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(主人公視点)
夢を見る。ああ今日もあの夢かと思ったら、妙に明るくてびっくりした。
みんなが笑っている。
オールマイトのお腹に痛々しい傷跡がなくて
サーナイトアイと笑いあっていて
緑谷の右手に傷跡はなくて
悪態をつく爆豪とクラスのみんなと笑いあっていて
相澤さんの右目に傷跡はなくて
マイクともう一人と笑っている姿に、溜息が出た。
「これは、違う。私の知っている未来じゃない」
ありえない。ありえないのだ。
相澤さんとマイクと、肩を組む白雲朧は。
「彼はもう、いないのだもの」
死んだ。そして利用された。
私もあったことのある、彼。
みんなの奥に見えた人影に、自然と顔が歪んだ。
あれも、ありえないのだ。
オールマイトの肩を叩いて歩み寄る姿に、涙が出そうになった。
「志村菜奈…死柄木弔」
いや違う。
あそこで少し気まずそうにして、はにかんだように笑う彼はそんな名前じゃない。
「志村、転弧」
運命に翻弄された、悲しき少年だ。
オールフォーワンさえいなければ、きっとこんな光景もあったのかもしれない。
普通にヒーローに憧れ、祖母の弟子であるオールマイトに憧れ、緑谷と同じ真っすぐな目をしていたのかもしれない。
これは私の夢。
叶うことのない、幸せな。
「ほお、どこまで知っているのかと思ったけど、なかなかどうして」
ぞわりと背筋が泡立つ。
途端、照明が消えたように真っ暗になる。
しまったと思った時には遅かった。
これは、私の夢じゃない。
「白雲朧のことも、弔のことも、本当に全てを知っているようだね」
にたりと奴の口角が上がる。
原作とは違う。呼吸器も管も、なにもついていない男がそこにいた。
顔はよく見えない。
けれど、声と雰囲気でわかる。
「……悪趣味な夢見せるのは、やめてって伝言聞かなかった?」
平静を装う。
わざとあんな光景を見せたんだ。私を、油断させるために。
「ああ聞いたよ。だから少し趣向を変えてみたんじゃないか。そしたら、思いのほか大きな収穫があったな」
一歩、また一歩と近づいてくる男に後ずさりすらできなかった。
拘束されているわけでもないのに、体が動かない。
腰に手を回され、顎を掴まれ上を向かせられる。
「身長差あるんだから、もうちょっと優しく扱えないの?」
逸らされた首が痛い。
夢の中なのに痛いなんて変な感じ。
「そうか、じゃあこっちの姿の方がいいのかな」
その瞬間、彼の顔が一気に近くなる。
引き寄せられたわけじゃない。
私が、大きくなったんだ。
「なっ!?」
前に流した長い三つ編みが懐かしい。
腰まで伸ばしたそれは、いつもそうしていた。
そう、30歳の私は。
「ああ、僕はこっちのほうが好きだな。少女趣味はないものでね」
腰に回されていた手が、ゆっくりと足やお尻を撫でまわす。
嫌悪感に顔が歪む。彼は笑っていた。
「音葉言、君の知る未来とは?」
やっぱりそこか。
滑った口が憎い。
「さあなんのことかしら」
「うーん、気の強い女は嫌いじゃない。それを手折ることもね」
服の隙間から手が入ってきて素肌を直接撫でられ、顔を寄せられてそのまま首筋や耳を舐められる。
「弔が、随分君のことを気に入ったようでね。僕としてはこちら側に来てほしいと思っているんだが」
耳元で囁かれる。
大塚さんボイスはとてつもなく魅力的だけど、キャラがダメ。
某傭兵に言われたら寝返ってたかもしれないけど。
「バカ言わないで。私がそっちに行くと思ってるの?」
鼻で笑ってやる。
こんなことしたって無駄。
今更この体が汚れたところで、失うものなんて何もない。
「残念だけどオールフォーワン。私、貴方が嫌いなの。」
この世界で明確に嫌いなのは、彼だけ。
彼だけは、許せない。
面白半分で私の好きな人達を苦しめる彼は。
「知っているよ。だから楽しいんじゃないか」
「そう、心の底から悪趣味ね」
ただ悪としてはそうあるべきだとも思っている。
揺るがない、真っすぐな悪はそれだけで他を魅了する。
それに、と彼が言葉を続ける。
「君のその体も、君が知っているという未来も、僕にとってとても有意義なものの気がするからね。」
それだけはいけない。
こいつにだけは知られるわけにはいかない。
この世界の、未来を。
「残念ね。私の体も、私の知識も、私の心も、私だけのものよ」
他の誰にも渡すつもりも、言うつもりもない。
そんなことするくらいなら
「無理矢理にでも吐かせようとするなら、舌嚙み切って死んでやるから」
命なんて惜しくない。
物語の邪魔をするくらいなら。
「だからオールフォーワン、余計なちょっかいはこれくらいにしてちょうだい。
私は貴方には与しない」
『離れろ』
黒霧の時と同様に、ばちっとバリアのもののようなもので彼がはじかれる。
痛みを感じる前ににっこりと笑い、手を振った。
『起きろ』
にたりと笑った男の口が、動いた。
「……ッッッッげえっっっ」
大量の血が、布団の上に広がる。
夢の中での個性使用にも反動がくるなんて…
格上すぎる相手に使ったからかしら。
なんて吐き出した血を見ながら思った。
それでも、気を失うわけにはいかなかった。
もう、あいつに会うのはたくさん。お腹いっぱい。
虫唾が走る。
お前なんかに言われなくたって。
そんなの、私が一番わかってる。
---自分が、そっち側の人間だとでも?---