サマー・ブリーズ
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あぁ、もう本当に最悪。
これからみーかーと遊びに行く予定だったのに、せっかく昼休み・放課後と整えた髪が外の水道でふざけてた奴らのせいでぐしゃぐしゃだ。
制服はまぁ、夏だし歩いてれば乾くとしても…許さない、テニス部。許さない、甲斐裕次郎。
ジロリと睨む私に怯む甲斐裕次郎。
「…ごめんちゃい」
「それ謝ってるつもり?」
「ごみん」
「は?」
「スメン」
「甲斐しにフラー。ありえんやっさ」
あーもうどうしよ。甲斐は馬鹿だし髪はコテで巻き直す時間もないし、最悪だ。
刹那、甲斐の顔が青ざめる(青ざめたいのはこっちなんだけど?!)。
「甲斐くん、貴方いつまで水浴びしてるの……」
後ろから聞こえた呆れ気味の、歳の割に落ち着きのある声色の持ち主(同じクラスの木手だ)は、私と甲斐とその仲間たちの姿を見て一瞬で事態を把握したようだった。
「貴方、夢村さんに謝ったの?」
「いちおう…」
「一応って何ね。ちゃんと謝りなさいよ」
そう木手に言われ、やっとまともな謝罪をする甲斐は髪型も相まってなんだか叱られた犬みたいに見えたけど、私は騙されない。許さない。だって今日は過去イチいい感じに巻けたんだから。
「夢村さん、うちの甲斐くんがごめんなさいね。あぁ、これもし良かったらタオル、使って。俺まだほとんど使ってないし、今日これ持って帰ってくれていいから」
そう言って木手がポケットに半分突っ込んでいたタオルを差し出してきた。
「せっかく綺麗に巻けてたのにね、髪。本当、ごめんなさいね」
木手は私の髪をあげ、差し出してきたタオルを私の首にかけた。
綺麗に巻けてたのにね、髪。ですって。
やだやだどうしよう木手は別にタイプじゃないんだけどなそんなんあの声で言われたらときめいちゃうじゃない(タイプではないけどあの声は割と嫌いじゃないのだ)って自意識過剰が過ぎったけど、あんだけ友達と騒ぎながら休み時間に教室の後ろでコンセント繋いでコテ巻いてりゃ分かるか。そうだよね。反省。
「木手が悪い訳じゃないのに…なんか逆にごめん。ありがとう、タオル借りていくね」
「いつ返してもらっても大丈夫なんで。まぁ、机にでも置いておいてよ」
そう言って、木手は甲斐とその他に部員を引き連れてテニスコートへ消えて行った(途中、木手が甲斐にゲンコツするのが見えた)(痛そう)(ザマーミロ)。
私はとりあえず木手から借りたタオルで制服と髪を拭う。
その時、島特有の湿度と共に柑橘系の爽やかな香りが鼻腔をくすぐった。無性に胸が跳ね上がってしまったのはきっと今日のこの暑さのせいだろう。そう、暑さのせい。
香りは木手んチの柔軟剤だろうか、タオルもあの顔に似合わずふわっとしてるので多分柔軟剤だろう。今度使っている柔軟剤を聞いてみよう。
********
先に待ち合わせ先に来ていたみーかーにはやはり髪の毛をことを突っ込まれた。事情を話すとそれは災難だったね、とコンセントが使える化粧室のある場所まで連れて行ってくれて髪を巻きおなしてくれた(優しい)(大好き)。
私たちはそれからプリクラを撮って、ファストフード店でおやつともご飯とも言えぬ微妙な時間にしっかりとハンバーガーとポテトとドリンクのセットを頼んで食べ、そして今はドラッグストアで物色中だ。
みーかーが今の時期、CMでよく見るボトルタイプのデオドラントウォーターが欲しいと言うので、一緒にテスターで匂いを嗅ぐ。
(あ、この匂い…)
覚えのある鼻腔をくすぐる爽やかな柑橘系の香りがした。
そうか、彼の使っていたタオルには、彼が使っていたデオドラントウォーターの香りが移っていたのだ。
「夢子がそういう香り選ぶの珍しいね」
「ん、なんとなくね」
私はその香りと今日の会話をなんとなく忘れたくなくて、カゴ放り込んだ。
そういえばまともに木手と会話したのは今日が初めてだったな。
週明け、妙に意識してしまったらどうしようか。
サマー・ブリーズ
(とりあえず、借りたタオルはちゃんと声をかけて返そう。お菓子とかは何が好きかな。)
これからみーかーと遊びに行く予定だったのに、せっかく昼休み・放課後と整えた髪が外の水道でふざけてた奴らのせいでぐしゃぐしゃだ。
制服はまぁ、夏だし歩いてれば乾くとしても…許さない、テニス部。許さない、甲斐裕次郎。
ジロリと睨む私に怯む甲斐裕次郎。
「…ごめんちゃい」
「それ謝ってるつもり?」
「ごみん」
「は?」
「スメン」
「甲斐しにフラー。ありえんやっさ」
あーもうどうしよ。甲斐は馬鹿だし髪はコテで巻き直す時間もないし、最悪だ。
刹那、甲斐の顔が青ざめる(青ざめたいのはこっちなんだけど?!)。
「甲斐くん、貴方いつまで水浴びしてるの……」
後ろから聞こえた呆れ気味の、歳の割に落ち着きのある声色の持ち主(同じクラスの木手だ)は、私と甲斐とその仲間たちの姿を見て一瞬で事態を把握したようだった。
「貴方、夢村さんに謝ったの?」
「いちおう…」
「一応って何ね。ちゃんと謝りなさいよ」
そう木手に言われ、やっとまともな謝罪をする甲斐は髪型も相まってなんだか叱られた犬みたいに見えたけど、私は騙されない。許さない。だって今日は過去イチいい感じに巻けたんだから。
「夢村さん、うちの甲斐くんがごめんなさいね。あぁ、これもし良かったらタオル、使って。俺まだほとんど使ってないし、今日これ持って帰ってくれていいから」
そう言って木手がポケットに半分突っ込んでいたタオルを差し出してきた。
「せっかく綺麗に巻けてたのにね、髪。本当、ごめんなさいね」
木手は私の髪をあげ、差し出してきたタオルを私の首にかけた。
綺麗に巻けてたのにね、髪。ですって。
やだやだどうしよう木手は別にタイプじゃないんだけどなそんなんあの声で言われたらときめいちゃうじゃない(タイプではないけどあの声は割と嫌いじゃないのだ)って自意識過剰が過ぎったけど、あんだけ友達と騒ぎながら休み時間に教室の後ろでコンセント繋いでコテ巻いてりゃ分かるか。そうだよね。反省。
「木手が悪い訳じゃないのに…なんか逆にごめん。ありがとう、タオル借りていくね」
「いつ返してもらっても大丈夫なんで。まぁ、机にでも置いておいてよ」
そう言って、木手は甲斐とその他に部員を引き連れてテニスコートへ消えて行った(途中、木手が甲斐にゲンコツするのが見えた)(痛そう)(ザマーミロ)。
私はとりあえず木手から借りたタオルで制服と髪を拭う。
その時、島特有の湿度と共に柑橘系の爽やかな香りが鼻腔をくすぐった。無性に胸が跳ね上がってしまったのはきっと今日のこの暑さのせいだろう。そう、暑さのせい。
香りは木手んチの柔軟剤だろうか、タオルもあの顔に似合わずふわっとしてるので多分柔軟剤だろう。今度使っている柔軟剤を聞いてみよう。
********
先に待ち合わせ先に来ていたみーかーにはやはり髪の毛をことを突っ込まれた。事情を話すとそれは災難だったね、とコンセントが使える化粧室のある場所まで連れて行ってくれて髪を巻きおなしてくれた(優しい)(大好き)。
私たちはそれからプリクラを撮って、ファストフード店でおやつともご飯とも言えぬ微妙な時間にしっかりとハンバーガーとポテトとドリンクのセットを頼んで食べ、そして今はドラッグストアで物色中だ。
みーかーが今の時期、CMでよく見るボトルタイプのデオドラントウォーターが欲しいと言うので、一緒にテスターで匂いを嗅ぐ。
(あ、この匂い…)
覚えのある鼻腔をくすぐる爽やかな柑橘系の香りがした。
そうか、彼の使っていたタオルには、彼が使っていたデオドラントウォーターの香りが移っていたのだ。
「夢子がそういう香り選ぶの珍しいね」
「ん、なんとなくね」
私はその香りと今日の会話をなんとなく忘れたくなくて、カゴ放り込んだ。
そういえばまともに木手と会話したのは今日が初めてだったな。
週明け、妙に意識してしまったらどうしようか。
サマー・ブリーズ
(とりあえず、借りたタオルはちゃんと声をかけて返そう。お菓子とかは何が好きかな。)
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