が合う
小さく笑った松川は、以前と違い優しく頭に手を置く
うん、今日はしっかり髪作ってきたからな、犬のようには出来まい
ふふん、と少しだけ得意気になっていれば、考えていた事が伝わったのか笑われた
「あぁ、そうだ、桐谷
言い忘れてたんだけど」
『なに?』
「お洒落してきてくれてありがとう、似合ってるね可愛い」
さらり、となんて事ないとでも言うように爆弾を投下して
当たり前のように手を取られて、電車に乗り込むこととなった
…少々照れたことを、ここに白状しておきます
流石にそこまで女辞めてなかった様です
*****
そうして辿り着いた動物園
入園料はきちんと割り勘させて頂きました、私達まだ学生
バイトしている訳では無い、親のお金なのだから、無駄遣い駄目
久し振りに訪れるこの場所は、初めてでは無いはずなのに見方が変わる物なのか普通に楽しくって
少々子供っぽいだろうか、何て思っていたがそんなこともなかったみたいで安心したのはここだけの秘密
ふれあいコーナーではもふもふに癒やされた
そしてふれあっている子供達に更に癒やされた、何あれ可愛い
そしてそして、あまりにもその場に似合わない松川に笑わせて貰った(しかもめっちゃ寄ってくるんだよ、松川のとこに)
何てしてるとお昼時
混雑を避けた時間を選んで遅めの昼食
『ライオンの赤ちゃん、ホントぬいぐるみだった』
「あぁいう姿見ると猫科なんだよな、って思うよね」
『すぐに凜々しくなっちゃうの勿体ない』
「確かに」
『あのままでいて欲しい』
「それだと自然界では生き残れないね」
『私が養う』
「養うんだ、飼うんじゃなくて」
下らないやり取りに笑い合って、こう言う時間は好きだな、なんて漠然と思う
でもこの好きは、きっと松川と同じ熱量を持っていないから
簡単に口にするのは失礼な気がして、いつもはぐらかしてしまう
「この後どうする?」
『まだ見てないところあるからその辺り回って、お土産見たい』
「都筑さんに?」
『ん、唯依にはお世話になってるし
まぁ、唯依だけに渡すと水希が五月蠅いだろうから凪桜にも』
「想像出来た」
『でしょ?』
あの子は何にでも全力なんだよな
そこがあの子の長所なんだと言えばそうなんだけど
たまに鬱陶しくなるような絡みをしてくるのは止めてほしいと思う
言った所で無駄だと思うからもう諦めたけど
『…相変わらず食べるの早いね』
「桐谷が遅いだけじゃ無いの?岩泉の方が早いよ」
『掻き込んでそう』
「正解」
『丼が似合う』
「それも正解」
『あと、比較対象に流石に岩泉は無いと思う』
「その突っ込みが最後なんだ」
なんてくだらない事で笑いあって、楽しい事は楽しい
けれど、これはいつもと同じと言えば同じ事であって
確かに最初非日常感を味わったといえば味わったけれど、それだけ
進歩とも言えない進歩で、折角忙しい松川に合わせてもらってるのに申し訳無いと言う気持ちもあって
ままならないなぁ、なんて心の中で苦笑してみる
「桐谷」
『ん?』
「焦んないでね」
『…お見通しかよ』
「そりゃ見てきたからね、ずっと」
『…そう言う恥ずかしいことサラッと言わないで欲しい』
「やだよ、彼氏だから」
『…変わりようが怖い』
「怖くない怖くない」
楽しそうに笑う松川に、肩の力が抜ける
本当にこの人には頭が下がるばかりで、自分がちょっと情けない
けどまぁ、今更な事だし意識した所でどうにかなる問題でも無いのだし、ゆっくりやっていくしか無いことは事実で
松川が言うように、私が焦ったところで事態が好転するとも思えないのは誰がなんと言おうが火を見るより明らかである
「大丈夫、俺も楽しいよ」
『…何も言ってない』
「そうだったね」
なんて事ない、と言う風に穏やかに笑うから、変にこだわってる私の方が馬鹿らしくなって
こうして手探りで始まったこの関係なんだから、正解が直ぐに転がってくる訳では無い事はお互い最初から理解していたはずで
「さて、そろそろ行こうか」
『トラ見よう、トラ』
「猫科好きなの?」
『どうなんだろ、あんま考えたこと無かったかも』
確かにさっきからライオンとかトラとか、猫科ばっか言ってる気がする
チーターとかヒョウとかもかっこいいなぁって思うし
『…そうだね、好きなのかも』
よくよく考えてみれば、自分は何が好きで何が嫌いなのか、と言う事はあんまり考えたこと無かったかもしれない
好きなものが何か分かればそれを自覚して欲しくなったりするのだろうか
そうすればそれは欲となって、私の中に現れてくるのだろうか
あぁ、そうだね、難しく考えすぎて居たのかもしれない
好きな物は欲しい、それって普通のことなんじゃ無いかな
それからゆっくりと動物園全体を見て回り動物たちに癒やされたところでお土産コーナーである
さて、奴には何をやろうかなぁ
水希は取り敢えず食い物やっておけば文句は言うまい
けど、皆でお揃い、とか好きな奴だしなんか4つ入りのキーホルダーとか、シャーペンとか、そういう物あったらそれにしてもいいかもなぁ
『松川は部活のメンバーに何か買っていくの?』
「クッキーとかの大箱を持ってくかな」
『…及川が何か五月蠅そう』
「すっごい嫌そうな顔してるね、絡まれるの桐谷じゃないのに」
『何かあのウザ絡みを思い出すと何か嫌になる』
「何、及川嫌いなの?」
『嫌いと言うほどの感情も持っていない』
「言い方」
先にお土産を買いに行った松川を待たせるわけにもいかないのでなるべく早めに見繕う
考えていたように4つ入りのキーホルダーがあったので、これをアイツ等に配ろうと思う
そう決めて会計を済まし、2人揃って動物園を後にする
夕方、と言うにまはだ早く、解散するには少々早いかな、と感じるくらいの時間帯
微妙な時間になったなー、何て思いながらも2人揃って電車を待つ
「桐谷」
『ん?』
「まだ時間大丈夫?」
『うん、平気』
「今日漫画の新刊発売日でさ」
『あ、本屋行く?私も買いたい小説あったんだ』
「桐谷本好きだよね」
『…そうだね、好き』
しかも私、今はっきり買いたいって言ったしな
こうやって少しずつ色んな事整理していったら、今まで気付かなかったことに気付くかもしれないな
そんなことを考えながら2人で本屋に向かって、お互い欲しいものを購入して
そこで時間を潰していたらそれなりにいい時間になるという物で
本屋って何でこんな時間の経過が早くなるんだろう
そうしてそのまま解散、の流れになったんだけど
「あ、そうだ桐谷」
『ん?』
「これ、貰ってくれる?」
そうして差し出されたのは、今回メインとなった赤ちゃんライオンのマスコット
チェーンも付いているので、キーホルダーとしても使えそうな、可愛らしい物
『…お揃い?』
「正解」
もう一つ松川の手には同じ物があって
…何か松川って、こういうこと恥ずかしげも無く出来るタイプの人だったんだ
なんて、今まで知らなかった一面が見えて少し新鮮
両手を出せばその上の置かれたマスコットは肌触りもよくて、可愛くて
これ松川も付けるのかな、なんて想像したら笑えてきてしまった
『松川には随分可愛いね』
「それは俺も思ったけど」
『けど?』
「それくらいした方があからさまでいいかなー、何て思いました」
『…それは見せつけると言う事?』
「そう言う事ですね」
そう言って少しだけ視線を逸らした松川に、恥ずかしくない訳では無いと言うことを知る
まぁ、そうだよね、普通に恥ずかしいよね
ごめんね、任せきりになってしまって
内心苦笑して、気付いたからには知らないフリも出来なくて
『松川』
「ん?」
『明日、付けてきてね』
「…裏切りは無しでお願いします」
『勿論』
約束と言うには言葉足らずな約束だけど
なんだかいつもと少しだけ違う雰囲気がくすぐったいけど、嫌いじゃ無い
こうやって少しずついつも通りを変えていけばきっと何か分かる気がする
少しだけ、ほんの少しだけ変わった気持ちが、教えてくれるから
どうしようもなく笑ってしまう
(不安も罪悪感も、貴方が笑ってくれるから)
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