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(主人公視点)
「おいデク!!!なんで音葉いねえんだよ!!!」
「ええ!?なんで僕!?音葉さんなら体育祭には参加しないよ!」
「ああん!?!?!?なんでだ!あいつ、こけにしやがって!!」
始まる前にみんなに一言かけようと思って、伸ばした手が止まる。
中から筒抜けの怒号。
ゆっくりと後退し、踵を返した。
(触らぬ神…もとい触らぬ爆豪に祟りなし)
くわばらくわばら。
みんなには悪いけど、そのまままっすぐリカバリーガールの元へ向かった。
体育祭当日。
私はリカバリーガールの手伝いという名の、個性制御及び把握をすることになっていた。
個性というより私の体が、どの程度の傷なら治せるのか確認の意味もあるらしい。
だからリカバリーガールの元でかすり傷から少しずつ治していくつもり。
「あ、言」
リカばあ出張所に行く途中、呼び止められて振り返ると人使の姿があった。
ぐう…ジャージ姿の推しが今日も尊い。
「人使!これから入場?」
「そうだけど、言は参加しないの?」
制服姿の私に「?」を浮かべる。
そりゃそうだよね。ヒーロー科なのに体育祭参加しないとか驚きよね。
「うん、まだ編入したてだし、個性もうまく扱えないから…」
それだけじゃないけどね、と内心思いつつ笑うと、人使は少しだけ残念そうな顔をした。
なにその顔!可愛すぎな!
「そっか、じゃあ見ててよ。俺、絶対勝ちあがってみせるから」
「うん!がんばれ!怪我したら治してあげるから、全力でいってこーい!」
人使の背中をバンと叩いて見送った。
人使が優勝しないことは知ってる。なんだったらトーナメント1回戦で負けるだろう。
けど、この体育祭は人使にはかけがえのない、夢への第一歩になる。
小さくなっていく背中を、最後まで見送った。
途中ちょっとだけ振り返って、小さく手を振る人使が可愛すぎて鼻血出るかと思った。
「やっと来たね!これ着て、これつけな!」
そういって渡される白衣と“養護補佐”の腕章。
おおう。なんかそれっぽい!
言われた通りにつけて、会場が映るテレビを見上げる。
『群がれマスメディア!今年もおまえらが大好きな高校生たちの青春暴れ馬…雄英体育祭が始まディエビバディアァユウレディ!!??』
マイクの叫び声のようなMCを合図に、体育祭の幕が開いた。
「ま、第一試合が終わるまではそこまで仕事はないよ。あんたも見たければ直接見てくるといい」
リカばあがそういうので、第一試合が終わる直前に戻ってくることを約束してグラウンドに急いだ。
何かあったら無線で連絡くれるみたい。
観客席に出ると、すでに生徒が整列していた。
ちょうど爆豪の宣誓シーンらしい。
「せんせー、俺が一位になる」
険しい顔のまま言う爆豪に、笑みがこぼれた。
直に見てわかるけど、本当にこの段階で爆豪にいつもの余裕がない。
己を追い込んで、ここから始まる戦いに備える真っすぐな視線に目を細める。
(ああ、参加しなくて良かった)
あそこは、あのグラウンドは青すぎる。
ミッドナイトじゃないけど。
宣誓が終わって戻ろうとする爆豪と目が合う。
小さく手を振ったら、物凄い顔で睨まれた。
おー、こわ。
「さーてそれじゃあ第一種目行きましょう!いわゆる予選よ!」
ミッドナイトの前でモニターのルーレットが回っている。
「貴様が、音葉言か」
不意に感じた熱気に振り返る。
かなーり上の方に炎に包まれた顔がある。
でっか。身長195センチだっけ?
すげー、でかー。
「あ、はい」
なんだろう、なんでこの人が私のこと知ってるんだろう?
不思議に思って首を傾げる。
そして私になんの用だろう?
「なぜ俺が貴様のことを知っているのかと不思議そうな表情だな」
お、読心術?
この人、読心術使えるの?
「トップランカーのヒーローには、万が一に備えて貴様の情報が共有されている」
なるほど。てことはホークスとかミルコ、エッジショット、ベストジーニストらへんにも私の存在が知られているのか。
ホークスなぁ。原作的には会えるのかなり先になりそうだなぁ。
「そうなんですね。ところで、私に何か御用でしょうか?…フレイムヒーロー、エンデヴァーさん」
ニッコリと笑うと、エンデヴァーが眉間にぎゅっと皺を寄せたままのこわーい顔で睨まれた。
こっわ。これ私が中身30歳じゃなかったら泣いてるぞ。
「忠告に来たんだ」
忠告?
はて、なんのことだろうか。
「同じクラスだからと言って、俺の息子に近寄るなよ。貴様のようなよくわからん存在は、あの子にとって毒だ」
うっわ。超親バカじゃんか。
うちの可愛い息子にーってか。
別に轟と仲良くなってるわけじゃないし、最初の挨拶以来言葉も交わしてないけどね。
「私が誰と仲良くしようと、轟…焦凍君が誰と仲良くしようと、貴方には関係ないと思いますが」
にっこりと笑うと、ぶわっと熱気が強くなる。
名前で呼んだことなんてないけど、目の前のエンデヴァーも轟さんだからね。ややこしい!
増した熱気に、なんだなんだと周りの目がこっちに向く。
ナンバーツーヒーローと雄英の生徒が睨みあっている(私は睨んでないけど)構図は、なかなかに物珍しいのだろう。
歩いていた人の足も止まっている。
「この俺に歯向かうのか」
「歯向かうだなんて、滅相もない。私如きがナンバーツーヒーロー様に意見なんてできませんよ」
にこにこと笑みを絶やさない。
別にエンデヴァーは嫌いじゃない。でも私が好きなのは未来のエンデヴァーだ。
ナンバーワンになって、死に物狂いで“平和の象徴”を追い抜こうとする彼だ。
「ですが、息子を駒のように扱う貴方を、肯定するつもりもありません」
熱気に包まれているはずなのに、その場の空気がどんと低くなる。
背後ですでに始まっているはずの第一種目を見ている人は、その場にいなかった。
『音葉!戻っておいで!この様子だと負傷者がもう来るよ!』
右耳のインカムから聞こえた声に返事をして、エンデヴァーに頭を下げて横切ろうとする。
私の肩に伸ばされた手が、寸前で止まった。
「言様は、急いでおられますので」
真っ白な手。
白がエンデヴァーの腕を掴んでいた。
「では、失礼します。エンデヴァーさん」
今にも射殺さんばかりの視線を背中に感じながら、白を連れてその場を後にした。
第一種目は、すでに後半戦へと突入していた。