私の頭の中のあなたたち



私の頭の中は賑やかだ。
小さい頃から、物心ついた時から頭の中にお友達が居た。気づいたら、話せていたのだ。最初に話しかけらえた時に声に出して返事をしちゃ駄目だと、言われたのでいつも心の中で話をしている。ほかの誰も知らない。私だけの秘密のお友達だ。大きくなってから、知った事だが、架空の存在、イマジナリーフレンドというのが、幼い子供は一人遊びの延長線上で創り出すらしく、きっと私のお友達もその類なのだろうと思う。
そして、そのお友達だが、実は二人いる。一人は鶴ちゃん。この子は、男前な低音ボイスでワイルドな喋り方をする。結構、冗談とかも言うので面白い。なんとなく、ぼんやりと伝わってくる姿のイメージだととても儚げな真っ白としていて美少女のような姿だ。二人目は、髭ちゃん。この子は、おっとりとしたとても優しい声で、のんびりとした口調をしている。この髭ちゃんの姿は、まるで王子様のような感じで全体的に暖色の色合いをしたゆるふわだ。
そんな、二人と今日も私は心の中で喋っている。私は、友人たちに少し不思議ちゃんだよね。と、言われることはあれど、実は心の中にお友達が居る以外は至って平凡な華の女子高生である。
今日は、学校が終わった後、友達と遊んだのでいつもより少し遅い帰り道だ。前を歩いてる人が見える。中肉中背のサラリーマンの人だ。頭が目についた。

『なぁ、君。気づいてるかい?あれは、本当の毛髪じゃないだろ』

鶴ちゃんが、私に心の中で話掛ける。いつも、みたいにふざけて私を笑わせようと悪ノリをしているみたいだ。

『鶴ちゃん、例えそうだとしてもきっと、いっぱい頑張って苦労した人なんだよ。こういう時は気づいても見ないふりをしてあげるのが礼儀なんだよ』
『じゃああれには、付喪神が宿ってるのかな?いや、毛根の方は居なそうだね。あの頭の被り物の方に宿ってそうだ』

髭ちゃんが、いつものマイペースでやんわりと辛辣な事を言う。

『もう、駄目だよ二人共。笑っちゃうから止めて……』

こんな、調子でいつも日常を過ごしている。小さい時のあの頃から、話し出した時から気づいたら喋らない日はないほど、二人が心の中に居るのが当たり前になっていた。私は、少し普通の女子高生とは違う日々を過ごすのが何だかんだで楽しくなっていて大切だと、二人を好ましいとこれからもずっとこんな感じで過ごせたらなと、思っている。
サラリーマンが道を曲がった。

『良かったギリギリセーフだ。もう少しで笑っちゃう所だった……』
『なんだ、後もう少しだったのにな』
『もう少しだったのにね』

やっぱり、二人はわざと私を笑わせようしていたようだ。

『それにしても、ちょっと遅くなっちゃったな』
『そうだね。今日は友達と遊んでたもんね』
『お母さんが心配してしまうな』
『そうだね。急いで帰ろう』

帰り道の住宅街を少し早歩きで通り抜ける。あ、抜け道がある――こんな、道あったんだ。いつも歩いているが今まで気づかなかった。

『こっち、進んでみようかな』

二人の返事を聞く前に足を踏み入れる。

『『大丈夫かい?』』
『大丈夫。大丈夫。ここをばあーーって抜けたら家まですぐの筈だよ』

人の気配のない道を歩く。少し、不気味な感じがするが、大丈夫だ。あと、もう少しで家の前の通りに出るはず。
歩いて、居ると何か黒い影が視界によぎった。ん?――なんだろ……。でも、あっちの方向が帰り道だから進まないと、

『君、それ以上進んだら駄目だ』
『そこから、動かないで』
『え、なんで、でもこの先を進まないと駄目なんだ……け……っど!』

話していると黒い影が私の方に突進してきた。え、なんだあれ、なんだあれ?!――

『君!とりあえず逃げるんだ!』
『ほら!さっき来た道を戻って!』
『走るんだ!『走って!』』

その声に、混乱しかけていた意識がハッとして、走り出す。

『ね……ねぇ!何あれ。なんなの!何なの!どうしたら良いの?!?』

必死で走りながら心の中で問いかける。今、私の頭の中は大混乱だ。

『『名前を呼んでくれ!』』
『え、な、名前?!』
『俺たちの名前だ!』
『声に出して!』

な、名前。なぜここで名前を呼ぶんだ。でも、二人がいうんだからとりあえず……!――

「鶴ちゃんーーーーーっっっ!!!髭ちゃんーーーーーっっっ!!!!」

私の声が辺りに響き渡る。やばいぞこれは、女子高生としての何か、人としての何かを失った気がする。

『これで良い!!?』
『ち……!』
『ち?』
『ちがうーーーーーっっっ!!!』

え、違う。違うってどういう事だ。鶴ちゃんは鶴ちゃんだし、髭ちゃんは髭ちゃんでしょ。

『最初に教えた名前だ!』
『幼い君が、呂律が回らなくて心の中なのに言えなかった名前だよ!』

え、二人の最初の名前……名前……。なんだったけ?なんだったけ!そんなやり取りをしている間にも黒い影は段々と近づいて来る。名前。名前……。二人の名前は。そう、あの時、最初に教えられた名前は……!!

「鶴丸国永ーーーーあああっっっ!!!髭切ーーーーいいいっっっ!!!」

そう、叫んだ瞬間。私の視界は桃色に染まった。大量の桜が辺り一面に吹雪いていた。
そして、その桜の中から――――
白い神様二人が現れた。視界に映るのは初めてなのに一目見た瞬間。神様だと分かった。その神様二人。鶴ちゃんと髭ちゃんが、私の直ぐ傍まできていた黒い影を切り捨てる。
そうして、二人が振り返る。

「鶴ちゃん……?髭ちゃん……?なの……?」
「ああ、君こうして姿を現すのは初めてだな。俺が君の鶴ちゃんだ」
「久しぶりだね。君、いや主。僕が君の髭ちゃんだよ」

シリアスな緊迫した空気感の筈なのに、二人の私が問いかけた事に対する答えが空気をシリアルにぶち壊している。唖然と、私が立ち尽くしていると第三者の声が響いた。

「主様ーーー!!!」

今まで、私と鶴ちゃんと髭ちゃんしか居なかった場所にどろん!と、狐が姿を現した。狐。喋る狐!?が現れた。

「やっと、やっと、見つけましたぞーーー!主様あああーーー!!!」

今にも泣きだしそうな勢いで狐が叫ぶ。

「え、あの……あの!主!主って何?」

狐がきゅるりとした円らな黒い瞳を緩まして口をわなわなと震わせる。

「なんと、おいたわしい……!本丸襲撃の最中に神隠しをされたと思ったら、魂を縛られ、転生をして現世にて鶴丸様と髭切様に囲われていて、記憶を無くされていて、やっと、お二人の反応が確認されたから駆けつけてみれば遡行軍に襲撃されていたなんて……!!!」
「え……えっ?!え!……」

頭がパニックである。狐が言ってる事が何一つとしてわからない。

「とりあえず、政府に向かいますぞ!主様!。生前、優秀であられた貴方様をもう一度見つけられたのです!もう一度、審神者になってももらいますよ!」
「え、……え!、え」

え、え、としか繰り返さないオウム人形になり果てた私。そんな、私に今まで狐を俯瞰していた鶴ちゃんと髭ちゃんの二人が口を開く。

「つまりだね。主こういう事だよ「こういう事だ」」
「「君はこれからも俺たちとずっと一緒にいれるという事だ」」

それを、聞いても益々、私の頭は大渋滞である。え、え、としか繰り返さない。そうか、わたしはオウム人形だったんだ。そんな、オウム人形の私はこれから、一体どうなっちゃうんだ。
どうなっちゃうのーーー!!!

答えは、神のみぞ知るである。
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