そろそろ気づいて
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その人は姉の友達だった。
神奈川に引っ越すと決まった時はぶーたれていた姉だったが(それはそうだ、志望校だってイチから練り直しだったのだから)、生来の性格もあってかすぐ新しい友達も出来、そして家へ招いた。その中の1人が彼女だった。
今思えば、一目惚れだったのかもしれない。どうしたって、目が追ってしまうのだ、彼女を。
だが、所詮はあちらからしたら友達の弟で。
さらに言えば学校も違う、年の離れた彼女と俺に姉以外の接点などあるはずもなく、どうにか接点を持てないか情報を得られないかとキッチンに用事のある振りをしてわざとリビングに出入りするも(姉は自室は狭いと友人たちをリビングに招いていたのだ)交わせる言葉は挨拶程度だった。
夢村夢子さん。
アホの姉の課題をよく手伝っていた、姉の友達。
気になる存在であることは変わりなかったが好きになるまでの材料は乏しく、特に進展もなく後退もなく、俺は高校生になり、彼女は大学生になっていた。この頃には彼女が家に来ることも少なくなっていた。
そんなある日、俺は出先で彼女と偶然再会を果たすことになる。
駅前のドラッグストア、彼女がバイトをしていたのだ。愚かなことに俺はそれに気づかず彼女のレジに並んでいた。そして、意外なことに話しかけてきてくれたのは彼女の方からだった。
「あれ?もしかして、仁王の弟の…」
「雅治です」
「そう、雅治くんだ。私のこと分かる?前、結構遊びに行ってた…」
「夢子さんじゃろ」
「すごい、よく覚えてくれてたね。あんま話したことなかったのに」
お姉ちゃん元気?しばらく会えてないんだよね
夢子さんはそんな事話しながら器用にレジ操作をする。
最悪だったのが、この時俺は部活用の日焼け止めだなんだと一緒にコンドームもカゴに入れていた。週末に彼女と致す(かもしれない)予定があったからだ。だけど夢子さんにだけは、この姿を見られたくなかった (日焼け止めもなんもかも、全てはコンドームを買う為のカムフラージュだったんだから)。
そんな俺の思いはつゆ知らず、夢子さんは慣れた手つきでそれを茶色の小さい紙袋に包んで他の商品と一緒に手渡してくれた。もちろん、この事についてには触れもせず。
お姉ちゃんによろしく、また来てね
会計が終わると彼女はそう笑顔で言った。
後日予定通り、付き合ってた彼女と夢子さんが包んでくれたそれを使う日がきたが、どうしても夢子さんの顔がチラついてしまい、どこかうわの空だった。女にはそれが分かったようでビンタされた(そして間もなく別れた)。
それからというもの、俺は彼女のバイト先にあしげく通った。
最初こそ、それは姉の耳に入っていたようだったがあまり触れられることはなかった。
俺はここぞとばかりに姉の話題を足がかりに、じわじわと、少しずつ少しずつ彼女を知っていった。
自分でもびっくりしてる。今ままでこんなことはした事ない。
(大体告白されて、とりあえずで付き合うパターンばかりだったのだ)(例の彼女もそう)(最終的に振られたけど)
それでも得られる情報はほんの一握りで、決して満たされれることはなかった。
「あれ、雅治くんだ。いらっしゃい」
品出しか何かをしていたのだろう夢子さんが菓子パン棚を眺める俺に声をかけてきた。
「夢子さん、どーも」
「今日は何しにきたの?」
「どうみたって買い物じゃろ」
ほれ、と俺は右手に持っていた買い物カゴを見せる。
あら失礼しました、と彼女は言う。
思っていた以上にフランクだった彼女とは、今ではおかげさまで軽口を叩ける仲だ。
「いやぁね、中にはね、お話を聞いてもらいたいだけのおじいちゃんとか来るもんだからさー」
夢子さんがハハハと笑う。
これは世間話か。
若しくは、俺の気持ちを分かっていての牽制か。
「なんじゃ、夢子さんはこんなにイケてる俺のことを構って欲しい爺さんと同等に見とるん?」
「んー?どうだろうねえ」
俺の隣で賞味期限チェックをしているのであろう、夢子さんはこちらを見ずに答える。表情と感情がイマイチ分からない。
もっと詰めて詰めていくつもりだったのに、今日の俺は少し変だ。どうしたって衝動に駆られてしまう。
「のう…夢子さん、今日ってこの後すぐ上がりで良かった?」
「うん、店長から何も言われなければその予定だけど」
「あのさ、この後予定がなければなんじゃけど、俺、そこのモスで待っとるからさ、少し話さん?」
仮に気持ちがバレていたって構うもんか。
格好悪くたって、姉に情報が流れて家で揶揄われたっていい。
貴方を知りたくて、俺を知って欲しくて、ここに通っていたんだから、
神奈川に引っ越すと決まった時はぶーたれていた姉だったが(それはそうだ、志望校だってイチから練り直しだったのだから)、生来の性格もあってかすぐ新しい友達も出来、そして家へ招いた。その中の1人が彼女だった。
今思えば、一目惚れだったのかもしれない。どうしたって、目が追ってしまうのだ、彼女を。
だが、所詮はあちらからしたら友達の弟で。
さらに言えば学校も違う、年の離れた彼女と俺に姉以外の接点などあるはずもなく、どうにか接点を持てないか情報を得られないかとキッチンに用事のある振りをしてわざとリビングに出入りするも(姉は自室は狭いと友人たちをリビングに招いていたのだ)交わせる言葉は挨拶程度だった。
夢村夢子さん。
アホの姉の課題をよく手伝っていた、姉の友達。
気になる存在であることは変わりなかったが好きになるまでの材料は乏しく、特に進展もなく後退もなく、俺は高校生になり、彼女は大学生になっていた。この頃には彼女が家に来ることも少なくなっていた。
そんなある日、俺は出先で彼女と偶然再会を果たすことになる。
駅前のドラッグストア、彼女がバイトをしていたのだ。愚かなことに俺はそれに気づかず彼女のレジに並んでいた。そして、意外なことに話しかけてきてくれたのは彼女の方からだった。
「あれ?もしかして、仁王の弟の…」
「雅治です」
「そう、雅治くんだ。私のこと分かる?前、結構遊びに行ってた…」
「夢子さんじゃろ」
「すごい、よく覚えてくれてたね。あんま話したことなかったのに」
お姉ちゃん元気?しばらく会えてないんだよね
夢子さんはそんな事話しながら器用にレジ操作をする。
最悪だったのが、この時俺は部活用の日焼け止めだなんだと一緒にコンドームもカゴに入れていた。週末に彼女と致す(かもしれない)予定があったからだ。だけど夢子さんにだけは、この姿を見られたくなかった (日焼け止めもなんもかも、全てはコンドームを買う為のカムフラージュだったんだから)。
そんな俺の思いはつゆ知らず、夢子さんは慣れた手つきでそれを茶色の小さい紙袋に包んで他の商品と一緒に手渡してくれた。もちろん、この事についてには触れもせず。
お姉ちゃんによろしく、また来てね
会計が終わると彼女はそう笑顔で言った。
後日予定通り、付き合ってた彼女と夢子さんが包んでくれたそれを使う日がきたが、どうしても夢子さんの顔がチラついてしまい、どこかうわの空だった。女にはそれが分かったようでビンタされた(そして間もなく別れた)。
それからというもの、俺は彼女のバイト先にあしげく通った。
最初こそ、それは姉の耳に入っていたようだったがあまり触れられることはなかった。
俺はここぞとばかりに姉の話題を足がかりに、じわじわと、少しずつ少しずつ彼女を知っていった。
自分でもびっくりしてる。今ままでこんなことはした事ない。
(大体告白されて、とりあえずで付き合うパターンばかりだったのだ)(例の彼女もそう)(最終的に振られたけど)
それでも得られる情報はほんの一握りで、決して満たされれることはなかった。
「あれ、雅治くんだ。いらっしゃい」
品出しか何かをしていたのだろう夢子さんが菓子パン棚を眺める俺に声をかけてきた。
「夢子さん、どーも」
「今日は何しにきたの?」
「どうみたって買い物じゃろ」
ほれ、と俺は右手に持っていた買い物カゴを見せる。
あら失礼しました、と彼女は言う。
思っていた以上にフランクだった彼女とは、今ではおかげさまで軽口を叩ける仲だ。
「いやぁね、中にはね、お話を聞いてもらいたいだけのおじいちゃんとか来るもんだからさー」
夢子さんがハハハと笑う。
これは世間話か。
若しくは、俺の気持ちを分かっていての牽制か。
「なんじゃ、夢子さんはこんなにイケてる俺のことを構って欲しい爺さんと同等に見とるん?」
「んー?どうだろうねえ」
俺の隣で賞味期限チェックをしているのであろう、夢子さんはこちらを見ずに答える。表情と感情がイマイチ分からない。
もっと詰めて詰めていくつもりだったのに、今日の俺は少し変だ。どうしたって衝動に駆られてしまう。
「のう…夢子さん、今日ってこの後すぐ上がりで良かった?」
「うん、店長から何も言われなければその予定だけど」
「あのさ、この後予定がなければなんじゃけど、俺、そこのモスで待っとるからさ、少し話さん?」
仮に気持ちがバレていたって構うもんか。
格好悪くたって、姉に情報が流れて家で揶揄われたっていい。
貴方を知りたくて、俺を知って欲しくて、ここに通っていたんだから、
そろそろ気づいて
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