SPORTS FESTIVAL
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(相澤視点)
「どういう、ことだい」
3年生の会場から、すぐに校長が駆けつけた。
ばあさんの診察では、目立った外傷は首のひっかき傷だけだ。
「わかりません…俺達が入った瞬間、黒い影のようなものがなくなったくらいで敵の姿はありませんでした」
真っ白な顔で横になる彼女の右手を、ずっと心操が握っている。
クラスに戻るように言ったが、頑なに首を横に振った。
「彼女が目覚めるのを待つしかないね」
USJに続けて生徒が襲われた。
しかもプロヒーローを数多く配置した、この体育祭で。
中止も考えたが、彼女のみを明確に狙ってきたということも踏まえ、他の生徒には害がないと考え続行されている。
次は飯田と轟の試合だ。
「相澤君、君のクラスの試合だろう。放送席に行きなさい。」
「しかしっ」
正直彼らの試合は後から録画でも見られる。
今は、音葉の方が心配だった。
「いま、この場に君がいたところで、できることはないよ」
うっと言葉を詰まらせる。
校長の言う通りだ。
USJでの傷が完治していない俺に、戦闘はできない。
「……ブラド、頼んだぞ」
彼女の警護には、プロヒーローがつくことになった。
ブラドにその場を任せて、俺は放送席に戻った。
(主人公視点)
---…さ、ま---
誰かが、私を呼んでいる。
頭の中に直接響く声。
---言様!---
白の声。
そのまま目の前に白が見ている風景が広がった。
---なかなか反応がないので心配しました。何かあったので?---
……んーん、大丈夫。
それより見つけた?
視界の先には血が続く路地裏。
そして、そこから出てくるヒーロー殺しの姿。
彼の姿が見えなくなった後に、白が路地裏に進む。
中には、血だらけのインゲニウムがいた。
---彼を病院に運べばよろしいので?---
うん、お願い。
飯田と似ているその顔は、苦痛に歪んでいる。
白に運ばれる彼の頬を撫でる。
不意に、その瞳が薄く開かれた。
救けられなくて、ごめんなさい。
白、病院の前に置いて大きな音を立てて。
それだけで、きっと医者が気づいてくれるはずだから。
そのまま姿を隠して。
都度、容体の報告をお願いね。
---わかりました。あの、言様---
ん?なあに?
---無理を、なさらないでくださいね---
……うん、ありがとう…白
頭がガンガンする。
ゆっくりと目を開けるけど、眩しくてまた閉じる。
ああ、もうあのどろどろとした闇は感じない。
ふと自分の右手に感じる体温に、そちらを見ると大きく目を見開いた人使がいた。
「ひと、し…」
声が出る。良かった。遅効性のあの薬は、効き目自体はそんなに長くないみたい。
どうしたの、と笑いかけると、人使は今にも泣きだしそうな顔で小さく「バカ」って言った。
「うん、ごめんね…救けてくれて、ありがとう」
覚えてる。
呼吸がうまくできなくて闇に飲まれそうな時に、相澤さんの声が、人使の声が救ってくれた。
二人の声が、はっきりと聞こえたの。
「人使は、私のヒーローだね」
そういうと、彼はまた小さく「バカ」といった。
首の傷を治してもらって、上半身を起こすとそこには根津さんがいた。
3年生の会場の方は良いのかと聞いたら、それどころじゃないって。
うーん、3年生に皆さんには悪いことしたなあ。
「ゆっくりでいい。何があったか話してくれるかい?」
根津さんが入れてくれた紅茶を受け取る。
大丈夫。話せる。
「人使、ごめんね。先に戻っててくれる?」
そして彼には聞かれちゃいけない。
彼は、関わるべきじゃない。
顔を顰めた人使は、それでも根津さんに促されて部屋の外へ出ていく。
ごめんね、いつかちゃんと話すから。
そこからゆっくりと根津さんに、あったことを話した。
オールフォーワンの名前は伏せて。
ただ精神攻撃をされた、とだけ。
「精神攻撃については、話せるかい?」
それには首を横に振った。
あれはこの世界の人達には関係のない話だ。
汚い、私の元の世界での話なんて、彼らに聞かせるべきじゃない。
「いつも笑っている君をとても強い子だと思っているよ。私達には、未来を知る君の肩にどれだけ大きなものが乗っているか想像もできない」
カップの中の紅茶を見つめる。
酷い顔の、自分が映っていた。
「けどね、人一人が背負えるものには限界があるものさ。限界を超えれば押しつぶされてしまう」
根津さんは、にこにこと笑っている。
決して、話さない私を責めているものじゃない。
わかって、いるけど。
その真っすぐな目こそが、私には苦しい。
「いつか君が、少しでもその荷物を「根津さん」」
少し強めに、その言葉を遮った。
そしてニッコリと笑う。
「大丈夫ですよ。私が背負うのは、私一人分の荷物だけです。」
誰にも背負うわせるつもりはない。
これは、汚い私の、私だけの、ものだから。
悲しそうにこちらを見つめる根津さんの目から、顔を逸らした。