君の生きる理由になりたい
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そもそも何で私が新ちゃんの正体を知っているのか、と言われたら、始まりの日に答えはある
*****
『新ちゃんが帰ってきてるか確認して欲しい?』
《そう!》
『何?君等今日デートじゃなかったの?送らせなかったわけ?』
《デ、デートじゃないわよ!途中で事件があって…》
『…あぁ、なるほど
ほんっと相変わらずだなぁ
ちょうど今から工藤家向かう予定だったし、確認しとくわ』
《ありがと、みお姉!》
にしたってほんとに…
あの子はもうちょっと危機感を持つべきだと思うのよね
確かに優作さんの息子らしく推理力的には問題無いのかもしれないけどさぁ…
一応親の保護下に居るべき年齢なんだから、もうちょい大人しくできないもんかねぇ
スマホをポケットにしまい、工藤家へと向かう
高校卒業と同時に家を出たとはいえ、全部持ち出した訳じゃないから時々こうして家に寄っては必要な物を取り出したり、不要なものを片付けたりしている訳で
明日は仕事が休みだからこうしてやって来ている次第である
『しーんー?あんたまぁた事件に首突っ込んだ訳ー?いい加減にしなさいよー
あと、デートならちゃんと彼女家まで送りなさいな』
慣れたように玄関を開けて靴を脱ぐ
見慣れた新ちゃんの靴があったため、家にいることは明白
もうひとつの靴は大人用、博士でも来てるのかねぇ
取り敢えず新ちゃんを探す
逃げられても厄介なもんでねぇ
「ど、どうしたんじゃみおくん?」
『あ、やっぱり博士だったか
蘭から電話が来てね、新ちゃんがまた事件に首突っ込んだって聞いたもんだから帰ってきてるか確認に
元々今日は工藤家寄る予定だったし、ついでに』
「新一な、帰ってきておるよ
事件も無事に解決したと言っておった」
『…博士、嘘つくのも隠し事もあんまり得意じゃないんだからわざわざいいのよ、新ちゃん庇わなくたって』
「…え」
『帰ってきてるなら、新ちゃんが出てきたらいいのよ
わざわざ博士が間に出てきて時間稼いでるって事は何か疚しいことがあるからでしょ
昔っから新ちゃんは分かりやすいのよ
今書斎から出てきたよね?隠れてるなら見つけてやるからそこ退いて?』
博士を押し退けて中へ進む
この先は書斎だったと思うけど、一体なんで部屋じゃなくて書斎なんかに?
まぁ、ホームズオタクだからしょっちゅう読み耽ってるけども
それならわざわざ隠す必要なんかないし
『居るんでしょ?』
中に入ると居たのは1人の子供
既視感がありすぎるその容姿は、眼鏡を掛けたくらいじゃ誤魔化しきれてない
『……博士、何か変な薬でも開発したの?』
「はぇっ!?」
『じゃなかったら何で新が子供になってる訳?』
真っ先に思い浮かぶのは博士の発明品
まさか若く見られたかったとか?博士見た目程年いってないし
博士を振り返ると心当たりが無いとでも言う様な動揺っぷり
無関係、なの…?
『新、あんた次は一体何に首突っ込んだの』
「え?何のこと…」
『流石にこんだけ年離れてりゃアンタのちっちゃい時の顔くらいはっきり覚えてるわ
こんな瓜二つな他人がいてたまるかって話よ
そんな眼鏡程度で私のこと騙せるとでも思ったの?』
「ぼ、僕、新一兄ちゃんの親戚で…」
『無理があるでしょ
どう見ても精々小一くらいの年齢って事は過去6年の内に接触があったって事
6年前って事はギリギリ私がこの家に住んでた頃な訳だから、親戚の子供が生まれたってなれば何かしら話は耳にした事ある筈
私の記憶力舐めないでよ』
「………降参」
『で、何があった訳?』
諦めて両手を上に挙げる
そんな咄嗟に思いついたような設定で私が納得するとでも思ってんのかね
突っ込むなら他にもいろいろあるよ
こんな時間に親戚の子供が1人でこんな所にいるのかとか、両親はどうしたのだとか
問い質すけど返事はない
口をもごもごさせて、何か上手い言い訳をさがしているかのようで
『……分かった、言えないなら聞かない
さっきの博士の発明に巻き込まれたって事で納得しといてあげる』
「…サンキュ、みお姉」
言わないんじゃなく言えない
新もだけど、蘭、園子も私に嘘は通じないと重々承知してる筈だから
だから、この子も早々に諦めて降参した訳で
人間観察得意なの、知ってんでしょ?
『それで、これからどうする訳?』
「そうなんだよなー…」
『博士ん家でも転がり込むの?』
「じゃったら、蘭君の家の方が良かろう
何かしら情報が入ってくるやもしれん」
『……博士、私今、一応事件絡みじゃないって設定で納得した体を装ってるんだけど?』
「はっ!そうじゃった!」
『…こんなんじゃバレるのも時間の問題じゃないの?』
「ハハ…」
『てゆーか名前は?』
「さっき咄嗟に江戸川コナンって」
『…咄嗟過ぎだよねぇ 』
チラッと新の背後の本棚を見る
江戸川乱歩にコナン・ドイル、ね…
安直としか言いようが無い偽名だけれど、何というか新ちゃんらしい…
ネーミングセンスはなさそうだな、この子は
『まぁ、名前考えるの面倒だからそれでいいわ
私の名前ではないし
で、蘭の家でいいの?連絡するけど』
「…なんつーかみお姉って、ホント淡々としてんな」
『これでも充分驚いてるわよ
それとも何?根掘り葉掘り聞かれたいわけ?』
「い、いや!全然!」
『私は別に新の保護者じゃないからとやかく言える立場じゃないからね』
取り敢えず蘭に連絡するためにスマホを取り出す
着歴から呼び出して直ぐに繋がる電話
そういや、新が戻ってきてるか確認しろって事だったんだよなぁ
ひとまず新は長期の仕事の依頼があって家を空けることになったという事にしておく
我ながら突っ込みたい、高校生に依頼する内容じゃないよな、絶対
それで、コナンを預かってもらいたいという話もして了承を得る
蘭ってしっかりしてるようで意外と天然な所あるよな
何で信じるんだ、こんなツッコミどころの多い話
『って事で丸く収まったけど』
「流石みお姉…」
『蘭はちょっと私の事を信用しすぎよねぇ』
「まぁ、多少な…」
ひとまず目の前の問題が解決しそうでよかった
いや、何も解決してないけど、ホントは
まぁ、でも、うん、一応無事は確認出来たから、ね
この状況を無事と言っていいのか分からないけどまぁ、生きてはいるから
『新一』
「ん?」
『さっきはあぁ言ったけど、やっぱり一言だけ言わせて』
「何?」
『…もう私から奪わないでね……、家族』
随分小さくなってしまった手を掴む
あの日、全てを失った私からしたら、残された家族はもうこのいとこ一家しかないのだ
何をしても自由、それを縛るつもりは無いけど、でも
もう、失いたくない
情けないとは思うけど、私は何の力も持たないから
こうやって、願うしか出来ない
*****
side.K
弱々しく呟かれた言葉と、痛いくらいに握られた手
あまりに弱々しいその姿に、みお姉がこの家に越してきたあの日を思い出した
確かに元々覇気のある、活発な性格ではなかった
大人しめの、人の話を聞いてばかり居るような、そんな人であったことは確か
けど、その日のみお姉はいつも以上に何を考えてるか分からない、暗い表情をしていた
いや、暗いという表現すら適切でない
正しく無表情だった
じっと見詰められて、あの日のことを思い出して、目を逸らせなくなる
みお姉はいつだって俺のやる事に口出ししてくる事はほとんどなかった
窘め、諌めるけれど、最終的に俺が納得するまで付き合ってくれるのだ
一緒に居たら責任は自分にあるから、何かあった時に助けられるから、守れるから
もう二度と、失くさないように
自分の家族を、自分の手で守れるように
「うん、分かってるよみお姉」
『…ん、ならいいんだ』
ホントは良くない筈
納得したフリをして、飲み込んでくれただけ
いつだって、俺はみお姉に甘えてばかりいる
そして今回も、みお姉の優しさに甘えて
目の前で諦めて納得した体で、また飲み込んでしまう
そうさせているのが自分で、罪悪感が募っていくけど
「みお姉」
『ん?』
「話せなくてごめんな」
『…私の為何だって分かってるから』
「ごめん」
『…無事なら、それでいいんだよ』
いつだってみお姉はそうやって笑う
俺が幾ら事件に巻き込まれても、首を突っ込んで行っても、怪我して帰ってきても最後にはそうやって
生きてさえいてくれればそれでいいのだ、と
そんなみお姉を見てると心苦しくなる
そんなことをみお姉に言わせてしまうようになったあの事件は、本当に許せない
何とか解決して、犯人を捕まえてやりたいとずっと思っているけど
みお姉はどう考えているのだろうか
諦めているのか、もう忘れてしまいたいのか
事件のことなど無かったように振る舞っているみお姉は、一体何を考えているのか
『取り敢えず、私は私の用事済ませてくるから、聞かれたくない話があるならその間にどうぞ』
それだけ言って俺等の返事なんか聞かずに書斎から出て、自室の2階へと向かっていく
なるほど、みお姉はそもそも自分の用事があって家に来てた訳か
タイミングがホント神がかっている…
みお姉が気を利かせて出て行ってくれたから博士と今後についての話をする
とは言ってもこんな異常事態、大したことは決めることは出来なかったけれど
取り敢えず俺は蘭の所に転がり込んで、奴等の情報を集める
何かと聡いみお姉は、何かを追っていると言う事に気付いてしまうかもしれないけど
多分、気を利かせて素知らぬフリをして何も無いように振る舞ってくれると信じて
こう言うとこがまた甘えなんだと分かっていても、みお姉は騙せる気がしないから
『終わった?んじゃ蘭のとこ行こっか』
暫くしてやってきたみお姉は、少し膨らんだ鞄を肩にかけて書斎に入ってくる
聞きたいことはあるはずなのに、やっぱり何も言うこと無く当たり前の様に振る舞う姿は流石としか言いようが無くて
道中も特に深く触れる事無く、蘭にバレないようにね、何てその程度の話しかしないみお姉はほんと出来た人なんだと思う
そんなこんなでみお姉に秘密はバレてしまったが、ある意味強力な助っ人が手に入ったと言っても過言では無くて
「みお姉」
『ん?』
「ありがとな」
『…何の事かなぁ』
ふんわり、と柔らかく笑うみお姉に、俺はそれ以上何も言えなくて苦笑するしか無かった
優しい噓と秘密に溺れて
(たくさん隠して隠して、大丈夫と噓を吐くの)
*****
『新ちゃんが帰ってきてるか確認して欲しい?』
《そう!》
『何?君等今日デートじゃなかったの?送らせなかったわけ?』
《デ、デートじゃないわよ!途中で事件があって…》
『…あぁ、なるほど
ほんっと相変わらずだなぁ
ちょうど今から工藤家向かう予定だったし、確認しとくわ』
《ありがと、みお姉!》
にしたってほんとに…
あの子はもうちょっと危機感を持つべきだと思うのよね
確かに優作さんの息子らしく推理力的には問題無いのかもしれないけどさぁ…
一応親の保護下に居るべき年齢なんだから、もうちょい大人しくできないもんかねぇ
スマホをポケットにしまい、工藤家へと向かう
高校卒業と同時に家を出たとはいえ、全部持ち出した訳じゃないから時々こうして家に寄っては必要な物を取り出したり、不要なものを片付けたりしている訳で
明日は仕事が休みだからこうしてやって来ている次第である
『しーんー?あんたまぁた事件に首突っ込んだ訳ー?いい加減にしなさいよー
あと、デートならちゃんと彼女家まで送りなさいな』
慣れたように玄関を開けて靴を脱ぐ
見慣れた新ちゃんの靴があったため、家にいることは明白
もうひとつの靴は大人用、博士でも来てるのかねぇ
取り敢えず新ちゃんを探す
逃げられても厄介なもんでねぇ
「ど、どうしたんじゃみおくん?」
『あ、やっぱり博士だったか
蘭から電話が来てね、新ちゃんがまた事件に首突っ込んだって聞いたもんだから帰ってきてるか確認に
元々今日は工藤家寄る予定だったし、ついでに』
「新一な、帰ってきておるよ
事件も無事に解決したと言っておった」
『…博士、嘘つくのも隠し事もあんまり得意じゃないんだからわざわざいいのよ、新ちゃん庇わなくたって』
「…え」
『帰ってきてるなら、新ちゃんが出てきたらいいのよ
わざわざ博士が間に出てきて時間稼いでるって事は何か疚しいことがあるからでしょ
昔っから新ちゃんは分かりやすいのよ
今書斎から出てきたよね?隠れてるなら見つけてやるからそこ退いて?』
博士を押し退けて中へ進む
この先は書斎だったと思うけど、一体なんで部屋じゃなくて書斎なんかに?
まぁ、ホームズオタクだからしょっちゅう読み耽ってるけども
それならわざわざ隠す必要なんかないし
『居るんでしょ?』
中に入ると居たのは1人の子供
既視感がありすぎるその容姿は、眼鏡を掛けたくらいじゃ誤魔化しきれてない
『……博士、何か変な薬でも開発したの?』
「はぇっ!?」
『じゃなかったら何で新が子供になってる訳?』
真っ先に思い浮かぶのは博士の発明品
まさか若く見られたかったとか?博士見た目程年いってないし
博士を振り返ると心当たりが無いとでも言う様な動揺っぷり
無関係、なの…?
『新、あんた次は一体何に首突っ込んだの』
「え?何のこと…」
『流石にこんだけ年離れてりゃアンタのちっちゃい時の顔くらいはっきり覚えてるわ
こんな瓜二つな他人がいてたまるかって話よ
そんな眼鏡程度で私のこと騙せるとでも思ったの?』
「ぼ、僕、新一兄ちゃんの親戚で…」
『無理があるでしょ
どう見ても精々小一くらいの年齢って事は過去6年の内に接触があったって事
6年前って事はギリギリ私がこの家に住んでた頃な訳だから、親戚の子供が生まれたってなれば何かしら話は耳にした事ある筈
私の記憶力舐めないでよ』
「………降参」
『で、何があった訳?』
諦めて両手を上に挙げる
そんな咄嗟に思いついたような設定で私が納得するとでも思ってんのかね
突っ込むなら他にもいろいろあるよ
こんな時間に親戚の子供が1人でこんな所にいるのかとか、両親はどうしたのだとか
問い質すけど返事はない
口をもごもごさせて、何か上手い言い訳をさがしているかのようで
『……分かった、言えないなら聞かない
さっきの博士の発明に巻き込まれたって事で納得しといてあげる』
「…サンキュ、みお姉」
言わないんじゃなく言えない
新もだけど、蘭、園子も私に嘘は通じないと重々承知してる筈だから
だから、この子も早々に諦めて降参した訳で
人間観察得意なの、知ってんでしょ?
『それで、これからどうする訳?』
「そうなんだよなー…」
『博士ん家でも転がり込むの?』
「じゃったら、蘭君の家の方が良かろう
何かしら情報が入ってくるやもしれん」
『……博士、私今、一応事件絡みじゃないって設定で納得した体を装ってるんだけど?』
「はっ!そうじゃった!」
『…こんなんじゃバレるのも時間の問題じゃないの?』
「ハハ…」
『てゆーか名前は?』
「さっき咄嗟に江戸川コナンって」
『…咄嗟過ぎだよねぇ 』
チラッと新の背後の本棚を見る
江戸川乱歩にコナン・ドイル、ね…
安直としか言いようが無い偽名だけれど、何というか新ちゃんらしい…
ネーミングセンスはなさそうだな、この子は
『まぁ、名前考えるの面倒だからそれでいいわ
私の名前ではないし
で、蘭の家でいいの?連絡するけど』
「…なんつーかみお姉って、ホント淡々としてんな」
『これでも充分驚いてるわよ
それとも何?根掘り葉掘り聞かれたいわけ?』
「い、いや!全然!」
『私は別に新の保護者じゃないからとやかく言える立場じゃないからね』
取り敢えず蘭に連絡するためにスマホを取り出す
着歴から呼び出して直ぐに繋がる電話
そういや、新が戻ってきてるか確認しろって事だったんだよなぁ
ひとまず新は長期の仕事の依頼があって家を空けることになったという事にしておく
我ながら突っ込みたい、高校生に依頼する内容じゃないよな、絶対
それで、コナンを預かってもらいたいという話もして了承を得る
蘭ってしっかりしてるようで意外と天然な所あるよな
何で信じるんだ、こんなツッコミどころの多い話
『って事で丸く収まったけど』
「流石みお姉…」
『蘭はちょっと私の事を信用しすぎよねぇ』
「まぁ、多少な…」
ひとまず目の前の問題が解決しそうでよかった
いや、何も解決してないけど、ホントは
まぁ、でも、うん、一応無事は確認出来たから、ね
この状況を無事と言っていいのか分からないけどまぁ、生きてはいるから
『新一』
「ん?」
『さっきはあぁ言ったけど、やっぱり一言だけ言わせて』
「何?」
『…もう私から奪わないでね……、家族』
随分小さくなってしまった手を掴む
あの日、全てを失った私からしたら、残された家族はもうこのいとこ一家しかないのだ
何をしても自由、それを縛るつもりは無いけど、でも
もう、失いたくない
情けないとは思うけど、私は何の力も持たないから
こうやって、願うしか出来ない
*****
side.K
弱々しく呟かれた言葉と、痛いくらいに握られた手
あまりに弱々しいその姿に、みお姉がこの家に越してきたあの日を思い出した
確かに元々覇気のある、活発な性格ではなかった
大人しめの、人の話を聞いてばかり居るような、そんな人であったことは確か
けど、その日のみお姉はいつも以上に何を考えてるか分からない、暗い表情をしていた
いや、暗いという表現すら適切でない
正しく無表情だった
じっと見詰められて、あの日のことを思い出して、目を逸らせなくなる
みお姉はいつだって俺のやる事に口出ししてくる事はほとんどなかった
窘め、諌めるけれど、最終的に俺が納得するまで付き合ってくれるのだ
一緒に居たら責任は自分にあるから、何かあった時に助けられるから、守れるから
もう二度と、失くさないように
自分の家族を、自分の手で守れるように
「うん、分かってるよみお姉」
『…ん、ならいいんだ』
ホントは良くない筈
納得したフリをして、飲み込んでくれただけ
いつだって、俺はみお姉に甘えてばかりいる
そして今回も、みお姉の優しさに甘えて
目の前で諦めて納得した体で、また飲み込んでしまう
そうさせているのが自分で、罪悪感が募っていくけど
「みお姉」
『ん?』
「話せなくてごめんな」
『…私の為何だって分かってるから』
「ごめん」
『…無事なら、それでいいんだよ』
いつだってみお姉はそうやって笑う
俺が幾ら事件に巻き込まれても、首を突っ込んで行っても、怪我して帰ってきても最後にはそうやって
生きてさえいてくれればそれでいいのだ、と
そんなみお姉を見てると心苦しくなる
そんなことをみお姉に言わせてしまうようになったあの事件は、本当に許せない
何とか解決して、犯人を捕まえてやりたいとずっと思っているけど
みお姉はどう考えているのだろうか
諦めているのか、もう忘れてしまいたいのか
事件のことなど無かったように振る舞っているみお姉は、一体何を考えているのか
『取り敢えず、私は私の用事済ませてくるから、聞かれたくない話があるならその間にどうぞ』
それだけ言って俺等の返事なんか聞かずに書斎から出て、自室の2階へと向かっていく
なるほど、みお姉はそもそも自分の用事があって家に来てた訳か
タイミングがホント神がかっている…
みお姉が気を利かせて出て行ってくれたから博士と今後についての話をする
とは言ってもこんな異常事態、大したことは決めることは出来なかったけれど
取り敢えず俺は蘭の所に転がり込んで、奴等の情報を集める
何かと聡いみお姉は、何かを追っていると言う事に気付いてしまうかもしれないけど
多分、気を利かせて素知らぬフリをして何も無いように振る舞ってくれると信じて
こう言うとこがまた甘えなんだと分かっていても、みお姉は騙せる気がしないから
『終わった?んじゃ蘭のとこ行こっか』
暫くしてやってきたみお姉は、少し膨らんだ鞄を肩にかけて書斎に入ってくる
聞きたいことはあるはずなのに、やっぱり何も言うこと無く当たり前の様に振る舞う姿は流石としか言いようが無くて
道中も特に深く触れる事無く、蘭にバレないようにね、何てその程度の話しかしないみお姉はほんと出来た人なんだと思う
そんなこんなでみお姉に秘密はバレてしまったが、ある意味強力な助っ人が手に入ったと言っても過言では無くて
「みお姉」
『ん?』
「ありがとな」
『…何の事かなぁ』
ふんわり、と柔らかく笑うみお姉に、俺はそれ以上何も言えなくて苦笑するしか無かった
優しい噓と秘密に溺れて
(たくさん隠して隠して、大丈夫と噓を吐くの)