大学生のキャラたちがゆっくりと青春する物語(TNS)
多分これが、アオハルって奴みたいです
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7月
梅雨も明け日照りが気になりだした7月
我々学生が楽しみにしているだろう夏休みの前
楽しみの前の苦難は当たり前だというかの様に立ちはだかる壁(は言い過ぎかもしれないが)、テストである
常日頃から真面目に取り組んではいるし、ノートに抜けも無い
あの友人がどこからか手に入れてきた過去問のコピーも入手済みである
まぁ、それに頼って合格した所で自己の能力とはなり得ない為、参考程度に頼らせてもらおう
それを告げた際の友人の反応は「梨乃も手塚君の事言えないくらいには真面目だよね」だったので、奴はうちの事をどう捉えていたのか
不真面目では無いつもりだったのだが
閑話休題
『てな訳で手塚』
「何がそういう訳なんだ?」
『手塚もちょっとは突っ込んでくるようになったね、いい傾向だ
じゃなくて、一緒にテスト勉強しよう
家だとサボるから監視の目が欲しいし、君の知識も借りたいのが本音です』
「はっきりと言うんだな」
『頼りにしてます』
「まぁ、構わないが…
何処でするつもりだ?」
手塚の最もな質問に1つ頷く
図書室の自習スペースは誰かと勉強するには適していないし、こういう場合にファミレスを選択する学生も少なくないと聞く
が、ウチは正直ファミレスで勉強するのは周りの雑音が気になって集中出来ないから嫌いなのだ
後、ドリンクバーで粘るのが申し訳なくなる
という事で
『ウチん家で』
「一人暮らしだったか?」
『そう』
「あぁ、分かった」
そこで男女のあれこれに思考がいかない辺り手塚である
変に深読みして誘ってると思われたくない
手塚にその知識があるのかは不明であるが
私は純粋に勉強がしたいのだ
2つ返事で頷いた彼へのお礼は夕飯という事にして、早速我が家へ
それなりに近いマンションなので徒歩通学圏ではある
電車やバスの方が時間がかかる場合もある
直ぐに取れる為原付の免許は持ってはいるが、それを使う程の距離でもなくて
手塚はロードワーク代わりに走って通学しているとの事
どこまでもストイックな男だな、コイツは
とまぁ取り敢えず2人共交通手段は自分の足であった為並んで歩く
アームカバーを取り出し日傘を差したウチを物珍しげに見てきた手塚には何も言うまい
なんだよ、日焼け対策大事なんだぞ
ウチは皮膚が弱いため肌に何かを塗るという行為は極力したくないのである
歩いて約10分
辿り着いたマンションのエレベーターに乗り込み我が家へ
冷房の効いていない部屋は蒸し暑い事には代わりないが日差しがない分まだマシで
礼儀正しく靴を揃えて我が家へやってきた手塚に飲み物を準備(ついでに自分のも)
そして勉強出来るよう準備を整え、そこからはもう当たり前のように勉強開始
ポツポツとウチが質問し手塚が答える、という事を繰り返し
そんな静かな空間に鳴り響いたのは、お互いの携帯のバイブ音であった
『わ、びっくりした…』
「出ても構わないか?」
『あ、うん、ウチも出るしお好きにどーぞ』
お互い少し距離を取り通話をタップ
携帯を耳に当てもしもし、と口を開きかけた瞬間
《梨乃ー!助けて!》
響いた大声に携帯を耳から遠ざけた
相変わらずのテンションである
『なに、うるさい』
《あ、ごめん
うぅ…、お願いします、一緒に勉強を…、私を見張ってて…》
『ちょっとイマイチ意味が分かんないんだけど、勉強するならウチ来れば?
手塚も居るけど』
《うぇっ!?まさか…!?》
『変な勘繰りやめて欲しい』
《冗談だって、分かってるよー》
『お前今人にもの頼んでる立場だって分かってる?』
《すいませんでした》
即座に態度を改めた澪理に溜め息
まぁ、別段怒ってなどいないけれど
取り敢えず手塚に了承を得ようと手塚の方を見遣れば
何故か手塚もこちらを見ていた
『?澪理も来るけどいい?』
「あぁ、構わないが」
『が?』
「…」
すっ、と無言で差し出された携帯
取り敢えず澪理には了承の意を伝え通話を切ってから受け取る
『もしもし…?』
《あ、錦さん?》
『えーと、その声は不二くん…?』
《覚えててくれたんだね、ありがとう
今手塚とテスト勉強してるんだってね、良かったら僕も混ぜてくれないかな?》
『あぁ、そう言う…
いいよ、ウチの幼馴染みも今から合流するって言うし
場所分かるかな、──……』
《うん、大丈夫
多分30分後くらいには着くと思うからよろしくね》
『はーい』
そうして会話を終え、通話を切っていいか目で確認し了承を得たので別れの言葉を述べて終了する
うむ、集中が切れた
小休止しようか、と投げ掛ければ同意が帰ってきた為夕飯の準備に取り掛かる
結局4人分か、足りるかな…
弁当と作り置き分を無くせばいけるかな
足りなかったら近くのスーパーでお惣菜でも買ってこよう
そう決めて髪を一纏めにし具材の下拵え
この時期から既に食欲を無くし気味なウチである
誰かが居るのはある意味いい傾向かもしれない、と1人納得する
しばらくして慣れた様子の澪理がやって来て(来ると分かっている時は玄関の鍵を開けているのである)、それからまたしばらくしてチャイムが鳴り響く
澪理に開けてもらい、招き入れた不二くんは夕飯の足しに、と色々買ってきており
『さすが出来る男』
「ふふ、ありがとう」
有難く受け取り仕上げに掛かる
一人暮らしの為食器はそう多くないので紙皿を用意
コップと箸だけはある為澪理に準備させ、勉強を始める前に取り敢えず腹拵え
ほらあれだ、腹が減っては戦ができぬというでは無いか
そういう事にしといて
決して勉強に飽きた訳では無い、決して
ご飯を終え、食休みと称し少しダラダラと
でも手塚が居るこの状況で、このままダラダラ過ごす事になるはずも無く再び再開
今まではウチの質問に対して手塚が返事する、くらいの静けさであったが、やれば出来る系澪理は苦手科目はてんでダメで
『あぁもう、手塚パス!ウチの勉強が進まん!』
「俺の勉強は無視か」
『お前はせずとも良どころか優取るような人間だろうが』
と無理矢理に澪理を押し付けた事もあり、ウチが質問するタイミングを逃してるなう
科目は英語、出来なくはないが文法的なことに対し苦手意識がある為筆の進みが遅い
あー、これなんて熟語だっけ…?これどこに係ってんだよ、わかんね…
電子辞書を手探りで探し当て英字を打ち込んでいく
「躓いてる?」
『躓いてる』
投げ掛けられた問いに即座に答えればくすっ、と小さい笑い声の後に伸びてきた指が英文を辿る
男の、しかも運動部の指とは思えない程白くて細い、綺麗な指
触るときっと少しゴツゴツしているのだろうけど、そんな事感じさせない
一瞬それに気を取られたが、直ぐに持ち直し紡がれる解説に耳を傾ける
答えを教える訳でないヒントを与えるだけの解説
丁寧な、言葉を選び紡がれる音
『あ、つまりこれはここに係ってるから… 』
「そう、ここで文脈が切れてるね」
『そう言う事かー、よしこれなら読み進められる』
「錦さんは理解が早いね、さすが医学部」
『これでも落ちこぼれの部類だよ』
紡がれる賛辞に曖昧に返す
褒められたりするのは正直苦手だ
分かりやすくラインを引いて、今の解説を小さく書き込んでいく
視線を感じて目を向けると、こちらを見ていた(?)不二くんと目が合う(?)
(細目の為あまり自信が持てない)
『…躓いてる?』
「躓いてる」
先程と同じ様に質問すれば、にこにこと笑いながら同じ様に返される
やはり不二くんは思った通り悪戯好きだと思われる
差し出された科目は数学
理系科目ならそこそこ出来る範囲であるし、その単元は割りと好きなとこで
同じ様に指で文字をなぞりながら説明していく
先程されたように、順序だって、取っ掛りが掴めるように
邪魔になる髪を片方に流し、問題をなぞる手とは反対の手で軽く押さえながら少しだけ身を寄せる
あまり目は良くないので見えないのだ
(眼鏡を長時間掛けているのは疲れるから嫌いである)
「あ、なるほど」
『分かった?』
「うん、ありがとう
理系文系が集まってするとこういう時助かるよね」
『そうだね
あの堅物眼鏡は多分関係無いだろうけど』
「それもそうだね」
あっさりと同意され2人でくすくす笑う
何だか気が合いそうで嬉しいぞ、私は
チラリ、と話題に上がった手塚を見てみると、何故か澪理がこちらをガン見していた
なんぞ?
『近い!』
そう叫ばれてお互いを見る
確かに近いと言えば近いが、接している面など無くウチからしてみれば差程意識するほどの距離でも無く
まぁ、近いと言うのならば少し離れようか、と身を引く前に肩に回ってきた手によって引き寄せられ
「僕達なかよしだから」
といい笑顔で言い放った彼に思わず吹き出し、取り敢えずノって『いぇい』と棒読みで言いピースをしておいた
澪理は過剰反応し過ぎである
ぎゃいぎゃい言う澪理に集中が切れたことを察した
時計を見ると日付は既に変わっていて
おぉ、思ったよりやってたんだな、と謎の感動
夜食でも作ろうか、と立ち上がり希望を聞けば全員で
おにぎりとかスープとかそんなんでいいかな、とキッチンへ向かう
『そーいや澪理さー』
『んー?』
『テストお疲れ様会何したいの?』
『あー、決めてなかったねぇ』
「テスト終わってないのにお疲れ様会の話なの?」
『そう、モチベーションを上げるために
言わば走る馬の前に人参をぶら下げる心理』
「なんで敢えてその例え」
楽しそうに笑う不二くんに、だって的を射てるでしょ?と笑えば、伝わった、と笑みを含んだ声で返される
やりたく無いけどせめて何か楽しくなることを、という悪足掻きである
『手塚も来るー?』
「?何にだ?」
『話聞いてないのかよ、話の流れで分かるだろww』
「?」
『きょとんとしないで、ウケるww』
何、そう言う打ち上げ的なものと無縁な生活してたの?
部活の大会後とか打ち上げ行かなかったの?
今の話は全く無縁だからってスルーしてたの?
お疲れ様会だよ、と返せばあぁ、と納得した後お前達2人でするんだろう?と真顔で返された
だからそれに誘ってんだよww
「えー、僕は誘ってくれないの?」
『んじゃこの4人でしちゃう?
澪理もいいっしょー?』
『………梨乃がコミュ強になっていく』
『会話をしてww』
若干みんな深夜のテンションになりつつあるな(手塚は変わらんけど)
そうこうしてる内に出来上がったものを運んでいく
(既に机は片付けられていた、さすが)
『んで、何する?ボーリング?』
『あ、行きたい!』
『コイツ等とスポーツ関連では競いたくないけど』
『あ、確かに』
「ボーリングはテニスと違うから、そんな大した事ないよ」
『いや、こういうタイプは意外となんでもオールマイティなんだよ』
「そんな事ないって、ねぇ手塚?」
「……そもそもボーリングはした事ないな」
『………え、どんな学生生活送ってきたらこんなのが出来るの?』
「テニス一色だったからねぇ」
『よっし、そしたらボーリング連れて行ってその後ゲーセン連れて行こう』
「あ、それ面白そう」
『て事でいい?澪理』
『うん、私は楽しめるからいいけど、手塚君の意見は聞かなくていいの?』
「聞いても登山くらいしか返ってこないと思うよ」
『登山ww』
あまりにも渋い、けれど無駄にしっくりくるその趣味に笑うしかない
さすが手塚、期待を裏切らない男
夜食を終え使ったものを片付ける
ウチは別にいいが、コイツ等いつまで粘る気なんだろ
澪理が泊まるのは今に始まったことじゃ無いし、そもそもそのつもりで来てると思うけど
一応明日も平日、大学はあるのだ
再び勉強モードになりつつあるメンバー達には野暮か
恐らく全員徒歩圏内
後数時間もすれば澪理の体力に限界がくるだろうし、その辺でお開きにすればいいか
そう思って、ウチもまた苦手な英語に向き合うのであった
*****
そうして迎えたお疲れ様会
(あの後澪理の眠気により勉強会は終了、その後テストまでに何回か集まった)
返ってきた結果を見て、まずまずか、とファイルに仕舞っていく
意地でも手塚の結果は聞かない、絶対凹む
交換した連絡先、トーク画面を開き理系組集合場所へ到着した旨を打つ
この古臭い堅物眼鏡がこのアプリを活用していることに驚きである
“僕も今向かってるところだよ(^^)”
“ごめん、もうちょっと掛かる!”
直ぐに既読がつきそれぞれの反応
手塚にトーク画面を見せてそのまま待機
数分待てば現れた好青年、不二くんは爽やかに片手を上げて挨拶
うん、爽やか
「お待たせ」
『そんな待ってないよ』
「後は琴原さんだけだね」
『ねー』
そうして待つこと数分
バタバタと走って現れた澪理
髪がボサボサである
やってきた澪理の髪を整えつつ、どーどー、と落ち着かせる
そんなに待ってないし、集合時間なんてあってないようなもの
『よっし、それじゃ行きますか』
「手塚、ボーリングのルールは覚えたかい?」
「あぁ、予習済みだ」
『予習てww』
まずボーリングに大したルールなど無いし、予習するほどのことでは無い
思わず突っ込んだと言うような澪理の反応は正しい
その反応を待っていたであろう不二くんはご満悦だ
ホントこの悪戯っ子め
そうして移動したボーリング場
なれた様子の不二くんが手続きを済ませ、シューズを取りボール選び
サウスポーな手塚を専用のコーナーに案内し、重さ選びはフィーリングで
チーム分けをし、さぁスタート
(ウチと不二くん、澪理と手塚という愉快犯VS天然という構図)
最初はぎこちなかった手塚であるが、なまじ運動神経がいい事もあって徐々にハイスコアを出していく
が、序盤が足を引っ張って伸び悩んだ感じに
(もちろん手塚の初めてはしっかり写真におさめた)
予想通りなんでも器用にこなして行く不二くんのおかげで勝ったのはウチ等のチーム
(途中澪理から始まった9の呪いがしつこくてめっちゃ面白かった、お腹痛い)
澪理は澪理でフォームが独特過ぎてめっちゃ笑わしてくるし、(澪理の後の投球はホント鬼畜だった)ガーター叩き出すしでもう笑いが止まらない
ウチはウチで変な癖があり、ボールが真っ直ぐ転がらず絶対曲がるため『ウチに似てそんな捻くれなくていいのに』と呟いたら不二くんにめっちゃ笑われた、不本意である
3ゲームはウチが体力もたない、と大真面目に言った為2ゲームで終了し続いてゲーセンへ
絶対手塚には太鼓の○人をさせようと心に決めて、まずは全体をぐるっと見て回る
興味が引かれたUFOキャッチャーで遊び(ここでも不二くんは器用であった)、4人でマリカーをし(手塚が運転は無駄に上手いのに尽くトラップに引っ掛かってた犯人は主に不二くんとウチ)
そして最後、太鼓の得意な澪理と手塚を一緒にさせるという鬼畜展開を楽しみ(こういう時の澪理は普段の遠慮具合から考えられない程ガチなのである)
『あー、笑った!お腹痛いww』
「もう、手塚、君ホント最高だねww」
『やっぱりそろそろ怒ってもいいんだよ、手塚君!』
「?」
『やっぱりそう来るかー!』
『「www」』
コミュ障の澪理もだいぶ打ち解けたようである、めでたしめでたし
さんざん手塚で遊んだ後は学生らしくファミレスで夕飯を食べ、ダラダラと大学での話や、キャラが濃すぎるかつての仲間やライバル達の話に爆笑し
『あーもー、おっかし
絶対明日筋肉痛だからな、アンタらのせいで』
「腹筋が?」
『分かってんなら笑わそうとしないでよww』
『…梨乃、不二君とめっちゃ気ぃ合うね』
『澪理も手塚といい勝負やで、天然対決』
『そんなんして無いけど!?』
そろそろいい時間だしお開きにしようか、となりファミレスを出る
それぞれが帰路に着こうとした際に、手塚が大真面目な顔をして澪理に自己紹介を始めた為、もう腹筋崩壊するレベルで笑った
室内だったら膝から折れて倒れ込むレベルであったが、外であった為倒れそうになりながら、不二くんに掴まりばしばしと背中を叩く
不二くんも不二くんで体をくの字にして、声にならない笑い声を上げていた
対象となった澪理も最初はぽかんとしていたが、終わったと分かれば自己紹介し返す為、窒息死するかと思ったそんな、7月の終わり
ティータイムをお忘れ無く
(休むことも必要だよね)
梅雨も明け日照りが気になりだした7月
我々学生が楽しみにしているだろう夏休みの前
楽しみの前の苦難は当たり前だというかの様に立ちはだかる壁(は言い過ぎかもしれないが)、テストである
常日頃から真面目に取り組んではいるし、ノートに抜けも無い
あの友人がどこからか手に入れてきた過去問のコピーも入手済みである
まぁ、それに頼って合格した所で自己の能力とはなり得ない為、参考程度に頼らせてもらおう
それを告げた際の友人の反応は「梨乃も手塚君の事言えないくらいには真面目だよね」だったので、奴はうちの事をどう捉えていたのか
不真面目では無いつもりだったのだが
閑話休題
『てな訳で手塚』
「何がそういう訳なんだ?」
『手塚もちょっとは突っ込んでくるようになったね、いい傾向だ
じゃなくて、一緒にテスト勉強しよう
家だとサボるから監視の目が欲しいし、君の知識も借りたいのが本音です』
「はっきりと言うんだな」
『頼りにしてます』
「まぁ、構わないが…
何処でするつもりだ?」
手塚の最もな質問に1つ頷く
図書室の自習スペースは誰かと勉強するには適していないし、こういう場合にファミレスを選択する学生も少なくないと聞く
が、ウチは正直ファミレスで勉強するのは周りの雑音が気になって集中出来ないから嫌いなのだ
後、ドリンクバーで粘るのが申し訳なくなる
という事で
『ウチん家で』
「一人暮らしだったか?」
『そう』
「あぁ、分かった」
そこで男女のあれこれに思考がいかない辺り手塚である
変に深読みして誘ってると思われたくない
手塚にその知識があるのかは不明であるが
私は純粋に勉強がしたいのだ
2つ返事で頷いた彼へのお礼は夕飯という事にして、早速我が家へ
それなりに近いマンションなので徒歩通学圏ではある
電車やバスの方が時間がかかる場合もある
直ぐに取れる為原付の免許は持ってはいるが、それを使う程の距離でもなくて
手塚はロードワーク代わりに走って通学しているとの事
どこまでもストイックな男だな、コイツは
とまぁ取り敢えず2人共交通手段は自分の足であった為並んで歩く
アームカバーを取り出し日傘を差したウチを物珍しげに見てきた手塚には何も言うまい
なんだよ、日焼け対策大事なんだぞ
ウチは皮膚が弱いため肌に何かを塗るという行為は極力したくないのである
歩いて約10分
辿り着いたマンションのエレベーターに乗り込み我が家へ
冷房の効いていない部屋は蒸し暑い事には代わりないが日差しがない分まだマシで
礼儀正しく靴を揃えて我が家へやってきた手塚に飲み物を準備(ついでに自分のも)
そして勉強出来るよう準備を整え、そこからはもう当たり前のように勉強開始
ポツポツとウチが質問し手塚が答える、という事を繰り返し
そんな静かな空間に鳴り響いたのは、お互いの携帯のバイブ音であった
『わ、びっくりした…』
「出ても構わないか?」
『あ、うん、ウチも出るしお好きにどーぞ』
お互い少し距離を取り通話をタップ
携帯を耳に当てもしもし、と口を開きかけた瞬間
《梨乃ー!助けて!》
響いた大声に携帯を耳から遠ざけた
相変わらずのテンションである
『なに、うるさい』
《あ、ごめん
うぅ…、お願いします、一緒に勉強を…、私を見張ってて…》
『ちょっとイマイチ意味が分かんないんだけど、勉強するならウチ来れば?
手塚も居るけど』
《うぇっ!?まさか…!?》
『変な勘繰りやめて欲しい』
《冗談だって、分かってるよー》
『お前今人にもの頼んでる立場だって分かってる?』
《すいませんでした》
即座に態度を改めた澪理に溜め息
まぁ、別段怒ってなどいないけれど
取り敢えず手塚に了承を得ようと手塚の方を見遣れば
何故か手塚もこちらを見ていた
『?澪理も来るけどいい?』
「あぁ、構わないが」
『が?』
「…」
すっ、と無言で差し出された携帯
取り敢えず澪理には了承の意を伝え通話を切ってから受け取る
『もしもし…?』
《あ、錦さん?》
『えーと、その声は不二くん…?』
《覚えててくれたんだね、ありがとう
今手塚とテスト勉強してるんだってね、良かったら僕も混ぜてくれないかな?》
『あぁ、そう言う…
いいよ、ウチの幼馴染みも今から合流するって言うし
場所分かるかな、──……』
《うん、大丈夫
多分30分後くらいには着くと思うからよろしくね》
『はーい』
そうして会話を終え、通話を切っていいか目で確認し了承を得たので別れの言葉を述べて終了する
うむ、集中が切れた
小休止しようか、と投げ掛ければ同意が帰ってきた為夕飯の準備に取り掛かる
結局4人分か、足りるかな…
弁当と作り置き分を無くせばいけるかな
足りなかったら近くのスーパーでお惣菜でも買ってこよう
そう決めて髪を一纏めにし具材の下拵え
この時期から既に食欲を無くし気味なウチである
誰かが居るのはある意味いい傾向かもしれない、と1人納得する
しばらくして慣れた様子の澪理がやって来て(来ると分かっている時は玄関の鍵を開けているのである)、それからまたしばらくしてチャイムが鳴り響く
澪理に開けてもらい、招き入れた不二くんは夕飯の足しに、と色々買ってきており
『さすが出来る男』
「ふふ、ありがとう」
有難く受け取り仕上げに掛かる
一人暮らしの為食器はそう多くないので紙皿を用意
コップと箸だけはある為澪理に準備させ、勉強を始める前に取り敢えず腹拵え
ほらあれだ、腹が減っては戦ができぬというでは無いか
そういう事にしといて
決して勉強に飽きた訳では無い、決して
ご飯を終え、食休みと称し少しダラダラと
でも手塚が居るこの状況で、このままダラダラ過ごす事になるはずも無く再び再開
今まではウチの質問に対して手塚が返事する、くらいの静けさであったが、やれば出来る系澪理は苦手科目はてんでダメで
『あぁもう、手塚パス!ウチの勉強が進まん!』
「俺の勉強は無視か」
『お前はせずとも良どころか優取るような人間だろうが』
と無理矢理に澪理を押し付けた事もあり、ウチが質問するタイミングを逃してるなう
科目は英語、出来なくはないが文法的なことに対し苦手意識がある為筆の進みが遅い
あー、これなんて熟語だっけ…?これどこに係ってんだよ、わかんね…
電子辞書を手探りで探し当て英字を打ち込んでいく
「躓いてる?」
『躓いてる』
投げ掛けられた問いに即座に答えればくすっ、と小さい笑い声の後に伸びてきた指が英文を辿る
男の、しかも運動部の指とは思えない程白くて細い、綺麗な指
触るときっと少しゴツゴツしているのだろうけど、そんな事感じさせない
一瞬それに気を取られたが、直ぐに持ち直し紡がれる解説に耳を傾ける
答えを教える訳でないヒントを与えるだけの解説
丁寧な、言葉を選び紡がれる音
『あ、つまりこれはここに係ってるから… 』
「そう、ここで文脈が切れてるね」
『そう言う事かー、よしこれなら読み進められる』
「錦さんは理解が早いね、さすが医学部」
『これでも落ちこぼれの部類だよ』
紡がれる賛辞に曖昧に返す
褒められたりするのは正直苦手だ
分かりやすくラインを引いて、今の解説を小さく書き込んでいく
視線を感じて目を向けると、こちらを見ていた(?)不二くんと目が合う(?)
(細目の為あまり自信が持てない)
『…躓いてる?』
「躓いてる」
先程と同じ様に質問すれば、にこにこと笑いながら同じ様に返される
やはり不二くんは思った通り悪戯好きだと思われる
差し出された科目は数学
理系科目ならそこそこ出来る範囲であるし、その単元は割りと好きなとこで
同じ様に指で文字をなぞりながら説明していく
先程されたように、順序だって、取っ掛りが掴めるように
邪魔になる髪を片方に流し、問題をなぞる手とは反対の手で軽く押さえながら少しだけ身を寄せる
あまり目は良くないので見えないのだ
(眼鏡を長時間掛けているのは疲れるから嫌いである)
「あ、なるほど」
『分かった?』
「うん、ありがとう
理系文系が集まってするとこういう時助かるよね」
『そうだね
あの堅物眼鏡は多分関係無いだろうけど』
「それもそうだね」
あっさりと同意され2人でくすくす笑う
何だか気が合いそうで嬉しいぞ、私は
チラリ、と話題に上がった手塚を見てみると、何故か澪理がこちらをガン見していた
なんぞ?
『近い!』
そう叫ばれてお互いを見る
確かに近いと言えば近いが、接している面など無くウチからしてみれば差程意識するほどの距離でも無く
まぁ、近いと言うのならば少し離れようか、と身を引く前に肩に回ってきた手によって引き寄せられ
「僕達なかよしだから」
といい笑顔で言い放った彼に思わず吹き出し、取り敢えずノって『いぇい』と棒読みで言いピースをしておいた
澪理は過剰反応し過ぎである
ぎゃいぎゃい言う澪理に集中が切れたことを察した
時計を見ると日付は既に変わっていて
おぉ、思ったよりやってたんだな、と謎の感動
夜食でも作ろうか、と立ち上がり希望を聞けば全員で
おにぎりとかスープとかそんなんでいいかな、とキッチンへ向かう
『そーいや澪理さー』
『んー?』
『テストお疲れ様会何したいの?』
『あー、決めてなかったねぇ』
「テスト終わってないのにお疲れ様会の話なの?」
『そう、モチベーションを上げるために
言わば走る馬の前に人参をぶら下げる心理』
「なんで敢えてその例え」
楽しそうに笑う不二くんに、だって的を射てるでしょ?と笑えば、伝わった、と笑みを含んだ声で返される
やりたく無いけどせめて何か楽しくなることを、という悪足掻きである
『手塚も来るー?』
「?何にだ?」
『話聞いてないのかよ、話の流れで分かるだろww』
「?」
『きょとんとしないで、ウケるww』
何、そう言う打ち上げ的なものと無縁な生活してたの?
部活の大会後とか打ち上げ行かなかったの?
今の話は全く無縁だからってスルーしてたの?
お疲れ様会だよ、と返せばあぁ、と納得した後お前達2人でするんだろう?と真顔で返された
だからそれに誘ってんだよww
「えー、僕は誘ってくれないの?」
『んじゃこの4人でしちゃう?
澪理もいいっしょー?』
『………梨乃がコミュ強になっていく』
『会話をしてww』
若干みんな深夜のテンションになりつつあるな(手塚は変わらんけど)
そうこうしてる内に出来上がったものを運んでいく
(既に机は片付けられていた、さすが)
『んで、何する?ボーリング?』
『あ、行きたい!』
『コイツ等とスポーツ関連では競いたくないけど』
『あ、確かに』
「ボーリングはテニスと違うから、そんな大した事ないよ」
『いや、こういうタイプは意外となんでもオールマイティなんだよ』
「そんな事ないって、ねぇ手塚?」
「……そもそもボーリングはした事ないな」
『………え、どんな学生生活送ってきたらこんなのが出来るの?』
「テニス一色だったからねぇ」
『よっし、そしたらボーリング連れて行ってその後ゲーセン連れて行こう』
「あ、それ面白そう」
『て事でいい?澪理』
『うん、私は楽しめるからいいけど、手塚君の意見は聞かなくていいの?』
「聞いても登山くらいしか返ってこないと思うよ」
『登山ww』
あまりにも渋い、けれど無駄にしっくりくるその趣味に笑うしかない
さすが手塚、期待を裏切らない男
夜食を終え使ったものを片付ける
ウチは別にいいが、コイツ等いつまで粘る気なんだろ
澪理が泊まるのは今に始まったことじゃ無いし、そもそもそのつもりで来てると思うけど
一応明日も平日、大学はあるのだ
再び勉強モードになりつつあるメンバー達には野暮か
恐らく全員徒歩圏内
後数時間もすれば澪理の体力に限界がくるだろうし、その辺でお開きにすればいいか
そう思って、ウチもまた苦手な英語に向き合うのであった
*****
そうして迎えたお疲れ様会
(あの後澪理の眠気により勉強会は終了、その後テストまでに何回か集まった)
返ってきた結果を見て、まずまずか、とファイルに仕舞っていく
意地でも手塚の結果は聞かない、絶対凹む
交換した連絡先、トーク画面を開き理系組集合場所へ到着した旨を打つ
この古臭い堅物眼鏡がこのアプリを活用していることに驚きである
“僕も今向かってるところだよ(^^)”
“ごめん、もうちょっと掛かる!”
直ぐに既読がつきそれぞれの反応
手塚にトーク画面を見せてそのまま待機
数分待てば現れた好青年、不二くんは爽やかに片手を上げて挨拶
うん、爽やか
「お待たせ」
『そんな待ってないよ』
「後は琴原さんだけだね」
『ねー』
そうして待つこと数分
バタバタと走って現れた澪理
髪がボサボサである
やってきた澪理の髪を整えつつ、どーどー、と落ち着かせる
そんなに待ってないし、集合時間なんてあってないようなもの
『よっし、それじゃ行きますか』
「手塚、ボーリングのルールは覚えたかい?」
「あぁ、予習済みだ」
『予習てww』
まずボーリングに大したルールなど無いし、予習するほどのことでは無い
思わず突っ込んだと言うような澪理の反応は正しい
その反応を待っていたであろう不二くんはご満悦だ
ホントこの悪戯っ子め
そうして移動したボーリング場
なれた様子の不二くんが手続きを済ませ、シューズを取りボール選び
サウスポーな手塚を専用のコーナーに案内し、重さ選びはフィーリングで
チーム分けをし、さぁスタート
(ウチと不二くん、澪理と手塚という愉快犯VS天然という構図)
最初はぎこちなかった手塚であるが、なまじ運動神経がいい事もあって徐々にハイスコアを出していく
が、序盤が足を引っ張って伸び悩んだ感じに
(もちろん手塚の初めてはしっかり写真におさめた)
予想通りなんでも器用にこなして行く不二くんのおかげで勝ったのはウチ等のチーム
(途中澪理から始まった9の呪いがしつこくてめっちゃ面白かった、お腹痛い)
澪理は澪理でフォームが独特過ぎてめっちゃ笑わしてくるし、(澪理の後の投球はホント鬼畜だった)ガーター叩き出すしでもう笑いが止まらない
ウチはウチで変な癖があり、ボールが真っ直ぐ転がらず絶対曲がるため『ウチに似てそんな捻くれなくていいのに』と呟いたら不二くんにめっちゃ笑われた、不本意である
3ゲームはウチが体力もたない、と大真面目に言った為2ゲームで終了し続いてゲーセンへ
絶対手塚には太鼓の○人をさせようと心に決めて、まずは全体をぐるっと見て回る
興味が引かれたUFOキャッチャーで遊び(ここでも不二くんは器用であった)、4人でマリカーをし(手塚が運転は無駄に上手いのに尽くトラップに引っ掛かってた犯人は主に不二くんとウチ)
そして最後、太鼓の得意な澪理と手塚を一緒にさせるという鬼畜展開を楽しみ(こういう時の澪理は普段の遠慮具合から考えられない程ガチなのである)
『あー、笑った!お腹痛いww』
「もう、手塚、君ホント最高だねww」
『やっぱりそろそろ怒ってもいいんだよ、手塚君!』
「?」
『やっぱりそう来るかー!』
『「www」』
コミュ障の澪理もだいぶ打ち解けたようである、めでたしめでたし
さんざん手塚で遊んだ後は学生らしくファミレスで夕飯を食べ、ダラダラと大学での話や、キャラが濃すぎるかつての仲間やライバル達の話に爆笑し
『あーもー、おっかし
絶対明日筋肉痛だからな、アンタらのせいで』
「腹筋が?」
『分かってんなら笑わそうとしないでよww』
『…梨乃、不二君とめっちゃ気ぃ合うね』
『澪理も手塚といい勝負やで、天然対決』
『そんなんして無いけど!?』
そろそろいい時間だしお開きにしようか、となりファミレスを出る
それぞれが帰路に着こうとした際に、手塚が大真面目な顔をして澪理に自己紹介を始めた為、もう腹筋崩壊するレベルで笑った
室内だったら膝から折れて倒れ込むレベルであったが、外であった為倒れそうになりながら、不二くんに掴まりばしばしと背中を叩く
不二くんも不二くんで体をくの字にして、声にならない笑い声を上げていた
対象となった澪理も最初はぽかんとしていたが、終わったと分かれば自己紹介し返す為、窒息死するかと思ったそんな、7月の終わり
ティータイムをお忘れ無く
(休むことも必要だよね)