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(主人公視点)
「言ちゃーーーん!どこいたん!探したんよ!」
げっ!このタイミングで見つかりたくなかったナンバーワン!!
廊下の向こうから凄い勢いで走ってくるお茶子ちゃんと百ちゃんに捕まる。
「ほら!これ着て!早く!休憩終わっちゃう!」
差し出された服に、ひくりと顔が引きつる。
いやいや待って!予想はしてたけど待って!
30歳のチアリーダーはきついって!
主に精神的に!!
『あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ…ん?アリャ?どーしたA組!?』
ぐう…押し切られた…
もうやだ、泣きたい…みんなはいいよ?15歳だもん。
現役女子高生のチアリーダー姿とか、ご褒美だもん。
けどさ、私は中身30歳なのよ!
「峰田さん、上鳴さん!騙しましたわね!?」
ちょっと遠いところでにやりとする二人に殺意が湧く。
ぐう…分かってたのに百ちゃんの必死な顔に断り切れなかったのよ…
「いいんじゃない!?やったろ!」
ぴょんぴょんと跳ねる透ちゃん。
うん、みんな可愛い。眼福。
この際自分の服装は気にしないことにした。
(緑谷視点)
トーナメント表が発表されて、僕の初戦の相手は心操君だった。
確か、騎馬戦で尾白くんと青山君と組んでた子だよね。
「あんただよな?緑谷出久って」
答えようとした瞬間に尾白君に口をふさがれる。
彼が、心操人使君。
…ん?
人使君?
---あ…人使のこと、よろしくね!---
さっきの音葉さんの言葉が、頭をぐるぐると巡る。
あれはトーナメント表発表前だったはずだ。
(なんで音葉さんは、僕が心操君と当たるの分かったんだろう?)
転入以来、とても不思議な女の子だった。
いつの間にかかっちゃんと仲良くなってて(まずあのかっちゃんが女の子の名前を覚えるなんてこと自体が初めてなんだけど)、先生方とも仲良いみたいだし…
(あとから聞いてみよう)
(主人公視点)
「あ!女神様!これ良かったらどうぞ!」
静かにグラウンドを抜け出して観客席に上がると、経営課の女の子が飲み物をくれた。
なんでも友達が怪我を治してもらったお礼だとか。
あ、私の好きなスプライト系だ。
自分が“女神様”と呼ばれていることは知ってる。
非常にむず痒いが一般客にも知れ渡っているらしく、今更訂正しまわるのは骨が折れる。
ということで呼ばれたらとりあえずにっこり微笑むことにしていた。
グラウンドでは借り物競争が行われている。
峰田が絶望の顔してた。
“背脂”だもんね。
ざまあ見ろと笑いながら、外に出る。
みんな思い思いの場所で精神統一してんだろうなー。
轟は森、常闇は木の上、緑谷は尾白と控室だったかな?
「やあ!君が女神様かい?」
いきなりにゅっと壁から顔が現れる。
びっっっっくりしたあ。
おい。あんたこんなところいちゃダメだろ!
「あ、はい。不本意ながら、そう呼ばれておりますが」
必死に平静を装ってそう答える。
通形ミリオその人の顔が、そこにあった。
「うんうん!ちょっと協力してほしいんだよね!いまから友達が迎えに行くから一緒に来て欲しいんだ」
そう言った瞬間、私の場所に影がさす。
なんだろうと思って見上げると、まさかの顔がそこにいた。
「……え」
まさかの推しがいた。
藍色の髪、目つきの悪い三白眼、ジャージの背中から生えた翼。
今日の朝ごはんはフライドチキンだったのかな、なんて頭の片隅で考える。
「環!了承は得たよ!連れてきて!」
「……ごっごめんね、嫌だったら、叩いてくれて構わないから…」
自信のなさそうな低い声が届いた瞬間、先輩のジャージで包まれた私はお姫様抱っこをされていた。
いや、ご褒美!!
チアリーダーの服だから素肌に触らないようにしてくれたみたい。
紳士か!!
て、了承してないんですけど!?
どこ連れてかれるのーーー!!!
「先輩、こういうのはもう少し分かりやすく説明すべきだと思います」
さすがにむすっとしながら一位の旗を持つ通形を睨む。
どうやら3年生の借り物競争で“女神”というお題に当たったらしい先輩は、周りから1年生の会場にいるとクラスメイトに言われ、探しにきたらしい。
てかよく私のこと分かったな。
「それはごめんなんだよね!けどお陰で助かったよ!ありがとう!」
ニコニコと笑う先輩。
あー。太陽ってわかるなあ。
屈託のない笑顔に、つられて笑ってしまう。
「あー!この子女神でしょ!1年生の!ねぇねぇなんで体育祭参加しないの?個性が治癒って本当?三つ編み綺麗だね。可愛いー!」
わお、波動さん。さすがのマシンガントーク。
というかあなたの方が何万倍も可愛いですけど!?
このままビック3と話していたいのはやまやまだけど、こちとら友人の応援にいかねばならんのですよ!
「天喰先輩!すみませんがまた元のところまで送っていただけませんでしょうか!超特急で!」
早くしないと一回戦始まっちゃう!
急な指名にびくりと体が震えたが、元々そのつもりだったのか思いのほかあっさりと翼を出してくれた。
「通形先輩、波動先輩。ヒーロー科1年A組の音葉言です!またお会いしましょう!」
それだけ言って私は天喰先輩を急かして、その場を去った。
「あれ?通形、あの子に自己紹介した?」
「……いいや、してないんだよね」
「ありがとうございました、天喰先輩!」
ぴったりと同じ場所に降ろしてくれた先輩にお礼を言って、急いで中に戻ろうとする。
が、少しだけ赤くなった腕を見つけて急停止。
「これ、怪我したんですか?」
「え?あっあぁ、でも大した怪我じゃないから…」
不安げに視線を彷徨わせる先輩の腕を掴む。
びたっと体が固まる。
うーん、可愛い。この自信なさげなのに、クソ強いのギャップ萌えがすぎるのよ。
『治れ』
少しずつ、でもちゃんと怪我が治る。
この程度なら、喉もあまり痛まなくなってきた。
午前中から頑張ったお陰かな。
「!…本当に、治癒できるんだね」
ありがとうとお礼を言われたので、微笑むと先輩の顔が赤くなる。
うう、可愛い…この人も女の子慣れしてないのかな…
あれ?でも波動先輩とは普通に話してるよね?ん?
「出張所以外での使用は許可されてないので、内緒ですよ」
シーっと人差し指を口に当てながら笑うと、さらに先輩の顔が真っ赤になった。
大丈夫?風邪?
それから先輩にジャージを返して別れ、更衣室で制服に着替えてから真っすぐに人使の入場ゲートに向かって走る。
今まさに入場しようとしていた人使が、私を見つけて足を止めた。
「言」
「よかったー!間に合った!」
険しい顔が一瞬だけ緩む。
いきおいそのままに人使に抱き着いた。
「え!?」
驚きの声を聞きながらも、優しくその背中をトントンと叩く。
次第に、固くなっていた体から力が抜けていくのを感じた。
「見てるからね、人使。あんたがヒーローへの第一歩を踏み出す瞬間を」
人使の背中を思いっきり叩いて、にかっと笑う。
「いってこい!心操人使!」
小さく頷いた人使の背中が、少しずつ小さくなっていった。