RESTART~USJ
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(相澤視点)
あの日、USJの侵入者用センサーが反応して、集められるだけの教員で向かった。
そこにいたのは、幼い少女だった。
この高校に通う学生と同い年くらいの。
何か言いながら携帯でこちらの写真を撮る少女は見たことがない。
瞬時に校長から指示が出て、マイクの個性で気絶させた。
次に目覚めた時、少女は俺やマイク、さらにはトゥルーフォームのオールマイトをオールマイトだと呼んだ。
それを知るのは教員だけだ。
学生が知っているとは思えない。
ましてや彼女は、うちの学生でもなかった。
次に目覚めた時に、彼女の免許証やらクレジットカードなどが出された。
それに全員が首を傾げる。
西暦や住所などが、この世界のものではないのだ。
似てはいるが、そんな地名はどこにもない。
そして彼女は言った。
自分はこの世界の人間ではないのだと。
そして彼女が俺たちのことを知っていたのは、そういう個性なんだということで落ち着いた。
あれから数日。
あてがわれた仮眠室で、彼女はずっと大人しくしていた。
「なんか可哀そうになってきたわ」
昼休み。
ミッドナイトさんがぽつりと言った。
「そうですねえ、彼女、軟禁状態でも一言も文句言いませんもんね」
13号も頷く。
仕方ないだろう。不確定要素が多い中で、これが今できる最善だ。
彼女が逃げ出す素振りを見せないため、仮眠室から出ないことを条件にあとは自由にされている。
特に俺達が関わることに制限が設けられていないが、嫌でも入学式から間もなく、忙しい時期だ。
みな、仕事に追われていて彼女の元に足を運ぶものは少ない。
かくいう俺も、校長室で話を聞いた時以降、会っていない。
「私、日用品を届けに時々会うんだけど、すっごいいい子よ。ちゃんと頭下げてお礼言えるし」
女性ということもあってミッドナイトさんが、彼女の日用品の買い出しや運搬をしていた。
曰く、とても大人しく礼儀正しくいい子だと。
「最初はどうかと思ったけど、私に対する言葉遣いも綺麗だし、大人びてるのよね。私たちと同年代って本当かもよ?」
彼女の言うことを全面的に信用しているわけではない。
ただ見た目の割に落ち着いているし、妙な余裕もある。
(本当に俺達と同じ年なのか……?)
と思ってしまうほどに。
全員の心の内は同じだろう。
彼女は嘘をついていない。全て真実である、と。
(まあ俺には関係ない。あいつが敵だったら捕縛する、それまでだ)
特に興味も関心もない。
この時までは、そう思っていた。
(主人公視点)
「いやおかしいよね。私いつまでここで軟禁生活すればいいの?普通、トリップ物ってあれよあれよという間に編入が決まって、なんだったら相澤さんと同棲とかできるようになるんじゃないの?」
思わず早口で膝の上で寝る白(猫型)を問い詰める。
でもまあ普通そうだよな、とも思うし、何も文句は言うまい。
というかこの世界にこれたってだけで超ご褒美だし。
(身元も分からない不審者をほいほい学生に近づけるわけにいかないよね)
私があっちの立場だったとしてもこうすると思う。
どうやらここは学生がいる校舎とは離れているようで、扉の外から話し声なんかはしない。
テレビもあるし、白もいるし、シャワートイレは完備だし、この部屋で一通り事足りる。
さすが名門高校。
窓から見えるグラウンドでは時折学生が授業しているけど、今のところ見知った顔はない。
(やっぱり原作近くないのかなぁ)
ああ、会いたかった。見たかった。
国宝級イケメンの轟、ポメラニアン爆豪、緑谷のマシンガントーク、飯田のロボットみたいな手、お茶子の肉球、意外とイケメン上鳴、漢気切島。
(押しの心操…天喰先輩…)
漫画の登場人物たち。
でもここでは紛れもなく、生きてる人間。
私と同じ、命がある。
(変な感じ)
時々話し相手に来てくれる根津さん、日用品を届けてくれるミッドナイト、申し訳なさそうに謝りながらコーヒーを届けてくれたプレゼントマイク。
誰もかれも命がある人間なのに、私にとっては夢の中で話しているようにふわふわしていた。
(いまいち実感わかないんだよね)
溜息をついてベッドに体を沈めた瞬間だった。
---ウウーーーーーーーーーー!!!!!---
けたたましい警報。
聞き覚えのあるそれ。
手元の白が一瞬で人型になる。
体が固まる。これは、知っている。
「まさか、超原作最中?」
この警報音があれだとしたら、死柄木弔が雄英バリアーを壊す時のそれだ。
ごくりと喉がなった。
喧噪はここまで届いてこない。
「でもここで不用意に動いて、私への警戒度を上げるのは得策じゃないな…」
少なくともこのイベントは死柄木にとって様子見だ。
裏でどうなっていたか分からないけど、ここでカリキュラムを盗む。
(大人しくしとくのが、吉と見た)
再度ベッドに転がる。
そうか、原作中なのか。
うーんと唸った瞬間、今まで感じたことない気配を感じた。
(ッッッッッ)
思わず体を起こす。
心がざわざわする感じ。
なんだろう…扉の外に何かいる気がする。
白も剣呑そうに扉を睨んでいた。
「大丈夫、ここにいて」
ゆっくりと隙間から廊下を見る。
目飛び出るかと思った。
「え……黒霧……?」
黒い靄。バーテンダーみたいな服。
なんで、こんなところに。
無意識のうちに口をついたその声を、彼は聞き逃してくれなかった。
「おや、このあたりには人はいないと思っていたのですが」
黄色い目がこちらに向く。
「なぜ、私の名前を?」
やばいやばいやばいやばい。
これは明らかなミスだ。
この段階で彼らの名前は知られていない。
彼の名前を知る私が、ここにいるはすがないっ。
「みたところここの学生ではないようですね。ふむ、予定にはありませんが一緒に来ていただきましょうか」
黒霧の手が私に伸ばされる。
バカバカ!確かにそっちの陣営の人達も嫌いではないんだけど、さすがに命の危機は勘弁してほしい!
私に黒霧の手が触れる寸前、思わず叫んでいた。
『触らないで!!!!』
ばちっと黒霧の手がはじかれる。
驚いたような雰囲気の黒霧。
同じく驚きに目を見開く私。
いま、何が起きた?
「それが、貴方の個性ですか?」
再度手を伸ばすも、彼の手が私に届くことはない。
バリアでもあるように、はじかれている。
暫くお互いに睨みあう。
聞かれても分からないことは答えられない。
私は、ぐっと口を噤んだ。
どのくらい経っただろう。
数分?数十秒だったかもしれない。
不意に遠くから聞こえるバタバタという足音に、黒霧がついと視線を逸らす。
「貴方とは、また会うことになりそうですね」
では、と靄となって消える。
冷や汗が背中を流れるのと同時に、呼吸が戻ってくる。
「しろ」
後ろから抱きしめられる。
柔らかい白の髪の毛が首筋に触れて、私は大きく息を吐き出した。
怖い…怖い…こわ、かった。
「おい!」
ゆるゆると顔を上げて、厳しい顔をするその人を見る。
膝の力が抜けていて、白の支えがなかったら座り込んでいたかもしれない。
「なにがあった?」
急いで駆けつけてくれたんだろう。
呼吸が少し荒い。
それが心配からくるものなのか、それとも私を疑ってのことなのか分からない。
けど、この人が来てくれなかったらどうなっていたか…
「あい、ざわさん…」
ほっとして笑ったら、意識が遠のいた。