私の好きな二人がデキてると思ったら私のことが好きだった



突然ですまないのだが、聞いてほしい。
私には、好きな人が二人いる。そして、その二人はデキている。
どういうことか少し、お話するのでお付き合い願いたい。

事の始まりは、半年前に遡る。
私は、現世からの徴集組で審神者となった。二年ほど、審神者として従事していたとき。政府から、ある任務が降りた。
それは、満期で退職となった審神者の本丸の男士、二人を引き取りせよ。とのお達しだった。
私は、少しその任務を引き受けるのを迷った。なぜなら、私は、私の刀剣男士と上手くいってないからである。
上手くいってないとは言っても、劇的に仲が悪いという訳では無い。
ただ、私自体が現世からの徴収組の審神者であるからかは分からないが、刀剣男士という、付喪神の神様達に少し、苦手意識があるのだ。なんというか、彼らは崇高な神様である。という思いが一般庶民だった私にはあって、だからどこか一歩引いた態度を取ってしまう。なので、私と私の刀剣男士の関係性は、二年経った今でもどこか、よそよそしく他の人から見たら見えるのだろう。
そんな中に、この任務なのだ。とは言っても、政府からの、お上からの命令。断れるはずもなく、件の刀剣男士二人を引き取る事になった。
そして、来たのが鶴丸国永と、髭切の二人である。
私は、どんな男士が来るのだろう……新しく来た二人と上手くやっていけるのだろうか……と。不安でビクビクしていたのだが、鶴丸と髭切の二人は良い意味で予想を裏切ってくれた。
私の本丸にやってきた二人は、一言で表すならば、とても人間味溢れる刀剣男士だったのだ。
まず、来た初日におどおどと挨拶をする私に、鶴丸は、「大丈夫。大丈夫ゆっくりで良いからな。こんな可愛らしいお嬢さんの所に来れて幸せだなぁ」と、一切の邪心もない顔で笑みを綻ばせた。髭切は、「そうだねぇ。僕達運が良いなぁ。あ、君。緊張してるのなら飴ちゃんでも食べるかい?」と、こちらも聖母のような微笑みを浮かべると飴を差し出してくれた。
私は、そんな二人にどう反応したかと言うと、涙腺が大決壊した。子供のようにギャン泣きしたのである。きっと、審神者となってから二年間、ずっと張り詰めていた糸が、暖かさ溢れる二人にぷつりと切れてしまったのだろう。
そんな私に、二人は最初は戸惑いながらも、ずっとあやすようにヨシヨシしてくれた。
――暖かい――と、そう思った。
そして、私はそんな二人に朝日が空に昇るよりも容易く、恋に落ちたのだった。

二人は、私の本丸に、刀剣男士達に、糸も容易く馴染んだ。
普段の彼らの様子はこうである。
まず、朝に同室の二人は、寝起きの悪い髭切を鶴丸が起こして一日が始まる。そして、髭切を老老介護のように身支度を鶴丸が手伝ってあげて、大広間にて皆と食事を取る。そして、内番をしたり、出陣の時は、颯爽と敵をなぎ倒す。二人の前の主である審神者は、熟練の老成したおばあちゃんだったらしい。そんな二人と、私の刀剣男士たちはまるで昔からの旧知の間柄だったように仲が良い。きっと、鶴丸と髭切の二人が、とても物腰が柔らかで包容力があるからだろう。
私より、私の刀剣男士たちと仲が良い二人の様子に、何だか眩しくなるような羨ましさもあるが、二人は最初に対面した時の新しい主である私の様子に、何かを察したのか。さり気なく橋渡しなんかをしてくれるので感謝している。そのお陰で、二人が来る前よりも、私の刀剣男士達との距離が少し近づいた気がする。

今日も二人は、とても仲睦まじい。
その様子に思わず口元が緩んでしまう。
そんな私の様子を、初期刀の山姥切は一瞥すると、一言呟いた。

「まるで老夫婦のようで微笑ましいよな」と。

私は、その言葉を聞いた時、頭に衝撃が走った。
そうだ。私が今まで見てきた二人の様子は、私が恋する想い人二人は、まるで老夫婦のようだと。
そして、思った。私が恋焦がれてる二人は、想いを通わせ合った仲なのではないかと――



薄暗い蔵の一室に、男女三人は閉じ込められていた。
蔵の整理を三人でしている時に、老朽化で建付けが悪くなった扉が開かなくなってしまい、閉じ込められたのだ。

「あちゃ〜閉じ込められちゃったね……」
「そうだな……さて、どうしたもんか」

閉じ込められた男女の、男の方の二人。鶴丸と髭切が口を開く。

「こんな時になんだが、なぁ。主……最近、様子が可笑しいがどうかしたのかい」

鶴丸にそう問いかけられた女。審神者は顔を俯かせている。

「ふたりの……こ……す……だけど……こいなか……だから」
「え?なんて?ごめんね。聞き取れなかったもう一回言って?」
「二人のことが好きだけど二人は恋仲だからです……!!」
「「え……」」

ぼそぼそと喋った言葉から、はっきりとした大きさでもう一度言葉を紡いだ審神者に、二人は固まる。
そして、一呼吸置くと、同じ言葉を両名発した。

「僕は「俺は君のことが好きだ」好きだよ」

その二人の言葉に、審神者。私は、大混乱と共に身体が沸き立つような熱さを感じる。
だって――そう私に告げた二人の瞳が、いつも暖かい二人が。老夫婦だと評された二人が。甘く、溶かすような色濃い目をしてたからである。
こんな二人は知らない――

皆さん。どこかの誰かの皆さん。もう一度耳を傾けてほしい。
私はどうしたら良いのですか……?!!!

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