FINAL EXAMS(現在更新中)
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(主人公視点)
「聞いたわよ言ちゃん!午後の救助訓練レース、ダントツ一番だったんだって?」
「ミッドナイト!えへへー、白の機動力があれば負けませんよー!」
放課後。職員室。
相澤さんに渡された反省文を書き終わったので、教師陣とわいわいお茶を飲んでいた。
USJ後、みなさんとも随分打ち解けてきたと思う!
「へいへい!音葉!ファンクラブたあやるじゃねぇか!人気者だな、おい!」
「えー、別に私なにもしてないんだけど…」
まるで俺みてえじゃねえかって何気に人気者自慢してくるプレゼントマイク。
いや、そりゃ人気ラジオパーソナリティーの彼にもファンクラブはあるんだろうけど。
「そう!女神FC!がんがんメンバー増やしてるみたいじゃないの!嫌いじゃないわよ、青春っぽくて!」
女神FC…なんかゲームのタイトルみたい。
それにしても昼休みの一件後、さらにメンバーが増えたと人使が言っていた。
なぜ。なぜなのだ。
温かい空間。
温かい心。
私を受け入れてくれる人達。
出久、焦凍、天哉…そして人使。
通形先輩も天喰先輩も、たくさんの推しに囲まれて。
相澤さん
最初は警戒心の塊だった彼と、ともに暮らすようになって、笑って話してくれることもあって。
作ったご飯を“いただきます”と言って一緒に食べて。
美味しいと言ってくれて
“ご馳走様”と一緒に手を合わせてくれて。
だから忘れていたのかもしれない。
彼等が、本当の意味で私を知っているわけじゃないのだと。
私が、本来であれば彼らに近付けもしないほどに汚れていることを。
そして油断していた。
---あっ、いやあ…おにい、さま---
---なにが、いやなんだっっ…こんなに喜んでいるくせにっっ---
薄暗い和室。
その真ん中で行われる情事に私は溜息をついた。
すっかり油断していたのだ。
最近、夢を見なかったから。
「また、これか」
どうせこの部屋からは出られない。
雨の音と、いやらしい水音と、荒い呼吸と、お兄様が私を蔑む言葉だけが響くこの部屋。
体育座りをして、せめて見ないようにと頭を抱え込む。
---なあ言、ずっとお前を抱きたかったんだ…お前はもう、俺のものだからな---
---やめて、ください…お兄様…ぐぅっっ---
---はあ、はあ、逆らうなよ俺に…次期当主は、俺だ…はあ---
視界を塞ぐと、音がやけに頭に響く。
忘れもしない。
これは、私がお兄様に初めて犯された時の光景だ。
---ああ、言…言……可愛いよ、俺の、可愛い妹---
名を呼ぶその声が、体にまとわりつく。
いつまでも、忘れさせてくれない。
抵抗すれば、できたと思う。
お兄様は私より弱かったから。
でも、抵抗したところで未来はないのだ。
---お前の生きる場所はここだ、ここしかないんだ。俺の元でしか、生きられない---
飛べない鳥は、ただの傀儡だ。
籠の中は、とても、とても狭い。
不意に感じた背後の気配。
夢の中で会うのは、いつもあいつだ。
「何度見せれば気が済むの?それとも忘れるなって?こんなにも汚いのにって」
返事はない。
湧いて出た感情は、怒りなのか、諦めなのか、それとも自嘲なのか。
「あんただってもうわかってるんでしょ。あんだけ人の夢の中かきまわしといて、知らないなんて言わせないわよ」
言葉が止まらなかった。
光の中にいてもいいんだと思っていた自分を、笑われているかのように感じて。
「そうよ、私は実の兄に犯されてた。好きでもない男と結婚までさせられて家に縛り付けられた…12年よ、12年。そんな地獄で生きてきた」
周りの気配は変わる。
呼吸音が3つになった。
---いやぁあ!なんで、なんでよっっ---
---彼は俺の理想に賛同してくれたんだよ---
---言さん、僕はずっと貴方のことを見て来たんです。手に入れられるなら、なんでもする---
好きでもない、表向きの私の夫。
兄のくだらない思想に、賛同したくず。
大嫌いな、二人。
---いつかお前を二人でぐちゃぐちゃにしてしまいたいと話していたんだ---
---…っんはあ、やっ…ぐぅっ---
---ああ、恥ずかしがらないで。声を聞かせてよ…言ちゃんの、可愛い声を---
後ろで息を飲む気配がする。
はっ、今更なにかまととぶってんのよ。
「わかってんのよ。自分が汚れてることくらい。こっち側にいる資格ないことくらい」
それが言いたいんでしょ。
だから、あんたの元に、死柄木の元へ来いと。
「ずっと死にたいと思ってた。誰か殺してくれって。…殺したいって」
お父様も、お兄様も、従う奴らも全員、殺してやりたかった。
なんで誰も救けてくれないの。
なんでみんな見て見ぬふりするの。
「守る?救ける?…はっ、反吐が出る。そんな資格、ないくせに」
病院の屋上で誓った。
この世界を全力で守ってみせると。
壊している張本人が、何言ってんだか。
「私こそが、悪なのに…」
いつまでだんまり決め込んでんのよ。
ここで追い打ちかけてくんのがあんたじゃないの?
「なんとか言いなさいよ!罵って、蔑んで、憐れんで、そうだよって笑えばいいじゃない!!!!」
いきおいよく立ち上がって振り返る。
そこに立っている人を見上げて、絶句した。
「っっっっ、なん、で」
あいつじゃなかった。
気まずそうに、そして歪んだ表情で、私を見るその人は、オールフォーワンじゃない。
「……音葉」
「あい、ざわさん」
いつものぼさぼさ髪の彼が、そこに立っていた。
一瞬奴が私に見せる幻影かと思った。
あの時と同じ、ただの作り物かと。
だとしたら、目元の傷跡はないはずなのだ。
「い、や…やだ…」
「音葉、おい…」
その表情が、声が、残された傷跡が、彼が本物だと語っている。
私は何を話した?
私は何を叫んだ?
彼は、何を見ていた?
『っっっっっ起きろっっっ』
大量の冷や汗が流れる。
勢いよく体を起こした私を支えるのは白だ。
どうか夢であって。どうか幻影であって。
奴が見せた、最低なそれであってほしかった。
---コンコン---
無情にも響くノック音が、夢じゃなかったんだと私に告げる。
入るぞと少し固い相澤さんの声と、開いた扉の先の彼の表情に、絶望した。
「白、出てってもらって」
白が私と相澤さんの間に立ちふさがる。
見られたくなかった。知られたくなかった。
自分が、こんなにも汚いことを。
「おい、音葉!話をっ「話すことなんてありません」
冷ややかな目で、相澤さんを見る。
何も言うことなんてない。
全部見ていたじゃないか。全部、聞いていたじゃないか。
「どうぞ、根津さんや公安にご報告ください。おやすみなさい」
そう言って、白の手によって扉は閉じられた。