君の生きる理由になりたい
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
side.H
「蘭ちゃん、ほんまに構んの?」
「みお姉も気にしないって言ってたし大丈夫だよ
一緒に行く人が増えたくらいで何か言ってくるタイプの人でもないし」
「ほんでもなぁ…」
「大丈夫、大丈夫!」
アポ無しで東京まで遊びに来たはいいが、生憎工藤等には先約があった
まぁ、アポ無しやからしゃーないけどな
それで、元々の約束の主と一緒に出掛けるという事になったと言うのが事のあらまし
「ほんで?そのみお姉ちゅーんは、自分の事知っとんのか?」
「…あぁ、一瞬でバレたからな」
「一瞬て。……組織の事は」
「流石に言ってねぇ、そこまで巻き込む訳にはいかねぇだろ
まぁ、何となく“ナニカ”を追ってる事には気付いてるみてぇだけどな」
「はーん、中々鋭いやっちゃな」
「困った事にな」
『ごめん、お待たせ』
なんて話してると響くソプラノ
落ち着いたその話し方は高くとも人を不快にさせない声色で
何処と無く懐かしさを感じた
声がした方に視線を向けると、聞いていた年齢よりは幼く見える、落ち着いた雰囲気の女性が毛利のねーちゃんの傍に寄っていた
「みお姉!仕事お疲れ様
ごめんね、夜勤明けに頼んじゃって」
『予定合わなかったんだからしょうが無いよ
けど、今度からはもっと早く言ってね、休み希望出すからさ』
苦笑しながら気にするな、と軽く手を振る
対するねーちゃんも合わせていた手を下げて、俺達を紹介するように半身で振り返って
「はーい
あ、みお姉紹介するね。大阪に住んでる遠山和葉ちゃんと、あっちに居るのが幼馴染みの服部平次君」
『初めまして、白峰美音です』
「遠山和葉言います、よろしゅう」
『よろしゅう』
ふわり、と穏やかに笑ってみお姉と呼ばれる女が振り返る
俺を見て、少しだけ驚いたような表情をしたがまた小さく微笑んだ
『よろしゅうね、服部くん』
「………あーっ!自分あん時の姉ちゃんか!」
『あ、やっぱりあの時の少年か
久しぶりやねぇ、元気しとった?』
その声に、話し方に、一瞬にして記憶が蘇る
失礼も承知で指さして叫べば、相手も覚えていたようで懐かしい笑みでこちらを見て会話を続けて
驚いている俺を余所に、随分冷静な、落ち着いた、あしらわれているようなこの態度には、身に覚えがあった
「え、何みお姉知り合いなの?」
『ん、ほら私中高と遠征で大阪に行ってたでしょ?』
「あぁ、剣道の…
ってまさか毎年来てた少年って」
『服部くんみたいやねぇ、名前名乗られてなかったらちょっと自信なかったんやけど
時の流れって怖いねぇ、あの少年がもうこんな立派な青年になっちゃって』
俺と同じように驚いてる毛利のねーちゃんが話を振る
それに相変わらず落ち着いた声の調子で返して、こちらを見遣って懐かしそうに目を細める
「自分、高校卒業した途端来んなりおって!」
『大学は忙しくて剣道も弓道も助人としてしか参加してなかったからねぇ
ほんでも、京都の大学通っとったんよ?少年名乗るどころか何も教えてくれんかったから会いに行くことすら出来んでねぇ』
「そうなの?」
『そう、ずーっと自分を倒すんは俺や、って言ってね』
くすくす、と楽しそうに笑うその姿にあの頃を思い出す
初めて姉ちゃんを見掛けた日、綺麗な型、圧倒的強さに魅了されて
けれど、同時に敵わないことを思い知らされて悔しくて
遠征に来ている間毎日の様に通っては勝負を持ちかけて
まぁ、一度も取り合ってはもらえなかったけれど
姉ちゃんを倒すんは俺や、ってムキになって名前すら名乗らず毎日
その始まりの日
宣言した俺に一瞬虚をつかれた様な表情をして、今みたいにくすくす、と楽しそうに笑った
『ほんなら、もーっと大きなったらおいで
流石に今の少年と試合をする事はできないから、見て盗みな』
そう穏やかに笑って、頭を撫でられて
毎日やってくる俺に休憩中に稽古を付けてくれたり、家の近くまで送ってもらったり、とまぁ
要はかなり世話になった姉ちゃんである
今となっては俺のあの行動は迷惑極まりなかった、と冷静に言えるのだけれどあの頃は今より無鉄砲で
散々絡んで、それでも嫌な顔をしない姉ちゃんに俺も調子に乗っていたのだろう
『もう、試合しろーって言わんの?』
「流石にもうそこまでガキちゃうわ」
『毎年の楽しみだったんやけどなぁ、弟が出来たみたいで
まぁ、こんだけ成長したらなぁ、流石に敵わんやろうな
まだ続けとるん?』
「全国大会に出るくらいには強なったで
にしても、姉ちゃんは全然変わっとらんな」
『老けんやろ?
そんな強なったん?もう相手にもならんなぁ、そしたら』
くすくす、と楽しそうに笑う姿は昔のそれと変わらない
中高の頃は大人っぽいと思っていた姉ちゃんだが、今は年齢からしたら幼い印象
成熟の早い人は歳とってから老けないと言うが、どうやらほんまのようだ
『世間は狭いねぇ』
そう笑いながら言って、和葉等の会話に混ざりに行く
いやぁ、流石にビビったわー
「みお姉と知り合いだったんだな」
「せやな、通りで聞き覚えのある声や思った」
「確かに毎年夏に少年が来たって話してたな」
姉ちゃんとの会話も終わって、工藤が話し掛けてくる
そういや、工藤の従姉妹や言うてたか
「あ、せや工藤
姉ちゃん中2の夏から中3の夏までの間に何かあったんか?
なんや様子が変やったん覚えとるわ」
「……あぁ、中2の冬に家族全員殺されてんだ」
「何やて!?」
「犯人も動機も不明のまま今に至ってる」
「…そういやそないな事件もあったな、一時期ニュースはそればっかやった
ほーか、みお姉の家族やったんか…」
中3の夏、あの遠征に来た時
相変わらずの集中力であったし、圧倒的に強かった、型が乱れることもなかった
けれど、試合の合間のわずかな時間、休憩中、なんとも形容しがたい表情を見せていた
家族を亡くして半年
傷は癒えていなかった事だろう
「ほんで?姉ちゃんはあの事件まだ追っとるんか?」
「…さぁな、何も言わねぇから、みお姉は」
「…ほーか
ほんなら、今度こそちゃんと守らんとなぁ」
「…あぁ」
察しのいい姉ちゃん
工藤から聞いたときはの従姉妹と言うその彼女の印象はたったそれだけだったが、この一瞬で随分状況が変わった
あの面倒見のいい、穏やかな姉ちゃんと姿が被って印象が上書きされていく
悔しくて、羨ましくて、それでも優しくて慕っていた姉ちゃんが
記憶から薄れてきていた存在だった姉ちゃんがこうして目の前に現れて
なんとも言えない感情がこみ上げてくる
『何してんのー?ほら、行くよー』
「あ、はーい!」
少し離れた位置から声を掛けられて、工藤が返事をする
いくぞ、と目だけで合図を送ってくる工藤に首肯だけ返して青の小さな背中を追った
*****
「そういやみお姉、最近ポアロに来てないけど安室さんとはどうなったの?」
東京観光や買い物に付き合わされて、少し遅めの昼食
店に入ってそれぞれの食事が届いて落ち着いた頃、蘭にそう話を振られた
いつかは来るだろうと思っていたその話題
苦笑して、肩を竦めて見せるが、きっとこの子はそんなことで引いたりしないだろう
『んー、もうフリする必要なくなったから』
「え」
『元々そう言う契約なんだから、当たり前でしょ?』
複雑なこの心情が声音に乗らないように注意しながら、なんて事ないと言うように話す
そう、そもそもそう言う話だったのだ、こうなることは必然で
私としては珍しく長く交流が続いたものだから、この子のことだからもしかしたら、なんて妄想を繰り広げたのだろうけれど
「なになに、何の話?」
興味深そうに和葉ちゃんが話しに入ってくる
端的に掻い摘まんで説明する蘭の声を右から左に聞き流し、突き刺さる視線を無視しているところ
聞いてねぇぞ、と雄弁に語りかけてくるその瞳は見ないように頼んでいたオムライスを口に運ぶ
毎度毎度私に説明を要求するけれど、新ちゃんは一体私の何なのだろうか、父親か?
あの日の事も、正直ショックはあった
けれど、あの人の本職を何となく気付いている身としては仕方ない事なのかもしれない、なんて思う自分も確かに居た
あの日、あの場所では平静を装えないことは確かで、時間を欲していたのも本音
でも、こうしてあからさまに距離を取る程ではなかった
あの日は珍しく言葉が上手く出てこなくて、否定も出来なかったけれど
今の状況なら普通にポアロにも行けるし、街で偶然出会っても普通に会話できる自信はある
けれど多分、あの人にとってこうして距離を取ることが正解だったのだろう
危ない場所に身を置いているだろうあの人は、私を、私の周りを巻き込まないために必要な処置だと、そう考えたのだろう
それが分かってしまうから、私もこれ以上深入りしないと決めた
少しだけ複雑な心情は、私が飲み込んでしまえばきっと無くなってしまう様な物だから
「お似合いだったのに…」
『うん、根本的な関係から違うからね?』
残念そうに、不服そうに呟く蘭に苦笑しかでない
そもそも正式な関係ではなかったのだ、そう言った感想自体間違ってる
まぁ、今の所私がどうこうするつもりは全くないので、放置していて欲しいというのは事実で
きっとこれは私の問題と言うより、あの人の問題なのだから
守るべきもののために
(皆それぞれ守りたいものがあって、その為に精一杯で)
「蘭ちゃん、ほんまに構んの?」
「みお姉も気にしないって言ってたし大丈夫だよ
一緒に行く人が増えたくらいで何か言ってくるタイプの人でもないし」
「ほんでもなぁ…」
「大丈夫、大丈夫!」
アポ無しで東京まで遊びに来たはいいが、生憎工藤等には先約があった
まぁ、アポ無しやからしゃーないけどな
それで、元々の約束の主と一緒に出掛けるという事になったと言うのが事のあらまし
「ほんで?そのみお姉ちゅーんは、自分の事知っとんのか?」
「…あぁ、一瞬でバレたからな」
「一瞬て。……組織の事は」
「流石に言ってねぇ、そこまで巻き込む訳にはいかねぇだろ
まぁ、何となく“ナニカ”を追ってる事には気付いてるみてぇだけどな」
「はーん、中々鋭いやっちゃな」
「困った事にな」
『ごめん、お待たせ』
なんて話してると響くソプラノ
落ち着いたその話し方は高くとも人を不快にさせない声色で
何処と無く懐かしさを感じた
声がした方に視線を向けると、聞いていた年齢よりは幼く見える、落ち着いた雰囲気の女性が毛利のねーちゃんの傍に寄っていた
「みお姉!仕事お疲れ様
ごめんね、夜勤明けに頼んじゃって」
『予定合わなかったんだからしょうが無いよ
けど、今度からはもっと早く言ってね、休み希望出すからさ』
苦笑しながら気にするな、と軽く手を振る
対するねーちゃんも合わせていた手を下げて、俺達を紹介するように半身で振り返って
「はーい
あ、みお姉紹介するね。大阪に住んでる遠山和葉ちゃんと、あっちに居るのが幼馴染みの服部平次君」
『初めまして、白峰美音です』
「遠山和葉言います、よろしゅう」
『よろしゅう』
ふわり、と穏やかに笑ってみお姉と呼ばれる女が振り返る
俺を見て、少しだけ驚いたような表情をしたがまた小さく微笑んだ
『よろしゅうね、服部くん』
「………あーっ!自分あん時の姉ちゃんか!」
『あ、やっぱりあの時の少年か
久しぶりやねぇ、元気しとった?』
その声に、話し方に、一瞬にして記憶が蘇る
失礼も承知で指さして叫べば、相手も覚えていたようで懐かしい笑みでこちらを見て会話を続けて
驚いている俺を余所に、随分冷静な、落ち着いた、あしらわれているようなこの態度には、身に覚えがあった
「え、何みお姉知り合いなの?」
『ん、ほら私中高と遠征で大阪に行ってたでしょ?』
「あぁ、剣道の…
ってまさか毎年来てた少年って」
『服部くんみたいやねぇ、名前名乗られてなかったらちょっと自信なかったんやけど
時の流れって怖いねぇ、あの少年がもうこんな立派な青年になっちゃって』
俺と同じように驚いてる毛利のねーちゃんが話を振る
それに相変わらず落ち着いた声の調子で返して、こちらを見遣って懐かしそうに目を細める
「自分、高校卒業した途端来んなりおって!」
『大学は忙しくて剣道も弓道も助人としてしか参加してなかったからねぇ
ほんでも、京都の大学通っとったんよ?少年名乗るどころか何も教えてくれんかったから会いに行くことすら出来んでねぇ』
「そうなの?」
『そう、ずーっと自分を倒すんは俺や、って言ってね』
くすくす、と楽しそうに笑うその姿にあの頃を思い出す
初めて姉ちゃんを見掛けた日、綺麗な型、圧倒的強さに魅了されて
けれど、同時に敵わないことを思い知らされて悔しくて
遠征に来ている間毎日の様に通っては勝負を持ちかけて
まぁ、一度も取り合ってはもらえなかったけれど
姉ちゃんを倒すんは俺や、ってムキになって名前すら名乗らず毎日
その始まりの日
宣言した俺に一瞬虚をつかれた様な表情をして、今みたいにくすくす、と楽しそうに笑った
『ほんなら、もーっと大きなったらおいで
流石に今の少年と試合をする事はできないから、見て盗みな』
そう穏やかに笑って、頭を撫でられて
毎日やってくる俺に休憩中に稽古を付けてくれたり、家の近くまで送ってもらったり、とまぁ
要はかなり世話になった姉ちゃんである
今となっては俺のあの行動は迷惑極まりなかった、と冷静に言えるのだけれどあの頃は今より無鉄砲で
散々絡んで、それでも嫌な顔をしない姉ちゃんに俺も調子に乗っていたのだろう
『もう、試合しろーって言わんの?』
「流石にもうそこまでガキちゃうわ」
『毎年の楽しみだったんやけどなぁ、弟が出来たみたいで
まぁ、こんだけ成長したらなぁ、流石に敵わんやろうな
まだ続けとるん?』
「全国大会に出るくらいには強なったで
にしても、姉ちゃんは全然変わっとらんな」
『老けんやろ?
そんな強なったん?もう相手にもならんなぁ、そしたら』
くすくす、と楽しそうに笑う姿は昔のそれと変わらない
中高の頃は大人っぽいと思っていた姉ちゃんだが、今は年齢からしたら幼い印象
成熟の早い人は歳とってから老けないと言うが、どうやらほんまのようだ
『世間は狭いねぇ』
そう笑いながら言って、和葉等の会話に混ざりに行く
いやぁ、流石にビビったわー
「みお姉と知り合いだったんだな」
「せやな、通りで聞き覚えのある声や思った」
「確かに毎年夏に少年が来たって話してたな」
姉ちゃんとの会話も終わって、工藤が話し掛けてくる
そういや、工藤の従姉妹や言うてたか
「あ、せや工藤
姉ちゃん中2の夏から中3の夏までの間に何かあったんか?
なんや様子が変やったん覚えとるわ」
「……あぁ、中2の冬に家族全員殺されてんだ」
「何やて!?」
「犯人も動機も不明のまま今に至ってる」
「…そういやそないな事件もあったな、一時期ニュースはそればっかやった
ほーか、みお姉の家族やったんか…」
中3の夏、あの遠征に来た時
相変わらずの集中力であったし、圧倒的に強かった、型が乱れることもなかった
けれど、試合の合間のわずかな時間、休憩中、なんとも形容しがたい表情を見せていた
家族を亡くして半年
傷は癒えていなかった事だろう
「ほんで?姉ちゃんはあの事件まだ追っとるんか?」
「…さぁな、何も言わねぇから、みお姉は」
「…ほーか
ほんなら、今度こそちゃんと守らんとなぁ」
「…あぁ」
察しのいい姉ちゃん
工藤から聞いたときはの従姉妹と言うその彼女の印象はたったそれだけだったが、この一瞬で随分状況が変わった
あの面倒見のいい、穏やかな姉ちゃんと姿が被って印象が上書きされていく
悔しくて、羨ましくて、それでも優しくて慕っていた姉ちゃんが
記憶から薄れてきていた存在だった姉ちゃんがこうして目の前に現れて
なんとも言えない感情がこみ上げてくる
『何してんのー?ほら、行くよー』
「あ、はーい!」
少し離れた位置から声を掛けられて、工藤が返事をする
いくぞ、と目だけで合図を送ってくる工藤に首肯だけ返して青の小さな背中を追った
*****
「そういやみお姉、最近ポアロに来てないけど安室さんとはどうなったの?」
東京観光や買い物に付き合わされて、少し遅めの昼食
店に入ってそれぞれの食事が届いて落ち着いた頃、蘭にそう話を振られた
いつかは来るだろうと思っていたその話題
苦笑して、肩を竦めて見せるが、きっとこの子はそんなことで引いたりしないだろう
『んー、もうフリする必要なくなったから』
「え」
『元々そう言う契約なんだから、当たり前でしょ?』
複雑なこの心情が声音に乗らないように注意しながら、なんて事ないと言うように話す
そう、そもそもそう言う話だったのだ、こうなることは必然で
私としては珍しく長く交流が続いたものだから、この子のことだからもしかしたら、なんて妄想を繰り広げたのだろうけれど
「なになに、何の話?」
興味深そうに和葉ちゃんが話しに入ってくる
端的に掻い摘まんで説明する蘭の声を右から左に聞き流し、突き刺さる視線を無視しているところ
聞いてねぇぞ、と雄弁に語りかけてくるその瞳は見ないように頼んでいたオムライスを口に運ぶ
毎度毎度私に説明を要求するけれど、新ちゃんは一体私の何なのだろうか、父親か?
あの日の事も、正直ショックはあった
けれど、あの人の本職を何となく気付いている身としては仕方ない事なのかもしれない、なんて思う自分も確かに居た
あの日、あの場所では平静を装えないことは確かで、時間を欲していたのも本音
でも、こうしてあからさまに距離を取る程ではなかった
あの日は珍しく言葉が上手く出てこなくて、否定も出来なかったけれど
今の状況なら普通にポアロにも行けるし、街で偶然出会っても普通に会話できる自信はある
けれど多分、あの人にとってこうして距離を取ることが正解だったのだろう
危ない場所に身を置いているだろうあの人は、私を、私の周りを巻き込まないために必要な処置だと、そう考えたのだろう
それが分かってしまうから、私もこれ以上深入りしないと決めた
少しだけ複雑な心情は、私が飲み込んでしまえばきっと無くなってしまう様な物だから
「お似合いだったのに…」
『うん、根本的な関係から違うからね?』
残念そうに、不服そうに呟く蘭に苦笑しかでない
そもそも正式な関係ではなかったのだ、そう言った感想自体間違ってる
まぁ、今の所私がどうこうするつもりは全くないので、放置していて欲しいというのは事実で
きっとこれは私の問題と言うより、あの人の問題なのだから
守るべきもののために
(皆それぞれ守りたいものがあって、その為に精一杯で)