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(心操視点)
「さて、どんな手でもいいから、私を倒してみて」
あの後、体育館の鍵を借りてとりあえず組手をしてみようということになった。
女の子…しかもつい最近好きだと自覚した子に殴りかかるというのも気が引ける。
「いいんだな?」
さっきも言ったけど、相澤先生が推したから疑うわけじゃない。
けど言が戦っているところは見たことがないし、想像もできない。
それくらい、彼女は細い。筋肉は全くついていないように見える。
俺の言葉に言はニッコリと笑って、人差し指でちょいちょいと挑発してきた。
「おいで、坊や」
それはさすがにカチンとくる。
坊やって同い年だろ。
どんな手使ってでも、組み伏せてみせるっ。
20分後。
「はあっはあっ…っっ!なっんだよ、超…強いじゃん」
攻め続けた20分。
息切れしているのは俺だけだった。
こんな強いなんて思わなかった。
ぎっと睨むと、へらへらと笑う言。
殴りかかっても、蹴り上げても、どうやっても軽い力で流される。
まるで紙を相手にしてるみたいだ。
「なんっで、一発も、当たらないんだよ」
床に大の字で寝転がったままの俺の隣にしゃがみこんで、彼女はにんまりと笑う。
…くっそ…可愛いな…(急な惚気)
「私ね、武術という武術はほとんどやってきたの」
言は合気道、柔道、剣道、弓道、居合道、なぎなたと、一通りの武術を小さい頃から学んできたことを話してくれた。
俺のことは合気道で受け流してたんだと。
「合気道は相手との力の差はあまり関係ないんだ。むしろ相手の力が強ければ強いほど、その力を利用して、放り投げることもできる」
確かに、俺よりもだいぶ小柄な言に何度も投げられた。
どこにそんな力あるんだって思ったけど、そういうことじゃないのか。
「人使の場合、身長もあるから最初は体作りメインにしたほうが良いと思うんだよね。体の仕上がり具合で、動かし方とか力の入れ方だいぶ変わってくるから」
そういうと、ノートを出してさらさらと何かを書き込む。
字、綺麗だなあ。
なんて思いながら眺めて、書かれていく内容に青ざめる。
「っと、基本これ毎日ね」
筋トレやランニングなどの体力作りメニュー。
異常なのはその回数だ。
「今週はこれしながら組手して、来週は私職場体験でいないから体力作りメイン。相澤さんにも時間あれば見てもらうようにお願いしとくね。」
「これ、全部やんの…?」
渡された紙をじっくりと読んで言うと、言がきょとんとした顔で首を傾げる。
何を言っているか分からない、というように。
「うん。そうだけど?」
「これ、言もやってんの?」
これにもさも当たり前のように頷かれる。
まじか…この量を毎日やってんの…
「体育祭前は爆豪とこれの1.5倍のメニューやってたよー。あの子、体力お化けだからねぇ」
1.5倍…これだけの量の筋トレやランニングをしてるのに、なんで言はこんなに細いんだ?
俺の言いたいことがなんとなく伝わったのか、少し恥ずかしそうに頬をかく。
「あー、分かるよ。言いたいこと。自分でも思うもん。体力はつくんだけど、筋肉はつかないんだよねー。体質かな?」
そう言ってぺらりと服をめくって自分の腹を見せてくる。
思わず目を逸らした。
一瞬見えた真っ白で薄い腹には、確かに筋肉らしきものはついていない。
「……てか、無防備すぎ。体育祭の時も言っただろ」
なんで男と二人の状況でそういうことできんだよ、こいつは…
しかもそれには恥ずかしがる素振りないし。
「言ってさ、意外と抜けてるよな」
本当にヒーロー科の変な虫がつかないか心配なんだけど…
せめて好きな子よりは強くありたい。
一本。言から一本取れるまで気持ちは伝えないつもり。
その間に他の奴にちょっかい出されないように、気を付けないとな…
「うん?抜けてる?何のこと?…どうしたの、人使?」
可愛く俺の顔を覗き込んでくる言のおでこにデコピンをする。
「なんでもない。…俺、強くなるから」
そういうと、彼女は満面の笑みで頷く。
その笑顔にああ、やっぱり好きだなあと心の中で思った。
言は、俺の道を照らしてくれる太陽だ。