FINAL EXAMS(現在更新中)
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(主人公視点)
物間って案外良い奴じゃないか、と印象が変わった演習試験でした。
特に怪我もないので、他のみんなの状況を見るためにリカバリーガールの元へ。
「あ、オールマイト」
テントからちょうど出てきたオールマイトと鉢合わせた。
その腕の中には勝己。
やっぱりボロボロだ。
「音葉少女、君も合格おめでとう」
「ありがとうございます。ちょっと、良いですか?」
勝己の腕を触って、そのボロボロさに顔が歪んだ。
最大出力、撃ったんだもんね。
『治れ』
少しずつ、勝己の腕の傷がなくなっていく。
私がしなくても治るんだけど、何もせずにはいられなかった。
「このレベルの傷は、君には…っっ!?」
すっかり元通りになった勝己の腕に、オールマイトが言葉を失う。
彼の柔らかい髪を撫でながら、苦笑してみせる。
「私の個性ね、どんどん強くなってるみたいなんです。この程度の傷だったら、少し喉が痛む程度なんですよ」
風邪をひいた時みたいな、イガイガした感じ。
本当に、ただそれだけだった。
「さっき、バカだって言われちゃいました。一人じゃ何もできない。突っ走るな。周りを頼って、救けあえって」
寧人の言葉、思いの他ぐさっと来たんだよね。
私、ヒーロー殺しの時に一人じゃないよって言われたばっかりだったのに。
ダメだね。これはもう癖みたいなもんなんだ。
「出久は心配して声をかけてくれたのに…勝己も傍にいてくれたのに…ずっと目を逸らしてたんです」
いつからこんなに我慢強くなっちゃったんだろう。
思えば小さい頃は、泣き虫で、料理でも武術でもできなかったり勝てなかったりすると、いつもお母様に泣きついていたのに。
「…ねえ音葉少女、君の夢はなんだい?」
「……ゆ、め?」
思わずきょとんとしてしまう。
夢?
私の?
「私の夢は…この世界を守る「それは夢じゃないだろう?」」
オールマイトがしゃがんで私と目線を合わせてくれる。
体が大きくて威圧的なはずなのに、思わず見入ってしまうくらいにその瞳は優しくて、温かかった。
「小さい頃の夢でも、今ここに生きている君の夢でもいい。望み、叶えたいと思う…君自身の未来の形とは?」
言葉が出なかった。
私の、夢。
(緑谷視点)
「言ちゃん!合格したんだね、おめでとう」
オールマイトで出て行って少ししてから、思案顔の言ちゃんが入ってきた。
怪我はしてないみたいだけど、僕と一緒でみんなの戦いを見ていたんだって。
ちなみに僕の怪我も治してくれた。
相変わらず、凄い個性だよね。
常闇君と梅雨ちゃん
上鳴君と芦戸さん
甲田君と耳郎さん
砂藤君と切島君
飯田君と尾白君
障子君と葉隠さん
麗日さんと青山君
峰田君と瀬呂君
必死にプロと戦っているみんなを見ているのは、凄く勉強になる!
けど、ずっと僕の後ろでモニターを見ているようで見ていない…何か考えごとをしている彼女のことが気になって仕方なかった。
「言ちゃん、どうかした?何か、悩み事?」
放っておけなかったんだ。
だって僕は、言ちゃんの秘密を共有する友達なんだもん。
「出久…あの、この前はごめんね」
「…??」
なんのことだろう?
謝られるようなことあったかな?
「心配、してくれたのに…突っぱねるような言い方して」
ああ、と納得がいく。
きっと僕には関係ないって言ったことだと思う。
「気にしてないよ。けどちょっと寂しかったかな。」
そう言うと、少しだけばつが悪そうに俯いてしまった。
苦笑しながら、言ちゃんの隣に座る。
彼女は時々びっくりするくらい大人っぽいのに、こういう時は僕より年下みたいだ。
「病院でも言ったよね。僕達は友達だよ。君は一人じゃない。」
轟君も、飯田君も、もちろんA組のみんなもいる。
いつだって、君の隣には誰かがいるんだよ。
「物間君にもバカかって言われちゃった。突っ走るなって」
B組の物間君か。彼なら言いそう…
良い意味でも悪い意味でも、かっちゃんに似てるんだよね…
「あのさ、出久の夢って、なに?」
「僕の夢?」
そりゃヒーローになることだ。
ここに通っている以上、思いや経緯は違えどみんなそうだと思う。
「オールマイトに、夢は何かって聞かれたの…私、即答できなかった」
そうか、彼女はヒーローを目指してヒーロー科に通っているわけじゃない。
雄英に保護され、言い方は悪いかもしれないけど監視目的でここにいるんだ。
「僕の夢は、笑顔で救ける最高のヒーローになることだよ!」
オールマイトみたいに!
そう言うと、言ちゃんはやっとふわりと笑ってくれた。
わわわわ、いま気づいたけど近い!
女の子と、近い!!!
「なれるよ、出久は…笑顔で救けて、人を笑顔にする、最高のヒーローに」
鼻の奥が、ツンとした。
それは小さい頃からずっと僕が言ってほしかった言葉だ。
あの日、オールマイトが初めて言ってくれた言葉を、彼女も何の疑いもなしに言ってくれる。
「あ、りがとう…だから僕、まずは言ちゃんを笑顔にしたい」
「私?」
オールマイトと話して思ったんだ。
目の前の彼女を、まずは笑顔にしたいって。
きっとそれが、僕のヒーローとしての一歩だ。
「言ちゃんの夢、僕も一緒に探すよ!」
夢を一緒に探すなんてどうすればいいのか分からないけど、でも彼女が一人で悩むくらいなら隣で一緒に悩みたいと思ったんだ。
一人じゃないって、言いたかった。
きっと何度も言わないと、また忘れちゃうと思ったから。
(主人公視点)
演習試験は、おおむね原作通りに終わった。
相澤さんの個性の後遺症がなかったけど、焦凍と百ちゃんは無事クリアしたようだった。
良かった…二人がいないとなかなかこの後しんどいものがあるからね。
出久が一緒に探してくれると言ってくれた時、どうやって?って正直思ったけど、きっと彼が言いたいのはそういうことじゃないんだなって感じた。
隣にいるよって言ってくれたんだ。
だから一人で悩まないでって。
「言、何かあったらちゃんと話せ。話してくれなきゃ、俺はわかんねえ」
「そうだぞ!僕達は仲間じゃないか!」
焦凍も天哉も、出久と同じように心配しててくれた。
申し訳なさ以上に、心がじわじわと温かくなるのを感じたんだ。
「二人とも、ありがとう。いつか、ちゃんと全部をみんなに話せる時が来たら、その時は聞いてね」
それしか、言えない私を許してほしかった。
「言さん!私、合格できましたの!」
百ちゃんは、ちゃんと吹っ切れた様子だった。
一番最初に合格したから詳しく見ることはできなかったけど、百ちゃんの話を聞いて苦笑してしまった。
後遺症、ないにも関わらず…なんて優しい人なんだろう、と。
「言さんの言葉がなかったら、私、ダメだったかもしれませんわ」
そんなことない。
私が言わなくても、彼女は乗り越えられたはずなんだ。
それでも言わずにはいられなかった。
「百ちゃんだから乗り越えられたんだよ。うん、頑張ったね。」
よしよしと高い位置にある頭を撫でてやると、少し赤らんだ顔で百ちゃんが微笑んだ。
くっ!可愛い…なんだこの庇護欲…
「言さん、諦めたっておっしゃってましたわよね…その、夢を」
試験前に口をついて出た言葉。
自分でもあまり意識していなかった言葉の中で、私は確かに“夢”と言っていた。
「私たち、まだ15歳でしてよ?諦めることないと思うんですの!言さんの夢がどんなものでも、心から応援しますわ!…私を励ましてくれたように!!」
くう…可愛い…百ちゃん、なんていい子なんだろう。
自分の夢が何なのか判然としない私は、感謝の意を述べて微笑むことしかできなかった。
それぞれの意識が、思いが、変わった期末演習試験。
例外でなく、私も。
話さなければ、あの人と。
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