大学生のキャラたちがゆっくりと青春する物語(TNS)
多分これが、アオハルって奴みたいです
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2月
乙女が浮き足立つ季節でございます
『という事でご指導よろしくお願いします、先輩』
『はいはい、何作るかなー』
『私なんかでも作れそうなお菓子ってありますか…?』
『お菓子作りが難しいと思ったことないから何とも…』
『すげぇ、私もそんな事言ってみてぇ…』
『言うのは自由だよー』
つまりバレンタインである
澪理は告白してから約2ヶ月
再度手塚にアタックを仕掛ける心積りらしい
ただ問題は、澪理は今まであまりキッチンに立ったことの無いタイプの人間で
つまり何が言いたいのかと言うと、料理が苦手なのだ
そんな訳で現在、我が家のキッチンで2人並んで準備なうなのだ
『まぁ、ブラウニーとかならベーキングパウダー使うから余程の事がないと失敗しないと思うけど
メレンゲで膨らますタイプの奴は失敗しがちだけど』
『なるほど』
『ブラウニーでいい?簡単だし』
『そんな事言ってみたい…!』
『だから、言うのは自由なんだってば(笑)』
そこに事実が伴うかは別であるけど
そんな事を思いながら、材料を計っていく
予め必要になりそうな物は購入済みである
まぁ、余ったらまたウチが暇な時にお菓子を作るので問題ない
『今年は梨乃も本命?』
『…んー、そうなるかもねぇ』
『え、何、結局今2人はどう言う状況なの?』
『ウチも知りたい』
あれだけ分かりやすく全面的に好意を向けられて、え、気付かなかったー、とか言う馬鹿ははっ倒す
そこまで鈍感でないし、何なら向けられる好意には随分前から気付いていた
だけど、それだけなのだ
不二くんがどうしたいのか、どうなりたいのか、何を思っているのか
それが分からないから、こっちも困るのだ
『だから、今回ちょっとだけ自分でも動いてみようかと思ってね
さすがに申し訳ないから』
貰いっぱなしは、流石に気が引ける
別に愛されるより愛したいとか言うつもりは無いけど、与えられる愛には誠実に向き合わなければ失礼と言うもので
ギブとテイクが均等でなければ気持ち悪いのだ
『…取り敢えず確認したいんだけど、梨乃は不二くんの事好きなんだよね?
もちろん恋愛的な意味で』
『…ん、そうだと思う』
『なのに、一体何を躊躇うの?』
『…躊躇うというか、全部が手探りな感じなんだよ
多分これが、今までの中で初めてと言える恋愛だから』
そう、結局のところそこなのである
殆どの人が早ければ小学生、中高生の間で恋愛を経験し、人を好きになるとはどう言う事か、という事を学んでいく
その中身の質は問わない
遊びだろうが、本気だろうが、恋愛というものはどう言うものなのか、という事を本能で理解していく
けど、ウチはどうだろうか
小学生の頃の、幼い恋心を中学まで抱き続け、でも、結局その想いを伝える事もなく自分の中で飲み込んで
高校生で何度か告白される事もあったけど、イマイチ付き合うという事が分からず断り続け
たった1人付き合おうと、関係を始めた人とだって、今振り返ればあれは、恋愛でなく依存
逃げ込める居場所が欲しかったに過ぎないのである
だから、今の今まで、人を好きになる、という感覚が、感情がどう言ったものなのか分からなかったのだ
自分の中に存在しなかった、“好き”というこの気持ちが、どの“好き”なのか、判断出来なかったのだ
『何か、難しい事言ってるな、自分』
『うん、ホントに
梨乃はいっつも考え過ぎなんだよ』
『澪理は、考えなさ過ぎなとこあるけどね』
『そうだけど、でも、梨乃今言ったじゃん
恋愛は本能でするものだよ、頭で考えてする事じゃない』
『理屈っぽいからね、ウチは』
あぁ、でもそうだね
確かに恋愛というものは感情優位なんだから、事細かに頭で分析してするものでは無かったね
いつだって頭でっかちはこれだから困る
まぁ、考える事を止めた策がこれなんだから、やっぱり今回動いてみて正解なのかもしれないな
『てか、先輩』
『ん?』
『なんであんな色々語りながら着々と工程が進んでるんですかね?』
『んー、慣れかなぁ』
慣れって怖いよね
考え事しながらでも手は動いてたみたいだよ、これほぼ無意識だよ、ウケる
まぁ、ウチがお菓子作り終えたら澪理の指導に集中出来るからそれでいいじゃん、そういう事にしとこうよ
甘い甘い香りが漂う室内で、そんな甘くないことを考えた
『よし、焼きに入ったので今度は澪理の番です
集中してねー』
『お願いしやす、先輩!』
『はーい、始めますよー』
*****
という訳でやって来ました、バレンタイン当日
心無しか、学内が甘い空気に覆われております
日本人ってホントイベント好きよね
まぁ、今回そんなイベントの力を借りている身なので強くは言いませんが
学部で出会う友人に友チョコを渡し、サークルメンバーにも配り歩き(美都希は配る前に自ら回収しに来た、図々しい奴である)
やって来ました、放課後です
もうこれからが今日のメインイベントと言う奴です
「やぁ」
『…もうさ、不二くんってなんでそんなAlways爽やか振りまくの?』
「好きな子の前ではカッコつけたいって心理かな」
『この前はボロが出るって言ってたじゃん』
「それでも、少しでもよく映りたいと思うものでしょ?」
…何でそう、あっさりと好きな子宣言出来るんだろう
この人何で出来てるの?ホントに同じ人間?意味分かんない
にこにこ、と笑う彼に、少し乱雑な感じで小さな紙袋を押し付ける
可愛らしくプレゼント、なんて柄じゃないから勘弁して欲しい
「ありがとう、大事に食べるね」
『大したものじゃないよ』
「梨乃ちゃんが作ってくれたってだけで特別でしょ?」
『ウチが作ったもの食べるのは初めてじゃないでしょ』
「でも、これは特別仕様でしょ?結構重い」
『…割れ物入ってるから取り扱い注意ね』
「了解しました」
あぁ、ホント可愛くない
紡がれる言葉全てが擽ったくて、図星で、もう何だか負けた気分
別に勝負なんてしてないし、不二くんにもそういうつもりがある訳じゃ無いことも知ってるけど
「じゃあ僕からも、ってしたいとこだけど、今日はこのイベントに則ろうかな」
『流行りの逆チョコしてくるのかと思った』
「それも考えたけど、ホワイトデー3倍返しの方が魅力的じゃない?」
『半分くらいは恐怖もある』
「楽しみにしててね」
『今恐怖してるって言わなかったっけ?』
「ちなみに、このチョコって本命?」
『なんで急に話聞かなくなるの、この人』
「僕、今日このチョコしか受け取ってないんだ」
『…澪理が友チョコ作ってたから、それは受け取ってあげてね』
「ふふ、それは頂戴しておかなきゃね」
返しが雑なんだけどこの人
何考えてんだろうね、ホントついてけない
しかも、そんな人を困らす質問をサラッとしないで欲しい
ふい、と視線を逸らす
告白を、する覚悟は正直ない
ここまでお膳立てしてもらって、未だに受け身なのかと笑えるけど
でも、以前言ったように分からないことは、恐怖なのだ
「…、ごめん、困らせちゃったね」
『…ううん、ウチがハッキリして無いのがいけないから』
全てはウチの気持ちの問題
何考えてるの分からないのウチだけじゃない
不二くんにだって言えることで
自分の気持ちを伝えるのが苦手な自覚はあるけど
知らない、初めての気持ちなら余計伝えれない
好き嫌いは割りとハッキリしてる方だ
でも、その好きを分類した事は殆どない
周りの人から聞く恋愛話は、イマイチ自分の中の感情と一致しなくてよく分からないまま過ごしてきてしまったから
「梨乃ちゃん」
『ん?』
「ゆっくりでいいからね?」
『…、ん、ありがとう』
自分が納得して飲み込めないと次へ進めない頑固な性格にうんざりする
テキトーや何となく、それなりにと言うのが苦手な人間なのだ
それを理解して、歩調を合わせて少し前でこちらを振り返りながら待っててくれてるのを理解してるから、余計申し訳ない
ごめんね、と思いながらも謝るのもなんか違う気がして曖昧に笑う
この人はホントよく理解してくれてると思う
「じゃ、これありがとう」
『どういたしまして』
バイバイ、と手を振って別れる
不二くんはこの後いつものように部活だろう
ウチは特に予定は無いけど何かちょっと疲れちゃったから帰って休もう
ちゃんと、自分の気持ちとも向き合わないといけないな
*****
2月28日
今年は閏年でないため、一日早いが不二くんの誕生日パーティーを我が家で開催している
パーティーと言ってもいつも通りわちゃわちゃ遊ぶ感じだけど
料理とケーキは手作りだ
飾り付けも何も無いけど、取り敢えずこうやって集まってわいわいするのが好きなだけである
このバレンタインに漸くくっ付いたらしい澪理と手塚を祝う意味もあるから、準備がほぼ一人で大変でした
『いやぁ、にしたってまさか手塚が逆チョコしてくるとは思わんかったわぁ
どーせ不二くんの差し金でしょ?』
「差し金は酷いなぁ、意外と根に持つんだね?
まぁ、確かに僕の入れ知恵だけど」
『自分で入れ知恵言うんかい』
ケラケラ笑いながら紅茶を口に含む
寒い時期はココアと紅茶の消費量が上がっていけない
バレンタインで再度アタックする予定だった澪理は先手を打たれて驚いていたけど、嬉しそうに報告してきた
まぁ、幸せならそれでいいですよ
『まぁ、何はともあれおめでと』
『ありがとー!もうね、今めっちゃ幸せ!』
『…そうね、見るからに幸せそうだもんね』
『えへへー』
こういう無邪気さというか、素直さと言うか、そういったものがウチには欠けているんだろうな
昔から変に大人ぶって、今更無邪気に振る舞うとか考えただけでも寒気するけど
想像出来ん
ちょっとくらいの我儘や甘えは可愛いと言われるが、基本人に頼らず生きてきた身としては未知の領域である
バレンタインが記念日とか、世の中探せばごまんと居るだろうけど、こいつらはなんと言うか着実と記念日を重ねていくんだろうなぁ、なんて感慨にふけってみる
過去の数々の恋愛を知っている身からすれば、やっと安心して送り出せる恋愛にであってくれたな、なんて言う感想だ
…私の立ち位置って何だろう
今後聞かされるであろう惚気話を覚悟しながら、パーティーは幕を閉じたのである
未完成で曖昧な恋
(はっきりしないものは、嫌いなはずだった)
乙女が浮き足立つ季節でございます
『という事でご指導よろしくお願いします、先輩』
『はいはい、何作るかなー』
『私なんかでも作れそうなお菓子ってありますか…?』
『お菓子作りが難しいと思ったことないから何とも…』
『すげぇ、私もそんな事言ってみてぇ…』
『言うのは自由だよー』
つまりバレンタインである
澪理は告白してから約2ヶ月
再度手塚にアタックを仕掛ける心積りらしい
ただ問題は、澪理は今まであまりキッチンに立ったことの無いタイプの人間で
つまり何が言いたいのかと言うと、料理が苦手なのだ
そんな訳で現在、我が家のキッチンで2人並んで準備なうなのだ
『まぁ、ブラウニーとかならベーキングパウダー使うから余程の事がないと失敗しないと思うけど
メレンゲで膨らますタイプの奴は失敗しがちだけど』
『なるほど』
『ブラウニーでいい?簡単だし』
『そんな事言ってみたい…!』
『だから、言うのは自由なんだってば(笑)』
そこに事実が伴うかは別であるけど
そんな事を思いながら、材料を計っていく
予め必要になりそうな物は購入済みである
まぁ、余ったらまたウチが暇な時にお菓子を作るので問題ない
『今年は梨乃も本命?』
『…んー、そうなるかもねぇ』
『え、何、結局今2人はどう言う状況なの?』
『ウチも知りたい』
あれだけ分かりやすく全面的に好意を向けられて、え、気付かなかったー、とか言う馬鹿ははっ倒す
そこまで鈍感でないし、何なら向けられる好意には随分前から気付いていた
だけど、それだけなのだ
不二くんがどうしたいのか、どうなりたいのか、何を思っているのか
それが分からないから、こっちも困るのだ
『だから、今回ちょっとだけ自分でも動いてみようかと思ってね
さすがに申し訳ないから』
貰いっぱなしは、流石に気が引ける
別に愛されるより愛したいとか言うつもりは無いけど、与えられる愛には誠実に向き合わなければ失礼と言うもので
ギブとテイクが均等でなければ気持ち悪いのだ
『…取り敢えず確認したいんだけど、梨乃は不二くんの事好きなんだよね?
もちろん恋愛的な意味で』
『…ん、そうだと思う』
『なのに、一体何を躊躇うの?』
『…躊躇うというか、全部が手探りな感じなんだよ
多分これが、今までの中で初めてと言える恋愛だから』
そう、結局のところそこなのである
殆どの人が早ければ小学生、中高生の間で恋愛を経験し、人を好きになるとはどう言う事か、という事を学んでいく
その中身の質は問わない
遊びだろうが、本気だろうが、恋愛というものはどう言うものなのか、という事を本能で理解していく
けど、ウチはどうだろうか
小学生の頃の、幼い恋心を中学まで抱き続け、でも、結局その想いを伝える事もなく自分の中で飲み込んで
高校生で何度か告白される事もあったけど、イマイチ付き合うという事が分からず断り続け
たった1人付き合おうと、関係を始めた人とだって、今振り返ればあれは、恋愛でなく依存
逃げ込める居場所が欲しかったに過ぎないのである
だから、今の今まで、人を好きになる、という感覚が、感情がどう言ったものなのか分からなかったのだ
自分の中に存在しなかった、“好き”というこの気持ちが、どの“好き”なのか、判断出来なかったのだ
『何か、難しい事言ってるな、自分』
『うん、ホントに
梨乃はいっつも考え過ぎなんだよ』
『澪理は、考えなさ過ぎなとこあるけどね』
『そうだけど、でも、梨乃今言ったじゃん
恋愛は本能でするものだよ、頭で考えてする事じゃない』
『理屈っぽいからね、ウチは』
あぁ、でもそうだね
確かに恋愛というものは感情優位なんだから、事細かに頭で分析してするものでは無かったね
いつだって頭でっかちはこれだから困る
まぁ、考える事を止めた策がこれなんだから、やっぱり今回動いてみて正解なのかもしれないな
『てか、先輩』
『ん?』
『なんであんな色々語りながら着々と工程が進んでるんですかね?』
『んー、慣れかなぁ』
慣れって怖いよね
考え事しながらでも手は動いてたみたいだよ、これほぼ無意識だよ、ウケる
まぁ、ウチがお菓子作り終えたら澪理の指導に集中出来るからそれでいいじゃん、そういう事にしとこうよ
甘い甘い香りが漂う室内で、そんな甘くないことを考えた
『よし、焼きに入ったので今度は澪理の番です
集中してねー』
『お願いしやす、先輩!』
『はーい、始めますよー』
*****
という訳でやって来ました、バレンタイン当日
心無しか、学内が甘い空気に覆われております
日本人ってホントイベント好きよね
まぁ、今回そんなイベントの力を借りている身なので強くは言いませんが
学部で出会う友人に友チョコを渡し、サークルメンバーにも配り歩き(美都希は配る前に自ら回収しに来た、図々しい奴である)
やって来ました、放課後です
もうこれからが今日のメインイベントと言う奴です
「やぁ」
『…もうさ、不二くんってなんでそんなAlways爽やか振りまくの?』
「好きな子の前ではカッコつけたいって心理かな」
『この前はボロが出るって言ってたじゃん』
「それでも、少しでもよく映りたいと思うものでしょ?」
…何でそう、あっさりと好きな子宣言出来るんだろう
この人何で出来てるの?ホントに同じ人間?意味分かんない
にこにこ、と笑う彼に、少し乱雑な感じで小さな紙袋を押し付ける
可愛らしくプレゼント、なんて柄じゃないから勘弁して欲しい
「ありがとう、大事に食べるね」
『大したものじゃないよ』
「梨乃ちゃんが作ってくれたってだけで特別でしょ?」
『ウチが作ったもの食べるのは初めてじゃないでしょ』
「でも、これは特別仕様でしょ?結構重い」
『…割れ物入ってるから取り扱い注意ね』
「了解しました」
あぁ、ホント可愛くない
紡がれる言葉全てが擽ったくて、図星で、もう何だか負けた気分
別に勝負なんてしてないし、不二くんにもそういうつもりがある訳じゃ無いことも知ってるけど
「じゃあ僕からも、ってしたいとこだけど、今日はこのイベントに則ろうかな」
『流行りの逆チョコしてくるのかと思った』
「それも考えたけど、ホワイトデー3倍返しの方が魅力的じゃない?」
『半分くらいは恐怖もある』
「楽しみにしててね」
『今恐怖してるって言わなかったっけ?』
「ちなみに、このチョコって本命?」
『なんで急に話聞かなくなるの、この人』
「僕、今日このチョコしか受け取ってないんだ」
『…澪理が友チョコ作ってたから、それは受け取ってあげてね』
「ふふ、それは頂戴しておかなきゃね」
返しが雑なんだけどこの人
何考えてんだろうね、ホントついてけない
しかも、そんな人を困らす質問をサラッとしないで欲しい
ふい、と視線を逸らす
告白を、する覚悟は正直ない
ここまでお膳立てしてもらって、未だに受け身なのかと笑えるけど
でも、以前言ったように分からないことは、恐怖なのだ
「…、ごめん、困らせちゃったね」
『…ううん、ウチがハッキリして無いのがいけないから』
全てはウチの気持ちの問題
何考えてるの分からないのウチだけじゃない
不二くんにだって言えることで
自分の気持ちを伝えるのが苦手な自覚はあるけど
知らない、初めての気持ちなら余計伝えれない
好き嫌いは割りとハッキリしてる方だ
でも、その好きを分類した事は殆どない
周りの人から聞く恋愛話は、イマイチ自分の中の感情と一致しなくてよく分からないまま過ごしてきてしまったから
「梨乃ちゃん」
『ん?』
「ゆっくりでいいからね?」
『…、ん、ありがとう』
自分が納得して飲み込めないと次へ進めない頑固な性格にうんざりする
テキトーや何となく、それなりにと言うのが苦手な人間なのだ
それを理解して、歩調を合わせて少し前でこちらを振り返りながら待っててくれてるのを理解してるから、余計申し訳ない
ごめんね、と思いながらも謝るのもなんか違う気がして曖昧に笑う
この人はホントよく理解してくれてると思う
「じゃ、これありがとう」
『どういたしまして』
バイバイ、と手を振って別れる
不二くんはこの後いつものように部活だろう
ウチは特に予定は無いけど何かちょっと疲れちゃったから帰って休もう
ちゃんと、自分の気持ちとも向き合わないといけないな
*****
2月28日
今年は閏年でないため、一日早いが不二くんの誕生日パーティーを我が家で開催している
パーティーと言ってもいつも通りわちゃわちゃ遊ぶ感じだけど
料理とケーキは手作りだ
飾り付けも何も無いけど、取り敢えずこうやって集まってわいわいするのが好きなだけである
このバレンタインに漸くくっ付いたらしい澪理と手塚を祝う意味もあるから、準備がほぼ一人で大変でした
『いやぁ、にしたってまさか手塚が逆チョコしてくるとは思わんかったわぁ
どーせ不二くんの差し金でしょ?』
「差し金は酷いなぁ、意外と根に持つんだね?
まぁ、確かに僕の入れ知恵だけど」
『自分で入れ知恵言うんかい』
ケラケラ笑いながら紅茶を口に含む
寒い時期はココアと紅茶の消費量が上がっていけない
バレンタインで再度アタックする予定だった澪理は先手を打たれて驚いていたけど、嬉しそうに報告してきた
まぁ、幸せならそれでいいですよ
『まぁ、何はともあれおめでと』
『ありがとー!もうね、今めっちゃ幸せ!』
『…そうね、見るからに幸せそうだもんね』
『えへへー』
こういう無邪気さというか、素直さと言うか、そういったものがウチには欠けているんだろうな
昔から変に大人ぶって、今更無邪気に振る舞うとか考えただけでも寒気するけど
想像出来ん
ちょっとくらいの我儘や甘えは可愛いと言われるが、基本人に頼らず生きてきた身としては未知の領域である
バレンタインが記念日とか、世の中探せばごまんと居るだろうけど、こいつらはなんと言うか着実と記念日を重ねていくんだろうなぁ、なんて感慨にふけってみる
過去の数々の恋愛を知っている身からすれば、やっと安心して送り出せる恋愛にであってくれたな、なんて言う感想だ
…私の立ち位置って何だろう
今後聞かされるであろう惚気話を覚悟しながら、パーティーは幕を閉じたのである
未完成で曖昧な恋
(はっきりしないものは、嫌いなはずだった)