君が生きた世界を守ろう
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秀一さんを見送ったその年に私は中学へと進学することとなり、退屈すぎる中学生活を再び送ることとなる
なんだか私もAPTX4869を飲んだ気分だ
あの小さな名探偵は小学校まで逆行したのか、よくこの退屈に耐えられたな…
中学生らしさ、何てものは当時の私にでさえ無かったもので
どうしても周りと壁というか距離が出来てしまうのは、まぁ当たり前とも言えた
けれど今までの生活の中で培ってきた愛想の良さで、虐め、にまでは発展せず浮いては居るものの、波風立てること無く2年間を過ごし、3年
伊達航、と言う人物と同じクラスになった
どうやら神様とやらは、私に動けと仰りたいらしい
マジか、どうするよ…
なんて思って居れば、まぁ構ってくること構ってくること
流石は正義の味方、お巡りさんになるだけの実力者
浮いているクラスメイトは放っておけないって事ですね、余計なお世話です
何て口が裂けても言えるはず無く
なんだかんだ最後の一年間は、この伊達航という人間と過ごす時間が大半であった
毎朝毎朝会う度に、「今日も生きてるな!」と生存確認される意味はよく分からないが
自殺未遂にもならないような自殺未遂ならばあるが、それを知るはずも無いのに、この男察しが良すぎる
私はそんなに死に急いでいるような顔をしているのだろうか
『伊達、私にばっかり構ってないで他行けばいいのに』
「ん?それはつまりどっか行けと言ってるか?」
『…そこまでは言ってないけど』
中学生という思春期、多感なこの時期に女とばっかり居るのは、双方どうなんだろうか
まぁ、私はそんなこと気にしないし噂になろうがその真意をわざわざ確かめに来るような人間も居ない
けれど、この伊達航という人間は社交的であり友人も多いタイプ
仲間内でからかわれたりしないのだろうか
あぁ、でもいつものように豪快に笑って流してしまいそうだな…、この男なら
早々にその結論に思い至った私は、随分と初期の方に口を出すのを止めた
まぁ、私としても伊達の前では笑顔の仮面を貼り付けなくて済む分助かっては居るのだが
『ねぇ、伊達』
「おう、どうした?」
『生きてるな、って何で確認してくんの?そんなすぐ死んじゃいそう?』
「そうだなー、人間は結構あっけなく死ぬからな」
おうおう、中学生
アンタこんな頃からそんな達観してるとしんどくないか、大丈夫?
人はあっけなく死ぬ
その様を私は目の当たりにしている
それが分かっていて、この男は警察官になろうとしているのか
いい人、何だろうなぁ…
この男は、こうして傍には居るが口出しはしない
察しはいいので、いろいろ思うこともあるのだろうけど、こちらが話すまでは待つスタンス
まぁ、余程のことがあれば口出しするのだろうけど
「九条はな、周りがちゃんと見ててやらないと、さっさと退場して行ってしまいそうなんだよ」
『退場って、どこから』
「人生から?」
『…詩人だね』
「俺も気持ち悪い事言ったと思った」
『自覚があるなら何よりです』
随分らしくないことを言うもんだから、思わずマジマジと凝視してしまった
それを感じたのであろう、伊達も苦笑している
いや、でもホントそんなこと言うタイプの人間では無かったはずだ
無骨な、漢ってタイプの人間なんだ
「九条はもし目の前で拳銃を突きつけられて、しかも自分は丸腰で、ってそんな状況になったときあっさりその弾丸を受け入れてしいまいそうなんだよな」
『…やだなー、そんなシチュエーション』
「喩えだ、喩え」
『分かってるけど、そうだね
伊達の言うことは多分あってるんだと思うよ、そんな状況になってみないと分かんないけど』
「…分かんないって言いながらも肯定出来るって事は、どこかでそう思ってるって事だろ」
それは静かな声だった
窘めるでも無い、批難するでも無い、今自分が思っただけのその言葉が口から零れ落ちたかのような、そんな言葉
静かなそれに、何と返せば良いか分からなくてこちらもつい黙ってしまう
もう、冗談だよ、なんて笑って誤魔化せる雰囲気では無くなってしまった
「九条は…」
『うん』
「…死にたいって思ってるのか」
その問いに疑問符は付いていなかった
一応質問の形は取っていたが、恐らく何処か確信めいているのだろう
じっと、真っ直ぐ見つめてくるその瞳にどう答えるのが正解か少々頭を悩ませる
噓を吐いたならきっと、それが噓と分かりながらも騙されたフリをしてくれるだろう
この人はきっと、そう言う人間だから
私が真実を語る義務はない
話したくないなら話さなくたっていい、それは許されている
『…どうだろう
死にたいって訳じゃ無いけど、生きていたいとも思っていないかな』
「…そうか」
『それに、もうそんなことは出来ないと思うから』
私が返した限りなく本音に近いその答えを、伊達は静かに受け止めた
相変わらず否定も批難もない、静かに飲み込むだけの返答
多分だけど、この会話をした日から私と伊達の関係は少し変わった気がする
間柄を表す言葉は友人のまま変わりないけれど、何というか少しだけ距離が近くなった様な気がする
深く関わる気なんて最初は本当に無かった
知り合いにさえならなければ、誰が死んだとしてもテレビの向こうの出来事になることは分かっていたから
でもこうして関わってしまって、紙面の登場人物では無くなってしまったからにはもう
『ねぇ、伊達』
「おう、どうした」
『私ね、ちょっと変わった能力があるんだ、って言ったらどうする?』
それは、中学の卒業式での話
一頻りお別れの挨拶が終わったのか、伊達がこちらに気付いて近寄ってきたのを良いことに切り出してみることにしたのだ
「それは何というか…、何となくやっぱりな、と思えるな」
『何それ』
「それだけ九条は人と違ってたってことだろ」
『はっきり言うなー』
オブラートに包む気のない伊達の言葉
それに私が傷付くような人間じゃないと言う事を知っているから紡がれる言葉
それだけの信頼関係が築けてしまったのだ、もうこの人は他人とは到底言えない
『未来予知、してあげる』
「お、どんとこい」
『伊達は将来警察官になります』
「おー、俺は無事夢を叶えることが出来たんだな」
『それで金髪美人の彼女が出来ます』
「…九条、それは本当に俺か?俺だぞ?金髪美人?」
『結婚の約束までします』
「そんな奇跡が起きるのか…」
『でも、ご両親に挨拶に行くその日に交通事故に遭って伊達は死んでしまいます』
「……マジか」
『親しくなった人の、その人生で最も危険な場面の未来予知って言う限局的な予知なんだ
私を信じてもいいって思ってくれるなら、覚えてて
28歳の冬、防げる死だから覚えてて、幸せになって』
「…そうだなー、そんな奇跡的な出来事逃すなんて有り得ないよな
しかも分かってる事故なら尚更」
『かなり先の未来だけど、まぁ、伊達の記憶力を信じてるよ』
そうやって一方的に言い放つ
半信半疑、だけど基本的には信じる方向できっとコイツの思考は進んでる
そんなことに小さく笑って、卒業アルバムを奪い取る
カラフルに埋め尽くされているフリースペース、殆ど無い隙間に小さく目立たない黒いペンで書き込んで返す
『じゃあね、伊達
思って居たより悪くない1年になったよ』
一方的に別れを告げて帰路につく
連絡先は交換していない
今後の彼の人生に、私は登場する可能性の方が少ない
彼の生死がどうなったか、何て確認するようなこともきっとない
覚えて居たなら気を付けるだろうし、そうで無いなら原作通りの結末を迎える
それだけのこと
これ以上の干渉の仕方を、私は知らない
それでも出来ることなら
『叶うことなら“幸せに生きてね”、伊達』
ずっと何年も先のこと
この忠告が意味を成さない可能性の方が高いけれど、少しだけ願っておくね
やっぱり私は、祈ることしか出来ないようだから
祈りの結末
(それを知ることは出来ないかもしれないけど)
なんだか私もAPTX4869を飲んだ気分だ
あの小さな名探偵は小学校まで逆行したのか、よくこの退屈に耐えられたな…
中学生らしさ、何てものは当時の私にでさえ無かったもので
どうしても周りと壁というか距離が出来てしまうのは、まぁ当たり前とも言えた
けれど今までの生活の中で培ってきた愛想の良さで、虐め、にまでは発展せず浮いては居るものの、波風立てること無く2年間を過ごし、3年
伊達航、と言う人物と同じクラスになった
どうやら神様とやらは、私に動けと仰りたいらしい
マジか、どうするよ…
なんて思って居れば、まぁ構ってくること構ってくること
流石は正義の味方、お巡りさんになるだけの実力者
浮いているクラスメイトは放っておけないって事ですね、余計なお世話です
何て口が裂けても言えるはず無く
なんだかんだ最後の一年間は、この伊達航という人間と過ごす時間が大半であった
毎朝毎朝会う度に、「今日も生きてるな!」と生存確認される意味はよく分からないが
自殺未遂にもならないような自殺未遂ならばあるが、それを知るはずも無いのに、この男察しが良すぎる
私はそんなに死に急いでいるような顔をしているのだろうか
『伊達、私にばっかり構ってないで他行けばいいのに』
「ん?それはつまりどっか行けと言ってるか?」
『…そこまでは言ってないけど』
中学生という思春期、多感なこの時期に女とばっかり居るのは、双方どうなんだろうか
まぁ、私はそんなこと気にしないし噂になろうがその真意をわざわざ確かめに来るような人間も居ない
けれど、この伊達航という人間は社交的であり友人も多いタイプ
仲間内でからかわれたりしないのだろうか
あぁ、でもいつものように豪快に笑って流してしまいそうだな…、この男なら
早々にその結論に思い至った私は、随分と初期の方に口を出すのを止めた
まぁ、私としても伊達の前では笑顔の仮面を貼り付けなくて済む分助かっては居るのだが
『ねぇ、伊達』
「おう、どうした?」
『生きてるな、って何で確認してくんの?そんなすぐ死んじゃいそう?』
「そうだなー、人間は結構あっけなく死ぬからな」
おうおう、中学生
アンタこんな頃からそんな達観してるとしんどくないか、大丈夫?
人はあっけなく死ぬ
その様を私は目の当たりにしている
それが分かっていて、この男は警察官になろうとしているのか
いい人、何だろうなぁ…
この男は、こうして傍には居るが口出しはしない
察しはいいので、いろいろ思うこともあるのだろうけど、こちらが話すまでは待つスタンス
まぁ、余程のことがあれば口出しするのだろうけど
「九条はな、周りがちゃんと見ててやらないと、さっさと退場して行ってしまいそうなんだよ」
『退場って、どこから』
「人生から?」
『…詩人だね』
「俺も気持ち悪い事言ったと思った」
『自覚があるなら何よりです』
随分らしくないことを言うもんだから、思わずマジマジと凝視してしまった
それを感じたのであろう、伊達も苦笑している
いや、でもホントそんなこと言うタイプの人間では無かったはずだ
無骨な、漢ってタイプの人間なんだ
「九条はもし目の前で拳銃を突きつけられて、しかも自分は丸腰で、ってそんな状況になったときあっさりその弾丸を受け入れてしいまいそうなんだよな」
『…やだなー、そんなシチュエーション』
「喩えだ、喩え」
『分かってるけど、そうだね
伊達の言うことは多分あってるんだと思うよ、そんな状況になってみないと分かんないけど』
「…分かんないって言いながらも肯定出来るって事は、どこかでそう思ってるって事だろ」
それは静かな声だった
窘めるでも無い、批難するでも無い、今自分が思っただけのその言葉が口から零れ落ちたかのような、そんな言葉
静かなそれに、何と返せば良いか分からなくてこちらもつい黙ってしまう
もう、冗談だよ、なんて笑って誤魔化せる雰囲気では無くなってしまった
「九条は…」
『うん』
「…死にたいって思ってるのか」
その問いに疑問符は付いていなかった
一応質問の形は取っていたが、恐らく何処か確信めいているのだろう
じっと、真っ直ぐ見つめてくるその瞳にどう答えるのが正解か少々頭を悩ませる
噓を吐いたならきっと、それが噓と分かりながらも騙されたフリをしてくれるだろう
この人はきっと、そう言う人間だから
私が真実を語る義務はない
話したくないなら話さなくたっていい、それは許されている
『…どうだろう
死にたいって訳じゃ無いけど、生きていたいとも思っていないかな』
「…そうか」
『それに、もうそんなことは出来ないと思うから』
私が返した限りなく本音に近いその答えを、伊達は静かに受け止めた
相変わらず否定も批難もない、静かに飲み込むだけの返答
多分だけど、この会話をした日から私と伊達の関係は少し変わった気がする
間柄を表す言葉は友人のまま変わりないけれど、何というか少しだけ距離が近くなった様な気がする
深く関わる気なんて最初は本当に無かった
知り合いにさえならなければ、誰が死んだとしてもテレビの向こうの出来事になることは分かっていたから
でもこうして関わってしまって、紙面の登場人物では無くなってしまったからにはもう
『ねぇ、伊達』
「おう、どうした」
『私ね、ちょっと変わった能力があるんだ、って言ったらどうする?』
それは、中学の卒業式での話
一頻りお別れの挨拶が終わったのか、伊達がこちらに気付いて近寄ってきたのを良いことに切り出してみることにしたのだ
「それは何というか…、何となくやっぱりな、と思えるな」
『何それ』
「それだけ九条は人と違ってたってことだろ」
『はっきり言うなー』
オブラートに包む気のない伊達の言葉
それに私が傷付くような人間じゃないと言う事を知っているから紡がれる言葉
それだけの信頼関係が築けてしまったのだ、もうこの人は他人とは到底言えない
『未来予知、してあげる』
「お、どんとこい」
『伊達は将来警察官になります』
「おー、俺は無事夢を叶えることが出来たんだな」
『それで金髪美人の彼女が出来ます』
「…九条、それは本当に俺か?俺だぞ?金髪美人?」
『結婚の約束までします』
「そんな奇跡が起きるのか…」
『でも、ご両親に挨拶に行くその日に交通事故に遭って伊達は死んでしまいます』
「……マジか」
『親しくなった人の、その人生で最も危険な場面の未来予知って言う限局的な予知なんだ
私を信じてもいいって思ってくれるなら、覚えてて
28歳の冬、防げる死だから覚えてて、幸せになって』
「…そうだなー、そんな奇跡的な出来事逃すなんて有り得ないよな
しかも分かってる事故なら尚更」
『かなり先の未来だけど、まぁ、伊達の記憶力を信じてるよ』
そうやって一方的に言い放つ
半信半疑、だけど基本的には信じる方向できっとコイツの思考は進んでる
そんなことに小さく笑って、卒業アルバムを奪い取る
カラフルに埋め尽くされているフリースペース、殆ど無い隙間に小さく目立たない黒いペンで書き込んで返す
『じゃあね、伊達
思って居たより悪くない1年になったよ』
一方的に別れを告げて帰路につく
連絡先は交換していない
今後の彼の人生に、私は登場する可能性の方が少ない
彼の生死がどうなったか、何て確認するようなこともきっとない
覚えて居たなら気を付けるだろうし、そうで無いなら原作通りの結末を迎える
それだけのこと
これ以上の干渉の仕方を、私は知らない
それでも出来ることなら
『叶うことなら“幸せに生きてね”、伊達』
ずっと何年も先のこと
この忠告が意味を成さない可能性の方が高いけれど、少しだけ願っておくね
やっぱり私は、祈ることしか出来ないようだから
祈りの結末
(それを知ることは出来ないかもしれないけど)