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(主人公視点)
そこからは考える暇もないくらい多忙だった。
原作では詳しく描かれてなったけど、負傷者の多さよ!
小さなかすり傷から凍傷、やけど、なかなかに多い!
軽いものであれば多少喉が痛くなる程度の反動で済むことが分かり、軽症者の処置は任されていた。
「はい、つぎー!…こほこほ」
さすがに短時間で使いすぎたのか、喉が少し痛い。
嘘、結構痛い。
けどリカばあも骨折している生徒治してて大変だし、ここで私がへこたれるわけにはいかない!
テレビをちらりと見ると、すでに第二種目まで終わっていた。
くそーーー!見たかった!結果も過程も全部知ってるけど、見たかった!
ラストのトーナメント少しは見られるといいなあ。
「大変そうだな」
喉の痛みに顔を顰めていると、見慣れた紫のライオンヘアがあった。
「人使…あ!最終種目進出おめでとう!大丈夫?どこか怪我した?」
「ありがとう…怪我はしてない。これ、渡しに来た」
ほらと目の前に差し出される、某有名のど飴。
あー、龍〇散ってこっちの世界にもあるんだあ。
「え、わざわざ持ってきてくれたの?」
微笑むと、顔を逸らされる。
え、なにそれ。耳真っ赤なんだけど。
殺す気?萌え殺しさせる気?
「前に個性使いすぎると喉痛くなるって言ってたし…俺も食べてるやつだから、その良かったらだけど…」
可愛すぎるぅぅぅうううううう!!
しっ死ぬ…まじで人使可愛すぎる…
思わず泣きそうになったけど、必死で表情を取り繕ってお礼を言って何個かもらった。
満足気に笑うと、人使は頑張ってと言い残して出ていった。
まじでこれ届けてくれただけなんかい。
やば、今なら大怪我も治せるかもしれない。(錯覚)
(心操視点)
「おい!心操!お前、女神様と知り合いなのかよ!」
「は?女神?」
観客席に戻る途中、そう返すとクラスメイトがわらわらと集まってくる。(主に男)
「お前知らねえの!第一種目終わりから、みんな噂してるぜ!ばあさんしかいないと思った出張所行ったら超可愛い子いるし、にっこり微笑みながら怪我治してくれて、女神みたいだって!」
俺も行った、俺も俺もと声が次々と上がる。
てかお前等、ちょっと擦りむいただけだっただろ。
「どんなに小さい怪我でも“大丈夫ですか”ってむちゃくちゃ心配して治してくれるんだぜ。俺、超ファンになっちゃった」
……面白くない。
あっそと言ってその場を後にした。
(主人公視点)
人使が出て行ってすぐにリカばあから休憩を言い渡された。
学生らしく楽しんでおいで、とのこと。
まあ最終種目に入ったら私にできることなんてほとんどないんだよね。
緑谷は基本大怪我だし。
外の風を感じたくてあてもなく歩いていると、ふと目の前からツートンカラーの彼が歩いてくるのが見えた。
あの感じ、もう緑谷とのお話しは終わったみたい。
「あ、轟君。最終種目進出おめでとう!」
短く“ああ”とだけ返事が返ってくる。
この時の轟は、人を殺さんばかりの目つきなんだ。
それがいつかの自分と重なって、胸がぎゅーっと締め付けられる。
「轟君はさ、轟焦凍君だよね?」
通り過ぎた彼が、当たり前だろうという顔で振り返る。
「エンデヴァーはエンデヴァーである前に轟炎司という一人の人間だし、君だってエンデヴァーの息子である前に轟焦凍という一人の人間なんだよ」
轟の目つきが、厳しくなる。
それでも、私は言葉を止めなかった。
私が言わなくても、全部緑谷が言ってくれるんだろうけど。
「彼は彼、君は君、私は私…それ以上でも、それ以下でもない」
彼の過去を、絶望を、憎悪を知っているからこそ、自分に重ねて見過ごせなかった。
この世界に来るまでの私も、きっと彼と同じ目をしていたから。
「自分のなりたいもの、ちゃんと見よう。あなたの憧れは、どんな顔してた?」
「お前なんかに、何が分かるんだ」
低い、拒絶の言葉。
そらそうだ。ぽっと出の私に言われたってむかつくだけ。
そんなの分かってるよ。
でも私だから言える言葉がある。
「少なくとも私は、そんな目をしているヒーローに救けてほしくはないな」
君も緑谷と同じ。
笑って、救ける、ヒーローに。
更に歩いていくと、自分の拳を見つめる緑谷がいた。
おおう、凄い直線上にいるな。
「緑谷君!」
やっ、と手を上げながら近づく。
神妙そうな顔してるなぁ。
私に気づいた緑谷は、少し無理矢理に笑う。
「緑谷君、これだけは忘れないでね。余計なお世話ってのはヒーローの本質だよ」
轟と相対するのはまだ少し先の話だけど。
けど君の余計なお世話に救われる人が、いるんだ。
なんのことだか分からないといった顔の緑谷に苦笑しつつ、ぽんぽんと頭を撫でた。
私と大して差のない身長は、人使よりも随分楽に手が届く。
「え!音葉さん!?」
真っ赤に染まっていく顔。
そっか、そういえば彼は女の子慣れしてなかったな。
面白くてさらに撫でまわしてやった。
もじゃもじゃの髪がさらにもじゃもじゃになったのを確認して、私はじゃっと言って歩き出す。
「あ…人使のこと、よろしくね!」
余計なお世話だろうけどと思いながらも言っていた。
人使はもうすでに推しの心操君から、友人の人使になっているのだもの。
またなんのことだか分からない表情で目を白黒させる緑谷に笑いつつ、私はその場を去った。