君の生きる理由になりたい
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まるで呪いだ
毎年この時期になると繰り返し夢を見る
起きたら忘れてしまっているが、とても怖い夢、嫌な夢
毎回飛び起きて、寝たのに寝た気がしない毎日が続く
毎年、毎年、あの日から続く悪夢
生きている限り続くであろうこの嫌な習慣は、一生慣れることはないし、痛みが和らぐことは無い
けれど、逃れる術もない
私を蝕む、呪いのようだ
あの日からもう10年は経とうとしていると言うのに
もう、涙も零れないのに
忘れるな、と言うかの様に、繰り返す悪夢
寒い、寒いこの時期は嫌いだ
私の心を、あの日へと誘うから
でも、これは私の罪だから
受け入れなければいけない痛みだから
そう割り切っているつもりなのに、毎年毎年苦しくて苦しくて
誰かに助けて欲しくって
ふと過ぎったその姿に、気付かない振りをした
*****
side.A
あのストーカー騒ぎから時は経ち、冬
何となく続いているごっこ遊びのような恋人関係は、順調で心地よくて、正直抜け出せなくなってしまいそうな、そんな心持ち
何の問題も無く続いているこの関係は、このままではいけない、と分かっていながらも終止符を打つ気になれない
それはきっと、みおさんの距離の取り方が上手いせいだと思う
なんて、責任転嫁だろうか
踏み込みすぎないでいてくれるのは出会った時から
少しだけ気を抜いてしまいたいときに、何も聞かずに寄り添ってくれる
本当の恋人のような心地よさを感じてしまっている自分がいることには、随分前から気付いて居た
マズい傾向だと言うことにも、随分前から気付いていた
どうしようか、何て考えながらも動く気になれない
僕が動かなければこの関係は変わらないと知っているのに
みおさんからこの関係を終わらせようと言われることは、みおさんに思い人でもできない限り無いことを知っているのに
このまま僕に縛り付けるわけにはいけないと、冷静な自身が訴えかけている
彼女は守りたいこの国の大切な人、平穏
殺伐とした毎日の中で、その殺伐から遠い存在がこのポアロとみおさんで
その平穏を壊してはいけない、守りたい、守らなければならない
そんな心とは裏腹にズルズルと続けてしまっている関係に頭を悩ませている、そんな中
「みおさん、ですか?今日は会う約束してませんが…」
「そうですか…
ホントどこ行ったんだろ、みお姉…」
「居ないんですか?」
「はい、携帯も繋がらなくて…
確かに元々連絡不精で、サイレントモードにしてるから電話になかなか気付いてくれないんですけど
よく携帯触っている人だから、返信は早いんです」
「いつ頃から?」
「もう3時間は経つと思います
今日は絶対仕事しないだろうし…」
「絶対?」
「えっと、あー、安室さんなら大丈夫かな
あの、安室さん、みお姉から聞いてますか?…家族の事」
「…簡単には」
「…今日、命日なんです
だから、絶対仕事なんてしない
いつもならあまり気にしないですけど、今日はちょっと心配で…」
「…そうですね
僕ももう少しで上がりなので、探してみますね」
「ありがとうございます!」
ポアロへとやってきた蘭さんの話によると、みおさんと長らく連絡が取れないらしい
確かにみおさんは休日は寝こけている事が多いらしいから、電話に気付かない事も多々ある
けれど先程の話にもあったように、起きていれば大体携帯は手元にあり、すぐ連絡には気付く
それなのに返信が無い、と言うのは心配しても可笑しくない
にしても…、命日、か
家族が居ないということは聞いていた
勝手に調べさせてもらった結果、両親と妹が殺されており犯人はまだ捕まっていないという事も知っている
そうか、そう言えばあの事件は今日だったな
そのまま仕事を終え、車をある場所へと走らせる
彼女の家族が眠っている場所へ
酷く冷え込む今日は、夜から雪が降る予報となっている
世間が、ホワイト・クリスマスと盛り上がっている今日は、彼女にとって忘れられない日なのだ
「さすがにここには居ないか…」
墓地へと車を走らせ、目的の墓前に立つがそこに人影はなく
真新しい綺麗な花が供えられたその墓前に、俺も手を合わせる
一応一通り墓地内を周り、みおさんが居ないことを確認して立ち去る
その頃にはチラホラと雪が舞い始めていた
あと思い当たる場所と言えば…
彼女はあまり外へ出ないため、行く場所は限られている
自身でも方向音痴を自覚しているため、あまり知らない場所へは行かないはず
普段来るような場所ではないここで、あちこち1人で歩き回るとは考えにくい
と言うことは…
車を近くのパーキングに停め、傘を1本取り目的地へ
出来ればいて欲しくない
今すぐこの携帯が震えて、みおさんが見つかったと連絡がくればいいのに、なんて事を考える
けれど、心の何処かでは既に確信している
今から向かう場所にみおさんが居ることを
辿り着いたのは小さな公園
その中の遊具の1つ、ブランコに座る人影が分かる
やはり、ここだったか
彼女が住んでいた家があったこの場所
今は取り壊されて、このように小さな公園となっているが
「みおさん」
雪が降る中、いつもは徹底されている防寒対策も甘いままそこに座り続けるみおさん
どのくらいの時間ここに居たのか分からないが、頭に雪が積もっているため、雪が降り始めた頃にはもうこの場所に居たという事で
声を掛け傘を差し出すが気付いていないのか何の反応もない
俯いているため顔は見えないが、この距離なら靴が視界に入っていても可笑しくないだろう
「みおさん…?」
片膝をついて顔を覗き込む
その際、視界に飛び込んできたものに、目を見開いた
静かに、静かに、透明な雫を零すその姿
彼女の涙を見たのは、初めてだった
事件に巻き込まれて死体を見た時も、ストーカー騒動があった時も泣かなかった彼女が
とても静かに、涙を流していた
「みおさん」
『……あ、むろ、さん…?』
「風邪を引いてしまいますよ」
『……よく、此処が分かりましたね』
「まぁ、探偵ですから」
再び掛けた声に漸く反応を示したみおさん
声は掠れており、いつもより低く、そして小さい
感情が機能していないかのような、無感動な声
それなのに流れ続ける涙
「取り敢えず、帰りましょう
蘭さんがとても心配していましたよ」
『………です、よね』
「みおさん?」
『安室さん』
「はい」
『……お願い、助け、て…』
「みおさん!」
小さく、小さく呟いて
そのまま力尽きたかのように倒れる体を受け止める
胸は動いており、気を失っただけだと言うことは分かるが
「…隈」
元々不眠症気味だと言う彼女
けれど、隈が出来るほど寝不足な事なんてほとんど無い
少し窶れたような顔
冷えきった体、指先、頬
こんなになるまで誰も頼らない彼女は、本当に甘えるのが下手くそだ
もっと早く、頼ってくれたっていいのに
偽りでも傍に居られる関係なのに
着ていたコートを彼女へ掛け抱き上げる
コナン君へみおさんを発見したこと、心配だから今日は僕の家へ連れて帰ることを連絡し、車へと向かう
一応彼氏役をしている訳なので、少しは大目に見て欲しい
まぁ、誓って、同意のない上で手を出すことはないけれど
ただ君一人のためにある
(そんなこと口が裂けても言えないけど、今だけは許して欲しい)
毎年この時期になると繰り返し夢を見る
起きたら忘れてしまっているが、とても怖い夢、嫌な夢
毎回飛び起きて、寝たのに寝た気がしない毎日が続く
毎年、毎年、あの日から続く悪夢
生きている限り続くであろうこの嫌な習慣は、一生慣れることはないし、痛みが和らぐことは無い
けれど、逃れる術もない
私を蝕む、呪いのようだ
あの日からもう10年は経とうとしていると言うのに
もう、涙も零れないのに
忘れるな、と言うかの様に、繰り返す悪夢
寒い、寒いこの時期は嫌いだ
私の心を、あの日へと誘うから
でも、これは私の罪だから
受け入れなければいけない痛みだから
そう割り切っているつもりなのに、毎年毎年苦しくて苦しくて
誰かに助けて欲しくって
ふと過ぎったその姿に、気付かない振りをした
*****
side.A
あのストーカー騒ぎから時は経ち、冬
何となく続いているごっこ遊びのような恋人関係は、順調で心地よくて、正直抜け出せなくなってしまいそうな、そんな心持ち
何の問題も無く続いているこの関係は、このままではいけない、と分かっていながらも終止符を打つ気になれない
それはきっと、みおさんの距離の取り方が上手いせいだと思う
なんて、責任転嫁だろうか
踏み込みすぎないでいてくれるのは出会った時から
少しだけ気を抜いてしまいたいときに、何も聞かずに寄り添ってくれる
本当の恋人のような心地よさを感じてしまっている自分がいることには、随分前から気付いて居た
マズい傾向だと言うことにも、随分前から気付いていた
どうしようか、何て考えながらも動く気になれない
僕が動かなければこの関係は変わらないと知っているのに
みおさんからこの関係を終わらせようと言われることは、みおさんに思い人でもできない限り無いことを知っているのに
このまま僕に縛り付けるわけにはいけないと、冷静な自身が訴えかけている
彼女は守りたいこの国の大切な人、平穏
殺伐とした毎日の中で、その殺伐から遠い存在がこのポアロとみおさんで
その平穏を壊してはいけない、守りたい、守らなければならない
そんな心とは裏腹にズルズルと続けてしまっている関係に頭を悩ませている、そんな中
「みおさん、ですか?今日は会う約束してませんが…」
「そうですか…
ホントどこ行ったんだろ、みお姉…」
「居ないんですか?」
「はい、携帯も繋がらなくて…
確かに元々連絡不精で、サイレントモードにしてるから電話になかなか気付いてくれないんですけど
よく携帯触っている人だから、返信は早いんです」
「いつ頃から?」
「もう3時間は経つと思います
今日は絶対仕事しないだろうし…」
「絶対?」
「えっと、あー、安室さんなら大丈夫かな
あの、安室さん、みお姉から聞いてますか?…家族の事」
「…簡単には」
「…今日、命日なんです
だから、絶対仕事なんてしない
いつもならあまり気にしないですけど、今日はちょっと心配で…」
「…そうですね
僕ももう少しで上がりなので、探してみますね」
「ありがとうございます!」
ポアロへとやってきた蘭さんの話によると、みおさんと長らく連絡が取れないらしい
確かにみおさんは休日は寝こけている事が多いらしいから、電話に気付かない事も多々ある
けれど先程の話にもあったように、起きていれば大体携帯は手元にあり、すぐ連絡には気付く
それなのに返信が無い、と言うのは心配しても可笑しくない
にしても…、命日、か
家族が居ないということは聞いていた
勝手に調べさせてもらった結果、両親と妹が殺されており犯人はまだ捕まっていないという事も知っている
そうか、そう言えばあの事件は今日だったな
そのまま仕事を終え、車をある場所へと走らせる
彼女の家族が眠っている場所へ
酷く冷え込む今日は、夜から雪が降る予報となっている
世間が、ホワイト・クリスマスと盛り上がっている今日は、彼女にとって忘れられない日なのだ
「さすがにここには居ないか…」
墓地へと車を走らせ、目的の墓前に立つがそこに人影はなく
真新しい綺麗な花が供えられたその墓前に、俺も手を合わせる
一応一通り墓地内を周り、みおさんが居ないことを確認して立ち去る
その頃にはチラホラと雪が舞い始めていた
あと思い当たる場所と言えば…
彼女はあまり外へ出ないため、行く場所は限られている
自身でも方向音痴を自覚しているため、あまり知らない場所へは行かないはず
普段来るような場所ではないここで、あちこち1人で歩き回るとは考えにくい
と言うことは…
車を近くのパーキングに停め、傘を1本取り目的地へ
出来ればいて欲しくない
今すぐこの携帯が震えて、みおさんが見つかったと連絡がくればいいのに、なんて事を考える
けれど、心の何処かでは既に確信している
今から向かう場所にみおさんが居ることを
辿り着いたのは小さな公園
その中の遊具の1つ、ブランコに座る人影が分かる
やはり、ここだったか
彼女が住んでいた家があったこの場所
今は取り壊されて、このように小さな公園となっているが
「みおさん」
雪が降る中、いつもは徹底されている防寒対策も甘いままそこに座り続けるみおさん
どのくらいの時間ここに居たのか分からないが、頭に雪が積もっているため、雪が降り始めた頃にはもうこの場所に居たという事で
声を掛け傘を差し出すが気付いていないのか何の反応もない
俯いているため顔は見えないが、この距離なら靴が視界に入っていても可笑しくないだろう
「みおさん…?」
片膝をついて顔を覗き込む
その際、視界に飛び込んできたものに、目を見開いた
静かに、静かに、透明な雫を零すその姿
彼女の涙を見たのは、初めてだった
事件に巻き込まれて死体を見た時も、ストーカー騒動があった時も泣かなかった彼女が
とても静かに、涙を流していた
「みおさん」
『……あ、むろ、さん…?』
「風邪を引いてしまいますよ」
『……よく、此処が分かりましたね』
「まぁ、探偵ですから」
再び掛けた声に漸く反応を示したみおさん
声は掠れており、いつもより低く、そして小さい
感情が機能していないかのような、無感動な声
それなのに流れ続ける涙
「取り敢えず、帰りましょう
蘭さんがとても心配していましたよ」
『………です、よね』
「みおさん?」
『安室さん』
「はい」
『……お願い、助け、て…』
「みおさん!」
小さく、小さく呟いて
そのまま力尽きたかのように倒れる体を受け止める
胸は動いており、気を失っただけだと言うことは分かるが
「…隈」
元々不眠症気味だと言う彼女
けれど、隈が出来るほど寝不足な事なんてほとんど無い
少し窶れたような顔
冷えきった体、指先、頬
こんなになるまで誰も頼らない彼女は、本当に甘えるのが下手くそだ
もっと早く、頼ってくれたっていいのに
偽りでも傍に居られる関係なのに
着ていたコートを彼女へ掛け抱き上げる
コナン君へみおさんを発見したこと、心配だから今日は僕の家へ連れて帰ることを連絡し、車へと向かう
一応彼氏役をしている訳なので、少しは大目に見て欲しい
まぁ、誓って、同意のない上で手を出すことはないけれど
ただ君一人のためにある
(そんなこと口が裂けても言えないけど、今だけは許して欲しい)