WORK EXPERIENCE
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(主人公視点)
職場体験当日。
「コスチューム持ったな。本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ」
「はーい!!」
「伸ばすな芦戸。「はい」だ。くれぐれの失礼のないように!じゃあ行け」
ケースと竹刀袋を担ぎ直す。
飯田の背中を追う緑谷とお茶子ちゃんを見ながら、私は身を翻した。
今の私に、彼に声をかける資格はない。
彼から憧れを奪ったのは、他でもない私なのだから。
「お」
「あ」
乗る予定の列車。
既に席に座っている轟の姿があった。
「お前もこの列車なのか」
「…うん」
そういえばまだ私がエンデヴァー事務所だって知らないのか。
授業が終わるとすぐに人使の特訓の為に教室出ていってたから、みんなと話すことなかったし。
「轟君はどこに行くの?」
「……俺は親父のところだ」
うん、知ってるけど。
ほら、話の流れ的にさ。
「あっ、そうなの?じゃあ同じだね」
さも今知ったとばかりに驚きながらニッコリと笑うと、轟の表情が険しいものになる。
うん。わかるわかる。
なんでこいつにって思ってんだろうなー。
あれだけ私に嫌悪感出してた癖によく引き受けたよね。
ちなみに白は知った時、物凄い顔顰めてた。
「俺の家のこと知ってたのか?」
おっ、いきなり。
そういえば轟と話すのは体育祭ぶりな気がする…
結構私も忙しかったからなあ。
「うん、なんとなく知ってた。」
なんとなくじゃなくて、がっつり知ってるけど。
「なんで、俺が取り戻せるって言ってくれたんだ?」
ここに来ると、随分彼は丸くなるよねえ。
体育祭の頃とは大違いだ。
取り戻せる。大丈夫。
だって、君は私とは違うから。
救ける術も、資格もあるんだ。
「私もね、母を救けたかったの。」
優しくて、笑顔が素敵で、私を守ってくれようとしたお母様。
もう取り戻せない、私の救けたかった人。
「救け、たかった?」
「うちね、父が敷いたレールの上を歩かなきゃいけなくて、言うこと聞かなかったら母が殴られたの」
轟の表情が曇る。
そう、まんま轟家なんだよね。
「それに堪えられなかった…けどね、私は救けられなかった。救けられないまま、母は死んでしまった」
ぎゅっと拳を握りしめる。
私には、救ける術も資格もなかったんだ。
だってお母様を苦しめていたのは、他でもない私だったんだもの。
「だから轟君には、救け出して取り戻してほしかったんだ。私には、できなかったから」
「よく来たな、焦凍」
おい。こっち見ろ。
じとっと睨む。
エンデヴァー事務所につくと、すぐに所長室に案内された。
アニメ通りだけど、重厚感が凄い部屋の奥にエンデヴァーがいる。
その目は真っすぐに轟を見てた。
…あ、どっちも轟だ。ややこしっ!
いいや、心の中では焦凍と呼ばせていただこう。
ちなみに私はちらりとも見られない。
なんだよー。
「こんにちは、エンデヴァーさん。今日から1週間よろしくお願いします」
にこりと笑いながら挨拶をすると、視線がやっと合う。
しかし大きいなー。30センチ以上違うもんなー。
「……貴様何日寝ていない」
「………はい?」
表情を変えないように気を付ける。
挨拶もなにもない言葉だが、私を揺らすには十分だった。
相澤さんにも人使にも気づかれなかったのに。
「なんのことですか?」
にこにこと笑顔を絶やさない。
それに反してエンデヴァーの熱が強くなる。
熱い熱い。
「笑っていれば俺を誤魔化せると思うなよ。体育祭でのことは聞いたが、あの程度で睡眠もろくに取れなくなるとは貧弱な」
「…体育祭?」
かっちーん。
そりゃあなたに比べれば貧弱かもしれませんけど。
しかしあんまり言わないでほしいなあ。一応体育祭での件は緘口令がしかれていて、あの場にいた者以外は知らないはずなのに。
やっぱりトップランカーヒーローには連絡いってるのか。
体育祭後、寝るのが怖くなった。
寝て、また夢を見させられることに。
だからこの一週間はほとんど寝てない。
「ふん。まあいい。足手まといにはなるなよ。」
いくら気に入らないからってそんなに邪険にしなくてもいいのになあ。
そのままエンデヴァーは私達を素通りし、扉の外にいるサンドキックに向かって叫ぶ。
「前例通りなら保須に再びヒーロー殺しが現れる。しばし保須に出張し活動する。市に連絡しろお!」
原作通り。
エンデヴァーと焦凍が来てくれないと、保須の一件は解決しないからね。
「おい音葉、あいつが言ってたの…どういうことだ」
心配してくれているのか、オッドアイの瞳が揺れている。
うーん、最初に比べると本当に彼は丸くなったよね。
「気にしないで。私、エンデヴァーさんにはちょっと嫌われてるから」
ちょっとどころじゃないと思うけど。