コーヒー
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「よう、 purcina 。久しいな、こんなとこで勉強か?」
夏の土曜の昼下がり、駅前の商店街にあるコーヒーチェーン店のカウンターテーブルでイヤホンで音楽を聴きつつ大学の課題をこなしていたら横から影と声とくらくらするような甘くスパイシーな香りが降ってきた。
声をかけられたのは私だろうかとイヤホンを外しながら顔を上げると、そこには小さなエスプレッソカップを片手ににこやかに微笑む長身の美しいハニーブロンドの外国人が。
「びっっくりしたぁ…ディーノさん、日本にいらしてたんですね」
「あぁ、これからツナのとこ行くとこだったんだけどちょっと時間が早くてな…で、ちょうど外から夢子が見えたもんだから」
隣座っても?
あ、でも勉強の邪魔か?
そう言った彼の問いに対し、ちょうどキリの良いところだったしそろそろ休憩にするつもりだったので大丈夫です、と課題のテキストを閉じながら彼を隣へ促す。
長身の美しいハニーブロンドの外国人こと、ディーノさんはうちのお隣さんの沢田さんちの中学生・ツナの兄貴分(外国人なのに?)なのだそうだ。
ここのところ、沢田さんちは元気なちびっ子たちを始めとした人の出入りが多く騒がしい。
なんだかんだとお隣さんちの騒動に巻き込まれることも多々あり、ディーノさんとはその関係で知り合った。
明るくて誰にでも優しく見目麗しい。ちびっ子達の面倒見も良くて、会えばいつも笑顔で声を掛けてくれる、とても素敵な人だ。
じゃあ久しぶりだし少し話でもしようぜ、
と彼が席に着く。
いつもより距離が近い。
そんなに広くない店内の、カウンターテーブルで隣同士なので完全にお互いパーソナルスペースに入ってしまっている。ちょっとしたら腕がふれてしまいそうな距離に、そして彼の綺麗な横顔に心臓が早鐘を打つ。
本当にたまにしか会わない存在だし知らないことも多いし、そしてこれはまだ誰にも秘密だけど、今ちょっとだけ気になる存在でもある。そう、ほんのちょっとだけ。
「テストも控えてるからいつもは図書館で勉強してるんですけど、今日はあいにく休館日で」
「そっか。家で勉強はしないのか?」
「いやぁ、今日は朝からお隣の子牛ちゃんの癇癪が特に凄くって…逃げてきたんだよね」
「あぁ……それは災難だったな」
あとであいつらに少し静かにするよう言っとくな、とディーノさんはエスプレッソのカップに口をつける。
「でも俺にとっては幸運だったな。そのおかげで今こうして夢子と話することができてるし」
そう言って彼は私の目をまっすぐ見ながらニカっと目を細めて笑う。
イタリア男性にとっては挨拶代わりであろう歯の浮くようなセリフも私にとっては爆弾だ。
今日は朝から本当にうるさくって最悪だった。だけど、声を掛けられてハニーブロンドが見えた瞬間 ううん、彼の左手に刻まれたタトゥーが見えた瞬間、ラッキーデーに好転したんだから本当に幸運なのは私の方だ。そんなこと、口に出しては絶対言えないけれど。
気持ちを悟られないよう愛想笑いをしながら、既に氷が溶けてかなり薄くなりつつあるアイスコーヒーをストローで吸い込んで自分を落ち着かせる。
「そういや夢子、さっきまで何聴いてたんだ?」
テーブルに置かれた私の鳶色のイヤホンを指差しながら彼は尋ねる。
なんだか今日は質問デーだなあと思いながら
これです、
と私は彼にスマートフォンを差し出す。画面にはイタリアで有名なイケメン兄弟デュオのアルバムが映る。
いつか、ディーノさんとの話のタネになったらいいなぁと思って聴き始めたのだけど、思いのほか良くて最近まんまとハマっている。
これも実は秘密なんだけど、弟の方がほんの少しだけなんだけど目を眇めた表情が、芯の強そうな目元がディーノさんを思い起こさせて、そこもお気に入りの一つなのだ。
「おぉ、日本人がこれ聴いてるの珍しいな」
「ビアンキさんに教えてもらったんです」
「へぇ、ビアンキに」
「動画サイトでMV見たらカッコよくて、すっかりハマっちゃって」
「いいよな、こいつら。曲もいいし」
俺も結構好きだからなんか嬉しいわ
とまた眩しい笑顔で言われ、私の心臓はギュッと鷲掴みされる。
「ちなみにさ、夢子はどっちの方が好み?ルカ?ディエゴ?」
「えー……っと、どっちかといえば、ディエゴの方かなあ」
「なるほど、弟の方な。…じゃあディエゴと俺、どっちの方が好みだ?」
「へ?」
とんでもない質問が降ってきて思わず間の抜けた声を出してしまった。
ディエゴと、俺……?どっちが…?
カウンターに肘をついているディーノさんと目が合う。上目遣い気味の彼の鳶色の目が私をじっと見て離さない。
「ディーノさん、かな…」
目を逸らし私は答えた。
顔が上気するのが分かる。私の顔は赤くなってないだろうか、気持ちはバレてやしないだろうか。顔はぽっぽと熱くなる反面、血の気は引く一方だ。
そんな私をよそに、そっかそっかぁ とディーノさんはやけに嬉しそうだ。かっこいいだとか素敵だとか好きだとか、そんな言葉は散々言われ慣れてるだろうに、つくづく不思議な人である。
「…じゃあさ、
「ボス、そろそろ時間だ」
ディーノさんが何か言いかけたが彼の部下がそれを遮る。
ああもうそんな時間か、と彼は言う。
「Grazie,signorina.うちのボスの相手してもらって悪かったな」
「いえ、いい息抜きになったので」
「夢子。俺、しばらく並盛にいるからさ。また一緒にコーヒー飲もうな」
「あ、はい。ぜひ」
「あーあと俺、英語ならある程度教えられっからさ!ツナ経由ででも連絡してくれれば専属家庭教師になるぜ………って、痛ぇよロマーリオ!引っ張るなよ、俺ちゃんと歩けっから!」
私の閉じたテキストを指差しながら(そう、まさしく英語の課題をしてたところだったのだ)、部下の人に半ば引き摺られながらディーノさんは店を後にする。
私は彼にガラス越しに手を振り、見えなくなったところでひと息つき、テキストを広げ勉強を再開したけれど、鼻腔に残る彼の残り香やドキドキするような言葉の数々が頭の中で何度もリプレイして全くもって身にならなかった。
*************
「…なぁ、ロマーリオ」
「なんだ、ボス」
「夢子、ディエゴより俺の方がずっとイケてるって言ってたな」
「いやそこまでは言ってねえよ」
「いーや、言ってたね」
「(後でリボーンさんにボスの恋愛指南でも頼んどくべきか…)」
漢字 漢字
夏の土曜の昼下がり、駅前の商店街にあるコーヒーチェーン店のカウンターテーブルでイヤホンで音楽を聴きつつ大学の課題をこなしていたら横から影と声とくらくらするような甘くスパイシーな香りが降ってきた。
声をかけられたのは私だろうかとイヤホンを外しながら顔を上げると、そこには小さなエスプレッソカップを片手ににこやかに微笑む長身の美しいハニーブロンドの外国人が。
「びっっくりしたぁ…ディーノさん、日本にいらしてたんですね」
「あぁ、これからツナのとこ行くとこだったんだけどちょっと時間が早くてな…で、ちょうど外から夢子が見えたもんだから」
隣座っても?
あ、でも勉強の邪魔か?
そう言った彼の問いに対し、ちょうどキリの良いところだったしそろそろ休憩にするつもりだったので大丈夫です、と課題のテキストを閉じながら彼を隣へ促す。
長身の美しいハニーブロンドの外国人こと、ディーノさんはうちのお隣さんの沢田さんちの中学生・ツナの兄貴分(外国人なのに?)なのだそうだ。
ここのところ、沢田さんちは元気なちびっ子たちを始めとした人の出入りが多く騒がしい。
なんだかんだとお隣さんちの騒動に巻き込まれることも多々あり、ディーノさんとはその関係で知り合った。
明るくて誰にでも優しく見目麗しい。ちびっ子達の面倒見も良くて、会えばいつも笑顔で声を掛けてくれる、とても素敵な人だ。
じゃあ久しぶりだし少し話でもしようぜ、
と彼が席に着く。
いつもより距離が近い。
そんなに広くない店内の、カウンターテーブルで隣同士なので完全にお互いパーソナルスペースに入ってしまっている。ちょっとしたら腕がふれてしまいそうな距離に、そして彼の綺麗な横顔に心臓が早鐘を打つ。
本当にたまにしか会わない存在だし知らないことも多いし、そしてこれはまだ誰にも秘密だけど、今ちょっとだけ気になる存在でもある。そう、ほんのちょっとだけ。
「テストも控えてるからいつもは図書館で勉強してるんですけど、今日はあいにく休館日で」
「そっか。家で勉強はしないのか?」
「いやぁ、今日は朝からお隣の子牛ちゃんの癇癪が特に凄くって…逃げてきたんだよね」
「あぁ……それは災難だったな」
あとであいつらに少し静かにするよう言っとくな、とディーノさんはエスプレッソのカップに口をつける。
「でも俺にとっては幸運だったな。そのおかげで今こうして夢子と話することができてるし」
そう言って彼は私の目をまっすぐ見ながらニカっと目を細めて笑う。
イタリア男性にとっては挨拶代わりであろう歯の浮くようなセリフも私にとっては爆弾だ。
今日は朝から本当にうるさくって最悪だった。だけど、声を掛けられてハニーブロンドが見えた瞬間 ううん、彼の左手に刻まれたタトゥーが見えた瞬間、ラッキーデーに好転したんだから本当に幸運なのは私の方だ。そんなこと、口に出しては絶対言えないけれど。
気持ちを悟られないよう愛想笑いをしながら、既に氷が溶けてかなり薄くなりつつあるアイスコーヒーをストローで吸い込んで自分を落ち着かせる。
「そういや夢子、さっきまで何聴いてたんだ?」
テーブルに置かれた私の鳶色のイヤホンを指差しながら彼は尋ねる。
なんだか今日は質問デーだなあと思いながら
これです、
と私は彼にスマートフォンを差し出す。画面にはイタリアで有名なイケメン兄弟デュオのアルバムが映る。
いつか、ディーノさんとの話のタネになったらいいなぁと思って聴き始めたのだけど、思いのほか良くて最近まんまとハマっている。
これも実は秘密なんだけど、弟の方がほんの少しだけなんだけど目を眇めた表情が、芯の強そうな目元がディーノさんを思い起こさせて、そこもお気に入りの一つなのだ。
「おぉ、日本人がこれ聴いてるの珍しいな」
「ビアンキさんに教えてもらったんです」
「へぇ、ビアンキに」
「動画サイトでMV見たらカッコよくて、すっかりハマっちゃって」
「いいよな、こいつら。曲もいいし」
俺も結構好きだからなんか嬉しいわ
とまた眩しい笑顔で言われ、私の心臓はギュッと鷲掴みされる。
「ちなみにさ、夢子はどっちの方が好み?ルカ?ディエゴ?」
「えー……っと、どっちかといえば、ディエゴの方かなあ」
「なるほど、弟の方な。…じゃあディエゴと俺、どっちの方が好みだ?」
「へ?」
とんでもない質問が降ってきて思わず間の抜けた声を出してしまった。
ディエゴと、俺……?どっちが…?
カウンターに肘をついているディーノさんと目が合う。上目遣い気味の彼の鳶色の目が私をじっと見て離さない。
「ディーノさん、かな…」
目を逸らし私は答えた。
顔が上気するのが分かる。私の顔は赤くなってないだろうか、気持ちはバレてやしないだろうか。顔はぽっぽと熱くなる反面、血の気は引く一方だ。
そんな私をよそに、そっかそっかぁ とディーノさんはやけに嬉しそうだ。かっこいいだとか素敵だとか好きだとか、そんな言葉は散々言われ慣れてるだろうに、つくづく不思議な人である。
「…じゃあさ、
「ボス、そろそろ時間だ」
ディーノさんが何か言いかけたが彼の部下がそれを遮る。
ああもうそんな時間か、と彼は言う。
「Grazie,signorina.うちのボスの相手してもらって悪かったな」
「いえ、いい息抜きになったので」
「夢子。俺、しばらく並盛にいるからさ。また一緒にコーヒー飲もうな」
「あ、はい。ぜひ」
「あーあと俺、英語ならある程度教えられっからさ!ツナ経由ででも連絡してくれれば専属家庭教師になるぜ………って、痛ぇよロマーリオ!引っ張るなよ、俺ちゃんと歩けっから!」
私の閉じたテキストを指差しながら(そう、まさしく英語の課題をしてたところだったのだ)、部下の人に半ば引き摺られながらディーノさんは店を後にする。
私は彼にガラス越しに手を振り、見えなくなったところでひと息つき、テキストを広げ勉強を再開したけれど、鼻腔に残る彼の残り香やドキドキするような言葉の数々が頭の中で何度もリプレイして全くもって身にならなかった。
*************
「…なぁ、ロマーリオ」
「なんだ、ボス」
「夢子、ディエゴより俺の方がずっとイケてるって言ってたな」
「いやそこまでは言ってねえよ」
「いーや、言ってたね」
「(後でリボーンさんにボスの恋愛指南でも頼んどくべきか…)」
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