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(白視点)
「あの、音葉さんは…」
酷く軽い言様を抱き上げながら背中にかかった声に振り返る。
ヒーローに背負われたぼろぼろの緑谷君が、心配そうに言様を見ていた。
「出血が多いので早く病院に連れていきたいところですね」
身を翻してスタスタと路地裏を歩く。
無理をしてほしくない。
けど、私には何の力もないのだ。
治すことも、戦うこともできない。
「というか、この人誰だ。音葉の知り合いみたいだが」
そういうのは轟君だ。
それもそうだろう。私は基本的に言様の中にいるし、この姿で校内を歩き回ることはないからな。
「あ、彼は音葉さんの使い魔なんだ。彼女も複合型なんだよ」
「そうか、食堂の時に話していた使い魔というのは、君のことだったのか」
そういえば食堂で緑谷君に話したと言っていたな。その場に飯田君もいたと。
「言様は白と呼ぶ。好きに呼んでくれ」
ステインを引きずりながら全員で表に出た。
グラントリノとかいう老人が、ぼろぼろの緑谷君に蹴りを入れながら説教をしている。
酷いな。
正直この後の物語については聞いていないんだ。
面倒なことが起きる前に、さっさと言様を病院に連れていきたい…。
「エンデヴァーさんから応援要請承ったんだが…」
「子供…!?」
「酷い怪我だ。救急車呼べ!」
「おい、こいつ…ヒーロー殺し!?」
……はあ。応援要請を受けたプロがどんどんと現着していく。
至極面倒くさいな。
ただ言様のこともあり無下にもできない。
俺の態度で、悪くなるのは彼女への心象だ。
「彼女、刺されたの?ちょっと見せて」
女性のヒーローに促され言様を地面に降ろした。
圧迫止血で血は止まっているが、流れ出た量が多い。
不必要に動かさないようにと言われ、頷いた。
飯田が何か言っているのを眺める。
「伏せろ!!」
グラントリノの叫び声が響いた瞬間。
俺は言様から手を離したことを後悔した。
「っっっっ言様!!!!!!!!」
突如として現れた翼を持つ脳無が、緑谷君と言様を掴んで空へと舞い上がった。
「緑谷君!音葉君!!」
この場で空を駆けあがれるのは私だけだ。
あまり能力を見せないようにと言われているが、背に腹は代えられないっ。
後ろの方で姿を変えて空に上がろうとした、瞬間だった。
ぞわりと、背筋を冷たいものが這う。
動くなと訴えるそれは、私の野生の本能だ。
「偽物が蔓延るこの世界も、徒に“力”を振りまく犯罪者も、粛清対象だ」
気絶していたはずのステインが肩で息をしながら飛び上がり、脳無にナイフを突き立てながら緑谷君と言様を救けた。
救けた、なぜ…
「全ては正しき社会の為に」
ぞわぞわと這い上がるそれに、冷や汗が出る。
「助けた!?」
「バカ!人質に取ったんだ」
「躊躇なく人殺しやがったぜ」
「いいから戦闘態勢とれ!とりあえず!」
言様の元へ駆け寄りたいが、足が動かなかった。
ステインの方から感じるそれに、私が感じるのは畏怖だ。
人間には感じ取れない、動物だからわずかなそれを感じることができる。
「何故一カタマリで突っ立っている!?そっちに一人逃げたはずだが!?」
「エンデヴァーさん!!」
エンデヴァーが現れた瞬間にぶわりと広がったそれに、途切れそうになる気を必死に保った。
ステインは真っすぐに、エンデヴァーを見ている。
「贋物……」
全員の顔色が変わる。
グラントリノも、プロも、あのエンデヴァーでさえも。
その場の誰もが、ピクリとも動けなかった。
「正さねば…誰かが血に染まらなければ……!“英雄”を取り戻さねば!」
これが“赤黒血染”
これが“ヒーロー殺し”
これが“ステイン”
「来い、来てみろ、贋物ども」
思わず後ずさる。
これが、“悪意の感染源”
「俺を殺していいのは、本物の英雄だけだ!!」