僕が「救けて」と言えるまで
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一般入試後、俺はブラドとともに校長に呼ばれた。
十中八九、あの神呪とかいう生徒のことだろう。
「さて君たちは彼を知っているといったね?」
俺達は神呪と出会った一連の流れを話す。
いま巷を騒がせているハンニバルのことも。
神呪礼の願書を見ながら紅茶をすする。
特別なことはかかれていない。
ただ中学は家庭の事情で通っていなかったみたいだが。
「中学に通っていない…家庭の事情と言われてしまえば僕たちに深堀りはできない訳だけど…彼は一斉個性カウンセリングを受けたんだろうか…」
自分の個性を鑑み、社会適応を促すカウンセリング。
皆小学時に必ず受けるはずのそれを、神呪が受けているとは思えなかった。
だからあいつはあんなに無邪気なんだ。
無邪気に、力をふるう。
「うん、それであれば彼は相澤くんのクラスの21人目として入学させることにしよう」
君なら危なくなっても止められるでしょ、と校長が微笑む。
爆豪に轟、緑谷、嫌でも今年の俺のクラスは問題児になりそうなやつが多い。
それに加え神呪もか…
内心で悪態をつく。面倒ごとは嫌いなんだ。
まあいい。合理的に行こう。
適性がないと判断すれば除籍する。
ただ、それだけだ。
「黒霧―!弔くーん!みてみてー!合格―!」
大きく「合格」と書かれた紙だけ見せる。
本当はホログラムも入ってたんだけど、思いっきりオールマイト出てきたから僕だけ見てとりあえず叩き割っちゃった。
弔君が見たら発狂しちゃうもんね。
黒霧は「おめでとうございます」と言ってくれて、弔君には鼻で笑われた。
頑張ったんだから誉めてくれてもいいのに。
ぶーとほっぺを膨らませて、弔君に頭をすりつける。
「ねえ僕頑張ったんだけど?ねえ、ねえ、弔君?ねえ」
ぐりぐりぐりぐりぐり
一心に頭をすりつけると、不意にぽんっと手がのる。
器用に中指を浮かせたままのる手に、僕はにっこりと微笑んだ。
「えへへー」
言葉にはださない。
けど弔君が褒めてくれてる。
それだけで十分。頑張ってよかったー!
「おい、血鬼。忘れるなよ、お前は俺のものだ。他のやつに傷つけられんじゃねぇぞ」
「はいはい、ありがとねー」
大丈夫だよ。僕が誰に傷つけられるっていうのさ。
だって僕は、カニバルだよ?
「血鬼、先生からの伝言です。原点を忘れないように、とのことです」
原点、ね。
大丈夫。大丈夫。
忘れない。
僕を捨てて、救けてくれなかったのは、ヒーローだ。
「うーん、これどうやって結ぶの?」
鏡の前で初めてつけるネクタイを結んでみるけど、一向に形にならない。
うーん、難しい。
黒霧がいたらすぐ結んでくれるのになあ。
僕は雄英高校すぐ近くのアパートに一人暮らしをすることになった。
一人暮らしって言っても、黒霧呼んだらすぐにバーに飛ばしてくれるんだけどね。
ワンルームの部屋には、ベッドと小さな冷蔵庫と姿見だけ。
ほとんどここで暮らすことはないから、最低限のものしかない。
だめだ。ネクタイ結べないや!
ネクタイは放り投げて、とりあえずいつも通りに前髪をピンでとめる。
黒霧がくれた真っ赤なリュックを背負って、部屋を出た。
とうとう入学式!
僕の神呪礼としての生活が始まるぞー!
「うーん、ここはどこだ」
早速ですが、僕はいまどこにいるんでしょうか!!
1-Aの教室に行きたいはずなのに、一向にたどり着かない。
広すぎじゃない?
なんなの、いじめ?僕に対するいじめなの?
ねえ!知ってた!?僕が弔君に「方向もわからないバカ」って呼ばれてるの!?ねえ!
「うう…泣きそう…」
またバカって言われちゃう…
あてもなくとぼとぼと歩いていると、廊下の先に二人の姿を発見した。
ひっ、ひっ、
「人だぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」
一瞬で二人の前に走りこむ。
ひゅんっと風が通り抜けて、二人の髪が揺れた。
驚きに目を見開く二人に、僕はにっこりと笑いかけた。
「1-Aはどこですか!」
道に迷ったら人に聞く。
これ、常識ね。