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(主人公視点)
次の日。
まだ夜も明けきらない早朝。
昨日遅くまでVチェックをしていたであろう相澤さんはまだ寝ていた。
少しだけと思い、外に出る。
ちなみに制服だとあれなので、ミッドナイトが買ってくれた白のカラーパンツとオフホワイトのブラウスを着ている。
保須総合病院にいた。
インゲニウム…飯田天晴は命こそ助かったものの、ヒーローとしての復帰は絶望的とのことだった。
原作と一緒。
結局、白に急いで運んでもらっても、そこは変わらなかった。
外から病室を見る。
ぼろぼろの彼に、胸が痛んだ。
救えた命だ。私は、彼のヒーロー生命を救えたはずだった。
でも、それをしなかった。しちゃ、いけなかった。
飯田の成長と、ステインの逮捕と、3人の関係性のために、犠牲にしたんだ。
ぎりりと唇を噛みしめると、いつの間にか起きていたインゲニウムと目が合った。
彼は弱弱しく笑って、口を動かす。
目を開いて、息を吐き出す。
6月といえどまだ少し肌寒い。
私は公園の背もたれに体重を預けた。
「ありがとうなんて、言ってもらう資格…私にはないよ…インゲニウム」
白の視界をジャックして見た彼の目は私を捉え、その口は確かに“ありがとう”と動いた。
一瞬目を瞑って、でもすぐに背後に立つ男を見る為に開く。
「で?現役女子高生の寝顔見るなんて随分いい趣味ね。お金払ってくれていいのよ?」
背もたれにもたれかかったまま、だらんと首を後ろに倒す。
死柄木弔が逆さまに見えた。
黒いパンツに、黒いパーカー、フードを目深に被っている。ひたすらに怪しい。
「てかさ、外出るんだったらもうちょっと気使えば?見るからに怪しいけど」
特に構えることもしない。
椅子に座って脱力したまま、そう言い放つと死柄木は鼻で笑った。
「誰に会うわけでもないからいいんだよ」
「いや、現に会ってるじゃん。私に」
「お前がたまたまこの公園にいたんだろ。別に会いにきたわけじゃない」
素っ気なく言って、立ったままじっと私を見る。
なんだいなんだい。その目は。
「お前こそ、なんで警戒しない。殺されるとか、思わないのか」
敵連合のトップだからねぇ。
そりゃ普通だったら警戒するでしょう。
「思わないよ。あんたに私が殺せると思わないし、私はあんたを殺せない」
殺せないし、殺したくない。
なかなか死柄木も難儀な子なんだよなあ。そして嫌いじゃないんだよなあ。悔しいことに。
「はあ?何言ってんだ。じゃあ、試してみるか」
死柄木の手が迫ってくる。
君の個性の仕組みは知ってる。
多分、私の個性は有効だと思う。
『治れ』
喉が焼け付くように痛む。
けど、五指全てが触れた私の肩は崩れなかった。
死柄木の目が驚愕に見開かれる。
あー、良かったー。
ぶっつけ本番だったけど、大丈夫だったわ。
ただ単に崩れていく瞬間から治しただけだけどね。
「なっんなんだ…お前」
ぎりりと歯を食いしばる音が聞こえる。
爆豪に負けず劣らずの癇癪玉だなあ。
まだこの時点の彼は成長を始めた段階だから仕方ないのか。
最初、“子供大人”とか言われてたもんね。どこの逆コナン君だよ。
「死柄木弔、私は崩れないよ」
本当はめっちゃ喉痛いけど、へらりと笑った。
私は崩れない。殺せない。あなたの個性じゃ。
「……けっ、なんなんだよ、変な女」
どかりと隣に座る。
さも面白くなさそうに不貞腐れる彼が可愛くて、思わず頭撫でてた。
なんだこの子供。可愛いぞ。
精神年齢低くない?
「子供扱いすんな」
といいつつも大人しく撫でられている。
お、なんか狂犬がなつき始めたみたいな感じ。
こんな危ない犬、やだけど。
「もっかい聞く。お前、なんで最初警戒しなかった」
「だって、戦闘服じゃないじゃん」
手がいっぱいついたあのコスチューム。
あれが彼にとっての戦闘服だ。
だからそれを着ていない今は、少なくとも戦う気はないのかなって思った。
ショッピングモールで緑谷と会うときだって、今みたいな恰好だったから戦闘行為はなかったし。
「はあ?別に服なんてなくても殺せるだろ」
そうなんだけどね。殺したければ殺す。それは敵なんだろう。
「別にちゃんとした理由はないよ。殺さない、そう思っただけ」
さっきだってそうだ。
殺す気なら首でも頭でも、急所に触れればよかった。
だけど彼が触れたのは肩。
多少崩れても、命に支障はない。
「そうだ、先生に言っておいてよ。クソみたいな夢見せるのやめろって」
昨日の夜。
今まで見たことなかった元の世界の夢を見た。
家族の夢。
普通だったら良い夢のそれは、私にとってはただの悪夢だ。
最後には彼が出てきて言うのだ。
---また遊ぼう、音葉言---
オールフォーワンがどんな個性を持っているのか分からないけど、十中八九あれは彼が見せた悪夢だ。
夢に干渉してくるとか、どこのクトゥルフだよ。
「はあ?なんでお前が先生のこと知ってんだよ」
あ、やべ。そういや先生って呼ぶの死柄木だけじゃん。
ま、いっか。ごまかそ。
。
「はあ?聞いてないの?体育祭であいつにちょっかい出されたんだけど」
別に心の傷が残ったとかない。もう今更だ。
あんなの、日常だったはずだもの。
光にあてられて、忘れてただけ。
「ふーん」
面白くなさそうに死柄木が私を見る。
その血のような赤い目を見返しながら、なんだろうかと首を傾げる。
瞬間、ふわっと嗅いだことのない匂いが鼻をくすぐる。
それと同時に唇に触れる感触に、思わず固まった。
「っっちょっっっ」
押しのけようとするけど、両手を押さえられてしまう。
え、なんで?なんで私こいつにキスされてんの??
少しカサカサした唇を感じて、暴れるけどびくともしない。
「……ふあっ…ん」
閉じた唇をこじ開けられて、少し乱暴に口内を弄られる。
頭の中がぐちゅぐちゅという水音で支配されて、おかしくなりそうだった。
初めてじゃないのに、それだけで反応する体が憎らしい。
「……はっ、なに雌の顔してんだよ」
ちゅっとリップ音を立てて唇が離れて、どっちとなく吐息が洩れる。
目と鼻の先にある死柄木の顔が楽しそうに歪むのを見て、とりあえず思いっきり舌打ちしてやった。
「なんでこうなるのよ。あんた私のこと嫌いでしょ」
いまだに離されない手は既に諦めた。
中指が浮いているから、崩すつもりはないみたいだし。
「あ?なに、初めてだった?」
ああん??
こちとら中身30やぞ。初めてなわけあるか。
「お生憎様。こちとら一通り済ませてんの」
残念だったね、ガキンチョ。
挑発するように言う。
「あっそ、別にお前のこと嫌いなわけじゃない」
あれ?そーなん?
ヒーロー側だし、てっきり嫌われてると思ってたんだけど。
「その反抗的な目のまま、犯してやりたいくらいには思ってる」
“犯す”
その言葉に少しだけ揺れた私の瞳を、見逃さなかった。
「へえ、やっぱ女だな。それは嫌か」
すうと心が冷えるのが分かる。
死柄木の右手がブラウスの裾から入ってくるのを見て、溜息をついた。
『離れろ』
途端、ばちっとはじかれたように死柄木が離れる。
口を押えて少し咳き込むと、わずかだけど血が出ていた。
「残念だったねクソガキ。そんなことで揺れるほど、初(うぶ)じゃないの。」
立ち上がって、体を伸ばす。
もうすっかり朝になっていた。
「人が来るわよ。早く黒霧呼んで帰りな」
「……黒霧」
死柄木の後ろにワープゲートが開く。
楽しそうに笑いながら、こっちに手を振る。
「またな言。次は、もっと楽しもう」
ワープゲートが消えて、公園に静寂が訪れる。
乱暴に口を拭って、歩き出した。
「……馴れ馴れしく名前で呼んでんじゃないわよ」
「どこにいっていた」
帰ったら仁王立ちでゴゴゴゴと効果音をバックに、ガチギレの相澤さんがいました☆