WORK EXPERIENCE
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(主人公視点)
大人が全員出て行って、4人全員で溜息をつく。
「嘘、ついちまったな」
「ドキドキした…あの公安の真美って人、怖すぎる…」
「うむ。なぜあそこまで音葉君を敵視するんだ」
「……なんで…?」
緊張の糸が解けたのか、わいわいと話始める3人とは対照的に私の声は暗い。
分からなかった。なんで彼らが嘘をついたのか。
3人の視線が私に突き刺さる。
「白さんから聞いた。お前が個性を使えば、公安に拘束されるって」
「え?白?」
瞬間、隣に白が現れる。
気まずそうな彼は、小さな声で3人にありがとうございますと言っていた。
「白!なんで!?…バレたら彼等の立場が…」
公安はヒーローを管轄する立場だ。
喧嘩を売っても、良いことはない。
もし嘘だとバレたら、これから先の彼等の立場が危うい。
「それでも、私はこれ以上、貴方に苦しんでほしくない…」
「苦しんでなんかっっ」
嘘だ。苦しい。
警戒されるのも、冷たい目で見られるのも、辛い。
「音葉、俺達はお前のために嘘をついたんだ」
胸が締め付けられる。
「ごめん、なさ「違うよ」」
言葉を遮られる。
緑の瞳と、視線が合う。
違うんだと、彼は呟いた。
「僕達は君に謝ってほしくて嘘をついたわけじゃないよ。君が背負っているものを、少しでも分けて欲しいんだ」
いつかの根津さんの言葉が頭をよぎる。
あの時の、悲しそうな表情も。
「君と出会ってからずっと、どこか壁みたいなものを感じてた。一線ひいたところに、君はいたよね」
USJでも、体育祭でも、教室でも、ずっとなるべく関わらないようにって思っていた。
関われば関わるほど、辛くなる。
関われば関わるほど、入れ込みたくなる。
「そんな辛そうな目をしている女の子を、放っておけないよ。だって僕達は、ヒーロー志望なんだもの」
なんの突っかかりもなく。
なんの違和感もなく。
その言葉が、染み込んでいく。
緑谷の言葉に、飯田も焦凍も頷いた。
彼等は、まごうことなきヒーローなのだと。
「……私、未来を知っているの」
滑りだした言葉は、止まらなかった。
溢れ出す後悔と自責の念で押しつぶされそうになる。
「だから全部知ってたの。USJのことも、体育祭のことも、ステインのことも」
次に出てきたのは言い訳だった。
誰に対してなのか分からない。
彼等に対してか、自分に対してか、世界に対してか。
「可能性としての未来だけど、でも、だけど私ならインゲニウムを助けられたかもしれない」
ずっと思っていたこと。
相澤さんも、インゲニウムも、私なら怪我をさせずに済んだかもしれない。
誰かが苦しむことも、悲しむことも、なかったかもしれない。
「だから私がインゲニウムを見殺しにしたのっっ…」
怖くて、顔を上げられない。
みんなの顔を見るのが怖い。
お前のせいだって言われても仕方ないのだけど…
「ごめんなさい…謝っても許されないのはわかってる…けど、私のせいだから…」
怖い、怖い、怖い。
彼等に、光に否定されることが。
3人が顔を見合わせる気配を感じる。
「それは違うぞ、音葉君」
上げた視線で見た飯田の表情は、予想していたものと違った。
緑谷も、焦凍も。
苦笑、だと思う。
「悪いのはヒーロー殺しだ。兄の怪我は君のせいじゃない。君が気に病む必要はないんだ。」
それに、と飯田の視線が白に移る。
「兄は言っていたよ。真っ白な猫と、黒髪の少女が助けてくれたと。医者も言っていた。あと少しでも処置が遅れていたら、兄の命はなかったと」
インゲニウムは、白の中の私が見えていたの?
見えるはずのない、私を。
「兄を病院に運んでくれたのは、音葉君と白さんなんだろ?以前白さんは猫にもなれると聞いたからな」
「少しでも、彼の怪我が軽くなればいいと、思って」
視界が歪む。
私を見る飯田の目が、柔らかいものになっていく。
「なら君は兄を救ってくれたんだ。感謝する。ありがとう、音葉君」
温かいものが頬を伝っていく。
軽蔑されると思った。
罵られると思った。
覚悟していた。
でもかけられた言葉は、全く反対のもので。
大人げなく、大泣きしてしまった。
言葉が、心を解きほぐしていくようで。