FINAL EXAMS(現在更新中)
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(主人公視点)
「ほう、やはり音葉が正面から来たか」
左右が荷物棚で挟まれた広場。
ブラドキングの向こうには原作通りの根津さんが描いてあるゲート。
あそこをくぐれば、試験クリアだ。
「お手柔らかに」
ニッコリと微笑んで、正面からブラドキングに走り出した。
(物間視点)
「…あいつあんなに強かったのか」
荷物棚の隙間から広場を見て驚いた。
武術にはちょっと自信があるなんて言ってたけど、あれはちょっとなんてレベルじゃないぞ。
プロであり、雄英きっての武闘派として知られている先生に引けを取ってない。
細い腕で先生の拳をうまく受け流しながら、なおかつ拘束してこようとする血を軽いステップで避けている。
A組の音葉言といえば、雄英の女神として有名だ。
体育祭では参加こそしてないものの、希少な治癒個性としてリカバリーガールの元で活躍していたと聞いた。
正直舐めてた。
治癒個性なんて言われてたから、戦闘はからっきしだと思ったんだ。
「あれ、下手したらヒーロー科でも1、2を争うじゃないか…?」
体術だったら、過度な評価ではないはずだ。
言霊って個性だけでも十分強いのに、なんであいつあんなに体術も鍛えてるんだよ。
A組のくせに…
見とれている場合じゃない。
僕達の役目は…
「このまま目指させてもらいますよ」
荷物棚は広場の左右、ゲートから扇状に広がっている。
このまま荷物棚を辿れば、隠れながらゲートに近付くことができるんだ。
「物間!!それで隠れているつもりか!!」
ちっ、ゲートまでもうちょっとだったのにっ!
交戦中だった先生の意識がこっちに向き、血が飛んでくるのが見える。
「物間君!!」
瞬間、刀がこちらに飛んでくる。
これが、合図だ。
刀を警戒して、先生の意識がそちらに向いた瞬間。
飛んできていた血に一瞬だけ触れ、先生の個性をコピーする。
開始前に抜いておいた血液をばらまいて、操り先生に飛ばした。
初めてで上手く扱える自信はないけど、少なくとも先生の視線を引ければいい。
「今だ!!」
「君が使ったって反動は返ってくるんだろう。だったら僕達がすることは、意識の分断だ」
「意識の、分断?」
どうも一人で全部を背負いこもうとしていることに気づいた。
自分一人で先生を押さえるから、その間に僕にゲートをくぐれだって?
バカいうんじゃない。
「そうさ。先生の意識を多岐に分散させる。警戒しなければいけないものが多ければ多いほど、小さいものに対する意識が薄くなる」
---にゃー---
足元で白い猫が鳴き声を上げた。
そう、僕の作戦の要はこの猫だ。
複合型だという彼女の、もう一つの個性。
それがこの猫…白っていうらしい。
人型にもなれるらしいが、今回はあえて小さな猫でいてもらう。
「僕、君、刀、そして僕がコピーした血…これくらいあれば、先生の意識が小さな猫に向くことはないと思う」
一瞬の判断。
その中でも危険度の高い方に意識が向くのは、人間としての本能だ。
「君の作戦は負担が偏りすぎる。もし君だけで先生を押さえきれなかったら?その時点で終了だ。個性だってそうさ。僕でも君でも、反動で傷つくのが必須なら簡単には使えない。」
ぐっと彼女が言葉に詰まる。
なんでこいつはこんなに自分一人で抱え込もうとするんだ?
「A組と、というのが癪だが、僕達はいまチームだろう。それとも何か、僕じゃ役不足かい?頼るに値しないと?」
「そっそんなことない!」
この様子だと、頼るってことがまるっきり頭になかった感じだな。
僕だからじゃない。
きっとA組の誰かであっても、きっとこいつは同じ判断をしただろう。
「まず君は一人で突っ走るな。なんのために周りに人がいると思っているんだ。頼って、救けあうためにいるんだ。それが分からないほど、バカじゃないだろう」
柄にもない、そんなこと分かってる。
けどなんか放っておけない感じがした。
今にも、死にに行くみたいな目が。
僕の個性は、相手がいないと無個性同然だ。
だから必然的に、周りに頼らなければいけない。
「真正面から言っても勝ち筋はない。重要なのは視線誘導(ミスディレクション)だ。人間目からの情報が一番大きい。それに入らないようにすれば、勝機はある」
「白!!!!!!」
---カシャン---
---にゃーっ---
「よしっ!」
「やったー!!」
「…これはやられたな」
思わず小さく拳を握りしめた。
先生の足に、カフスが嵌っている。
開始すぐに白に持たせたものだ。
「まさか音葉の個性を使わずにくるとはな」
よくやった!と先生が笑う。
褒められたことが嬉しくて、思わず視線を逸らした時だった。
「物間君!」
「うわっっ」
いきなり来た衝撃に尻もちをついた。
自分の体に抱き着く華奢なそれに、思わず言葉を失う。
「凄いね!凄い!物間君の作戦の通りだった!正直私、反動受けてでも個性使うの覚悟してたんだよ!個性使わずに合格しちゃうなんて、思ってもみなかった!」
ちちちちちかいっっ!!
目と鼻の先で嬉しそうに話す顔。
ふわりと甘い良い匂いがする。
「本当にありがとう!物間君のお陰だよ!」
「////いい加減に離れろ!!」
なおも超至近距離で話す音葉を押しのける。
なんなんだこいつ…距離感おかしいんじゃないの?
まあなんだ…
「君が先生の意識を引き付けてくれて、そのおかげで僕はゲートに近付くことができた。ゲートに近かったからこそ先生の意識の大部分がこちらに向いたんだ」
そのおかげで作戦はうまくいった。
彼女が先生をおさえられなかった、もしくは僕がゲートからもっと離れたところで見つかっていれば、作戦は成功しなかっただろう。
「A組のくせに、少しはやるじゃないか」
「音葉言!ちゃんと名前で呼んでよね。チーム、でしょ?」
上目遣いでにっこりと微笑まれた。
…くそっ、なんか調子狂うんだよな。
「物間寧人…信じてくれて、その、なんだ…ありがとな、音葉」
「うん!こちらこそ、ありがとう!寧人!」
名前!?
…ま、いっか。
嬉しそうに先生と話に行く彼女の背中を、僕はただ見つめていた。