期待するくらい、いいでしょ?
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「あぁ夢子ちゃん!ちょうど良かった、駅前までちょっと頼まれてくれる?」
大学の前期試験も終わり、無事に夏休み突入したある昼下がり。
回覧板のお届けと親戚からもらった梨のお裾分けにお隣の沢田さん家に向かった私を待っていたのはなんと沢田家のお使いであった。
「ごめんね、本当は私が行かなきゃなんだけど今ちょっと手と目が離せなくって」
沢田のおばさんが言うには、預かっている子供達の洋服の買い足しに行きたいが(汚しまくって洗濯が追いつかないらしい)、行こうとしたタイミングで今度は脱衣場が水浸しになってしまい、今はその後処理をしなければならないらしい。ツナは学校の夏期講習に行っていて不在。そこに偶然現れた私に白羽の矢が立った、ということだ。
母からもワンオペで家庭を切り盛り沢田さんには協力してあげてと言われている。バイトも今日は休み、断る理由がない。
「いいですよ、欲しいものとサイズとか教えてもらえれば」
「わー助かるわぁ!ありがとう!」
「何だか悪りぃな、ママン」
「いいのよぅ、ディーノくんは何も悪くないじゃない」
「おぅ夢子、買い物なら俺も着いて行くぜ」
リビングから顔を出したのは会えたら嬉しいなと私が密かに、淡い期待を抱いていたディーノさんだった。まさか本当にいるとは。淡い期待を信じてもっと身なりを整えておけば良かったと後悔をする。荷物持ちくらいにはなるだろ、とニカっとディーノさんは笑う。
あら、そう?じゃあ2人でお願いね、とにこやかに笑うおばさんに見送られ、2人で駅前までお使いに出ることとなった。
*********
駅前はそこまで遠くないはずだけど、その日は到着するのにかなり時間がかかった。
なぜならディーノさんがところどころでつまづいて転んだりしてたから。本人も不思議そうにびっくりしてたけど、本当に段差も何もないところで転ぶのだ。それも何度も。そして派手に。あんなにかっこよくてスマートで実業家としても成功している(らしい)人でも、日に何度も転ぶことがあるのだなと、所謂ギャップ萌えに緩む口元を手で覆って隠した。
「子供服ってこんなにあるんですね…」
「すげー。本当に上から下まで全部子供服なんだな」
やっとの事で駅前にある子供服専門の量販店に辿り着いた私たちを待ちうけていたのは予想を超える子供服の量と、買い物に来ていたママ達のディーノさんへの熱い眼差しだった。
それはそうだ、人目を引く長身の蜂蜜色をしたブロンドヘアにスパイシーで甘い香りの異国の香水を纏い、服装こそカジュアルだけど誰もが振り向くような整った容姿。とても並盛町にいていい見た目ではない。そんな彼と一緒にいる、母親には少々早すぎる年齢の(いやもうママになっている同級生もいるけれど)、そこそこな身なりのそこそこな大学生の私。一体どんな組み合わせなのだろうと周りはきっと思っていることだろう。普段注目されることのない私は物量と向けられる視線で倒れてしまいそうだ。
「よしっ!じゃあパパッとおばさんに頼まれたもの見繕ってしまいしょう!」
「おう、そうだな」
サイズや枚数の指定はあるものの、色柄に関してはディーノくんと夢子ちゃんに任せるわ!という事だったが、沢田家で毎日大暴れしているチビ達の事をイメージしながら頼まれた洋服を2人で選ぶ。あぁ、うちのお母さんもこうして私たちの着る服を選んでくれたのだろうか、私にもいつか自分の子供のために服を選ぶがくるのだろうか、なんて考えたりした。
「夢子、これランボにどうだ?」
「あーいいですね。ランボちゃん牛柄好きだから喜びそう」
「だよな。最近は牛柄見るとあのチビが頭を過ってなー」
「ふふ、わかります。私もそうです」
他愛ない話をしながら頼まれたものを選び、買い物カゴに入れていく。
「夢子、」
「なんですかディーノさん」
「なんかさ、こうやって並んで子供服選んでると夫婦みてぇじゃね?」
「えっ、は?…えっ?」
「おいおい、そんなびっくりするなって」
「いやだって…そんな、子持ち夫婦ってだいぶ段階飛ばしすぎ…」
「でも子供服選んでるんだから段階としてはそうだろ?」
「まあそうですけど」
「じゃあ恋人から始めてみるか?」
鳶色の瞳がこちらをじっと見る。彼の髪色と同じ蜂蜜色の長いまつ毛がその瞳に影を落としている。下まつ毛も長すぎ。使っている美容液があるなら教えて欲しい。
咄嗟の事にどう答えたらいいか分からず、固まってしまっていたら冗談だよ、と頭をグシャグシャと撫でられた。
そのあとすぐ、もう買うものなかったよな?とディーノさんは買い物カゴを手に取り、レジの方へと向かって行ってしまった為、表情はわからない。急いでついて行こうとしたら、前方で自身の足につまづいて転ぶディーノさんは転んでいた。その音は店内に大きく響いたので、本人はどうして転んだのは不思議がりながらも少し恥ずかしそうだった。
会計はディーノさんがクレジットカードでしてくれた。
家を出る前、おばさんはお金を渡してくれようとしたけれど、ママンにはいつも世話になっているからこれくらいは出さなきゃな、との事でディーノさんが受け持つ事になったのだ。
その後のディーノさんもいつも通りだった。
暑いからなんか冷たいもの飲んで帰ろうぜとフラペチーノをご馳走してくれた。
恋人から始めてみるか、なんて言葉なんかまるでなかったかのようにスマートだった。冗談だよと言われている手前、掘り返せないまま(元より、私の気持ちがバレてしまいそうで恥ずかしいからしないけど)、あっという間に家の前まで戻ってきてしまった。
「ディーノさんに夢子ちゃん、ランボ達のせいで買い物行かせちゃってすみませんでした!」
沢田家の玄関を開けると待っていたのは夏期講習から帰ってきていたツナだった。子供達は相変わらず騒がしくしている。
「おー全然構わないぜ。楽しかったから。な、夢子?」
「えっ。あぁ、うん。ディーノさんにフラペチーノご馳走になっちゃったし、なんか得した気分だよ」
なら良かったんですけど、とツナは言う。ツナはかなり気にしいなところもあるけど、思いやりのある優しい子なのだ。
「じゃあ私そろそろ帰るね」
「夢子ちゃんありがとう。あっ、今日おばさん達、夜いないんでしょ?良かったら夕飯食べていかないかって母さんが」
「お?そうなのか?」
「いや、今日は大丈夫。ありがとう。おばさんにもよろしくね」
いつもならご相伴にあずかるところだが、これ以上ディーノさんと一緒にいたら私の心臓が保たない(母め、余計な情報を沢田家に入れるでないよ)。
「じゃあ家まで送るぜ」
「隣だよ?」
「俺が送りたいんだよ。送らせてくれよsignorina」
そう言って私の肩に手を回し(おおっと?)、ほんの一瞬の距離をディーノさんと密着して歩いた。
「送ってもらっちゃってすみません」
「あぁ、女性を1人で帰らせるわけには行かねえからな」
物騒な世の中だし、何よりおっかねー師匠の教えなんだ、とディーノさんは続ける。
「… 夢子」
「はい」
瞬間、腰にギュッと手を回され、
「ちょっとだけ恋人気分で楽しかったぜ」
耳元で彼はそう囁く。
囁かれた方の耳をバッと押さえながら彼の顔を見ると、いつもよりイタズラっぽい顔でニヤリと笑って「戸締りちゃんとしろよ」と私の頭を撫でて楽しそうにお隣さんへと帰っていくのだった。
大学の前期試験も終わり、無事に夏休み突入したある昼下がり。
回覧板のお届けと親戚からもらった梨のお裾分けにお隣の沢田さん家に向かった私を待っていたのはなんと沢田家のお使いであった。
「ごめんね、本当は私が行かなきゃなんだけど今ちょっと手と目が離せなくって」
沢田のおばさんが言うには、預かっている子供達の洋服の買い足しに行きたいが(汚しまくって洗濯が追いつかないらしい)、行こうとしたタイミングで今度は脱衣場が水浸しになってしまい、今はその後処理をしなければならないらしい。ツナは学校の夏期講習に行っていて不在。そこに偶然現れた私に白羽の矢が立った、ということだ。
母からもワンオペで家庭を切り盛り沢田さんには協力してあげてと言われている。バイトも今日は休み、断る理由がない。
「いいですよ、欲しいものとサイズとか教えてもらえれば」
「わー助かるわぁ!ありがとう!」
「何だか悪りぃな、ママン」
「いいのよぅ、ディーノくんは何も悪くないじゃない」
「おぅ夢子、買い物なら俺も着いて行くぜ」
リビングから顔を出したのは会えたら嬉しいなと私が密かに、淡い期待を抱いていたディーノさんだった。まさか本当にいるとは。淡い期待を信じてもっと身なりを整えておけば良かったと後悔をする。荷物持ちくらいにはなるだろ、とニカっとディーノさんは笑う。
あら、そう?じゃあ2人でお願いね、とにこやかに笑うおばさんに見送られ、2人で駅前までお使いに出ることとなった。
*********
駅前はそこまで遠くないはずだけど、その日は到着するのにかなり時間がかかった。
なぜならディーノさんがところどころでつまづいて転んだりしてたから。本人も不思議そうにびっくりしてたけど、本当に段差も何もないところで転ぶのだ。それも何度も。そして派手に。あんなにかっこよくてスマートで実業家としても成功している(らしい)人でも、日に何度も転ぶことがあるのだなと、所謂ギャップ萌えに緩む口元を手で覆って隠した。
「子供服ってこんなにあるんですね…」
「すげー。本当に上から下まで全部子供服なんだな」
やっとの事で駅前にある子供服専門の量販店に辿り着いた私たちを待ちうけていたのは予想を超える子供服の量と、買い物に来ていたママ達のディーノさんへの熱い眼差しだった。
それはそうだ、人目を引く長身の蜂蜜色をしたブロンドヘアにスパイシーで甘い香りの異国の香水を纏い、服装こそカジュアルだけど誰もが振り向くような整った容姿。とても並盛町にいていい見た目ではない。そんな彼と一緒にいる、母親には少々早すぎる年齢の(いやもうママになっている同級生もいるけれど)、そこそこな身なりのそこそこな大学生の私。一体どんな組み合わせなのだろうと周りはきっと思っていることだろう。普段注目されることのない私は物量と向けられる視線で倒れてしまいそうだ。
「よしっ!じゃあパパッとおばさんに頼まれたもの見繕ってしまいしょう!」
「おう、そうだな」
サイズや枚数の指定はあるものの、色柄に関してはディーノくんと夢子ちゃんに任せるわ!という事だったが、沢田家で毎日大暴れしているチビ達の事をイメージしながら頼まれた洋服を2人で選ぶ。あぁ、うちのお母さんもこうして私たちの着る服を選んでくれたのだろうか、私にもいつか自分の子供のために服を選ぶがくるのだろうか、なんて考えたりした。
「夢子、これランボにどうだ?」
「あーいいですね。ランボちゃん牛柄好きだから喜びそう」
「だよな。最近は牛柄見るとあのチビが頭を過ってなー」
「ふふ、わかります。私もそうです」
他愛ない話をしながら頼まれたものを選び、買い物カゴに入れていく。
「夢子、」
「なんですかディーノさん」
「なんかさ、こうやって並んで子供服選んでると夫婦みてぇじゃね?」
「えっ、は?…えっ?」
「おいおい、そんなびっくりするなって」
「いやだって…そんな、子持ち夫婦ってだいぶ段階飛ばしすぎ…」
「でも子供服選んでるんだから段階としてはそうだろ?」
「まあそうですけど」
「じゃあ恋人から始めてみるか?」
鳶色の瞳がこちらをじっと見る。彼の髪色と同じ蜂蜜色の長いまつ毛がその瞳に影を落としている。下まつ毛も長すぎ。使っている美容液があるなら教えて欲しい。
咄嗟の事にどう答えたらいいか分からず、固まってしまっていたら冗談だよ、と頭をグシャグシャと撫でられた。
そのあとすぐ、もう買うものなかったよな?とディーノさんは買い物カゴを手に取り、レジの方へと向かって行ってしまった為、表情はわからない。急いでついて行こうとしたら、前方で自身の足につまづいて転ぶディーノさんは転んでいた。その音は店内に大きく響いたので、本人はどうして転んだのは不思議がりながらも少し恥ずかしそうだった。
会計はディーノさんがクレジットカードでしてくれた。
家を出る前、おばさんはお金を渡してくれようとしたけれど、ママンにはいつも世話になっているからこれくらいは出さなきゃな、との事でディーノさんが受け持つ事になったのだ。
その後のディーノさんもいつも通りだった。
暑いからなんか冷たいもの飲んで帰ろうぜとフラペチーノをご馳走してくれた。
恋人から始めてみるか、なんて言葉なんかまるでなかったかのようにスマートだった。冗談だよと言われている手前、掘り返せないまま(元より、私の気持ちがバレてしまいそうで恥ずかしいからしないけど)、あっという間に家の前まで戻ってきてしまった。
「ディーノさんに夢子ちゃん、ランボ達のせいで買い物行かせちゃってすみませんでした!」
沢田家の玄関を開けると待っていたのは夏期講習から帰ってきていたツナだった。子供達は相変わらず騒がしくしている。
「おー全然構わないぜ。楽しかったから。な、夢子?」
「えっ。あぁ、うん。ディーノさんにフラペチーノご馳走になっちゃったし、なんか得した気分だよ」
なら良かったんですけど、とツナは言う。ツナはかなり気にしいなところもあるけど、思いやりのある優しい子なのだ。
「じゃあ私そろそろ帰るね」
「夢子ちゃんありがとう。あっ、今日おばさん達、夜いないんでしょ?良かったら夕飯食べていかないかって母さんが」
「お?そうなのか?」
「いや、今日は大丈夫。ありがとう。おばさんにもよろしくね」
いつもならご相伴にあずかるところだが、これ以上ディーノさんと一緒にいたら私の心臓が保たない(母め、余計な情報を沢田家に入れるでないよ)。
「じゃあ家まで送るぜ」
「隣だよ?」
「俺が送りたいんだよ。送らせてくれよsignorina」
そう言って私の肩に手を回し(おおっと?)、ほんの一瞬の距離をディーノさんと密着して歩いた。
「送ってもらっちゃってすみません」
「あぁ、女性を1人で帰らせるわけには行かねえからな」
物騒な世の中だし、何よりおっかねー師匠の教えなんだ、とディーノさんは続ける。
「… 夢子」
「はい」
瞬間、腰にギュッと手を回され、
「ちょっとだけ恋人気分で楽しかったぜ」
耳元で彼はそう囁く。
囁かれた方の耳をバッと押さえながら彼の顔を見ると、いつもよりイタズラっぽい顔でニヤリと笑って「戸締りちゃんとしろよ」と私の頭を撫でて楽しそうにお隣さんへと帰っていくのだった。
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