欠けた月のように生きて
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「アンタってホント面倒臭いね」
「ちょ、はっきり言い過ぎ…」
『自覚してる』
「本人認めちゃ元も子もない!」
放課後、教室
出された宿題を片付けようと、所謂イツメンと教室に残り机を突き合わせているところ
ある程度終わりが見えて気が抜けたのか、恋愛体質の友人が例のごとく恋バナを始めた
今回の相手はバレー命で、女慣れしてなくて、硬派な男子らしい
つまり岩泉だろ、分かってる
ポジティブかつアクティブなコイツは、何度あしらわれようともめげずにアタックしているようだ
尊敬する、そのパッション
私を含め4人のこのグループ
1人は及川に片思い中で、もう1人は花巻と付き合っている
何故こんなにバレー部寄りなんだ、このグループは
因みに私を面倒臭い呼ばわりしたのは花巻の彼女である
はっきり物言う性格なのは知っているし、事実なので気にしていない
いっそ清々しい
「琴羽モテるのに、勿体ないよねー、そう言うトコ」
「琴ちゃんに彼氏居ないのってそう言う事情があったからなんだねぇ」
「琴は恋愛に興味ないのか、若しくは対象が男じゃないのかと思ってた」
『や、流石に対象は男にしといて』
興味がないのはあながち間違いではないので否定しない
恋愛は面倒臭いものだという認識が強く、倦厭して居るのも間違いじゃないし
ただ、花巻の彼女である唯依の恋愛は順調なようだし、幸せそうなので、面倒なだけじゃないと言うことも分かっているつもりだ
つもりというだけあって、実感したことないので分からない、と言うのが本音だが
「じゃあさ!
バレー部4人って結構タイプが違うじゃん?彼氏にするなら誰が一番琴のタイプに近い?」
『これ松川以外の名前言ったら修羅場るんじゃないの?大丈夫?』
「大丈夫、貴大は渡さないから」
『唯依カッコいい』
「ありがとう」
「まぁ、琴ちゃんが実際に好きな人って訳じゃないんだし、大丈夫じゃないかな?」
「そうそう!好きだったとしても負けないし!」
『アンタ等一々男前かよ』
何だコイツ等、格好良すぎか
世の中の男は、この男気を忘れている気がするよ、私
近年、男子が女々しいというのは有名な話だ
「で誰がタイプ?」
ニヤニヤ、と楽しそうな顔しているコイツは、岩泉に猛アタック中の水希
珍しい私の恋バナ(正確には違う)に、テンションが上がっているようだ
2割増しでウザい
『んー……
松川みたいな旦那がいいかな』
4人を思い浮かべて、真っ先に思いついた相手
一番交流があって、一番よく知る人物
好きが分からないから、タイプというのは特にない
けど、松川の隣にいるのは、とても居心地が良い
「……琴羽はたまにぶっ飛ぶよね、流石にびっくりした」
「琴ちゃん、彼氏飛ばして旦那さんかぁ…」
「それもまぁ、らしいけどね
コイツ将来見合い結婚するんじゃない?このご時世に」
「想像出来る…
取り敢えず、理由を聞こうじゃないか」
この手の話は基本的に受け身の唯依が乗ってくると言うことは、それだけ予想外な発言だったのだろう
多分、松川なのは予想していただろが、旦那とまで言われるとは思ってなかったのだろう
まぁ、突飛なことを言った自覚はあるがその前に私は“好き”が分からないと言っていた筈なのだが
凪桜も苦笑しているし、それだけ予想外だったのだろう
けど、私は最初から伝えていると思うのだが
『まず第一に、その4人の中で一番知っているのが松川であると言うこと』
「納得」
唯依の同意に2人が頷く
続けろ、と言外に告げられてそのまま口を開く
『次に、松川のことは人としてかなり好感を抱いていると言うこと』
「納得」
『次に、松川との沈黙は気まずくないし、一緒に居るのは居心地が良いと言うこと』
「…納得」
『最後に好きが分からない私からしたら、恋愛感情必須な恋人にはなれないけど、相性的なモノが優先される夫婦の方が容易だと思ったから』
「……言いたいことは分かった
だからといって飛びすぎだ、話が」
『すまん』
恋愛感情って分からないから、恋人関係になってしまうと相手を傷つけてしまうかもしれない
受け取った好きを、その人に返してあげることが出来ないから
でも、夫婦なら
その人のことが人として好きならば、一緒に居て苦痛にならない
相性が良ければ、喧嘩もなく、お互い楽に、それなりの幸せを手にすることが出来る
沈黙が気まずくないのって大事だと思うし、一緒に居て居心地が良いと思える相手となら問題ないと思う
と言うことを3人に話すと、微妙な顔をしつつも納得してくれた
ごめん、ホントに分かんないんだって
「琴って男子にドキドキしたことないの…!?」
『水希はどんなことでドキドキするの?』
「ウチ?ウチは目が合ったりとか、話が出来たときとか、ハイタッチだってドキドキするし」
『うんうん、水希は可愛いねぇ』
「ほんと水希はピュアだよねぇ」
「水希ちゃん、純情だもんねぇ」
「微笑ましいって顔するの止めようか!?」
「でもまぁ、片思いってそう言うもんじゃないの?凪桜」
「そうだねぇ
その人のことばっかり考えちゃうし、支えてあげたいと思うし、理解してあげたいかなぁ」
『ホント、及川にやるのが勿体ないよね、唯依さん』
「全力で同意」
なんて話していると段々話題が逸れていく
それはそれで構わないのだけれど、どうやらそうもいかないらしい
話を戻すように水希が声を荒げ、知らぬ間に軌道修正されていた
『まぁ、残念だけどそんな経験はないねぇ』
苦笑交じりにそう言えば、水希は不満ありげな顔
凪桜は苦笑し、唯依は呆れ顔
そろそろ帰ろう、と促すと、文句を言いながらも荷物を纏め始める
「唯依は今日花ちゃん待たない日ー?」
「何その花ちゃんって、今度呼んでやろう
待たない日ー」
「琴ちゃんのおかげで宿題も終わったしねぇ」
荷物を纏め終わり、それぞれ立ち上がる
4人揃って教室を出ようと扉を開けると、気まずそうな顔をした松川
ポーカーフェイスが得意な男だと思っていたが、話を聞いていたのだろう
完全に動揺が顔に出ている
「まっちゃんだ!話聞いちゃった?」
「あー、うん、なんかごめん」
「別に松川が謝るようなことじゃないでしょ
教室で話してたこっちも悪いんだし」
「及川君には内緒にしててね?」
「そりゃ勿論」
チラリ、とこちらを見る松川に、唯依が2人を引き連れて教室を出て行く
悪いね、と肩を竦めると、ヒラリと手を振って返してきた
だから男前かよ
「靴箱で待ってる」
『ありがと』
そのまま立ち去っていく3人を見送って松川を見上げるとちょっと照れくさそう
まぁ、あの話聞いてたらそうもなる、普通なら
聞かれて動揺していない私の方がおかしいのである
『勝手に盛り上がってごめんね
話振ってきたのは水希だから、文句あるならそっちにお願い』
「や、別に怒っては、ないけど」
『けど?』
「あー…」
ちょっと口ごもり、目を逸らす
言いにくそうに頭を掻き、困ったように笑ってまたこちらを見る
「これ、流されて言ってる訳じゃないからね?」
『松川がそんな半端な男じゃないことは知ってるよ』
「お前等ホント男前な」
どうやら男前なのはあの3人のみじゃなく、私も含まれるらしい
そんなことを思いながら、松川を見上げていると、意を決しように口を開く
「流石に旦那は荷が重いから、彼氏から初めていいデスか?」
『………、松川、私のこと好きだったの?』
「…まー、うん、そうなる」
『…何か無神経でごめん』
「いや、別にいいよ」
『どこから話聞いてたか知らないけど、私普通の彼女にはなれないよ?』
「俺も部活一色だし、普通の彼氏らしいこと出来ないよ」
びっくりしてマジマジと松川を見ていると、大きな手で目を隠された
隠される瞬間に見えた耳は赤くて、照れていると言うことがよく分かる
スマートなこの男の動揺した姿がなんだか可笑しくて、小さく笑った
『松川、月曜日は一緒に帰ろうね』
「おう…?」
『用事がない日は、アイツ等引き連れて部活見に行くね』
「…おう」
『あとはそうだなー
毎日じゃなくていいから、お昼ご飯一緒に食べるとこから始めてみる?』
「あとはおやすみメールとかかな」
『じゃあ、部活終わったら連絡ちょうだいね』
目を覆っていた手を取って笑いかける
苦笑に近い笑い方だったけど、松川も笑っていた
変な展開になっちゃったな
きっと、松川も同じ事思ってるだろうけど
『迷惑しか掛けないと思うけど、よろしくお願いします』
「…こちらこそ、よろしくお願いしマス」
そこで松川とは別れ、靴箱まで向かう
待っていてくれた3人に問い詰められ、先程の話をすると1人は呆れ、1人は目を輝かせ、1人は祝福してくれた
三者三様とはまさにこのこと
恋愛概論
(無いに等しい私の恋愛観)
「ちょ、はっきり言い過ぎ…」
『自覚してる』
「本人認めちゃ元も子もない!」
放課後、教室
出された宿題を片付けようと、所謂イツメンと教室に残り机を突き合わせているところ
ある程度終わりが見えて気が抜けたのか、恋愛体質の友人が例のごとく恋バナを始めた
今回の相手はバレー命で、女慣れしてなくて、硬派な男子らしい
つまり岩泉だろ、分かってる
ポジティブかつアクティブなコイツは、何度あしらわれようともめげずにアタックしているようだ
尊敬する、そのパッション
私を含め4人のこのグループ
1人は及川に片思い中で、もう1人は花巻と付き合っている
何故こんなにバレー部寄りなんだ、このグループは
因みに私を面倒臭い呼ばわりしたのは花巻の彼女である
はっきり物言う性格なのは知っているし、事実なので気にしていない
いっそ清々しい
「琴羽モテるのに、勿体ないよねー、そう言うトコ」
「琴ちゃんに彼氏居ないのってそう言う事情があったからなんだねぇ」
「琴は恋愛に興味ないのか、若しくは対象が男じゃないのかと思ってた」
『や、流石に対象は男にしといて』
興味がないのはあながち間違いではないので否定しない
恋愛は面倒臭いものだという認識が強く、倦厭して居るのも間違いじゃないし
ただ、花巻の彼女である唯依の恋愛は順調なようだし、幸せそうなので、面倒なだけじゃないと言うことも分かっているつもりだ
つもりというだけあって、実感したことないので分からない、と言うのが本音だが
「じゃあさ!
バレー部4人って結構タイプが違うじゃん?彼氏にするなら誰が一番琴のタイプに近い?」
『これ松川以外の名前言ったら修羅場るんじゃないの?大丈夫?』
「大丈夫、貴大は渡さないから」
『唯依カッコいい』
「ありがとう」
「まぁ、琴ちゃんが実際に好きな人って訳じゃないんだし、大丈夫じゃないかな?」
「そうそう!好きだったとしても負けないし!」
『アンタ等一々男前かよ』
何だコイツ等、格好良すぎか
世の中の男は、この男気を忘れている気がするよ、私
近年、男子が女々しいというのは有名な話だ
「で誰がタイプ?」
ニヤニヤ、と楽しそうな顔しているコイツは、岩泉に猛アタック中の水希
珍しい私の恋バナ(正確には違う)に、テンションが上がっているようだ
2割増しでウザい
『んー……
松川みたいな旦那がいいかな』
4人を思い浮かべて、真っ先に思いついた相手
一番交流があって、一番よく知る人物
好きが分からないから、タイプというのは特にない
けど、松川の隣にいるのは、とても居心地が良い
「……琴羽はたまにぶっ飛ぶよね、流石にびっくりした」
「琴ちゃん、彼氏飛ばして旦那さんかぁ…」
「それもまぁ、らしいけどね
コイツ将来見合い結婚するんじゃない?このご時世に」
「想像出来る…
取り敢えず、理由を聞こうじゃないか」
この手の話は基本的に受け身の唯依が乗ってくると言うことは、それだけ予想外な発言だったのだろう
多分、松川なのは予想していただろが、旦那とまで言われるとは思ってなかったのだろう
まぁ、突飛なことを言った自覚はあるがその前に私は“好き”が分からないと言っていた筈なのだが
凪桜も苦笑しているし、それだけ予想外だったのだろう
けど、私は最初から伝えていると思うのだが
『まず第一に、その4人の中で一番知っているのが松川であると言うこと』
「納得」
唯依の同意に2人が頷く
続けろ、と言外に告げられてそのまま口を開く
『次に、松川のことは人としてかなり好感を抱いていると言うこと』
「納得」
『次に、松川との沈黙は気まずくないし、一緒に居るのは居心地が良いと言うこと』
「…納得」
『最後に好きが分からない私からしたら、恋愛感情必須な恋人にはなれないけど、相性的なモノが優先される夫婦の方が容易だと思ったから』
「……言いたいことは分かった
だからといって飛びすぎだ、話が」
『すまん』
恋愛感情って分からないから、恋人関係になってしまうと相手を傷つけてしまうかもしれない
受け取った好きを、その人に返してあげることが出来ないから
でも、夫婦なら
その人のことが人として好きならば、一緒に居て苦痛にならない
相性が良ければ、喧嘩もなく、お互い楽に、それなりの幸せを手にすることが出来る
沈黙が気まずくないのって大事だと思うし、一緒に居て居心地が良いと思える相手となら問題ないと思う
と言うことを3人に話すと、微妙な顔をしつつも納得してくれた
ごめん、ホントに分かんないんだって
「琴って男子にドキドキしたことないの…!?」
『水希はどんなことでドキドキするの?』
「ウチ?ウチは目が合ったりとか、話が出来たときとか、ハイタッチだってドキドキするし」
『うんうん、水希は可愛いねぇ』
「ほんと水希はピュアだよねぇ」
「水希ちゃん、純情だもんねぇ」
「微笑ましいって顔するの止めようか!?」
「でもまぁ、片思いってそう言うもんじゃないの?凪桜」
「そうだねぇ
その人のことばっかり考えちゃうし、支えてあげたいと思うし、理解してあげたいかなぁ」
『ホント、及川にやるのが勿体ないよね、唯依さん』
「全力で同意」
なんて話していると段々話題が逸れていく
それはそれで構わないのだけれど、どうやらそうもいかないらしい
話を戻すように水希が声を荒げ、知らぬ間に軌道修正されていた
『まぁ、残念だけどそんな経験はないねぇ』
苦笑交じりにそう言えば、水希は不満ありげな顔
凪桜は苦笑し、唯依は呆れ顔
そろそろ帰ろう、と促すと、文句を言いながらも荷物を纏め始める
「唯依は今日花ちゃん待たない日ー?」
「何その花ちゃんって、今度呼んでやろう
待たない日ー」
「琴ちゃんのおかげで宿題も終わったしねぇ」
荷物を纏め終わり、それぞれ立ち上がる
4人揃って教室を出ようと扉を開けると、気まずそうな顔をした松川
ポーカーフェイスが得意な男だと思っていたが、話を聞いていたのだろう
完全に動揺が顔に出ている
「まっちゃんだ!話聞いちゃった?」
「あー、うん、なんかごめん」
「別に松川が謝るようなことじゃないでしょ
教室で話してたこっちも悪いんだし」
「及川君には内緒にしててね?」
「そりゃ勿論」
チラリ、とこちらを見る松川に、唯依が2人を引き連れて教室を出て行く
悪いね、と肩を竦めると、ヒラリと手を振って返してきた
だから男前かよ
「靴箱で待ってる」
『ありがと』
そのまま立ち去っていく3人を見送って松川を見上げるとちょっと照れくさそう
まぁ、あの話聞いてたらそうもなる、普通なら
聞かれて動揺していない私の方がおかしいのである
『勝手に盛り上がってごめんね
話振ってきたのは水希だから、文句あるならそっちにお願い』
「や、別に怒っては、ないけど」
『けど?』
「あー…」
ちょっと口ごもり、目を逸らす
言いにくそうに頭を掻き、困ったように笑ってまたこちらを見る
「これ、流されて言ってる訳じゃないからね?」
『松川がそんな半端な男じゃないことは知ってるよ』
「お前等ホント男前な」
どうやら男前なのはあの3人のみじゃなく、私も含まれるらしい
そんなことを思いながら、松川を見上げていると、意を決しように口を開く
「流石に旦那は荷が重いから、彼氏から初めていいデスか?」
『………、松川、私のこと好きだったの?』
「…まー、うん、そうなる」
『…何か無神経でごめん』
「いや、別にいいよ」
『どこから話聞いてたか知らないけど、私普通の彼女にはなれないよ?』
「俺も部活一色だし、普通の彼氏らしいこと出来ないよ」
びっくりしてマジマジと松川を見ていると、大きな手で目を隠された
隠される瞬間に見えた耳は赤くて、照れていると言うことがよく分かる
スマートなこの男の動揺した姿がなんだか可笑しくて、小さく笑った
『松川、月曜日は一緒に帰ろうね』
「おう…?」
『用事がない日は、アイツ等引き連れて部活見に行くね』
「…おう」
『あとはそうだなー
毎日じゃなくていいから、お昼ご飯一緒に食べるとこから始めてみる?』
「あとはおやすみメールとかかな」
『じゃあ、部活終わったら連絡ちょうだいね』
目を覆っていた手を取って笑いかける
苦笑に近い笑い方だったけど、松川も笑っていた
変な展開になっちゃったな
きっと、松川も同じ事思ってるだろうけど
『迷惑しか掛けないと思うけど、よろしくお願いします』
「…こちらこそ、よろしくお願いしマス」
そこで松川とは別れ、靴箱まで向かう
待っていてくれた3人に問い詰められ、先程の話をすると1人は呆れ、1人は目を輝かせ、1人は祝福してくれた
三者三様とはまさにこのこと
恋愛概論
(無いに等しい私の恋愛観)