欠けた月のように生きて
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こんな展開になるとは、一体誰が想像出来ただろうか
ただ忘れ物を取りに戻っただけだったはずなのに
「おかえりー、まっつん
遅かったね?」
「あー、ちょっといろいろあってね」
「いろいろって何!?」
部活に戻り真っ先に食いついてきた及川は五月蠅いため放置
スルーして体育館に入り、ピンク頭を探す
正直、コイツにもあまり話したくはないけど、今日のことは俺の中では処理しきれないため、付き合ってもらおう
肩に手を回し、シュークリーム奢るから、と言えば何となく察したらしい花巻が「部活後な」と返す
察しが良くて助かります
まだギャンギャン騒いでいた及川は岩泉に沈められていた
もう少し落ち着きというモノを覚えたらいいと思う
それからは混乱する思考を無理矢理押さえつけ、考えないようにして部活に励んだ
予想外すぎる、ドラマのような展開
本来、彼女とこう言う関係になれたらもっと浮かれるモノだと思っていたが、事情が事情だった
しかも盗み聞きから発展したって言うんだからどうしようもない
そんなモヤモヤする気持ちを抱えながら部活を終わらせ、自主練をこなし、帰路につく
道中花巻に先程のことを話せば、目を見開いていた
「お前が琴羽ちゃん好きなことは知ってたけど…、それなんてドラマ?」
「俺が聞きたい」
「はー、にしたって高3にもなって初恋がまだとか、そんな子も居るんだなぁ」
「何か、もっと深刻そうだったけど」
「誰が琴羽ちゃんのハートを射止められるか、既に居るのか、って男共は盛り上がってんだけどな
そっかー、なんか大変そうだな」
「明日からの距離感に悩む」
「確かに
一応恋人って言う関係なんだし、友達の時のままの距離感ってのも変だし…
かといってそこら辺のカップルとはまた事情が違うからな
お試しというか、何というか…
まぁ、お前等元々距離近めだったけどな」
「そんなこと無いと思うけど」
「そう思ってんのはお前等だけだし」
「…取り敢えず、今日は帰ってから電話してみるわ」
「詳しく本人から聞くとこからな」
「それな」
結局結論は出なかったが、話が出来て少しすっきりした
思考も少しまとまり、すべきことも分かった
嫌なわけではないのだ
彼氏を飛んで旦那だった事には流石に驚いたが、嫌ではないのだ
普通に嬉しかった
旦那は彼氏と違って、そう簡単に終わらすことができない関係だし
そこまで深く考えていたかは知らないけど
そんな存在になってもいいと思ってくれてる事は素直に嬉しかった
けど、好きが分からないとは一体…?
人を好きになったことがある俺にはきっと、本当の意味で理解してあげることは出来ないだろうけど
でも、受け止める努力だけはさせていただきます
*****
お風呂から出ると、携帯が通知を知らせていた
恐らく松川で、今日のことについて質問されることは予想出来ていたので、電話する準備はバッチリだ
案の定電話しても平気か、と言う旨の内容だったので、問題ない、と返事しておく
長くなることも予想して、携帯の充電もバッチリだ、抜かりない
5分後、震えた携帯を手に取りベッドに腰掛ける
因みに電話なのは、話が長くなる場合はメールより電話の方がいいと以前私が言ったからだ
『もしもし』
《今平気?》
『今日は電話になることを見越して、夕飯もお風呂も宿題も済みです』
《流石》
『まぁ、主に私の問題ですからねぇ、ちゃんと説明します』
《お願いします》
多分、今日の反応を見る限り、話を全部聞いていたわけでは無いのだろう
結構長く話していたし、部活もあるので当たり前と言えば当たり前だが
『最初に聞くけど、どこから聞いてた?』
《…松川みたいな旦那がいいかなってとこ》
『なに、それなんてドラマ?』
《俺も聞きたい》
『そっかそっか、じゃあ最初から話すわ』
何とピンポイントなんでしょう
余計混乱しただろうなぁ、申し訳ない
そんなことを思いながら、本日二度目となる自身の欠陥について話す
内容は若干変わったかも知れないし、なるべく簡潔に話した為言葉足らずな所もあるが大体伝わっただろう
《なるほど…》
『だから、改めて言っておくね』
これからちょっと酷な事を言うことになるだろう
松川が私を好きだというのなら、これは事実であっても傷付くことだと思うから
それくらいの想像は出来る
理解は、出来ないけれど
『私は確かに松川のことが好きだけど、多分それは松川の好きと同じじゃないと思う
今後どうなるか、は分からないけど暫くは松川にもどかしい思いをさせることになるだろうし、嫌になることもあると思う
常識は弁えているつもりだけど、ホントに分かんないからズレてることもあると思う
嫌ならはっきり言って
私、松川のこと傷つけたいわけじゃ無いから』
告白されたことが無いわけじゃなかった
それでも一度も受けなかったのは、気持ちを返すことが出来ないと分かっていたから
付き合ってみればいい、と言われたこともある
相手のことを知らなくても、好きが分からなくても、知っていく内に好きになることもあると
一理ある、のは分かるんだ
でも告白されて私が感じたのはときめきとかそんな甘酸っぱいモノなんかじゃなくて
申し訳なさと、無理だ、と言う感情
向けられる熱量が、怖かった
一方通行な想いは、虚しいだけだ
後は純粋な疑問
好きって、どういう気持ちのことを言っているのだろう?
その疑問が浮かんだ時点で、『あ、やっぱり私には駄目なんだ』と言う現実を突きつけられてしまう
《…じゃあ、何で俺はOK出してくれたの?》
『そこは、私もちょっと疑問でね』
その純粋な質問に、思わず苦笑してしまう
この話を聞いたのならなんで、って思うのは自然なことだと思う
私だってきっと同じ事を思う
私だって理由ははっきり分かっていない
でも…
『松川の隣にいる自分が想像出来て、嬉しくなったから
ごめんね、変な理由で』
そう言って笑うと、機械越しの彼も笑ったようだ
さっきから変なことしか言っていないので今更な気もするけど
『多分、これ聞いたら普通の人はそれが好きって事だろって突っ込まれると思うけど
曖昧なんだ、物凄く
初めてのことで、こんな事もっと昔にみんな経験してしまっていることで誰も分かってくれない
恋愛をこんな堅苦しく考えている子だってきっと少ない
不安で、自信ないから、はっきり言えないのが申し訳ないけど』
《いいよ、桐谷
桐谷のペースでいい、ゆっくりでいいから》
『松川…』
《桐谷が人の気持ちも考えられない、自分の都合で人を振り回すような適当な人間じゃ無いこと、俺も知ってるから》
『…うん、ありがと』
《じゃあ、改めて明日から彼女としてお願いします》
『こちらこそよろしくお願いします、彼氏さん』
なんて冗談を言って通話を終える
そのまま後ろに倒れ込んで、腕で顔を覆う
変なことに巻き込んでごめん
松川の恋心を弄ぶ様なことをして、ホントに悪いと思っている
でも、初めてだったんだ
異性に心が揺れたこと
告白の場面で、笑うことが出来たのは、これが初めてで
自分勝手でごめん
自分の都合で振り回すような、都合のいい人間なんだよ私
でも、君を好きになってみたいと思ったこの気持ちは噓じゃ無いんだ
君を好きになることが出来たら、きっと幸せだって
そう思ってしまったんだ
手探りで探す君との未来
(ちょっとだけ、見えた気がしたんだ)
ただ忘れ物を取りに戻っただけだったはずなのに
「おかえりー、まっつん
遅かったね?」
「あー、ちょっといろいろあってね」
「いろいろって何!?」
部活に戻り真っ先に食いついてきた及川は五月蠅いため放置
スルーして体育館に入り、ピンク頭を探す
正直、コイツにもあまり話したくはないけど、今日のことは俺の中では処理しきれないため、付き合ってもらおう
肩に手を回し、シュークリーム奢るから、と言えば何となく察したらしい花巻が「部活後な」と返す
察しが良くて助かります
まだギャンギャン騒いでいた及川は岩泉に沈められていた
もう少し落ち着きというモノを覚えたらいいと思う
それからは混乱する思考を無理矢理押さえつけ、考えないようにして部活に励んだ
予想外すぎる、ドラマのような展開
本来、彼女とこう言う関係になれたらもっと浮かれるモノだと思っていたが、事情が事情だった
しかも盗み聞きから発展したって言うんだからどうしようもない
そんなモヤモヤする気持ちを抱えながら部活を終わらせ、自主練をこなし、帰路につく
道中花巻に先程のことを話せば、目を見開いていた
「お前が琴羽ちゃん好きなことは知ってたけど…、それなんてドラマ?」
「俺が聞きたい」
「はー、にしたって高3にもなって初恋がまだとか、そんな子も居るんだなぁ」
「何か、もっと深刻そうだったけど」
「誰が琴羽ちゃんのハートを射止められるか、既に居るのか、って男共は盛り上がってんだけどな
そっかー、なんか大変そうだな」
「明日からの距離感に悩む」
「確かに
一応恋人って言う関係なんだし、友達の時のままの距離感ってのも変だし…
かといってそこら辺のカップルとはまた事情が違うからな
お試しというか、何というか…
まぁ、お前等元々距離近めだったけどな」
「そんなこと無いと思うけど」
「そう思ってんのはお前等だけだし」
「…取り敢えず、今日は帰ってから電話してみるわ」
「詳しく本人から聞くとこからな」
「それな」
結局結論は出なかったが、話が出来て少しすっきりした
思考も少しまとまり、すべきことも分かった
嫌なわけではないのだ
彼氏を飛んで旦那だった事には流石に驚いたが、嫌ではないのだ
普通に嬉しかった
旦那は彼氏と違って、そう簡単に終わらすことができない関係だし
そこまで深く考えていたかは知らないけど
そんな存在になってもいいと思ってくれてる事は素直に嬉しかった
けど、好きが分からないとは一体…?
人を好きになったことがある俺にはきっと、本当の意味で理解してあげることは出来ないだろうけど
でも、受け止める努力だけはさせていただきます
*****
お風呂から出ると、携帯が通知を知らせていた
恐らく松川で、今日のことについて質問されることは予想出来ていたので、電話する準備はバッチリだ
案の定電話しても平気か、と言う旨の内容だったので、問題ない、と返事しておく
長くなることも予想して、携帯の充電もバッチリだ、抜かりない
5分後、震えた携帯を手に取りベッドに腰掛ける
因みに電話なのは、話が長くなる場合はメールより電話の方がいいと以前私が言ったからだ
『もしもし』
《今平気?》
『今日は電話になることを見越して、夕飯もお風呂も宿題も済みです』
《流石》
『まぁ、主に私の問題ですからねぇ、ちゃんと説明します』
《お願いします》
多分、今日の反応を見る限り、話を全部聞いていたわけでは無いのだろう
結構長く話していたし、部活もあるので当たり前と言えば当たり前だが
『最初に聞くけど、どこから聞いてた?』
《…松川みたいな旦那がいいかなってとこ》
『なに、それなんてドラマ?』
《俺も聞きたい》
『そっかそっか、じゃあ最初から話すわ』
何とピンポイントなんでしょう
余計混乱しただろうなぁ、申し訳ない
そんなことを思いながら、本日二度目となる自身の欠陥について話す
内容は若干変わったかも知れないし、なるべく簡潔に話した為言葉足らずな所もあるが大体伝わっただろう
《なるほど…》
『だから、改めて言っておくね』
これからちょっと酷な事を言うことになるだろう
松川が私を好きだというのなら、これは事実であっても傷付くことだと思うから
それくらいの想像は出来る
理解は、出来ないけれど
『私は確かに松川のことが好きだけど、多分それは松川の好きと同じじゃないと思う
今後どうなるか、は分からないけど暫くは松川にもどかしい思いをさせることになるだろうし、嫌になることもあると思う
常識は弁えているつもりだけど、ホントに分かんないからズレてることもあると思う
嫌ならはっきり言って
私、松川のこと傷つけたいわけじゃ無いから』
告白されたことが無いわけじゃなかった
それでも一度も受けなかったのは、気持ちを返すことが出来ないと分かっていたから
付き合ってみればいい、と言われたこともある
相手のことを知らなくても、好きが分からなくても、知っていく内に好きになることもあると
一理ある、のは分かるんだ
でも告白されて私が感じたのはときめきとかそんな甘酸っぱいモノなんかじゃなくて
申し訳なさと、無理だ、と言う感情
向けられる熱量が、怖かった
一方通行な想いは、虚しいだけだ
後は純粋な疑問
好きって、どういう気持ちのことを言っているのだろう?
その疑問が浮かんだ時点で、『あ、やっぱり私には駄目なんだ』と言う現実を突きつけられてしまう
《…じゃあ、何で俺はOK出してくれたの?》
『そこは、私もちょっと疑問でね』
その純粋な質問に、思わず苦笑してしまう
この話を聞いたのならなんで、って思うのは自然なことだと思う
私だってきっと同じ事を思う
私だって理由ははっきり分かっていない
でも…
『松川の隣にいる自分が想像出来て、嬉しくなったから
ごめんね、変な理由で』
そう言って笑うと、機械越しの彼も笑ったようだ
さっきから変なことしか言っていないので今更な気もするけど
『多分、これ聞いたら普通の人はそれが好きって事だろって突っ込まれると思うけど
曖昧なんだ、物凄く
初めてのことで、こんな事もっと昔にみんな経験してしまっていることで誰も分かってくれない
恋愛をこんな堅苦しく考えている子だってきっと少ない
不安で、自信ないから、はっきり言えないのが申し訳ないけど』
《いいよ、桐谷
桐谷のペースでいい、ゆっくりでいいから》
『松川…』
《桐谷が人の気持ちも考えられない、自分の都合で人を振り回すような適当な人間じゃ無いこと、俺も知ってるから》
『…うん、ありがと』
《じゃあ、改めて明日から彼女としてお願いします》
『こちらこそよろしくお願いします、彼氏さん』
なんて冗談を言って通話を終える
そのまま後ろに倒れ込んで、腕で顔を覆う
変なことに巻き込んでごめん
松川の恋心を弄ぶ様なことをして、ホントに悪いと思っている
でも、初めてだったんだ
異性に心が揺れたこと
告白の場面で、笑うことが出来たのは、これが初めてで
自分勝手でごめん
自分の都合で振り回すような、都合のいい人間なんだよ私
でも、君を好きになってみたいと思ったこの気持ちは噓じゃ無いんだ
君を好きになることが出来たら、きっと幸せだって
そう思ってしまったんだ
手探りで探す君との未来
(ちょっとだけ、見えた気がしたんだ)