大学生のキャラたちがゆっくりと青春する物語(TNS)
番外編
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「あ、幸村君だ」
「ん?あ、ホントだ。ホント相変わらず綺麗な顔してるなー、女辞めたくなる」
「マジそれな」
「1人でいるの珍しいね、いつも取り巻きいるのに」
「ほれ、横見てみ?錦さん居るじゃん」
「あー、あそこ仲いいもんねぇ…
学部も何なら理系文系すらも違うのに、結構一緒に居るよね、あの2人」
「やっぱ付き合ってんのかなー」
そんな会話が耳に飛び込んできたのは、今回が初めてでは無い
出会った時から分かっていたことではあるが、彼女は男女の距離感が馴れてしまえば割と近い
その距離感は同性に対するものとほぼ同じだと思う
まぁ、抱きついたり、というのは同性にしかしていないが、パーソナルスペース的には同じと言える
噂の相手として名前が挙がるのは、現在進行形でも上がっている幸村に何かと接点の多い白石、仁王、それから僕
まぁ、以前は手塚もその中に名前があったが琴原さんとの交際が始まってからその頻度は随分と減った(無くなったわけではない)
「まー、お似合いだもんねぇ
あの顔面の横に並ぶ勇気はないなー、私」
「マジそれな」
幸村の持っている雑誌を一緒に覗き込んでいる為、距離は無い
肩が触れあう程の距離、と言うもので、けれどそれを全く意識していない2人
お互いが友人としての認識しか無いため、内情を知る身としてはそれは当たり前の光景で
まぁ、知らない者から見たらどう見えるか、そんなことが分からない人達では無いが、まずそんな他者評価を気にしない人達でもある
噂したいなら好きにすれば良い、そう言ったスタンスを貫いている(それは僕にも言えることではあるが)為、今更その態度にどうこう言うつもりは無い
まぁ、長々と遠回りにいろいろ語ったが、言いたいことは彼氏としては面白くない、と言う事で
梨乃ちゃんは、付き合っていることを態々言い触らしたりするタイプでは無い
聞かれたら隠すことは無いが、自ら宣言する事は無い
また、女性比率が比較的少ない医学部は、そう言った噂が回るスピードが割と遅い
付き合ってから、態度が劇的に変わることも無い
人前でくっつくことは殆どしないため、他者から見て関係が変化したとは分からないと思う
分かりやすくもっとイチャイチャしたいとは言わないが、せめてそろそろ彼氏は僕だと周りに認識して貰いたいというのが実情だ
「梨乃ちゃん」
『あ、不二くん
お疲れ様―、今日の講義はもう終わり?』
「うん、梨乃ちゃんも?」
『そー、今日は午前だけ
不二くんもそうだって前に言ってたから、待ってたんだ
その時間つぶしに幸村くんが付き合ってくれて、お互い虫除けみたいな感じで』
「君の彼女を利用して悪かったね」
「それはお互い様なんでしょ?気にしないよ」
僅かに肩を竦めながら笑って言った幸村に、こちらも苦笑を返す
取り巻きに囲まれる煩わしさというのは、お互いよく分かっているし
ヒラリ、と手を振ってその場を立ち去った幸村に同じように返した梨乃ちゃんは、そのままこちらをじっと見上げる
何か言いたそうなその表情に少し首を傾げれば、同じように梨乃ちゃんも首を傾げる
え、可愛いね?
「どうかしたの?」
『不二くんこそ、どうかしたの?』
「え、僕?」
『今はそうでも無いけど、ここに来たときはちょっと不機嫌そうだったから』
首を元の位置に戻した梨乃ちゃんがなんて事無い、とでも言うように告げる
隠していた筈の感情が僅かであっても伝わってしまったのは少々気まずさはあるものの、本当によく見ている子だな、と関心もする
未だに少し不思議そうにしている梨乃ちゃんも頭を撫でると、もう機嫌が治ったと判断したのかまぁいいか、と言う様な顔をする
『お昼まだ?』
「うん、まだだよ」
『この間、オムライスがめっちゃ美味しいお店見つけたんよ
一緒に行こ?』
「オムライス好きだね」
『お子様舌なものでねー』
そう言った意味合いで言ったわけでは無いのだけれど、少しだけ拗ねた表情をするのが可愛くて、笑いながらごめんと謝る
彼女も本気にしている訳ではないので、それにまた笑いながら手を引かれた
お腹空いた、と良いながら手を引き先導する様子は普段の彼女から考えれば、少々幼い言動に見えなくも無い
基本的には大人っぽい子なのだ
騒いだりするのは得意では無いけれど、その空間が嫌いなわけでは無い
周りが楽しそうにしているのを後ろから楽しそうに眺めて笑っているタイプ
そんな梨乃ちゃんが少しだけ幼く振る舞う相手は、つまり気を許していると言う事の表れではあるのだが、そんな物は僅かな違い
周りから見たら、大した変化では無いのだろう
うん、やっぱり先程の出来事が少々尾を引いている
気にしていないつもりではあったが、気になってしまえば気になるモノで
「梨乃ちゃん」
『どうかしましたか、不二くん』
「そろそろ名前で呼んでみませんか」
『周助くん?』
照れも無くあっさり呼ばれた名前
うん、期待していなかったかと聞かれたら否定は出来ないが、予想通り
梨乃ちゃんはこういったことに抵抗が少ない子だと言うことは知っていた
けど、少しくらい、と思ってしまう男心は許して欲しい
『うーん、長いなぁ』
「そうかな?」
『しゅーすけ、周くん、しゅー…、しゅーは流石に効果音みたいか』
なんてケラケラ、と楽しそうに笑い、呼びやすい名前を模索している様子の梨乃ちゃん
どれがいい?なんて見上げてくる梨乃ちゃんに、選択肢そう多くないよ、なんて返せばまた笑みが返ってくる
「呼び捨てがいいな、僕も呼び捨てでもいい?」
『いーよー
でもどうしたの、急に?何かありましたか?』
少しかしこまったように、でも何となく分かっているかのように問い掛けてくる梨乃ちゃん、梨乃に苦笑
多分最初に見透かされたように、心の中にある僅かばかりの嫉妬心に、きっと気付いてはいるのだろう
それでも敢えてそこに自ら触れてこないというのは、男のプライド、と言うモノを考慮した結果なのだろう
「梨乃の彼氏は僕なんだけどなー、なんて」
『…もっとイチャイチャしたい?』
「そう言う訳では無いけど…、したくない訳でも無いけど」
『素直』
「男の子ですので」
くすくす、と楽しそうな笑みの梨乃
今の距離感が嫌な訳ではない、けど少しだけ物足りない、と思ってしまうのは許されるだろうか
今まで避けていた恋愛というモノに漸く向き合った梨乃に、どれほどのペースで接していけばいいのか、少しだけ迷っている
『…優しいねぇ、しゅーすけは』
そう言って取られる左手
指同士を絡めたその繋ぎ方は、所謂恋人繋ぎと言うモノで
以前手を繋ぐのはなんだか気恥ずかしくて苦手で、腕を組む方が抵抗が少ない、などと話していたのをふと思い出す
『気を遣ってくれてるのは分かってたけど、それで悩ませたまま、なんてのはやっぱり申し訳ないからね
口下手だし、態度にもあんま出る方じゃ無いから、寂しかった?』
「…ねぇ、立場が逆転してる気がするんだけど」
『だってうちは愛されてる自覚があるから
ごめんね、愛情表現下手くそで』
困ったように笑った梨乃に、そう言う顔をさせたかった訳ではないんだけどな、なんてこちらも苦笑してしまう
梨乃の不器用な愛情表現に、気付けないほど鈍感では無い
繋がれた手に力を込めると、同じように返される
先程まで合っていた目が合わなくなったのは、照れている証拠
そう、分かるから
「ねぇ、梨乃はお揃いのモノって嫌い?」
『?ううん、別に…、あ、あからさまなペアルックとかは少し抵抗あるけど』
「じゃあさ、ちょっとアクセサリーとか見に行かない?キーホルダーよりはあからさまになるけど」
『…それでいいの?』
「今日は取り敢えず、愛情感じられたからね」
なんて、繋がったままの手を揺らして言えば、僕を見上げていた目がすい、と泳ぐ
そんな分かりやすい反応が可愛くて笑えば、少しだけふて腐れたような顔
けれどそれに謝ったりせず反対の手で頭を撫でれば、分かりにくく表情が和らぐのがまた可愛くて
「何にする?」
『うーん、ピアス、は開けてないもんね、しゅーすけは
指輪はテニスする時に邪魔になるだろうし、うちも今後実習始まったら外さなくちゃいけないし
やっぱりネックレスがベターかな』
なんて当たり前に未来の話をする梨乃がいるだけで、きっと十分なのだ
だけどほんの少しだけ欲張りたい、もっと僕のモノだと主張したい
そんな子供じみた所有欲
「隠さないで付けてくれる?」
『実習中以外はね』
「それは仕方ないからね、でも分かりにくいかな」
『チャームが小さいとそうかもね』
「じゃあ、指輪をチェーンに通そうか」
『…またベタだね』
「予約的な意味も兼ねて、ね」
何て笑えば、照れを隠す様に呆れた体を装って肩を竦める
けれど否定しない辺り、お互い様だと思うのだけれど、どうだろうか
その後は梨乃に連れられ昼食を摂った後、そのまま指輪を見に行く
シンプルなデザインのシルバーのリング
チェーンも一緒に購入して、明日から大学に付けていく約束をして
その後はそのままウィンドウショッピングをして、夕飯は梨乃の家で手料理をご馳走になって
帰りながら随分子供っぽいことをしたな、なんて苦笑
後悔はしていないけど、少しだけ反省
その数日後、いつの間にか広がった僕と梨乃の交際の噂は、決して指輪だけの影響じゃ無い
また知らないところで梨乃が手を回したのであろう事にはすぐに気付いた
その噂が広まってすぐ梨乃が悪戯っぽく笑ったその顔が、酷く印象的で
敵わないな、なんて肩を竦めて見せたけれど、ホントは嬉しいんだって事は、きっとバレている
そうして2人は愛をはぐくむ
(分かりにくい、ゆっくりな、愛情)
「ん?あ、ホントだ。ホント相変わらず綺麗な顔してるなー、女辞めたくなる」
「マジそれな」
「1人でいるの珍しいね、いつも取り巻きいるのに」
「ほれ、横見てみ?錦さん居るじゃん」
「あー、あそこ仲いいもんねぇ…
学部も何なら理系文系すらも違うのに、結構一緒に居るよね、あの2人」
「やっぱ付き合ってんのかなー」
そんな会話が耳に飛び込んできたのは、今回が初めてでは無い
出会った時から分かっていたことではあるが、彼女は男女の距離感が馴れてしまえば割と近い
その距離感は同性に対するものとほぼ同じだと思う
まぁ、抱きついたり、というのは同性にしかしていないが、パーソナルスペース的には同じと言える
噂の相手として名前が挙がるのは、現在進行形でも上がっている幸村に何かと接点の多い白石、仁王、それから僕
まぁ、以前は手塚もその中に名前があったが琴原さんとの交際が始まってからその頻度は随分と減った(無くなったわけではない)
「まー、お似合いだもんねぇ
あの顔面の横に並ぶ勇気はないなー、私」
「マジそれな」
幸村の持っている雑誌を一緒に覗き込んでいる為、距離は無い
肩が触れあう程の距離、と言うもので、けれどそれを全く意識していない2人
お互いが友人としての認識しか無いため、内情を知る身としてはそれは当たり前の光景で
まぁ、知らない者から見たらどう見えるか、そんなことが分からない人達では無いが、まずそんな他者評価を気にしない人達でもある
噂したいなら好きにすれば良い、そう言ったスタンスを貫いている(それは僕にも言えることではあるが)為、今更その態度にどうこう言うつもりは無い
まぁ、長々と遠回りにいろいろ語ったが、言いたいことは彼氏としては面白くない、と言う事で
梨乃ちゃんは、付き合っていることを態々言い触らしたりするタイプでは無い
聞かれたら隠すことは無いが、自ら宣言する事は無い
また、女性比率が比較的少ない医学部は、そう言った噂が回るスピードが割と遅い
付き合ってから、態度が劇的に変わることも無い
人前でくっつくことは殆どしないため、他者から見て関係が変化したとは分からないと思う
分かりやすくもっとイチャイチャしたいとは言わないが、せめてそろそろ彼氏は僕だと周りに認識して貰いたいというのが実情だ
「梨乃ちゃん」
『あ、不二くん
お疲れ様―、今日の講義はもう終わり?』
「うん、梨乃ちゃんも?」
『そー、今日は午前だけ
不二くんもそうだって前に言ってたから、待ってたんだ
その時間つぶしに幸村くんが付き合ってくれて、お互い虫除けみたいな感じで』
「君の彼女を利用して悪かったね」
「それはお互い様なんでしょ?気にしないよ」
僅かに肩を竦めながら笑って言った幸村に、こちらも苦笑を返す
取り巻きに囲まれる煩わしさというのは、お互いよく分かっているし
ヒラリ、と手を振ってその場を立ち去った幸村に同じように返した梨乃ちゃんは、そのままこちらをじっと見上げる
何か言いたそうなその表情に少し首を傾げれば、同じように梨乃ちゃんも首を傾げる
え、可愛いね?
「どうかしたの?」
『不二くんこそ、どうかしたの?』
「え、僕?」
『今はそうでも無いけど、ここに来たときはちょっと不機嫌そうだったから』
首を元の位置に戻した梨乃ちゃんがなんて事無い、とでも言うように告げる
隠していた筈の感情が僅かであっても伝わってしまったのは少々気まずさはあるものの、本当によく見ている子だな、と関心もする
未だに少し不思議そうにしている梨乃ちゃんも頭を撫でると、もう機嫌が治ったと判断したのかまぁいいか、と言う様な顔をする
『お昼まだ?』
「うん、まだだよ」
『この間、オムライスがめっちゃ美味しいお店見つけたんよ
一緒に行こ?』
「オムライス好きだね」
『お子様舌なものでねー』
そう言った意味合いで言ったわけでは無いのだけれど、少しだけ拗ねた表情をするのが可愛くて、笑いながらごめんと謝る
彼女も本気にしている訳ではないので、それにまた笑いながら手を引かれた
お腹空いた、と良いながら手を引き先導する様子は普段の彼女から考えれば、少々幼い言動に見えなくも無い
基本的には大人っぽい子なのだ
騒いだりするのは得意では無いけれど、その空間が嫌いなわけでは無い
周りが楽しそうにしているのを後ろから楽しそうに眺めて笑っているタイプ
そんな梨乃ちゃんが少しだけ幼く振る舞う相手は、つまり気を許していると言う事の表れではあるのだが、そんな物は僅かな違い
周りから見たら、大した変化では無いのだろう
うん、やっぱり先程の出来事が少々尾を引いている
気にしていないつもりではあったが、気になってしまえば気になるモノで
「梨乃ちゃん」
『どうかしましたか、不二くん』
「そろそろ名前で呼んでみませんか」
『周助くん?』
照れも無くあっさり呼ばれた名前
うん、期待していなかったかと聞かれたら否定は出来ないが、予想通り
梨乃ちゃんはこういったことに抵抗が少ない子だと言うことは知っていた
けど、少しくらい、と思ってしまう男心は許して欲しい
『うーん、長いなぁ』
「そうかな?」
『しゅーすけ、周くん、しゅー…、しゅーは流石に効果音みたいか』
なんてケラケラ、と楽しそうに笑い、呼びやすい名前を模索している様子の梨乃ちゃん
どれがいい?なんて見上げてくる梨乃ちゃんに、選択肢そう多くないよ、なんて返せばまた笑みが返ってくる
「呼び捨てがいいな、僕も呼び捨てでもいい?」
『いーよー
でもどうしたの、急に?何かありましたか?』
少しかしこまったように、でも何となく分かっているかのように問い掛けてくる梨乃ちゃん、梨乃に苦笑
多分最初に見透かされたように、心の中にある僅かばかりの嫉妬心に、きっと気付いてはいるのだろう
それでも敢えてそこに自ら触れてこないというのは、男のプライド、と言うモノを考慮した結果なのだろう
「梨乃の彼氏は僕なんだけどなー、なんて」
『…もっとイチャイチャしたい?』
「そう言う訳では無いけど…、したくない訳でも無いけど」
『素直』
「男の子ですので」
くすくす、と楽しそうな笑みの梨乃
今の距離感が嫌な訳ではない、けど少しだけ物足りない、と思ってしまうのは許されるだろうか
今まで避けていた恋愛というモノに漸く向き合った梨乃に、どれほどのペースで接していけばいいのか、少しだけ迷っている
『…優しいねぇ、しゅーすけは』
そう言って取られる左手
指同士を絡めたその繋ぎ方は、所謂恋人繋ぎと言うモノで
以前手を繋ぐのはなんだか気恥ずかしくて苦手で、腕を組む方が抵抗が少ない、などと話していたのをふと思い出す
『気を遣ってくれてるのは分かってたけど、それで悩ませたまま、なんてのはやっぱり申し訳ないからね
口下手だし、態度にもあんま出る方じゃ無いから、寂しかった?』
「…ねぇ、立場が逆転してる気がするんだけど」
『だってうちは愛されてる自覚があるから
ごめんね、愛情表現下手くそで』
困ったように笑った梨乃に、そう言う顔をさせたかった訳ではないんだけどな、なんてこちらも苦笑してしまう
梨乃の不器用な愛情表現に、気付けないほど鈍感では無い
繋がれた手に力を込めると、同じように返される
先程まで合っていた目が合わなくなったのは、照れている証拠
そう、分かるから
「ねぇ、梨乃はお揃いのモノって嫌い?」
『?ううん、別に…、あ、あからさまなペアルックとかは少し抵抗あるけど』
「じゃあさ、ちょっとアクセサリーとか見に行かない?キーホルダーよりはあからさまになるけど」
『…それでいいの?』
「今日は取り敢えず、愛情感じられたからね」
なんて、繋がったままの手を揺らして言えば、僕を見上げていた目がすい、と泳ぐ
そんな分かりやすい反応が可愛くて笑えば、少しだけふて腐れたような顔
けれどそれに謝ったりせず反対の手で頭を撫でれば、分かりにくく表情が和らぐのがまた可愛くて
「何にする?」
『うーん、ピアス、は開けてないもんね、しゅーすけは
指輪はテニスする時に邪魔になるだろうし、うちも今後実習始まったら外さなくちゃいけないし
やっぱりネックレスがベターかな』
なんて当たり前に未来の話をする梨乃がいるだけで、きっと十分なのだ
だけどほんの少しだけ欲張りたい、もっと僕のモノだと主張したい
そんな子供じみた所有欲
「隠さないで付けてくれる?」
『実習中以外はね』
「それは仕方ないからね、でも分かりにくいかな」
『チャームが小さいとそうかもね』
「じゃあ、指輪をチェーンに通そうか」
『…またベタだね』
「予約的な意味も兼ねて、ね」
何て笑えば、照れを隠す様に呆れた体を装って肩を竦める
けれど否定しない辺り、お互い様だと思うのだけれど、どうだろうか
その後は梨乃に連れられ昼食を摂った後、そのまま指輪を見に行く
シンプルなデザインのシルバーのリング
チェーンも一緒に購入して、明日から大学に付けていく約束をして
その後はそのままウィンドウショッピングをして、夕飯は梨乃の家で手料理をご馳走になって
帰りながら随分子供っぽいことをしたな、なんて苦笑
後悔はしていないけど、少しだけ反省
その数日後、いつの間にか広がった僕と梨乃の交際の噂は、決して指輪だけの影響じゃ無い
また知らないところで梨乃が手を回したのであろう事にはすぐに気付いた
その噂が広まってすぐ梨乃が悪戯っぽく笑ったその顔が、酷く印象的で
敵わないな、なんて肩を竦めて見せたけれど、ホントは嬉しいんだって事は、きっとバレている
そうして2人は愛をはぐくむ
(分かりにくい、ゆっくりな、愛情)
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