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(主人公視点)
説教を食らいながらも“朝のお散歩”と納得してもらった。
一人で外出できないとぶーぶー文句を言ったら、GPSアプリ付きの携帯を渡される。
どうやら体育祭でのこともあるから、根津さんから受け取ってたみたい。
元の世界の携帯は使えないからね。
「おや?音葉少女?」
携帯を常に持ち歩くことで外出を許されたので、スーパーに買い物に来ていた。
そこで出会う、やせ細った金髪。
落ちくぼんだ、けど強い目が私を見ていた。
「あら、お…八木先生」
あぶな。危うくオールマイトって呼びそうになったわ。
こんな人の多い中で、その名前呼んだらパニックよ。
ナンバーワンヒーロー様だもんね。
「HAHAHAHA、気を使わせてすまないね」
申し訳なさそうに苦笑する彼をちらりと見て、そのまま買い物を続ける。
別に用ないし。
すたすたと魚コーナーに進もうとすると、不意に腕を掴まれた。
「……なんですか?」
「音葉少女、僕とお茶しないかい?」
ナンバーワンヒーローからデートのお誘いを受けました。
「ここね紅茶がとても美味しいんだ。あ、大丈夫。ヒーロー御用達のお店だから、個室だしここでの話が洩れることはないから」
おすすめでと言うと、暫くしていい香りの紅茶とショートケーキが目の前に置かれた。
うん、美味しい。
「…それで、何かお話しでも?」
ただお茶を飲むだけじゃないだろうに。
トゥルーフォームの細い手で、彼は頭をかりかりとかく。
「非常に聞きづらいんだが、音葉少女は僕のことが嫌いかい?」
思いもかけない質問に、目が点になる。
「君の僕を見る目が気になってね」
「そうですね、好きではないです」
さらりと言うと、うっと胸元を押さえるオールマイト。
顔に出てたのか。私もまだまだだなあ。
そう、私はオールマイトが好きじゃない。
「ずっと思っていたんです。…15歳なんて子供に、なんてものを背負わせるんだろうと」
ぴくりと彼の肩が揺れる。
窓の外を見ながら、ぽつぽつと言葉を紡いだ。
「けど、彼を選んだことを間違いだとは思いません。これから彼が救う人達を私は知っている。」
心操、轟、飯田、爆豪、ナイトアイ、壊理ちゃん、ジェントル、ラブラバそしてオールマイト。
それ以外にも、たくさんの人を救う。
「それは、彼でなければ救えなかった人達です」
他の誰でもダメだった。
緑谷出久でないと、彼らは救えなかったんだ。
無個性で、泣き虫で、幼馴染で、自分に自信がなくて、お節介で、誰よりもヒーローを追い求めた彼だからこそ。
「だからオールマイト、貴方は生きなければいけない」
真っすぐ、その綺麗な青い瞳を見つめる。
いなくなるなんて、許さない。
「貴方達が全力で生きれば、未来なんていくらでも捻じ曲げられる」
ぐっと拳を握りこんだ。
私ができないそれを、彼らならできる。
「できる限り、手を貸します。だからちゃんと彼を見ていてあげてください。師匠に似て、無茶ばっかりしますからね」
そう言って笑うと、気まずそうに視線を逸らされた。
彼らだけじゃない。全くもってこの物語の登場人物たちは、無茶ばっかりだ。
「イレギュラーは、私が取り除きます」
誰にも邪魔させはしない。
体育祭のことでわかった。私の存在が、少しだけど物語を変えている。
オールフォーワンがあそこで手を出してくるなんて描写、なかったはずだもの。
イレギュラーは取り除く。
それが、私自身であったとしても。
(オールマイト視点)
“ご馳走様でした”と言葉を残して去っていた彼女の背中を窓越しに見る。
15歳というには大人びた表情が頭を離れなかった。
(いやあれは大人びた、というよりは…何かを、諦めた…?)
好きじゃないといわれた時はさすがに少し傷ついたものさ。
これでもナンバーワンヒーローだからね。
もてはやされることはあれど、否定されることは少ない。(エンデヴァーは別として)
そして未来を知る少女は、確かに彼を選んだといった。
やっぱり緑谷少年とのことも、ワンフォーオールのことも、全部知っているみたいだね。
ただそれ以上に彼女の言葉が胸に突き刺さった。
---だからオールマイト、貴方は生きなければいけない---
譲渡し、風前の灯火のような私の個性。
知っているからこそ、あんな言い方をしたんだろう。
平和の象徴として立つのではなく、ただ生きろと。
実際、私の平和の象徴としての時間はもう少ないだろう。
その限られた時間の中で緑谷少年を、可能な限り育てなければいけない。
彼女の瞳を思い出す。
見た目の年齢にそぐわない、暗い瞳を。
なにが彼女にそんな目をさせるのか分からない。
彼女のことだ。自分から語るようなことはしないだろう。
苦しみも、恐怖も、全てを飲み込んで彼女は笑うんだ。
校長先生が危惧した通りだと溜息をつく。
(余計なお世話かもしれない。けど、私は…私たちはヒーローだからね)
君だって、この世界に生きる一人の人間なのだから。