欠けた月のように生きて
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などとデートする事は一応決まったのだが、言っても松川は忙しい身
予定ならいくらでもこちらが合わせるが、なんせ松川には休みがないのである
まぁ、強豪と言われるバレー部のレギュラーとして在籍していればそれも仕方ないことだとは思うけど
だからと言って私が残念に思って落ち込む事はないから、想いの違いと言うのは大きいのだろう、申し訳ない
取り敢えず、家でやっていた課題や復習を学校でいつメンと終わらせて毎回部活の見学には行くようになったのだが(なんだかんだ、みんなバレー部に想い人がいるのもあって)
そう簡単に私の心境に変化も出るはずも無くて、と言うか出るならこの数十年間の内に変わっているわけで
うーん、巻き込んでしまった側からすれば、どうにかして何か変化がもたらされないモノか、なんて少し焦ってしまう
きっとそれを話せばゆっくりで良いと、松川はまた笑うのだろうけど
『お疲れ様』
「ありがとう」
『毎日ハードだねぇ』
「まぁ、好きでやってるからねぇ」
『やっぱ凄いと思う、私にはできない』
「好きな事なら出来るんじゃない?」
『……私って何が好きなんだろう』
「……さぁ?」
『…好きって難しい』
なんて生産性のない会話
そんなものは今までだってしていて、何ら変わりない光景
呟いた私に対して、松川は苦笑しながらも見つかればいいね、と優しい言葉
うん、良い奴
付き合ってると言う事を態々公言するタイプではお互い無いので、恐らくその事を知っている人間はごく一部、というかいつメンのみ
きっと気づかれていない事だろう
何というか説明が難しい関係だ
まぁ、事細かに成り行きを説明してやる必要は無いが、この年頃は根掘り葉掘り聞きたがるモノだ
気付かれていないならその方が良い
「あ、そうだ」
『んー?』
「来週、空いたよ」
『…デート?』
「そう、デート」
軽い調子で告げられた予定
先程も言ったが松川は忙しい身、休みがあるなら体の休養に充てて欲しいものだが、態々こう告げたと言う事は
『無理してない?』
「楽しみにしてたからね」
『…楽しみだったの?』
「そりゃいつもと違う格好と場所で会うんだから、楽しみでしょ」
『…松川にもそう言う感情ってあったんだね』
「失礼だな」
なんて良いながらも、柔らかく笑う
なるほど、松川だって年相応の男子高生だ、そういう物なのだろう
いくら見た目が少々老けていたとしても、大人びた受け答えをしていても、メンタルはそうではないと言うことなのだろう
なんて失礼なことを心の内で考えながら頷いていると、察しの良いコイツは人の心を読んだのかワシャワシャ、と犬にするみたいに頭を撫でられた
なぜバレたし
「どこか行きたいところある?」
『…仕返しですか』
「こういう所から始めて行くのも手かな、って」
『こう言う壁には、散々ぶち当たってきましたが打開できたことはありません』
「難しいね」
『えぇ、まったく、ほんとうに』
あまり感情の乗っていない声で同意すると、上から苦笑が降ってくる
困ってはいる、けれどどうしても解決しなければならない問題だという認識が私にはもう無くなっている
だって、こんなんでも今まで何とか生活できていたから
気付いた時には、私もこのままでは困るのでは無かろうかと試行錯誤したモノである
それを終えて現在だ
まぁ、お察しという奴で
「桐谷、嫌いなものは?」
『んー、嫌いとまでは行かないけど絶叫系は苦手
大人数で行くときは待機組になっても大して問題ないけど、2人だとちょっと支障をきたすよね』
「じゃあ、テーマパーク系はなしだね
水族館とか、動物園は?」
『嫌いじゃ無い、落ち着いてゆっくり出来る方が良い』
「じゃあ、そっち方面で考えて行こうか」
好きなもの、ではなく嫌いなものから攻めていくやり方は新しい
確かについ先程何が好きなのか分からないと言ったばかりだし、その方が良いのだろうけど
携帯を取り出して何やら検索し始めた松川を見上げる
…面倒だとは思わないのだろうか
優柔不断とはまた違う、この変わった性格は
私は面倒だとは思うが、もうそれを受け入れてしまっている
つい最近その事実を知って、それでも受け入れてくれて、この男には本当頭が下がる思いだ
良い奴だけに、申し訳ないと言う思いは払拭しきれない
「ん?」
『何でも無い、なんかよさげなとこあった?』
「どっちでもいい?」
『ん』
「ここなんてどう?最近ライオンの子供が生まれたんだって」
携帯を私が見える位置まで下ろしてくれて、検索画面を見せてくれる
そこにはぬいぐるみみたいなライオンの赤ちゃんの写真が表示されていて
『かわいー』
「こういうのは好き?」
『嫌いじゃ無い』
「天邪鬼」
『そんなんじゃ無いし』
くすくす、と上から楽しげな笑い声が降ってくる
ちょっとムッとして見上げれば、また犬みたいにグシャグシャに頭を撫で回されて
くっそ、今度のデートではそれが出来ないように髪の毛セットしてやる…
「じゃあ、ここで良い?」
『ん』
「じゃあ、来週の土曜日10時に最寄り駅でいい?」
『了解』
「オシャレしてきてね?」
『そっちこそ、高校生に見える格好してきてね』
「ほーう?言ってくれるね?」
『あ、ちょ、こら、そろそろホント止めろ!』
再び伸びてきた手から逃れるように身を捩る
完全に顔が悪戯っ子だ、なんと言うことだ
警戒して少し距離を取れば、ごめんごめん、と言う軽い謝罪
それ謝る気無い奴やん
そう思いながら元の位置に戻れば、乱れた髪を今度は丁寧な手つきで直されていく
言っとくけど、お前のせいだからな
けれど、こう言う時間は嫌いじゃ無い
だからこそ、あの日私はこの男の想いとやらを受け入れてみようと思ったのだろうか
居心地が良いこの空間を手放したくないと思ったのだろうか
それならばこれは、欲になるのでは無いだろうか
私自身、私の感情がよく分からない
好きとは一体どういう感情なのか、いや分かるには分かるのだが
「どうかした?」
『なんでもない
出掛けるの久しぶりだから、ちょっと楽しみ』
「桐谷は引き籠もりなの?」
『アウトドア派でない事は確かである』
「引き籠もりなんだね」
『否めない』
「否めないのかぁ」
確かに毎日部活に励んでいる人間とは掛け離れているかもしれない
何かをしたい、と思わないから、結局は出掛けないだけ
誘われたら大体は了承する
そもそも予定なんてモノはないし、遊ばないからお小遣いもそう減らないモノで
「出掛けるのは嫌い?」
『嫌いじゃ無い、出掛けたいと思わないだけ』
「…流石に生理的欲求くらいはあるよね?」
『眠たくなるし、お腹は減るよ』
「それは生理現象」
『…境界線はどこですか』
「難しい話になってきたね…」
なんて少し真面目ぶって言うけれど、目が合った時にはお互い吹き出してしまう
一体何の話をしているんだろうか、私達は
一緒に帰るこの時間、いつもより楽しくて、そして早い
こんな時間は、嫌いじゃ無い
「よろしければお手をどうぞ」
(不思議だね、貴方の手なら躊躇わずに取れるなんて)
予定ならいくらでもこちらが合わせるが、なんせ松川には休みがないのである
まぁ、強豪と言われるバレー部のレギュラーとして在籍していればそれも仕方ないことだとは思うけど
だからと言って私が残念に思って落ち込む事はないから、想いの違いと言うのは大きいのだろう、申し訳ない
取り敢えず、家でやっていた課題や復習を学校でいつメンと終わらせて毎回部活の見学には行くようになったのだが(なんだかんだ、みんなバレー部に想い人がいるのもあって)
そう簡単に私の心境に変化も出るはずも無くて、と言うか出るならこの数十年間の内に変わっているわけで
うーん、巻き込んでしまった側からすれば、どうにかして何か変化がもたらされないモノか、なんて少し焦ってしまう
きっとそれを話せばゆっくりで良いと、松川はまた笑うのだろうけど
『お疲れ様』
「ありがとう」
『毎日ハードだねぇ』
「まぁ、好きでやってるからねぇ」
『やっぱ凄いと思う、私にはできない』
「好きな事なら出来るんじゃない?」
『……私って何が好きなんだろう』
「……さぁ?」
『…好きって難しい』
なんて生産性のない会話
そんなものは今までだってしていて、何ら変わりない光景
呟いた私に対して、松川は苦笑しながらも見つかればいいね、と優しい言葉
うん、良い奴
付き合ってると言う事を態々公言するタイプではお互い無いので、恐らくその事を知っている人間はごく一部、というかいつメンのみ
きっと気づかれていない事だろう
何というか説明が難しい関係だ
まぁ、事細かに成り行きを説明してやる必要は無いが、この年頃は根掘り葉掘り聞きたがるモノだ
気付かれていないならその方が良い
「あ、そうだ」
『んー?』
「来週、空いたよ」
『…デート?』
「そう、デート」
軽い調子で告げられた予定
先程も言ったが松川は忙しい身、休みがあるなら体の休養に充てて欲しいものだが、態々こう告げたと言う事は
『無理してない?』
「楽しみにしてたからね」
『…楽しみだったの?』
「そりゃいつもと違う格好と場所で会うんだから、楽しみでしょ」
『…松川にもそう言う感情ってあったんだね』
「失礼だな」
なんて良いながらも、柔らかく笑う
なるほど、松川だって年相応の男子高生だ、そういう物なのだろう
いくら見た目が少々老けていたとしても、大人びた受け答えをしていても、メンタルはそうではないと言うことなのだろう
なんて失礼なことを心の内で考えながら頷いていると、察しの良いコイツは人の心を読んだのかワシャワシャ、と犬にするみたいに頭を撫でられた
なぜバレたし
「どこか行きたいところある?」
『…仕返しですか』
「こういう所から始めて行くのも手かな、って」
『こう言う壁には、散々ぶち当たってきましたが打開できたことはありません』
「難しいね」
『えぇ、まったく、ほんとうに』
あまり感情の乗っていない声で同意すると、上から苦笑が降ってくる
困ってはいる、けれどどうしても解決しなければならない問題だという認識が私にはもう無くなっている
だって、こんなんでも今まで何とか生活できていたから
気付いた時には、私もこのままでは困るのでは無かろうかと試行錯誤したモノである
それを終えて現在だ
まぁ、お察しという奴で
「桐谷、嫌いなものは?」
『んー、嫌いとまでは行かないけど絶叫系は苦手
大人数で行くときは待機組になっても大して問題ないけど、2人だとちょっと支障をきたすよね』
「じゃあ、テーマパーク系はなしだね
水族館とか、動物園は?」
『嫌いじゃ無い、落ち着いてゆっくり出来る方が良い』
「じゃあ、そっち方面で考えて行こうか」
好きなもの、ではなく嫌いなものから攻めていくやり方は新しい
確かについ先程何が好きなのか分からないと言ったばかりだし、その方が良いのだろうけど
携帯を取り出して何やら検索し始めた松川を見上げる
…面倒だとは思わないのだろうか
優柔不断とはまた違う、この変わった性格は
私は面倒だとは思うが、もうそれを受け入れてしまっている
つい最近その事実を知って、それでも受け入れてくれて、この男には本当頭が下がる思いだ
良い奴だけに、申し訳ないと言う思いは払拭しきれない
「ん?」
『何でも無い、なんかよさげなとこあった?』
「どっちでもいい?」
『ん』
「ここなんてどう?最近ライオンの子供が生まれたんだって」
携帯を私が見える位置まで下ろしてくれて、検索画面を見せてくれる
そこにはぬいぐるみみたいなライオンの赤ちゃんの写真が表示されていて
『かわいー』
「こういうのは好き?」
『嫌いじゃ無い』
「天邪鬼」
『そんなんじゃ無いし』
くすくす、と上から楽しげな笑い声が降ってくる
ちょっとムッとして見上げれば、また犬みたいにグシャグシャに頭を撫で回されて
くっそ、今度のデートではそれが出来ないように髪の毛セットしてやる…
「じゃあ、ここで良い?」
『ん』
「じゃあ、来週の土曜日10時に最寄り駅でいい?」
『了解』
「オシャレしてきてね?」
『そっちこそ、高校生に見える格好してきてね』
「ほーう?言ってくれるね?」
『あ、ちょ、こら、そろそろホント止めろ!』
再び伸びてきた手から逃れるように身を捩る
完全に顔が悪戯っ子だ、なんと言うことだ
警戒して少し距離を取れば、ごめんごめん、と言う軽い謝罪
それ謝る気無い奴やん
そう思いながら元の位置に戻れば、乱れた髪を今度は丁寧な手つきで直されていく
言っとくけど、お前のせいだからな
けれど、こう言う時間は嫌いじゃ無い
だからこそ、あの日私はこの男の想いとやらを受け入れてみようと思ったのだろうか
居心地が良いこの空間を手放したくないと思ったのだろうか
それならばこれは、欲になるのでは無いだろうか
私自身、私の感情がよく分からない
好きとは一体どういう感情なのか、いや分かるには分かるのだが
「どうかした?」
『なんでもない
出掛けるの久しぶりだから、ちょっと楽しみ』
「桐谷は引き籠もりなの?」
『アウトドア派でない事は確かである』
「引き籠もりなんだね」
『否めない』
「否めないのかぁ」
確かに毎日部活に励んでいる人間とは掛け離れているかもしれない
何かをしたい、と思わないから、結局は出掛けないだけ
誘われたら大体は了承する
そもそも予定なんてモノはないし、遊ばないからお小遣いもそう減らないモノで
「出掛けるのは嫌い?」
『嫌いじゃ無い、出掛けたいと思わないだけ』
「…流石に生理的欲求くらいはあるよね?」
『眠たくなるし、お腹は減るよ』
「それは生理現象」
『…境界線はどこですか』
「難しい話になってきたね…」
なんて少し真面目ぶって言うけれど、目が合った時にはお互い吹き出してしまう
一体何の話をしているんだろうか、私達は
一緒に帰るこの時間、いつもより楽しくて、そして早い
こんな時間は、嫌いじゃ無い
「よろしければお手をどうぞ」
(不思議だね、貴方の手なら躊躇わずに取れるなんて)