RESTART~USJ
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(主人公視点)
目が覚めた時、白に抱きかかえられていた。
「し、ろ…あいざわさんのところ、に」
まだ、まだだ。
白が眉間に皺を寄せながらも歩き出す。
既に担架に乗せられた相澤さんは、救急車を待っているようだった。
もちろん、意識はない。
「言様…それ以上は」
白の言葉に苦笑しながら、でも私の意思は変わらない。
私なんてどうでもいい。
いてもいなくても同じだもの。
「いいの、私なんかどうでも」
また意識が飛びそうだ。
けど、言葉を紡ぐことに集中すると不思議と頭は冴えてくる。
きっと私は、このためにいる。
『治れ』
さっきより強い言葉。
瞬時に喉が焼け付くように痛む。
血があふれ出る。けど、そんなことに構っていられない。
少しでも、彼の怪我を治さなければ。
「おい、君!!!!」
救急隊の人が止めに入ろうとするけど、目の前で相澤さんの傷が治っていくのを見て、息を飲んでいた。
相澤さんの怪我が少しずつ治っていくとともに、私の吐血量が増す。
もう少し、もうちょっと
「やめておくれ、音葉さん」
相澤さんに伸ばしていた手を掴まれる。
白い、動物の手。
「ね、づさん…でも、かれを…なおさないと」
殆ど言葉になっていなかったと思う。
涙が出る。
自分がなんで泣いているのか分からなかった。
「わたし、だいすき…なんです…」
相澤消太が好きで好きで、苦しくなるほどに彼を好きだった。
漫画の中の人だけど、彼の生徒を思いやる心と、小さな芽を潰さないように精一杯に愛する姿と、ぶっきらぼうだけど何よりもヒーローとして真っすぐに生きる彼が、心の底から大好きで。
そんな彼を、ここで失いたくなかった。
『戻れ』
根津さんの制止を無視して、個性を使う。
「音葉さん!!!!」
ふわりと、甘い匂いが鼻をくすぐった。
(相澤視点)
「よおイレイザー、無事でなにより」
「……マイク」
体がだるい。
そして視界が狭い。
端々に見える白い布で、自分が包帯でぐるぐる巻きにされているとわかる。
救助訓練中に現れた敵。
あの脳無とかいう化け物はオールマイトの活躍により捕まったが、俺と13号はかなりの痛手を負った。
生徒が無事だったことが、唯一の朗報だ。
「しかし、あの子がお前をそんなに好きだったとはな」
ああ?
マイクの言葉になんのことだと返すと、“What!?”とうるさく叫びやがる。
捕縛布があったら縛り上げてるところだ。
「両腕の粉砕骨折、顔面骨折。それだけだと思ってんのか?」
医者にも言われた自分の現状だ。
だから腕も顔も包帯まみれなんだろう。
「まあ目をやられなかっただけましだな」
シヴィー!とうるせぇ声が響く。
「それだ!それだよ!お前の粉々だったはずの顔面を治したの、誰だと思ってんだよ」
なんのことだか分からん。
うちには治癒系個性はばあさんしかいないはずだ。
それとも何か、この病院にはばあさん以上に治癒に長けた奴がいるのか?
もし本当に顔面を粉々に損傷していたとしたら、それは俺の個性に関わってくる。
確かに傷ついてはいたが、粉々ではなかった。
「お前、足は動くんだろ。動けるようになったら会いに行ってやれ…その方があの子も喜ぶだろうよ」
あの子…?
誰なんだ。うちのクラスには治癒系個性はいなかったはずだが…
集中治療室。
真っ白な無菌室で、たくさんの管に繋がれた少女がそこにいた。
俺のクラスの生徒じゃない。
違うが、ここ最近教員全員が気にしていた少女だ。
「……なんで」
ガラス越しに彼女の胸が弱弱しく上下している。
どうして音葉がここにいる。
無菌室の中には白の姿もあり、彼は俺を見るとギロリと睨んできた。
「相澤君、動けるようになったかい」
いつもの調子で校長がやあと右手を上げる。
それに答えられないほど、俺は呆然と病室の中を見つめていた。
「彼女が、個性で君を助けてくれたんだよ」
個性?
あの少女の個性は、ラグドールのようなサーチだったはずだ。
だから見た瞬間に、俺たちのことが分かったわけだし…
「白君に聞いたんだけどね。どうやら彼女の個性はそれだけではないみたいなんだ」
それから校長は、生徒達から聞いたUSJでのことを話してくれた。
蛙吸が死柄木とかいうやつにやられそうになり、俺が個性を使って止めた後のこと。
あそこから俺は意識を失ってしまったために、全て初めて聞くことだった。
音葉がどこからか現れ、敵を止めて、吹っ飛ばしたこと。
俺に治癒を施し、怪我を治したこと。
オールマイトが駆けつけるまでの数分間、彼女ただ一人で敵3人を食い止めたこと。
そして何より、全てが終わった後も俺に治癒をしていたこと。
大量の血を、吐きながら。
「私達はこの子のしたことを認めちゃいけない。自分をないがしろにする守り方は、自分も相手も苦しめるからね。でも君は感謝しないといけないよ。彼女が個性を使わなければ、君は個性を失っていたかもしれないんだからね」
なんで、そこまで俺のことを…
「君のことが、大好きなんだと言っていたよ」
悪戯っ子のように、校長がウインクをする。
はあ?
大好き?対して話したこともない奴のことを?
訳が分からん。
俺はもう一度、ガラス越しに彼女を見つめた。
(死柄木視点)
「そういえばもう一人、面白い奴がいたなあ」
緑色のオールマイト並みの速さをもつ子供の他に、もう一人。
少女のようで、その瞳に燃える炎は子供のそれじゃない。
「白い大きな猫を連れた、黒髪の女。あいつの言葉で、脳無までも動けなくなった」
『……へえ』
俺のことも、黒霧のことも知っている少女。
脳無に掴まれても、怯えるどころかこちらを睨んで啖呵を切っていた。
あの目は、嫌いじゃない。
「あの女は、欲しいなあ」
『弔……いいものを見つけたんだね。私も少し気になるなあ』
(緑谷視点)
「オールマイト、そういえばあの女の子は誰なんですか?」
突然現れて、敵をたった一人で抑え込んでいた僕達と同い年くらいの女の子。
A組でも、多分B組でもないあの子は、僕達を助けてくれた。
「うん?あぁ、音葉少女だね」
脳無に首を掴まれていたけど、オールマイトが来た瞬間に助けた。
もうその時には気を失っていたから、真っ白な人が僕達に相澤先生を預けて運んだんだ。
彼女が言葉を発するたびに敵の動きが鈍くなった。
多分、言葉が彼女の個性なんだろうけど、個性を使うたびに血を吐く彼女が自分に重なったんだ。
まるで、身の丈に合わない個性を使って自分を傷つけてしまうような。
僕と、同じで。
「彼女は雄英で保護している少女だよ。少し訳ありでね」
そういうオールマイトの顔が暗くなる。
「僕が彼女の言葉を信じていれば、もっと早く駆けつけられたのかもしれないな…」
音葉さん。
話したこともないけど、なんとなく僕はすぐに会えるような気がしていた。
「僕、彼女にお礼を言わないといけないんです」
助けてくれてありがとうって。
あの時、彼女の背中にどれだけ勇気をもらったか。
恐怖で動かなくなった体を、彼女の笑顔が解きほぐしてくれた。
「彼女は、僕のヒーローです」