君が生きた世界を守ろう
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side.H
高校に入学した際知り合った九条桜雪と言う少女
真っ黒で真っ直ぐな黒髪と、綺麗に切り揃えられた前髪
タレ目気味な目は大体緩やかな曲線を描き笑みを象っており、人形のようだ
いつもにこにこ、と笑っており穏やかな大人しい子
じんぺーちゃんが話し掛けなければ、正直ここまで仲良くなることも無かっただろうという事はすぐに分かる
俺は基本的に思考が読めない人が苦手だ
軽い調子でそれなりの人望を集めて付かず離れず、それなりに立ち回る事を前提にしている俺にとって、思考が読めないと言うのはそれだけで一番馬が合わないのだ
彼女は、その部類の人間だ
笑みの中に全てを包み隠してしまう
それなのに、人の思考が読めるのでは無いのかと思う程、的を得た発言をするのだ
それでも一緒に居るのは、感情の全てを笑顔に隠してしまうこの子が俺達だけに時折見せる表情が気になるから
光を宿さない、真っ暗な瞳のまま笑う、その表情が気になって仕方ないから
それだけの理由なのだ
*****
「あれ、じんぺーちゃんは?」
『おかえりなさい、萩
購買に行くって出て行ったきり帰ってこないの』
「あー、サボるつもりだな、アイツ」
『だと思う』
困ったように笑う九条ちゃんは、分かってて止めなかったのだろう
何がいけないことか分かっていても、彼女は過干渉しない
正しいことが分かっていても、正しい答えを選ばない
強要しない
一定の距離は、いつまでも埋まらない
『萩はご飯食べたの?早かったね』
「聞いてよ、九条ちゃん」
『うん?』
「また振られちゃった」
『あら』
「続かないんだよなぁ、俺の何処が悪い?」
『また、“ ホントに好きなのか分からない”って奴?』
「そう!」
『それは狡いよねぇ
萩は最初に言ってるのにね、ちゃんと』
俺は自分で言うのもあれだがそれなりにモテる
告白される事は多いし、正直恋人が絶えないタイプだ
但し、俺から告白する事は無い
普通に好きだけど、それはみんな同じ
だから「君の事をそういう風に見た事はない」とちゃんと断っては居るのだ
じんぺーちゃんと九条ちゃんはこの事を知っているから、新しく彼女が出来る度に懲りないな、という目で見てくる(主にじんぺーちゃんが)
懲りないのは女の子の方だと思うけど
「九条ちゃんも」
『うん?』
「モテる割りに彼氏出来ないね?」
『…萩と同じだから』
「俺と同じ?」
『好きになる気持ちが分からないの』
ふわり、窓から入ってきた風が九条ちゃんの髪を揺らす
困ったようなその笑みは見慣れたもの
つい先程じんぺーちゃんへ向けてた笑み
でも、その瞳は真っ暗な、光の無い瞳で
『萩は凄いと思う
特別好きじゃないのに、好きになろうと頑張ってる
多分人としては普通に付き合っていける、ってくらいには好き何だろうけど、特別じゃない
萩の好きは、恋愛感情何かじゃない
付き合ってる間は浮気しないことで誠実を表してる
ちゃんと好きになろうとしてる、その人を知ろうとしている
だから、凄いと思う』
「九条ちゃん…?」
『萩は優しいよ、みんなに満遍なく優しい
でも、それだけ
それ以上になるのは、松くらいかな
その証拠に、萩は友達が多いけど名前で呼んでるのは松くらいだもん』
そう、俺はこれが苦手なのだ
そっちは何も見せないくせに、こっちの事ばっかり見透かした様に話すその様が
俺が隠している事まで全部、暴かれてしまいそうで少し、怖くなるくらいに
「九条ちゃんも狡いよねぇ」
『何が?』
「心でも読めるの?」
『読めないよ、何となく分かるだけ』
「九条ちゃんは何も教えてくれないのにね」
『私?』
「こんだけ一緒に居て、全然分かんないの九条ちゃんくらいなもんだよ」
『私、ちゃんと言ってるよ』
「嘘だー」
『判らないんだって、ずっと』
「何が?」
『全部』
ザァッ
強くなった風が窓から吹き抜ける
長い真っ黒な髪をかきあげて乱れさせる
九条ちゃんはまた困ったように笑って、髪を整えながら窓を閉める
向き合った時には、あの真っ暗な瞳は消えていた
『あれ、松帰ってきたの?』
「…風が強くなったからな」
『確かに』
おかえりなさい、とまた笑う
今までの事なんて無かったかのように
またその笑顔で包み隠してしまった
*****
「なぁ、じんぺーちゃん」
「あん?」
「全部分からないってどう言う事だと思う?」
「…九条か」
「今日もまた図星つかれちゃってさー
心読めるの?って聞いたら何となく分かるだけって
分かるのに分からないってどう言う事だと思う?」
「また九条の言葉遊びに振り回されてるのか」
「九条ちゃん、あの瞳して言ってきたんだよ」
クラスメイトにノートを集られている様を見ながらじんぺーちゃんに投げ掛ける
成績優秀で真面目な九条ちゃんのノートは、いつも引っ張りだこだ
ノートを見せること、それが相手の為にならないと分かっていても彼女は拒まない
代わりに宿題をやれ、と言うのは流石に断るが、ノートを見せること自体は拒まない
頼まれたら大体の事は引き受ける
それについて以前九条ちゃんに聞いたことがある
嫌にならないのか、相手のためを思ったらその行為は優しさじゃないと思うけれど、と
そうしたら彼女は笑って、わかってるよ?と当たり前のように宣った
『出された課題を解かずに写すだけじゃあの子達の勉強にならない
課題は解けていてもテストではその結果は反映されないから幾ら無能な教師でもそれくらいは気付くでしょ
でもだからって、私があの子達の為を思って何かしてあげる義務はあるの?
私を利用しようとハイエナのように集ってくるだけのあの子達に何かしてあげなきゃいけない?
あの子達が将来どうなろうと私の知った事じゃない
態々私が正しい道を示してあげなくちゃいけない?
それは私の仕事じゃ無いでしょ?
どうでもいいの、だから何も言わないの』
彼女は優しくなんかない
表面上は優しく映るけれど、その本質はどこまでも冷淡だ
ただこの集団生活の中で悪目立ちせず、爪弾きにされなければ彼女はそれでいいのだ
誰の記憶にも残らなくていいと、きっとそう思っているのだろう
彼女は他人に干渉しない
仕方を知らないとでも言うかのように、静かにそこに存在している
きっとあの日じんぺーちゃんが声を掛けなければそんな彼女の一面を知ることは無かっただろう
それくらい彼女は日常の一部のようにそこに存在しているだけの存在
風景に同化してしまっているかのような自然さで、そこに存在している
「なぁ、じんぺーちゃん」
「何だよ」
「九条ちゃんって一体何者なんだろうね」
「何者って…」
「俺、時々思ってしまうんだよ
人の振りした人形みたいだって」
彼女の行動には感情が伴わない
あのノートを見せると言う行為一つとってもそう
普通の気が弱い子ならこう返す筈なんだ
「断って変な空気にして、嫌われるのが怖いから」
その答えなら、俺はきっと彼女の事なんて気にしない
こんなに気になったりなんかしない
少しつつけば壊れてしまいそうな人形の様な、そんな人間でないなら
何も分からない
彼女の本質が全く見えてこない
それが不思議で不気味で、でもとこか放っておけなくて
壊れてしまいそうな彼女から、結局は目が離せないのだ
「九条は」
「うん?」
「ちゃんと人間だ、感情が育たなかっただけのな」
「…じんぺーちゃん、何か知ってるの?」
「知らねぇよ、何も
ただ、アイツの生き方は手探りすぎる」
手探り…
あぁ、確かにそう言われたらそうかもしれない
一つ一つ正解を探るように、恐る恐る相手の反応を窺いながら
でもそれは嫌われるのが怖いからとかそんな理由では無い
普通とはどんなものか、どうすれば普通の人間らしく他人の目に映るのか
それを探っているかのような、不自然さがある
けど、それは気付けないほど自然に行われている
関わらなければ、彼女のこんな側面知らないまま卒業しただろう、と言う事は簡単に想像出来る
それほどにまで、彼女は息をするのと同じくらいの自然さで行っているのだ
こんな不自然なことを、さも当たり前のことのように
「…九条ちゃんって、どんな風に生きてきたのかな」
「…さぁな」
「なんであんなに、明日自分が消えても誰も覚えてないでしょう、みたいな風に振る舞うのかな」
「そんな風に見えてんのか」
「じんぺーちゃんにはどんな風に見える?」
「…消えそう、と言うか消えることが前提、みたいな」
「…じんぺーちゃんも詩人だねぇ」
「…うっせぇ」
消えることが前提
確かにそう言われて、納得した自分がいた
最初から明らかにある、境界線
完全に踏み込ませない、誰も寄せ付けない九条ちゃんの内側
比較的仲良くしている今でも、鉄壁の仮面を貼り付けたまま俺達から逃げる
どうしたって埋まらない距離
「九条ちゃんって、俺等のことどう思ってんのかな」
「…女子かよ」
「だってさー、じんぺーちゃんは気になんない?」
「別に」
「冷たいなー」
「嫌いなら、とっくに離れて行ってんだろ、アイツなら」
「…確かにそうかもしれないけどさー」
こっちは全然知らないのに、一方的に知られているみたいな、そんなの何か悔しいじゃん
少しくらい、九条ちゃんの考え分かるようになりたいじゃん
なんて子供じみた対抗心なんだろうけど
ここまで分からないのは、初めてで
暴きたい、なんて九条ちゃんからしたらいい迷惑なんだろうけど
気になるもんは仕方ないじゃん、ねぇ?
夕闇を孕んだ瞳
(そんな目をするくらいなら、縋ってくれたらいいのにね)
高校に入学した際知り合った九条桜雪と言う少女
真っ黒で真っ直ぐな黒髪と、綺麗に切り揃えられた前髪
タレ目気味な目は大体緩やかな曲線を描き笑みを象っており、人形のようだ
いつもにこにこ、と笑っており穏やかな大人しい子
じんぺーちゃんが話し掛けなければ、正直ここまで仲良くなることも無かっただろうという事はすぐに分かる
俺は基本的に思考が読めない人が苦手だ
軽い調子でそれなりの人望を集めて付かず離れず、それなりに立ち回る事を前提にしている俺にとって、思考が読めないと言うのはそれだけで一番馬が合わないのだ
彼女は、その部類の人間だ
笑みの中に全てを包み隠してしまう
それなのに、人の思考が読めるのでは無いのかと思う程、的を得た発言をするのだ
それでも一緒に居るのは、感情の全てを笑顔に隠してしまうこの子が俺達だけに時折見せる表情が気になるから
光を宿さない、真っ暗な瞳のまま笑う、その表情が気になって仕方ないから
それだけの理由なのだ
*****
「あれ、じんぺーちゃんは?」
『おかえりなさい、萩
購買に行くって出て行ったきり帰ってこないの』
「あー、サボるつもりだな、アイツ」
『だと思う』
困ったように笑う九条ちゃんは、分かってて止めなかったのだろう
何がいけないことか分かっていても、彼女は過干渉しない
正しいことが分かっていても、正しい答えを選ばない
強要しない
一定の距離は、いつまでも埋まらない
『萩はご飯食べたの?早かったね』
「聞いてよ、九条ちゃん」
『うん?』
「また振られちゃった」
『あら』
「続かないんだよなぁ、俺の何処が悪い?」
『また、“ ホントに好きなのか分からない”って奴?』
「そう!」
『それは狡いよねぇ
萩は最初に言ってるのにね、ちゃんと』
俺は自分で言うのもあれだがそれなりにモテる
告白される事は多いし、正直恋人が絶えないタイプだ
但し、俺から告白する事は無い
普通に好きだけど、それはみんな同じ
だから「君の事をそういう風に見た事はない」とちゃんと断っては居るのだ
じんぺーちゃんと九条ちゃんはこの事を知っているから、新しく彼女が出来る度に懲りないな、という目で見てくる(主にじんぺーちゃんが)
懲りないのは女の子の方だと思うけど
「九条ちゃんも」
『うん?』
「モテる割りに彼氏出来ないね?」
『…萩と同じだから』
「俺と同じ?」
『好きになる気持ちが分からないの』
ふわり、窓から入ってきた風が九条ちゃんの髪を揺らす
困ったようなその笑みは見慣れたもの
つい先程じんぺーちゃんへ向けてた笑み
でも、その瞳は真っ暗な、光の無い瞳で
『萩は凄いと思う
特別好きじゃないのに、好きになろうと頑張ってる
多分人としては普通に付き合っていける、ってくらいには好き何だろうけど、特別じゃない
萩の好きは、恋愛感情何かじゃない
付き合ってる間は浮気しないことで誠実を表してる
ちゃんと好きになろうとしてる、その人を知ろうとしている
だから、凄いと思う』
「九条ちゃん…?」
『萩は優しいよ、みんなに満遍なく優しい
でも、それだけ
それ以上になるのは、松くらいかな
その証拠に、萩は友達が多いけど名前で呼んでるのは松くらいだもん』
そう、俺はこれが苦手なのだ
そっちは何も見せないくせに、こっちの事ばっかり見透かした様に話すその様が
俺が隠している事まで全部、暴かれてしまいそうで少し、怖くなるくらいに
「九条ちゃんも狡いよねぇ」
『何が?』
「心でも読めるの?」
『読めないよ、何となく分かるだけ』
「九条ちゃんは何も教えてくれないのにね」
『私?』
「こんだけ一緒に居て、全然分かんないの九条ちゃんくらいなもんだよ」
『私、ちゃんと言ってるよ』
「嘘だー」
『判らないんだって、ずっと』
「何が?」
『全部』
ザァッ
強くなった風が窓から吹き抜ける
長い真っ黒な髪をかきあげて乱れさせる
九条ちゃんはまた困ったように笑って、髪を整えながら窓を閉める
向き合った時には、あの真っ暗な瞳は消えていた
『あれ、松帰ってきたの?』
「…風が強くなったからな」
『確かに』
おかえりなさい、とまた笑う
今までの事なんて無かったかのように
またその笑顔で包み隠してしまった
*****
「なぁ、じんぺーちゃん」
「あん?」
「全部分からないってどう言う事だと思う?」
「…九条か」
「今日もまた図星つかれちゃってさー
心読めるの?って聞いたら何となく分かるだけって
分かるのに分からないってどう言う事だと思う?」
「また九条の言葉遊びに振り回されてるのか」
「九条ちゃん、あの瞳して言ってきたんだよ」
クラスメイトにノートを集られている様を見ながらじんぺーちゃんに投げ掛ける
成績優秀で真面目な九条ちゃんのノートは、いつも引っ張りだこだ
ノートを見せること、それが相手の為にならないと分かっていても彼女は拒まない
代わりに宿題をやれ、と言うのは流石に断るが、ノートを見せること自体は拒まない
頼まれたら大体の事は引き受ける
それについて以前九条ちゃんに聞いたことがある
嫌にならないのか、相手のためを思ったらその行為は優しさじゃないと思うけれど、と
そうしたら彼女は笑って、わかってるよ?と当たり前のように宣った
『出された課題を解かずに写すだけじゃあの子達の勉強にならない
課題は解けていてもテストではその結果は反映されないから幾ら無能な教師でもそれくらいは気付くでしょ
でもだからって、私があの子達の為を思って何かしてあげる義務はあるの?
私を利用しようとハイエナのように集ってくるだけのあの子達に何かしてあげなきゃいけない?
あの子達が将来どうなろうと私の知った事じゃない
態々私が正しい道を示してあげなくちゃいけない?
それは私の仕事じゃ無いでしょ?
どうでもいいの、だから何も言わないの』
彼女は優しくなんかない
表面上は優しく映るけれど、その本質はどこまでも冷淡だ
ただこの集団生活の中で悪目立ちせず、爪弾きにされなければ彼女はそれでいいのだ
誰の記憶にも残らなくていいと、きっとそう思っているのだろう
彼女は他人に干渉しない
仕方を知らないとでも言うかのように、静かにそこに存在している
きっとあの日じんぺーちゃんが声を掛けなければそんな彼女の一面を知ることは無かっただろう
それくらい彼女は日常の一部のようにそこに存在しているだけの存在
風景に同化してしまっているかのような自然さで、そこに存在している
「なぁ、じんぺーちゃん」
「何だよ」
「九条ちゃんって一体何者なんだろうね」
「何者って…」
「俺、時々思ってしまうんだよ
人の振りした人形みたいだって」
彼女の行動には感情が伴わない
あのノートを見せると言う行為一つとってもそう
普通の気が弱い子ならこう返す筈なんだ
「断って変な空気にして、嫌われるのが怖いから」
その答えなら、俺はきっと彼女の事なんて気にしない
こんなに気になったりなんかしない
少しつつけば壊れてしまいそうな人形の様な、そんな人間でないなら
何も分からない
彼女の本質が全く見えてこない
それが不思議で不気味で、でもとこか放っておけなくて
壊れてしまいそうな彼女から、結局は目が離せないのだ
「九条は」
「うん?」
「ちゃんと人間だ、感情が育たなかっただけのな」
「…じんぺーちゃん、何か知ってるの?」
「知らねぇよ、何も
ただ、アイツの生き方は手探りすぎる」
手探り…
あぁ、確かにそう言われたらそうかもしれない
一つ一つ正解を探るように、恐る恐る相手の反応を窺いながら
でもそれは嫌われるのが怖いからとかそんな理由では無い
普通とはどんなものか、どうすれば普通の人間らしく他人の目に映るのか
それを探っているかのような、不自然さがある
けど、それは気付けないほど自然に行われている
関わらなければ、彼女のこんな側面知らないまま卒業しただろう、と言う事は簡単に想像出来る
それほどにまで、彼女は息をするのと同じくらいの自然さで行っているのだ
こんな不自然なことを、さも当たり前のことのように
「…九条ちゃんって、どんな風に生きてきたのかな」
「…さぁな」
「なんであんなに、明日自分が消えても誰も覚えてないでしょう、みたいな風に振る舞うのかな」
「そんな風に見えてんのか」
「じんぺーちゃんにはどんな風に見える?」
「…消えそう、と言うか消えることが前提、みたいな」
「…じんぺーちゃんも詩人だねぇ」
「…うっせぇ」
消えることが前提
確かにそう言われて、納得した自分がいた
最初から明らかにある、境界線
完全に踏み込ませない、誰も寄せ付けない九条ちゃんの内側
比較的仲良くしている今でも、鉄壁の仮面を貼り付けたまま俺達から逃げる
どうしたって埋まらない距離
「九条ちゃんって、俺等のことどう思ってんのかな」
「…女子かよ」
「だってさー、じんぺーちゃんは気になんない?」
「別に」
「冷たいなー」
「嫌いなら、とっくに離れて行ってんだろ、アイツなら」
「…確かにそうかもしれないけどさー」
こっちは全然知らないのに、一方的に知られているみたいな、そんなの何か悔しいじゃん
少しくらい、九条ちゃんの考え分かるようになりたいじゃん
なんて子供じみた対抗心なんだろうけど
ここまで分からないのは、初めてで
暴きたい、なんて九条ちゃんからしたらいい迷惑なんだろうけど
気になるもんは仕方ないじゃん、ねぇ?
夕闇を孕んだ瞳
(そんな目をするくらいなら、縋ってくれたらいいのにね)