FINAL EXAMS(現在更新中)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(主人公視点)
あれから一週間ちょっと。
なんと私は爆豪家にお世話になっていた。
勝己に近付きすぎるのもと考えはしたけど、今は相澤さんや根津さんから距離を取りたくて甘えさせてもらっていた。
光己さんも勝さんも落ち着くまでいればいいと言ってくれたし、相澤さんからの連絡は何もない。
根津さんに聞いたところ、好きにすればいいと言ってくれた。
あの感じは、きっと相澤さんが話したんだろうなと思った。
別にいいのよ。相澤さんは私の監視役なんだから、報告義務がある。それがどんなことだったとしても。
必要なものを取りに家に帰ったけど、相澤さんはいなかった。
それどころか生活感がない。
ちゃんとご飯食べているか心配になったけど、もう関係ない。
だって私は、どうせいなくなるのだから。
(相澤視点)
「HEY!イレイザー!どうしたってんだよ!」
「…なにがだ」
職員室。
期末試験の内容をまとめていると、隣にマイクが座る。
「最近前みたいにゼリー飲料に戻ってるしよ、音葉となにかあったのか?」
うるせぇ。俺が何を食おうと関係ないだろうが。
音葉の件は校長にだけ話した。
内容が内容だ。他の教師たちには今は伝えないことになった。
「そうよ!職員室にもあまり来てくれなくなったし、さーびーしーいー!」
ぶーぶーとミッドナイトさんが椅子に座ったまま移動してくる。
どうやら随分と仲良くなってたみたいだな。
「彼女だって生徒ですよ。職員室なんてあまり近寄りたくないでしょう」
そんなわけないじゃないと言いながら、仕事に戻っていく。
「…うるせぇ」
「何も言ってないだろー。」
「視線が、うるさい」
穴が開くんじゃないかってくらい見つめてくるマイク。
縛り上げてやろうか。
なんなんだよ、まったく。
「なにピリピリしてんだよ、イレイザー…音葉、いま爆豪の家にいるんだって?」
ギロリと睨む。
知っているのは校長だけのはずだ。
どこで情報仕入れやがった。
言わなくても伝わったのか、マイクがサングラスの手入れをしながら呟く。
「A組の生徒が話してたんだよ。近頃、音葉と爆豪が一緒に帰ってるってな。緑谷が爆豪の家に入ってくの見たんだと」
お前がピリピリしてる原因、これだろ?と一言。
…見透かされているようで、溜息をついた。
これでも、高校からの腐れ縁だからな。
「わかんなくなっちまった…あいつに、なんて声かけたらいいのか」
思えばあいつの元の世界でのことなんて、一つも知らなかった。
音葉は話さないし、俺は聞かない。
だからそれは当たり前なんだが。
要所要所にヒントはあったはずなんだ。
料理人だったと話した時の苦しそうな表情。
魘されていたあの夜。
体育祭での敵からの精神攻撃。
不自然な血に染まった布団。
職場体験前の青白い顔。
俺はもっと聞くべきだったんだ。
気づくべきだった。
彼女がずっと何かに耐えていることを。
「俺が一番傍にいたんだ。気づいてやるべきだった。」
俺の中で彼女はただの監視対象じゃなくなっていた。
そんなの随分前から分かってたことだ。
一緒に食べる飯。
他愛もない会話。
あの夜抱きしめた震える小さな体。
俺を好きなのかと聞いた時の、真っ赤な顔。
相澤さんと俺を呼ぶ声。
どれもが、なくてはならないものになっていた。
「あいつがいない家は、冷たい」
帰って、おかえりなさいと言ってくれる声がなくなった。
温かい食事がなくなった。
居心地のよかった家が、まるで別人の家のように感じた。
「はあーん、あのイレイザーがねえ」
「…揶揄いたいんならどっかいけ」
自分でも柄じゃねえのは分かってる。
それでも、そう思っちまうんだから仕方ねえだろ。
「ちげーよ。良かったと思ってんだ。ずっと、お前にそういう奴はできないんじゃないかと思ってたからな」
こいつは俺の母親かなんかか?
俺だって良い年の大人だ。
この感情が、どういうもんかくらい分かる。
俺が音葉に抱いている感情、それが特別なものだということ。
「しかしな、相手は15歳だぞ」
「中身は同い年だ。問題ねーだろ」
さらりと言われた。
あほか。見た目の問題はでかいだろ。
しかも担任が担当クラスの生徒を特別に思ってるなんて、どう考えてもまずいだろ。
「それに、向こうはずっと前から、おめーのこと好きだと思うがな」
USJでのことを言っているんだろ。
まあ彼女は好きではなく推しだと言っていたけどな。
待て、推しってなんだ?
「なにより早く話すこったな。こっから忙しいぞ」
「……分かってる」
なんて切り出せばいいのか分からない。
けど、ちゃんと話そう。
正直過去を知って、驚きはした。
けどそれだけだ。
彼女がいうように、汚いとかそういう感情は一ミリだってありやしなかった。
何があっても、彼女は彼女だ。
それ以上でも、それ以下でもない。
それをあの日伝えようとしたが、聞く耳すら持ってもらえなかった。
だから少し時間が必要だと思ったんだ。
落ち着いてから話した方が合理的だからな。
彼女が自分を汚いというのなら、綺麗だと言ってやる。
彼女が死にたいというのなら、引っぱたいて生きろと言ってやる。
彼女が資格がないというのなら、そんなの関係ないと引っ張ってやる。
お節介と言われたら、ヒーローだからなと笑ってやる。
お前に伝えるその日まで、この言葉は大事にとっておくことにするよ。